桃井さつきinハイキュー!!   作:睡眠人間

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試合カットしますごめんなさい。
恋愛要素増やしていい?いいよ!


歩み寄り

 試合も終わり、仲間たちと喜びを分かち合った彼らは閉会式が始まるまで各々好きに過ごしていた。と言っても集合時間までたっぷり時間があるわけでもなく、限られた最後の時間を一時のチームメイトと共有する者が多い。

 

 そんな中、携帯片手に及川が勢いよく控え室から出て行った。その後を追うのは牛島で、二人の急な反応に興味を持ったのは岩泉。なんとなく桃井関連だろうなとあたりをつけて、ついていく。

 

「ついてくんなよ! せっかく桃ちゃんと二人っきりになれるってのにお前がいたら台無しだろうが!」

「悪い。だが俺も伝言を任されている」

「知ったこっちゃねーし! いいか、俺がいいって言うまで出てくんなよ!」

「わかった。それで役目が果たせるのならそうしよう」

 

 牛島よ、なぜそこで納得する。絶対いいって言われない言い方をされてるけど気づかないのか。

 これだから天然は……と岩泉が口を出すべきか悩んでいると、視界の奥で桃井の姿を捉える。壁に佇むようにしてひっそりと待つ様子は、私服だからだろうか、とても新鮮に見える。

 

 すると目の前で牛島が足を止めた。どうやら有言実行するつもりらしい。俺は関係ねーからいいか、と岩泉は牛島を避けて進む。

 

 二人の足音に気づき顔を上げた桃井はにっこり微笑んだ。

 

「こんにちは。試合お疲れ様でした」

「桃ちゃーん! ごめんね、呼び出しちゃって。どうしても会いたくてさ」

「やっぱりオメーの仕業か。桃井、嫌だと思ったら無視していいんだぞ」

「岩ちゃんヒドイ!!」

「いいえ、一番にこの言葉を言いたかったので、むしろ良かったくらいです」

 

 胸元に手を当てて一呼吸入れると、優しい声色が滑らかに紡がれる。

 

「改めて、優勝おめでとうございます。……最後まで見届けましたよ」

 

 あ、と及川は気づく。

 最後と彼女は言った。その言葉に込められた意味を読み取ろうとしても、有頂天になった頭じゃ何も出てこない。そう、及川は今浮かれていた。

 

 試合直後は冷静を装っていたが(どうやら牛島と同じチームだったことを最後まで認めたくなかったようだ)、今になって全国一位になったという実感が湧いてきたらしく、見ていてウザイくらい桃井に絡み始める。

 

「俺のプレー見てくれた? どうだった??」

「はい、もちろん。ラストの牛島さんへのトス、すごく丁寧でびっくりしました」

「えへへ、そうかな〜? あっでもウシワカ野郎に上げたのは仕方なくなんだからね! むしろ最後に花を持たせてやったんだから、感謝して欲しいくらい!」

「岩泉先輩のスパイクも普段より力強くて、見惚れてしまいましたよ。打ち分けも以前より格段に良くなってました」

「おう。ありがとな。桃井に言ってもらえると自信になる」

 

 にこにこにこ。あまりに凝った笑顔で岩泉は不思議そうな顔をした。有頂天だった及川も、桃井の平常通りの対応にだんだん冷静になってくる。

 

「なんか……テンション普通じゃない?」

 

 もうちょっと喜んでくれたらいいのに。

 そんな思いを込めて言ってみると、桃井は俯いた。ごめんなさい、と肩を震わせて囁かれて及川は慌てふためく。

 

「ッごめん!! そうだよね、自分が関係する試合ってわけじゃないもん。試合を分析してたのかもしれないし、桃ちゃんは桃ちゃんらしくいていいと思……」

「ああ、いえ、違うんです。ただ、その……」

 

 両手で頬を包み込み、柔らかそうなほっぺをぐにぐにしながら、上目遣いで言うことには。

 

「試合中はずっと興奮しっぱなしでしたし、優勝が決まった時なんか泣いちゃったんです。ついさっきまでニヤニヤしたりもして。先輩方の活躍がすっごく嬉しくて、すっごくカッコ良くて……こうやって笑ってないと、頬がゆるんでだらしない顔になっちゃうんです………は、恥ずかしい、ので。だから、手放しに喜べなくて、ごめんなさい……」

