桃井さつきinハイキュー!!   作:睡眠人間

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高校を選ぶターンです。さっさと高校進学しろと思われるかもしれませんが大事なので数話かけてやると思います。
ちなみに未だに作者の中でどの高校に進学するかは決めていません。成り行きに任せて描きます。


桃井さつきは選択する
初心


 例えば、これが漫画なら。ページをめくれば数ヶ月の時が経ち、あっという間に現在は過去になっていくのだろう。悲劇は未来の喜劇となって、物語のスパイスとして記憶に残り、胸を踊らせた後に風化して、いつしか誰からも思い出されなくなる。

 

 だけど、これは紛れもない現実だ。試合に勝っても日常生活が終わるわけではないし、勝負に負けても死ぬわけじゃない。笑っちゃうくらい呆気なくやってくる毎日に、私は必死になってやり過ごした。

 

 

 

 影山くんという正セッターが変わって新体制となった北川第一は猛特訓を強いられる。その原因を作ったのは私だ。

 本来なら春季大会の後にこうなるはずだった。それを私のエゴで中総体まで延期させたのだ。

 

 一番負担の大きい新しい正セッターの選手のサポートに徹しながら、寝る間も惜しんで情報分析にあたった。自分の我儘でチームの足を引っ張ったから、彼らの優しさに漬け込んで無理を言ったから、その責任を果たさなければと必死だった。

 

 

 

『注目の北川第一、まさかの初戦敗退───!!』

 

 それでも、頂には届かなかった。

 日頃の無茶と睡眠不足、そしてトドメとなった影山くんの選手登録解除。チームに対する後ろめたさや罪悪感。自分の行いが不正解だった焦り。無力感。怒り。後悔。絶望。

 色んな要因が重なって、どうしたらいいか頼るべき人もいなくて。弱さを曝け出せる場所も、本音を言える居場所もどこにもなくて。

 

『……ぐ、ぅ、うぅ……ふっ、ぐずっ』

 

 影山くんとの接触もなくなった今では、私はひとりぼっちだった。全国大会初戦敗退という事実を前にして泣くチームメイトに対し、私の両目から涙が落ちることは、ついになかった。

 

 

 

 

 全国大会を終えてまだ一週間も経っていない。それでも私たち三年の部員は事実上引退となり、後輩たちに居場所を譲り渡すこととなった。

 

 しかし、チームワークはさておき、三年連続で全国大会に出場した代の後釜となる後輩たちのプレッシャーは桁違い。監督には程々にと注意を受けたが、彼らにはまだ支えが必要だろう。道標となり、勝利へと導く存在が。

 だから後輩たちの分析や、その対戦相手の情報収集をして少しでも残せるものを生み出さなければ……そんなふうに考えていたのだが、自分の部屋にいると、それも上手く進まなかった。

 

 ずっと、どうすればよかったのかを考えている。けれどどれだけ思考を重ねてもあの悪夢のような光景が、影山くんのトスが見送られる瞬間が、網膜に焼き付いて離れないのだ。

 

 プルプル、プルプル。スマホが振動するのを、ぼうっと眺めて放置する。出なければ、と思うのだけど何もかもが億劫で嫌になってしまった。

 

 

『桃井さつきさん。あなたが出した条件はクリアできる。どれだけの予算を削ったとしても、例のソフトを使うあなたがウチのチームに入ること以上に大事なことはない』

『最近の成績が振るわずとも、君の才能や蓄積したデータは素晴らしい。このチームには頭脳が必要なんだ。ぜひ、スカウトの話を受け入れてくれないか』

 

 三年間一緒にいたチームでさえ、この有様なのに。

 支えたいと心の底から願った相手の道を自分で潰したのに。

 それなのに、そんな私に何ができるというの?

