高町さんは甘えたい。   作:stan

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初の予約投稿‥上手く出来ているかは起きてからのお楽しみ‥ドキドキ(///ω///)♪



ハゲと誕生日。

パチパチと、目を細めつつ、パソコンのキーボードを叩き、エクセルの表を埋めていく。

タブから別のエクセルシートに移れば、そちらも細かい数字の羅列。数字がぼやける。この所、少し視力が落ちてきたかもしれない。

肺から込み上げる空気を抑える事なく吐き出せば、「‥はあ‥」

と、所謂世間一般で言うところのタメ息というものが出て‥疲れを感じる心を奮い立たせて、再度画面へと顔を近づける。

 私はクシクシと目を擦りながら、表を見比べつつ、

粛々と数字を打ち込んでいく。

そんな画面とにらめっこをしている私の机にカサリと何かが置かれた。

見れば、可愛いリボンでラッピングされた小さな箱。

気配に振り返り見れば、

此方を振り返りもせず手を振りながら、歩いて行くハゲの後ろ姿。

パソコン画面の右下を見れば、今日の日付けは3月15日。

 

(ボンッ)顔が一気に熱を持った。

全く‥アルファードさんはいつも私をあざといとか言うけど、彼の方がよっぽどあざといと思う。

 と、其処で気付く。

プレゼントの箱は二つある‥。

何だろう?‥間違い?

私はもうそれが気になって気になって‥仕事に全く身が入らなくなってしまって‥。マウスポインタのカーソルを目で追いながらも、箱にチラチラと視線が行ってしまう。先程迄の気だるい疲労感は消え失せて、ウキウキ感が私を支配していた。

これはもう無理だ。

 私はおもむろに、2つのプレゼントを掴み、それを二つとも、胸元にしまい、パソコンを閉て、席を立つ。向かう先ははやてちゃんの席だ。

 

「お?どないしたん?なのはちゃん」

 

キョトンとしながら、私に声を掛けてくるはやてちゃん。

 

「ごめん‥今日は早退する」

 

「へ?具合でも悪い‥「‥帰るから」んか?」

 

それだけ告げると、私は職場を後にする。

 

「はやて‥どうしたの?」

 

「あ‥フェイトちゃん。今日はなのはちゃん、早退したから‥」

 

「え?具合でも悪いの?!」

 

「わからん‥でも‥顔真っ赤やったから、もしかしたらそうなんかもなー‥」

 

そう言いながら、はやてはチラリと机の上のカレンダーに目線を送る。

 

「まあ‥医者でも治せん病やけどなー‥さすがのエースオブエースもかたなしやなあ‥」

 

と、ポショリとはやては呟いた。

プレゼントを渡すのは、明日以降にしておこう。

親友としては悔しいが、今日渡しても、それは無粋でしかないのだから‥。

 

「‥女の友情は、儚いで‥」

 

そう呟くはやてをフェイトは不思議そうに見つめていた。

 

自室に戻ると私は急ぎ、自分の机にプレゼントの箱を二つ出し、

その内の1つを開けにかかる。

 逸る心に急ぎながらも包装を破かないように丁寧にそーっと、開ける自分は律義だと思う。

 ハヤクハヤクと急かす心を抑えつつようやく開けられ、

箱から出てきたのは、ピンク色のリボン。

それを手に取り、見つめれば、クスッと微笑みが溢れてしまう。

 私はそのリボンを大切に両手で包んで胸元に一度押し抱くと、手で優しく握りながら、衣装タンスの引き出しの1つを開ける。中には、色とりどりのリボンが一本ずつ綺麗に並べられていて‥私は1番手前に、そのピンク色のリボンをそっと置く。

数えてみれば、もう‥10本目のリボン‥。

 そう‥1番始めに彼からリボンを貰ってから、もう10本目だ。そうか‥あの運命の誕生日からもう10年になるのか。

 

======================

 

「「誕生日おめでとー」」

 

「みんなありがとうなの!」

 

その日、私は部隊のみんなとフェイトちゃんに誕生日をお祝いされていた。

今日は私の11才の誕生日である。

親友のフェイトちゃんはもちろん、大好きな隊長迄含めた部隊のみんなが私の誕生日をお祝いするために、こんな場を設けてくれた。

はやてちゃんはお仕事の都合でこれなかったけど。でも‥代わりにヴィータちゃんが祝ってくれたから、トレードオフである。

顔を真赤にしながらおめでとうを言ってくれたヴィータちゃんはほんとに可愛くて。

それだけでかけがえのない誕生日プレゼントになった。

 