 

 よく見ればうっすら目元が赤くなっていて、隠すように顔を背けると、やがて何もなかったかのような笑顔を取り繕う。が、よく見なくても口元がプルプルしていた。

 

 かわいい。だらしない顔って何? 見てみたい。でも見せたくなくて我慢する姿もかわいい。恥ずかしがる姿もかわいい。

 

 あまりの可愛さに一瞬気が遠のいた及川は、すぐに正気を取り戻すと手をブンブン振った。

 

「いい! 全然いいよ! 祝ってくれるだけですっっごく嬉しいから!!!」

「気にすんな。お前の好きにすりゃいい」

 

 幸せそうに花を撒き散らす及川が鬱陶しく、そういやこのタイミングでしか東峰と会わせられないんじゃないかと気づいた岩泉は、一言ちょっとと断りを入れて戻ろうとする。

 

 あの後の試合から何か吹っ切れたようにプレーしていたから問題ないとは思うのだが、自慢の後輩と会わせてやりたかったのだ。あと桃井から見て東峰はどうなのか、純粋に興味がある。

 

 しかし動き出した牛島とすれ違い、やっぱり少し時間を置いてから会わせようと思うのだった。理由なんて言うだけ野暮だから言わないが、一つ言えるとするならば、桃井は気の毒だな。くらいである。

 

 

「もういいか」

「よくねえよ! 出てきていいって言ってないし! なんで出てきた!」

「いいと言っただろう」

「言っ………てねーよ!! お前にはな!!!」

 

 噛みつくように言い返す及川だが牛島は特に表情を変えることもしない。

 

「そうか。それならばまた待つだけのこと」

「………及川先輩。もしかして牛島さんに出てくるな、なんて言ったんですか」

 

 及川は言葉を詰まらせる。だって好きな子に一番褒められていた一番ムカつく男なんだから、対応が冷たくなるのは仕方がないじゃん。なんて心の中で言っても届くはずがなく、桃井は及川をするりと追い越すと踵を返す牛島に近づいた。

 

 及川が口を挟む暇もない速さで追いつくと、ぐっと牛島のジャージの袖を掴む。

 

「牛島さん。優勝おめでとうございます」

「ああ」

「ずっと前から、あなたに早く会いたいと思ってたんです」

「……ああ」

「伝えたいことがあって。聞いてくれますか?」

 

 くいっ。今度は弱々しい力でこちらを向くように仕向けると、牛島は桃井と向き合った。こくり、とゆっくり無言で首肯する姿はその大きな体軀は不釣り合いな子どもっぽい仕草で、桃井は思わず頬を緩めて自然に笑う。

 

 が、その微笑は変質し、ものすごい圧を伴うものになった。にこにこどころかに゛こ゛に゛こ゛である。ぎゅうぅとジャージの袖を掴む手にも力がこもり、牛島は伸びるからやめてほしいな、と呑気に思った。

 

「私はいつからあなたの所有物になったんですかね」

「なってない」

「そうですよね。あなたが好き勝手していいわけじゃないですよね? じゃあ何勝手に人のこと言いふらしてるんですか??」

「言いふらし……?」

「自覚ないんですか!?」

 

 ぎゅうううぅ……! さらに力を入れる桃井の右手がブルブル震える。笑って怒るとは器用な奴だ、とマイペースな感想を抱き、そういえば似たことを及川にも言われたことに思い至った。

 

「バラした、ということならば、俺はした」

「なんでそんなことするんです?」

「お前が強くなるためだ」

「……え?」

 

 桃井はきょとんと大きな瞳を瞬かせた。

 彼女にとって牛島は予測不可能の存在である。元々わかりづらかったのにさらに未知の世界に行ってしまう気がして、牛島と視線を合わせる。真っ直ぐな目をしていた。

 

「お前が強くなり、白鳥沢に入る。そのためだ」

「ええ……やっぱり自分のもの扱いじゃん……」

 

 ぼそっと呟くと牛島の目つきが鋭くなるので笑って流す。

 

「あっごめんなさい。伸びちゃいましたね」

 

 全くこの人は。影山くん系統っていうか。本人は自分の思う正しさを口にしてるだけなんだろうけど、自信に満ち溢れてるから本当に正しいことのように思えてくるから困る。

 