 

 一度どん底に落ち込んだ気持ちが、喉に引っかかってどうすることもできなくて。

 知り合いの先輩からの連絡さえ見る気が起きず、この体たらくだった。

 

「はぁ……あ、止まった」

 

 結局誰からだったのかしら、なんて考えるけれど、わざわざスマホを確認しようとは思わない。

 どうせ夏休みが終われば学校に行くし、バレー部のみんなとも顔を合わせる。それまではどうか一人にして欲しかった。だから外部との連絡を絶っていたのだけど。

 

 プルプル、プルプル。再び振動するスマホに視線を向ける。

 また掛け直してきたのか。どうせ私は出ないのに。

 酷いことを思いつつ、なんとなく窓を見やる。

 

「あっ」

 

 ちょうど影山くんが家から出て行く瞬間だった。

 ロードワークをするのだろう、部活着のようなラフな格好の彼は、玄関の鍵を閉めると、普段通りに駆け出していく。すぐに姿は見えなくなって、急いで窓に近寄ると、うちの家方面に走っていくのが見えた。

 ……大会が終わっても、中学でのバレーボールが終わっても、影山くんは変わらない。いつものルーティンを欠かさずやっていく。

 

「………やっぱりすごいなぁ」

 

 無意識的に呟いて、私はスマホを手に取った。影山くんが前を向いているのに、何もしないのは私じゃない。

 

「……はい、桃井さつきです」

『あっ!!!』

 

 ドタバタガッシャン、騒がしい音が電話口から耳に飛び込んでくる。長いこと電話に出なかったから、まさか繋がると思っていなかったらしい。慌てた様子の声にもしかして、と画面に表示されている名前を確認してみれば。

 

 

 

 

「ごめんっ! 桃井さん! これハンカチ、返すね!」

 

 日向翔陽くんである。自転車を停めて急いで走ってくる彼は、真夏の太陽にも劣らぬ直射日光ぶりだった。

 色々と下心ありで行動していた私の気持ちがどんどん下向きになっていく。

 

「ううん、こちらこそ。わざわざ返してくれてありがとう」

 

 待ち合わせをしていた公園のベンチから立ち上がって、差し出されたそれを受け取った。

 

 日向くんにハンカチを貸したのは、これを返却させて繋がりを得るためである。電話番号を交換したのもそう。

 彼が影山くんに変化をもたらす最重要人物だと見做した上での打算である。本当は影山くんと日向くんを全国大会前に会わせるつもりだったが、もう全てが手遅れとなってしまった今では、その作戦もどうでもよくなってしまった。

 

「…………」

「? どうかしたの?」

「あっ! うん、イイエッ」

「うん、いいえ……?」

 

 ぽーっと私の顔を見つめてきたかと思えば、顔を赤くして勢いよく逸らす。

 ついまるっこい横顔を観察してみれば、なるほど幼いなぁと以前と同じ感想を抱いた。

 

「返すの遅くなってごめん!」

「大丈夫だよ。連絡してくれたのに中々気づかなくてごめんね。全国大会とか色々あって忙しくて……」

 

 そこまで言ったところで、北一と戦って敗北した彼に伝えるべき内容ではないと気づき、謝ろうとしたのだが。

 

「全国……大会! すげぇ響き! 桃井さん全国行ったんだー! いいなー!」

「……すごいのは私じゃなくてみんなだから」

「じゃあ、アイツもやっぱ試合に出たんだ? コート上の王様!」

 

 悪気なく日向くんは質問を飛ばす。私は頭を振った。

 

「ううん、出て……ないの。選手登録から外されたから……」

「え! そうなの? 怪我とか?」

「怪我したわけじゃないんだけど……ごめん、あんまり上手く言えない」

「ふーん?」

 

 よくわからない、といった具合に小首を傾げた日向くんだったが、きらりと輝く双眸に鋭い意志が宿ったのを見て、私は自然と身を震わせた。

 

「いずれにせよ、あの王様を倒すのはおれだからな! 負けねーッ!!」

 

 そうだ。雪ヶ丘との試合の後、夕陽が降りたあの場所で、日向くんは影山くんに宣言していた。あれだけの実力差を見せつけられて、それでも彼は涙をこぼしながらも力強く言い放ったのだ。

 

「……ねぇ、どうしてそんなふうに言えるの?」

 

 気づけば口から飛び出していた疑問。

 

「? どういうこと?」

「日向くん、バレーボール下手くそじゃない」

「ッガ!!!」

 

 以前は『日向くんのプレー、すごく良かった』なんて褒めていたのに。日向くんは白目をむいた。だけど、私の口はそんなところでは止まらない。

 