「おめでとう‥なのスケ♪」

 

「ありがとうございます!キューブ副隊長!」

 

私をなのスケと呼ぶのはキューブ副隊長。

サラサラ茶髪を肩迄伸ばしたセミロングの綺麗な大人のお姉さんである。

何故なのスケと呼ぶのか尋ねたら、可愛いから。と返されてしまった。センスはよくわからないけど、悪意は全然感じないので私は許容している。

 私は心の広い女だからね!

 彼女は仕事の出来る大人の女性と言った感じで少し憧れている。

 

「よっ♪おめでとさん♪‥ドヤ町♪」

 

「‥ツーン」

 

‥私をドヤ町等と呼ぶのは、レオーネさん。

 同じ部隊の年上の男の先輩なのだが、軽薄な言動と雰囲気が私は少し苦手だ。しかも私をドヤ町とか呼ぶし、何故ドヤ町と呼ぶのか聞いてみたら、ドヤ顔が面白いから等ときたもんだ。こちらは悪意しか感じない。

 なので私は滅多に返事しない。

 私の心の容量は相手によって、決まるのだ!

 

「なのは‥おめでとう‥」

 

そう言って小さな袋を渡してくれたのはフェイトちゃん。

袋をそっと開けて、中を見ると、クッキーだった。

「わあ‥」

 

「母さんに教わって頑張って作ったんだ‥あと、こっちは母さんから‥」

 

と、もう1つ袋をくれる。

 

「ありがとうなの!食べて良い?」

 

「もちろん♪」

 

と、フェイトちゃんからのクッキーから摘まんで口に入れる。

 サクサクした食感と程よい甘さとバニラの香りがお口の中に広がる。

 

「ん~~♪‥スッゴく美味しいの!」

 

「良かった♪」

 

私の感想に安心したように、柔和な微笑みを浮かべるフェイトちゃん。

そこで私はリンディさんの方のプレゼントも開けてみる。そちらも中はクッキーだった。フェイトちゃんのクッキーをあっという間にたいらげてしまった私は、ニコニコしながら、そちらにも口を付ける。

 

 瞬間、時が止まった。

口の中を暴力的な甘さが暴れまくる。

何だろうこれは‥

砂糖なんだろうか‥?

痛いっ?!甘さが痛いっ?!

角砂糖の方がマシと言える、天元突破した甘さが暴れまくる。

私は慌てて、お茶を飲む。

お茶の渋味を感じてもまだ治まらない甘味。

目に見えて、落ち込んだ私に心配そうにフェイトちゃんが声を掛けてくる。

 

「なのは‥どうかした?」

 

「う、ううん?何でもないよ‥フェイトちゃん」

 

せっかくのプレゼントに文句を言うなんて、そんな失礼なこと出来るわけがない。

ましてやお前のかーちゃんのクッキーがヤバいだなんて‥。

 

「どうした?なのスケ?」

 

と、今度はキューブ副隊長が声を掛けてくれた。

 

「いえ‥」

 

正直に言うわけにもいかず、私はお茶を濁す。

 

「何か悩みでもあるんなら隊長に誕プレおねだりしちゃいなよ!」

 

「‥ええ‥?」

 

隊長からプレゼント‥貰えたら嬉しいけど‥おねだりなんてはしたないよね‥

 

「何遠慮してるの?私からもフォローしてあげるからさ‥」

 

 流石キューブ副隊長。

私が言わなくとも、気持ちを汲んでくれる。そこに痺れる憧れる。

そうだよね。今日は私の誕生日。私が主役の日なのだ。

きっとはやてちゃんなら「今日の主役」なんて書かれた襷を掛けながら、図々しくおねだりするんだろう。

私も勇気を出してみよう。

 高町なのは‥11才。

今日は11才らしく、隊長に甘えてみようとおもいます!