 視線を外し、ジャージの袖を確かめる動作をしつつ肩の力を抜く。そうやって手塩にかけて育てたとして、いざ私が他校に進学したらどうなるとか考えないのか。……考えないんだろうなぁ。その発想がまずないって感じだもんなぁ。

 

「だいたい、岩泉も同じようなことをしていた」

「そうなんですか? ……だとしても岩泉先輩だったら、別に……。後輩自慢されているようで照れますが、ちょっと嬉しいですね」

 

 多分あの人なら私の悪いようにはしないと思います。

 

 そう付け加え、言外に「まあ牛島さんは悪いようにしてますけど」と訴える。なんとなく自分が劣った気がして沈黙する牛島を見上げ、桃井は苦笑する。

 

「あなたの意図はわかりました。実際その通りになっているのも認めます。でも、それとこれとは話が別です」

「何だと?」

「私は私の力で、私の強さを示したいんです。ズルはしたくないです。たとえ間接的にでも手を出さないでください。特に牛島さんみたいな人に広められると困ります。無駄に説得力あるんですから」

 

 桃井は胸を張り、自分の胸元に手を当てて毅然とした態度で言い放った。

 

「私の夢はアナリストになること。その夢は誰かに敷かれたレールの上で成したいことじゃない。……私自身の力で、やりたいことなんです」

 

 いいですか? と一歩迫る。

 

「あと勝手に広められるの、普通に嫌なのでホントやめてください」

「……わかった」

 

 言いたいことを言えてすっきりしたのか、あるいはあのウシワカを黙らせることに成功したからか、桃井は意地悪そうに口角を上げた。とっても嬉しそうな顔を見下ろして牛島は眉根を寄せる。

 

「お前は時に生意気だ」

「牛島さんは後輩らしい静かなほうがお好きなんですか?」

「……なぜ俺の好みの話になる」

「単なる好奇心ですよ」

 

 それすらもデータの一部になり得るのだから手に入れておくに越したことはない。で、実際どうなんですか? と訊く桃井と口を閉ざす牛島。

 そんな二人のフワフワした空気に抗議する者が独り。

 

「ちょおっっと待った!! なんで俺が完全な空気にされちゃってるの!? おかしくない!!?」

「及川が勝手に静かになったんだろう」

「もう話終わりでいいよね? じゃあ桃ちゃん、あっち行こっか!」

「えっ、あの、ちょっと」

 

 及川は桃井の背中をくるっと回して牛島との対面を終わらせると、背中をぐいぐい押して距離を取ろうと試みる。桃井の困惑する声は耳に入ってくることはなく、頭の中はさっきのジャージの裾を掴む光景ばかりが再生されていた。

 

 俺だって……ドリンクとか渡されるときくらいしか、桃ちゃんから触れられる機会がないのに、ウシワカ野郎め……。あんな朴念仁のどこがいいんだ! バレーか? バレーの才能かハァン!?!?

 

「終わっていない。伝言を預かっている」

「伝言? ……その、及川先輩、いい加減離してください。聞いてますか? ………聞こえてないですね」

 

 イラッとした桃井は隙をついて脱出すると、くいっと及川のジャージの裾を引っ張る。

 

「はっ!?」

「耳貸してください」

「なにゅ、なんで!?」

「早くしてください」

「アッはい」

 

 問答無用と言わんばかりの眼力に大人しくなった及川は少し屈む。すると背伸びした桃井の唇が耳元に近づいてきて、甘い香りとくすぐったい息遣いにドキドキしてボッと赤面する。

 何を言われるんだろうという期待に反して告げられたのは。

 

「そうやって無理やりするの、やめてもらえますか。はっきり言って迷惑です」

 

 普段の優しい声とは真逆の凍えるように冷たい声。本気で嫌だという思いが込められていて、及川は頭を勢いよく打ったような衝撃を受ける。これ、もしかしなくても嫌われたんじゃ……?