「サーブもレシーブもトスもスパイクも、全部影山くんの方が圧倒的に上手いし。経験値も比べものにならないくらいアイツの方が多いし。影山くんの方が強いのに、どうして、倒すとか。………チームから降ろせ、なんて言えるのかなって」

 

 やめなければ、と頭ではわかっていた。それでも擦り切れて使い物にならなくなっていた理性では堰き止めきれない本音が、ぽろぽろと落ちてくる。

 

「も、桃井、さん……?」

「バレーにかけてる時間だって想いだって、影山くんの方がたくさんあるのに。アイツを一人ぼっちにして、それなのに被害者面で、私に答えを求めてばかりで。自分で考えることさえせずに、ようやくぶつかると思ったら、トスを無視するなんて逃げに走って……」

 

 違う。違う違う違う。違う!

 時間をかけているから偉いとか、情熱があるから素晴らしいなんて、人を推し量る材料にはならない。

 

 チームから思考を奪ったのは私だ。

 コミュニケーションの機会を失わせたのは私だ。

 話し合うまでもなく私から正解をもたらされるのだから、わざわざ嫌いな奴と話し合う人はいないだろう。考えるまでもなく、窮地を打破する策を私から授けられるのだから、彼らの思考はそこで止まるのだ。

 

 あの結末を導いたのは私なのに、どうして彼らに怒りを覚えるのか。己の矮小な器が、彼らのように優しくない自分が、全部が情けなくてバカみたいで。

 終わったことにいつまでも拘泥して、引きずって、嫌になって。

 

「う、うぅ〜〜〜〜」

「えっ!!?」

 

 そこから先はあっという間だった。

 ぼろ! と一度あふれた涙が、とめどなく両目から勢いよく流れてくる。止めよう、泣き止もうと思うのに、そう思うほど視界がぼやけ、濁流のように涙がこぼれ落ちてきた。

 

「うわ〜〜〜ん」

 

 顔中をくしゃくしゃにして赤子のようにわんわん泣いた。

 なんせようやく気づいたのである。影山くんのことしか考えていなかったと。

 

 

 

 日向翔陽、15歳。彼は今途方に暮れていた。目の前の美少女が突然わっ! と泣き出したからである。

 

「え〜〜〜ん」

 

 しかもめちゃくちゃ子どもみたいに号泣してるから、日向はどうすればいいのかわからなかった。

 桃井に対して大人っぽいなーという印象を持っていたから、こんなふうに……妹みたいにギャン泣きされると、場違いにも「桃井さんって本当におれと同い年なんだ……」という実感がわく。

 

「桃井さん! な、泣かないで! えーとえーと、お、おれ! 桃井さんに元気づけられたからさ! お返ししたいって思ってたんだけど!」

 

 ワタワタしたところで桃井は泣いたままだった。こんな時何を言えばいいんだ!? 日向は焦り、数少ない桃井との記憶を引っ張り出して、考えた。

 桃井さんは、そう、おれのプレーに期待してくれた。だったら言うべきことは。

 

「おれ! おれ、飛ぶよ!」

 

 桃色の頭がピクンと動いて反応を示した。

 

「あ! それにスパイク打ちたいし! レシーブぐずぐずだったから練習したい! それからそれから、えと小さな巨人がいた烏野に進学して、エースになって活躍して!」

 

 泣き声がどんどん小さくなっていく。日向はわけもわからないまま自分の気持ちを音にのせる。とにかく泣き止んで笑って欲しいの一心だった。

 

「そんでいつかは、金メダルたくさん取って、取って、取りまくって〜〜、うんと、それからは……!」

「……日向くんは、烏野に進学するの?」

 

 ついに泣き声以外の声がした。日向が激しくコクコク頷く。

 とりあえず背中を押してベンチに座らせて、返したハンカチを握らせることには成功したが、桃井は相変わらず泣きじゃくっている。大分落ち着いたとはいえ、平静に戻るには暫くかかりそうだ。

 

「だ、大丈夫?」

「ぐすっ……ゔん。ひっく、………」

 

 大丈夫ではなさそうだ。ベンチに連れて行った時に背中に添えた手を、さするように動かす。妹の泣き止ませ方はプロ級の日向でも、同い年の他校の女の子の泣き止ませ方まではわからない。

