「…フゥ………」
魔王装束…と勝手に思っておる服が破れ落ちる前に。
なんとか我が居城へと戻ることが出来た。
やれやれ…次に外出する時にはもっと服を頑丈にせねば…。
「ゼ、ゼルドモアリス様!そのお姿は一体!?」
「まさか…あの矮小な町の周辺に、強者が居たので!?」
城の中で、獣王ジユウキと。
騎士の半身と馬の半獣人『騎馬王チダイ』が、慌てた様子で声を掛けてきた。
ん?一体何を慌てておる…む?
(ボロッ…)
あぁ…このボロボロになった装束を見て。
我が何者かと戦闘してきたのだと思い込んだのか。
実際は、暴走した風と地の精霊によるものなのだが…。
う~む…何か微妙に、そのまま素直に告げるのは恥ずかしい気がする。
しからば…。
「…気にするでない、少々油断しただけじゃ」
この城の王としての威厳を保ちつつ。
尚且つそれっぽい雰囲気をもってそのように答えた。
だが、少々それが拙かったのだと気付いた時には遅かった。
「ゼルドモアリス様をあのような姿に貶めるなどと…人間どもめ、許せぬ!!」
「町の者共を、一人残らず血祭りにあげてやろうぞ!」
「そのような強者がいるのであれば、今のうちに芽を摘んでおかねば!」
何か急に、周りの者共が血気盛んになりだしてしまった。
「いや、案ずるでない…我自らの落ち度である故にだな…」
「みておれ人間どもめ!我がゼルドモアリスさまに仇なす者を始末してくれようぞ!」
「全軍で人間どもの城へと攻め込もうではないか!」
「ゆくぞ!配下の者共に招集をかけよ!」
「まぁ我もまだまだ魔王としての自覚に欠け……おやっ?」
我がそう弁明のようなつもりで述べておる内に。
配下の者共が、皆一斉にこの場より去っていってしまった。
「あ……」
…い、いかん!これはまずいかもしれぬ!
先ほどに鬱憤を晴らせずにいたジユウキ達などが。
あれほどに憤慨したまま、人間どもの城へと攻め込んだりしたら…。
全ての人間を、一人残らず根絶やしにしてしまうかもしれぬ!
だがどうしたらよいのだ!?
我の立場上、配下どもを止めるのも何かおかしな気がする。
なれど何とか制止せねば町の者は全て…。
特に……あの者にも、危害が及ぶやも……。
「…っ……!?」
な、何だ!?今の胸の動悸は…。
今、先ほどあの丘で観たキアという者が。
危害に遭うのではと想いを馳せたら…。
胸が苦しく…そしてとても辛いような気分になった。
何なのだろう、この妙に心を震わせる感覚は…我は一体どうしたというのだ…。
いや…悠長に考えている時間などない!
早急にあやつらを止めねば、今の予感めいたものが現実と成りうる!
ともかく何としてでも、全力で止めねば!!