 

「優勝してテンションが上がっているのはわかります。本来なら大会の主役である先輩を優先するのが当然です。これは私の我儘で、付き合わせてしまうのは申し訳ないのですが……少しの間だけ静かにしてもらっていいですか?」

「はい……すみません……」

 

 後半からフォローされてもショックは消えない。言われてみれば思い当たる節が結構あってダメージは倍増していく。その度に迷惑をかけていたんだと思うと浮かれていた自分が恥ずかしかった。

 

「それで、伝言というのは?」

「鷲匠監督からだ。次の大会でまた勧誘に向かうと。質問があれば今のうちから考えておけ、とのことだ」

「これはまた熱烈な。………個人的には白鳥沢一強だし、そこまで力入れなくても志望校暫定トップなんだけどなぁ……」

「何か言ったか?」

「いえ。何も。とりあえずはわかりました。では、えーと、今から欲しい資料メモするので待ってもらえます? お会いした際に渡してもらいたくて」

「いいだろう」

 

 鞄から取り出したメモ帳にさらさらペンを走らせると、どうぞと千切って牛島に渡す。そのメモに目を通した牛島は呆れたようにため息を吐く。

 

「……桃井。流石にここまでのものを部外者に渡すわけにはいかないだろう」

「可能な範囲で構いません。それに、どのくらい白鳥沢を真剣に検討しているか、知ってもらえると思ったので」

 

 まさか桃井も全部の要求が通るとは思っていない。本物のタブーは候補から外した中で、本命の情報を得ることができたならよし、他の情報も渡されたらラッキー、程度にしか考えていない。

 それにここで遠慮するなんて選択肢はない。あの人には無茶苦茶くらいが丁度いいと踏んでの内容だ。すごい勘だけど。

 

「それじゃあお願いします」

「ああ。…………」

 

 ぺこりと頭を下げて見送る姿勢になるが、いつまで経っても牛島は動く気配がなく、不思議に思って桃井は顔を上げる。やはり何を考えているのかわからない表情だ。

 

「もう用事は終わりました、よね?」

「……悪かった」

「………えっ」

 

 もしかしてバラしたことを謝ってくれたのだろうか。予選の時も思ったけど、牛島さんって悪い人じゃないんだよね。頑張る方向が常人とズレてるだけで。影山くんも同じタイプだからわかる。

 

 去っていく背中を見送って、さて、と視線を及川に戻す。会場を沸かせた魅惑のイケメンは壁に寄っかかって体操座り。しかも項垂れている。なんとも情けない姿を晒す先輩が優勝チームのセッターだとは到底思えない。

 

 喜ばしい日に水を差してしまった罪悪感に、言わなきゃ良かったと後悔する。桃井はとてとて歩いて及川の正面に立つと膝を抱えてしゃがみ込んだ。

 

「及川先輩。そろそろ閉会式が始まりますよ。戻ったほうがいいんじゃないですか」

「今までそんなに迷惑だったの?」

「………そのことについては、まあ、はい」

「嫌われる前に言ってよぉ!」

「ちょくちょく言ってはいましたよ。あなたが聞かなかっただけで」

「うっ」

 

 さらに凹む及川。うーん……ごめんなさいと謝るのも違うし、どうするべきか。ただ嫌だなと思うことをやめて欲しいだけで、今まで通りの普通の関係でいたいのだ。

 及川のつむじを見つめて考える。こういうときはどんな対応をすればいいのか、桃井の中に正解は存在しなかった。

 

「それから、私はあなたを嫌ってません。先輩方を尊敬していると前にも言ったでしょう。信じてくれないんですか?」

「……その言い方はズルイ」

 

 肯定すれば、みんな平等に注がれる尊敬の念を認め、周りと変わらない距離を保つことになる。

 否定すれば好きな子の言葉を疑い、ついでに尊敬されるくらいスゲー奴らの努力も無かったことになる。

 

 こんなの答えられるわけがない。

 曖昧な言葉を唇に乗せて無回答を貫く。

 

 どうしてここまで桃ちゃんは頑なに告白させないんだろう。俺のことが嫌い? それとも俺が及川徹だから? ファンの子たちに何かされることを恐れて? もしかして好きな人がいるの?