 

「日向くん」

「は、ハイ」

「影山くんも、金田一くんも国見くんも、全員ぶっ飛ばしてね。私が許す」

「ぶ、ぶっ飛ば? よくわかんないけど、わかった??」

「それで、私のことも、いつか……」

 

 負かしてね。なんて言えるはずがないけれど。

 やがて落ち着きを取り戻した桃井は、どうすれば日向から先程のギャン泣きの記憶を消せるだろうか真剣に考え、無意味なことだと気づいてやめた。

 

「ごめんね、日向くん。泣いちゃって」

「アッ、ううん、や、それはいいん、だけど……もう平気?」

「うん。……忘れてね、さっきのこと」

「ダイジョーブだよ! おれも桃井さんに、泣いてるとこ見られたし……お揃いだ」

 

 にしし。と笑顔を浮かべる日向に、桃井もようやく安堵の息をついた。裏表のない彼の前だから、気が緩んだのだろう。緩みすぎて涙腺までおかしくなったようだが。

 でもまあ、すっきりした。恥をかいた分、得たものも大きい。

 

「烏野高校の小さな巨人」

「!」

「私も名前だけなら知ってるよ。全国大会……春高で活躍した選手ってことぐらいしかわからないけど」

「! そう! そんなんだよ! おれ、小学生の時テレビで偶然見てさー! そっからずっとバレーボールがやりたかったんだ!」

 

 小さな巨人を知っている。それが日向には本当に嬉しかった。友人にどれだけ説明しても「ふーんあっそう」なんて適当に流されるだけだったから、うんうんと優しく頷いてくれる桃井があまりに心強く見えた。

 

「彼が日向くんにとっての憧れなんだね」

「うん! 小さな巨人ってすげーんだ! でかい奴らばっかのコートん中で、バンバン点を取ってたんだ。いつか、おれもあんな風に……!」

「日向くんも、いつかそうなれるよ」

 

 勢いのまま立ち上がって捲し立てる日向を、宝物を発見したようなキラキラした眼差しで見つめる。

 

「私が言うんだもん。絶対に、君は世界をひっくり返すような選手になるんだろうね」

 

 その先を見られたらいいなぁと桃井は漠然と思う。そして、そこへ思考が至っている自分にゾッとした。

 何故なら、日向に直接的に貢献したいという気持ちがなかったからである。それはマネージャーとして情報を分析して力になりたいという、今まで当然にあった想いが、揺れていることに他ならなかった。

 

 影山を支えると誓ったことに、揺らぎが生じている、のだろうか。

 否、その誓いに嘘はない。桃井のバレーボールの根幹にあるそれは、時が経つほど、影山が成長するほど、強くなっていった。

 ただそこに付随するように、目を見張る選手の行く先を見守りたいという欲求が生まれたのも確かだ。

 

「桃井さんは! マネージャー続けるんでしょ!?」

「え、っと」

 

 迷っているのはそこである。

 

「すげぇよなー! マネージャーいるってだけで強豪っぽいもんなー!」

 

 いや北川第一は県内でも屈指の強豪だから、ぽいとかじゃないんだけど。

 そんなふうに横道に逸れても、本心に見ないふりをすることはできなさった。

 

「いいのかな、マネージャー続けても」

「? なんで??」

「チームに迷惑をかけてしまったから。彼らの成長を妨げてしまって……足を引っ張った私に、できることなんて何もないじゃないかって」

 

 私がいることでチームバランスが崩れるのなら、支えたいと誓った彼に終わりを強制するくらいなら、やめてしまった方がいいんじゃないか。

 こんな自分にバレーを続ける資格なんてあるのだろうか。

 

 スカートの裾をぎゅっと掴んだ桃井は、視線を落とした。ベンチに座ったままだったので、視界には自分の膝小僧と、目の前に立った日向のつま先が見える。

 

「バレーが嫌いなの?」

「嫌いじゃないっ」

 

 口をついて飛び出た言葉に、桃井は大きく目を開き、日向はにっこり笑った。

 

「じゃあやろう! バレーボール!」

「うん。……うん!」

「じゃ、桃井さん、付き合って!」

「えっ? あっハイ」

 

 

 

