こんなこと思ってるんじゃないかと思います
我が名は魔王『ゼルド…』…あぁ、すでに名乗っておったか?
いやまぁ未だ名乗る機会を得ぬのでな。
せめて名乗り直すくらいはよいではないか。
まぁそんな訳で、この世界を征服してみようと頑張ってみておるのだがなぁ…。
町に入ると混乱を招きそうであるから外から。
我が足代わりに使っておる邪竜デルゲイトの背中で腕を組んで立ち。
何もせずにただ町を見下ろしておるだけなのに。
「うわぁ!魔王がきたぁ!」
「だ、誰かあの魔王を倒せるヤツはいないのか!」
「もう駄目だ…この世界は魔物に支配されてしまうんだ…」
街の者共は逃げ惑うばかりで。
抵抗らしい抵抗も一切してくれぬ。
ましてや戦おうという気概を持つ者が見つかりそうにない。
むしろ何かこちらが無抵抗の者を害そうとしておるようで罪悪感が湧いてくる。
なんと情けないのだ…この世界の者どもは…。
「フゥ…獣王ジユウキよ、我は城へと戻る…」
「はっ!それではこの町は焼き払ってしまってもよろしいので?」
「む?……そうだな、もう見る価値すらもなさそうだが…」
「それでは全ての人間を根絶やしにして、魔王様への恐ろしさを刻み付けておきましょうぞ」
「ん~~~……いや、人間は生かしておいてくれぬか?」
「へ!?あ、で、ですが……」
「なんじゃ?我の命令に不服だと申すのか?」
「い、いえ!!承知いたしました!」
人の一人や二人など、確かに殺してしまってもよいのかもしれぬが…。
なんじゃろうのぉ…そこまでするのも何か気分が良くない。
血の気の多いジユウキには、酷なことをさせておる気はするがな。
(バサッ)
さて…では我は城へと戻り、一人チェスでもして憂さを晴らすと…。
「……ん?」
城へ戻ろうと町に背を向けたその時。
遥か先の丘の上で。
何か諍いのようなものが起こっているのが見えた。
いや、諍いというよりは一方的に一人の者を複数で虐げておるような。
…………。
このまま城へと戻るのもなんだ。
酔狂だが、ちと聞き耳を立ててみるとしようか。
我はデルゲイトから飛び降りて、地面へと降り立ち。
他の者共に、先に城へと戻るように促した。
そうしてなるべく一人で地を歩きながらその場へと進んだ。
ふむ…こうして地を歩いて移動するなど、どれくらいぶりであろう?
城を構えてからは外界を歩くこともほぼなくなってしまった故。
何か新鮮な気分がするのぉ。
さて…そろそろ…。
≪風の聖霊よ…その調べによって我に…≫
風の魔法を少し応用して。
その場からだいぶ離れた場所から聞き耳を立ててみることにした。
『テメェは何のために町にいんだよ!!』
うぉ!?な、なんじゃ一体!?
風の魔法が発動した途端に。
複数の罵声のような声が伝い聞こえてきた。
『お前も騎士の端くれなら、さっさと魔物を倒しにいけよ!』
『そうだ!それでずっと戻って来なきゃいいんだお前なんて!』
『この落ちこぼれ騎士が!』
……落ちこぼれ騎士?
『…………ゴメン』
『何を謝ってんだ!』
『チッ、お前の姿を観てるだけでムカついてくんぜ!』
『さっさと町から出ていけ!!』
なんじゃ、穏やかではないのぉ…。
聞こえた文言を纏めると。
一人の若者…だと思われる者が、町に住んでおって。
その者が騎士の名を持つにも関わらず。
我らに挑もうとせずにのうのうと暮らしておる…というような話か?
そしてこうして迫害を受けておるらしいな。
ふむ…どれ、どんな軟弱者があの町に住んでおるのか…。
落ちこぼれ騎士の顔を拝んでやろうではないか。
……。