◆◆◆

 

キューブと何やらコソコソ話していた高町が此方をじっと見つめていたので、俺は声を掛けてみることにした。

 

「どうした?高町?」

 

と、問えば、高町は顔を綻ばせて、

意を決したように、口を開いた。

 

「隊長‥!なのは、誕生日プレゼントが欲しいの!」

 

‥お、おう。またダイナミックにせがんできたな。

これはキューブの影響だろうか?

だが、普段は滅多に我が儘も言わず、仕事を頑張っている高町の、たまのおねだりだ。

聞いてやるのも吝かではない。

多少高いモノでも聞いてやるつもりで、問い掛ける。

 

「なんだ?何が欲しいんだ?」

 

プレステ4か?ネオジオCDか?

 

俺がそう言うと高町はフニャリと笑うと、俯いてしまう。

やがて、顔を上げると、

 

「‥私!隊長の初めての女になりたいの!」

 

 なん‥だと‥。

斜め上過ぎるおねだりが来た。

流石にこれは教育が悪すぎる。

早生まれとかそういう問題じゃねーぞ。

 

 と、俺がキューブを睨み付けると、

キューブはブンブンと顔を横に振った。

どうやら、キューブ自体も寝耳に水のおねだりのようだ。

どうしたものか‥。

 俺が、固まっていると、

 

「ダメ‥ですか?」

 

 と、高町が泣きそうになっていた。

いや、泣きたいのはこっちである。

 正解がわかんねえよ。

とりあえず俺は、元々やるつもりだったプレゼントの箱を取り出し、高町に手渡した。

中身は安物のリボンである。

がっかり感が否めないが、

プレゼントを受けとり、キョトンとしている高町に告げる。

 

「まあ…その‥なんだ‥俺が‥生物学的、雌に贈り物をやるのは‥これが‥初めてだ‥」

 

それを聞いても、高町はキョトンとしたままである。

 ちくしょう‥顔がひたすら熱い。

 そんなフリーズしている高町にキューブが何事か囁くと‥

みるみる高町の口の両端がつり上がり、ドヤっていった。

ドヤアアァァァァァァァ!!という効果音が聞こえそうな位のそれはもう見事なドヤ顔だった。

まあ‥なんだ‥たかがリボン一本で、そこまで喜んでくれるなら、こちらとしても嬉しい。

 その横では、キューブが床に拳を打ち付けなが

ら‥

 

「隊長の初めてがあああ?!」

 

等と泣き叫んでいた。

‥やかましいわ‥あいつは後で殴ろう。

そして、その横ではレオーネが‥

 

「バカな‥まだ上がるだと‥ドヤ町‥お前がドヤ顔ナンバーワンだ‥」

 

等と愕然としていた。

やだ‥ウチの部隊、カオス過ぎぃ。心労が酷い。

 俺がハゲているのは、どう考えてもこいつらが悪い。

 そうだ‥この部屋には部隊外の天使がいたじゃないか‥

と、俺は助けを求めるようにフェイトちゃんに目をやると。

 

「‥なのは‥良いなあ‥」

 

等と、羨ましそうに、床にのの字を描いていた。

 

 ‥見なかったことにしよう。

 

 

=============回想終了=====

 

あの日から隊長は毎年私の誕生日にはリボンをプレゼントしてくれている。

あのカオスな情景を思い出すと、今でも笑顔が溢れてしまう。

そこで私はもう1つのプレゼントを思い出した。

急いで開けると、中にはブルーライトカットの赤いフレームの眼鏡。

可愛い‥。可愛いデザインのそれを手にとれば、心臓の鼓動はどんどん加速して。

 ドキドキしながらそれをかけてみる。

今までぼやけていた視界がクリアになる。

鏡を見ながら、角度を変えつつ、笑ってみたり、怒ってみたり、困ってみたりと、百面相。

それでも何時まで経っても、顔の熱は引かなくて‥胸の鼓動も治まらなくて‥。ずっとにやけたままの頬をムニムニと引っ張りながら、

顔が戻らなかったらどうしよう。なんてバカな事を私は眼鏡をクイクイしながら考えていた。

とりあえず、明日からはこの眼鏡を着けていくとして‥出来る女風に‥髪形もシニヨンでまとめてみようかな‥。纏め方、練習しないと‥似合ってる‥って言ってくれるといいな‥えへへ‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございますm(__)mこれで次は完全にストックが空なので、来週の日曜に出せれば(///ω///)♪ほなノシ

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