 

「一回、はぁ……、一回すとっぷ!!」

 

 これ、影山くんより、多分、いや絶対、体力あるんじゃないの!? 半ばキレながら桃井は荒く息を吐いた。

 バレーボールを持って来ていた日向に誘われるまま体を動かしてみたら、体力の限界まで「トスあげて!」と催促されたのである。

 

「う、けど、もっとスパイク打ちたい!」

「おばか、私、もう、暫く動けない……!」

「じゃああと一本、あと一本だけ!」

「それ何回目!? お願いだから休ませて、10分休憩したら、またトス上げてあげるから……!」

 

 ベンチに倒れるように崩れ落ちた桃井は、呼吸を整えながら昔の記憶を思い出した。

 小学生の頃、影山にせがまれてスパイクを打っていた思い出だ。あれもあれでしんどかったが、今の比ではない。

 

「ふぅ、だんだん落ち着いて来た。……日向くん、何か、体力づくりしてる?」

「えっ? ううん、特別なことはしてないと思うけど。雪ヶ丘中学までチャリンコで一山越えて行くくらい?」

「なるほどね……ん、地理で行ったら烏野高校も一山越えた先じゃない?」

「うんそう!!」

 

 疲れ知らずの満点の笑みで言われて、桃井は気が遠くなる。夕暮れに染まった公園で、烏がカアと鳴いた。

 

 日向にせがまれてトスを上げただけでも、彼の素質は十分見ることができた。この前の試合で精神面ばかり注目していたので、今度はプレーに焦点を当てて観察していた。その結果は上々である。

 経験値不足と技術の稚拙さを補う、運動神経と底なしの体力。体格は同世代と比べて劣っているも、スピードやバネはずば抜けて優れている。

 全国の選手を見て来た桃井でも舌を巻くステータスだ。まあそれ以外壊滅的だけれど。

 

「ていうか、日向くんじゃなくて日向でいーよ!」

「じゃあ、翔陽くんじゃだめ?」

「いいよ! おれもさつきって呼んでいい?」

「うん。翔陽くんがそうしたいなら」

 

 不思議と日向にグイグイ迫られても悪い気はしなかった。邪気が全くないからだろう。だから安心して受け入れることができる。

 自販機で飲み物を買う桃井を横目に見て、日向はムズムズした気持ちを抑えられずにいた。

 

 友人にどれだけトスを上げるよう頼んでも、大抵は断られてきた。そしていざ付き合ってくれても、暫くしたら「もう終わり!」と切り上げられてしまったのだ。

 けれど桃井は根気強く日向の頼みをきいてくれた。今も練習を終わりにするのではなく、休憩を挟むことで次を設けてくれている。

 

「さつき、そろそろ再開? 再開だよなっ!」

「まだ5分しか経ってないんだけど……暗くなってきたし、これが最後だからね」

 

 そこからは互いに夢中でボールを追いかけた。

 この時ばかりは、桃井は頭の中を空っぽにして日向の練習に付き合った。ずっと情報分析に時間を割いていたために体力が衰えており、考える余裕が生まれなかっただけだが。

 

 それでも桃井はようやく、まっさらな気持ちでバレーに向き合うことができた。

 

「くぅ〜〜〜! やっぱスパイク楽しいな!!」

「楽しいね、バレーボール……!」

 

 天真爛漫な笑顔がこぼれる。

 はやる鼓動が、額を伝う汗が、疲労でぐったり重たい体が、何もかもが懐かしくて、今はどうしても心地が良い。

 その日、桃井は久しぶりにぐっすり眠った。




たくさんのキャラクターに光をもたらした圧倒的光属性の主人公・日向に影響を受けて欲しかったので、こうなりました。
日向は原作で「やりたくない奴にやろうぜって言っても仕方ない」と言っているように、今回も桃井が迷っているのを理解して、本心ではバレーを諦めたくないのをわかっているので、こうして引っ張り上げたんです。


原作に合わせた過去編を描こうと計画中です。特に影山の過去に合わせて小学時代を描き直したいです。また桃井の性格や、本編更新時に明かされていなかった原作展開(例えば佐久早のプレースタイルなど)も修正していこうと考えています。
まあいつになるかわかりませんが。
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