 

 頭の中でぐるぐる回る考えがどれも当てはまるように思えてくる。

 

「あの、とにかく時間がないです。岩泉先輩から拳骨食らう前に戻りましょう?」

 

 決勝戦は観客のほうまで意識を向ける余裕がなくて、それでも桃ちゃんが会場内にいて俺のバレーを見てくれているといくらでも頑張ることができた。辛く苦しいときほど桃ちゃんの存在が俺を助けてくれた。こんなところで止まっていたら見てもらえなくなる。それだけは絶対に嫌だったから。

 

 俺が桃ちゃんのマネージャーになった理由の一部であるように、桃ちゃんが俺のバレーの一部になった。

 

 そして試合が終わって、呼び出して、会いたかった君が顔を上げて笑った瞬間、たまらなく大好きなんだと思った。俺を視界に入れて優しく蕩けた笑顔が愛おしかった。

 

 冬になっても気持ちが風化することはなく、想いは俺の中で大きくなるばかりで。それに比例するように桃ちゃんとの距離は離れていった。俺は引退した先輩で桃ちゃんは現役の部員。部活で話すことはあってもバレーの話だけだし、学校生活じゃすれ違うこともほとんどなくて、順当に終わりを迎えようとしていた。

 

 このままいけば卒業式の日にバレー部全体で集まりがあって、そしてみんなに別れを告げて、おしまいだ。桃ちゃんの思う通りに何もなかったままで終わる。

 

「………最後、まで」

 

 桃ちゃんは俺のバレーを見てくれた。

 有限だった関係の終わりを見届けた。

 

 彼女は何も言わなかった。

 だから、きっと俺ではダメだったんだろう。

 

 天才にない強さも、彼女が認める……もっと見ていたいと思うバレーを、俺は見せることができなかった。

 

 俺より岩ちゃんの方が信頼されている気がするのも、まあ、今までを振り返ってみれば、わかりたくないけどわかる。ウシワカ野郎に至っては心を許してる感じがするのがスッゴイ嫌だ。

 

 でも、もう、どうしようもない。

 それだけのものを俺は持ち合わせていなかった。

 

 中学最後で最高のチャンスをものにできなかった俺に残された手段。本当に何もなかったことにして薄っぺらい関係でいるか。それとも関係が絶たれるとわかった上で告白するか。

 

 覚悟を決めて、ゆっくりと顔を上げると思ったより近くに桃ちゃんがいてびっくりした。固まった俺を見て首を傾げると、伸びかけの桃色の髪がさらりと流れる。見惚れるくらいきれいだった。

 

「ね、年明け……しばらくしたら、昼休みに図書室で会おう」

「図書室は多分受験生が多いと思いますよ?」

「あ、そっか」

 

 スポーツ推薦で青葉城西が決まってるから頭から抜け落ちていたけど、同級生は受験シーズン真っ只中じゃん。

 

「なら屋上……は寒いし、体育館は飛雄が使ってるか……うーん」

「……屋上に続く階段があるじゃないですか。あそこでいいんじゃないですか? 冬は寒いから不人気だってあっちゃんが……あ、友達が言ってました。女子の間では有名らしいです」

「そうなの? 知らなかった」

 

 使おうと思ったことなんて一度もないから初めて聞いた。というか桃ちゃんの口から友達の話題が出るのも初めてな気がする。

 しかし考えてみれば当然だ。こんなに真面目で優しくてかわいくて一生懸命な女の子なんだから、モテないわけがない。友達だって多いだろう。桃ちゃんの悪い噂は聞いたことがないし、周囲と上手くやれている証拠だ。

 

 それは桃ちゃんが苦労して作り上げた環境。それを俺の自分勝手な想いで壊してしまいたくない。だから誰にも知られず、二人っきりになれる場所が欲しかった。

 

「ならそこにしよう。日にちは後で教えるね」

「わかりました。それじゃあ、早く行ってください。今頃岩泉先輩カンカンですよきっと」

「うわっマジだ! じゃ、またね!」

「はい」

 

 笑って手を振ってくれる姿が名残惜しいが命には代えられず、大きく手を振った俺はダッシュ。疲れた体に鞭を打って集合場所に向かう。

 

 

 桃ちゃんに告白しよう。

 間違いなくフラれるけど。

 

 先輩後輩という関係すら遠のいたって、君に伝えたい。俺が桃ちゃんを好きだってこと。この気持ちを無かったことになんてしたくない。言葉にして、それで、そして……

 

 

 終わりにしよう。




「そういえば東峰君は? 会わせるんじゃなかったの?」
「よく考えたら桃井の都合を無視してることに気づいたからやめた。無理やりさせることじゃねーべ」
「…………へー。そういうところねー」
「んだその顔は」


↑入れる場所が見つからなかった。
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