桃井さつきinハイキュー!!   作:睡眠人間

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ここから先は20話以上が番外編になります。カプ要素ありIF要素ありの番外編章です。興味ない方は目次に戻り、高校編から読んでください。


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こんな話を書いている場合ではないことは重々承知ですし早く本編を見たいと思われているでしょうが出来上がったのはこれでした……。

原作を知っていない方には不親切な内容です。原作のこのシーンにこの桃井がいたらどうなるか、という想像からできていますので、本編の内容ガン無視です。

IFですからね。影←桃です。ほんのり暗め。

なんやかんやが起きていい方向に進んだり進んでなかったりします。リハビリにしたってアレな出来ですがもったいなかったので置いときます。


IFと番外編
IF桃井さつきin烏野高校


 私の名前は桃井さつき。この春烏野高校の一年生になったばかりのしがない女子高校生である。烏野に入学するまでに色々なことがあったけれど割愛させていただく。思い出しても面倒な記憶しかないからね。しょうがないしょうがない。

 

 で、もちろん男子バレー部のマネージャーになったわけだけど、入学初日に出鼻をくじかれたのは流石の私も予測していなかった。

 

「それで……本当に、体育館、出禁になったの……?」

「ああ」

 

 ぶすっと顔をしかめた飛雄ちゃんは忌々しげに牛乳を飲み干すと片手で紙パックを潰す。グシャグシャになったそれは彼の苛立ちを如実に表していたが、私も心中穏やかではない。

 

「飛雄ちゃんは何をしたわけ。何をしたらそんなことになるわけ」

「俺はっ! ……なんも、してねえ」

「いや心当たりありますって顔してるし」

 

 さして柔らかくもない頬に指を伸ばしてつんつんすると、私はニヤリと笑う。

 

「どうせ日向くんと一悶着あったんでしょ。何か勝負でもした?」

「なんでわかったんだよ」

「わかるのはそれだけなの」

 

 詳しく聞いてみると、案の定勝負をしていたらしい。飛雄ちゃんがサーブ、日向くんがレシーブでボールをとれるかどうか。勝敗は当然飛雄ちゃんの圧勝。そりゃそうだ。素人同然の日向くんが敵うはずがない。

 

「そんで、アイツが受けきれなかったボールが教頭んとこいって、ヅラ飛んだ」

「んっふっっっ」

「で、飛んだヅラがキャプテンの頭に落ちた」

「んっふふふっっ」

 

 いけないいけない。こんな夜に笑ったらご近所迷惑になるから抑えようとしたけど失敗した。あ、飛雄ちゃんが気持ち悪そうな顔してる。半分君のせいだからね。

 

「さつきのほうは? お前体育館来んの遅かったじゃねぇか」

「体育館いなかったのによく知ってるね?」

「窓から覗いてた」

「外から見たら変質者だなぁ」

 

 うるせえボゲ、と視線を逸らされた。

 

「澤村先輩には先に断っておいて、顧問の武田先生とお話してたの」

「話?」

 

 頷いて数時間前の記憶を思い起こす。

 

 自分で言っちゃあなんだが、私は中学バレー界ではそこそこの有名人である。北川第一を全国まで導いたとか美しすぎるマネージャーとかふざけた紹介もあったけれど、特集を組まれたこともあるくらいだ。

 中3のときなんか道行くバレー部男子に「あっ桃井さつきだ! 目を合わせるな! 分析されるぞ!!」とか逃げられたりもした。失礼すぎる。そもそも目が合う前から分析は完了している。

 

 そんな私が「バレー部の部活動のことで相談があるのですが」と言えば、今年顧問になりたてのバレー初心者、武田先生はきょとんと目を丸くした。

 

「そ。烏野って環境が悪いから。指導者もいなければ練習試合の相手すら満足に探せない。復帰したっていう烏養監督もまた体調を崩されたそうよ」

「マジか……」

「つまり今の烏野は強くなれる手段がほぼない」

 

 そんなことを直接的に説明していけば、武田先生はうるうるしてた。泣いてた。僕がんばるねえええ!! と涙を滝のように流しながら膝から崩れ落ちたから大変で。私こそ職員室出禁になるかと思った。

 

「だから私や飛雄ちゃんの名前使ってできることないかなって提案してきたの。明日もその話をするから部活参加は遅れると思う。……ああ、飛雄ちゃんは体育館入れないか」

「ぐっ……」

 

 入学初日。部活動の帰り道。青白い光に照らされた静かな夜道を二人で歩く。頭一つ分高いところにある飛雄ちゃんの顔は相変わらずカッコよくて、目つきが悪い。

 

 普段は今頃その日の部活での反省点改善点を話し合うのだけど、部活できなかった今日は違う。話す内容もなくなった今、言葉もなく歩く。

 ふと並んで歩いていることを意識する。昔はさっさと前に進んでいたのに、今は女の子に合わせることを覚えたのか。誰に教わったんだろう。……私だった。歩くの速いってよく文句言ってた。

 

「……お前は、よかったのか」

「え?」

 

 飛雄ちゃんはゆっくり息を吸うと、恐る恐るといったふうに口を開く。

 

「お前推薦で白鳥沢受かってたじゃねぇか。そのくせ……」

「ああ、それ。そりゃショックだったよ。あんなに頑張って勉強したのに落ちちゃうし」

 

 気を遣って言ってなかったが、あっちから話題にするとは。余程気にしていたようだ。今も顔を曇らせている。……ここまで傷心の飛雄ちゃんも珍しい。

 

 私と飛雄ちゃんは私立白鳥沢学園高等部の入試を受けた。私が推薦、飛雄ちゃんは一般で。私はともかく飛雄ちゃんは学力が心配で勉強を手取り足取り教えてあげたのだが、結果は惨敗。彼は烏野を受けることになった。

 担任からも白鳥沢を強く勧められたが私は辞退し、同じく一般で烏野に合格して今に至る。親は好きにしていいと言ってくれたし、なんならニコニコされた。

 

 ちなみに青葉城西は候補にハナから存在しなかった。飛雄ちゃんの倒したいセッターさんがいるし。あとはまあ、ね。

 

「白鳥沢行ってりゃ、すげえ整った設備と環境で、思いっきりバレーできてた」

「あとすっごい選手もいるしね。……会いたくないなぁ。監督にもエースにも。……いずれ会うんだろうなぁ」

 

 白鳥沢はたしかに魅力的だった。私だけ行くことも考えた。だけど……。

 

「あのね、飛雄ちゃん。君に申し訳ないからとかそんな理由で辞退してないから」

「知ってる」

「じゃあなんで悩むの?」

「それしか知らねえ」

 

 む、生意気な。私は不満げに見上げると、飛雄ちゃんは心なしか楽しそうに見下ろしてきた。

 

「だから、教えろ。なんで烏野に来たのか」

「……飛雄ちゃんは、烏養監督が戻ってくるから、だったよね」

「ああ。つってももう意味ねえけど」

 

 頭を乱暴に掻くと、先に進む。……この子は本当に知らないんだろうか。まさか、そんな。……ありえるな。

 

 中学、いや小学校の頃から含めてなんで私が飛雄ちゃんと同じ道を往くことを選んだのか。もっといい選択肢があることを知っていて、こっちにと掴まれた腕を払いのけて、悪意に晒されようと、この答えを最適解に当て込んだ理由も、わからないのか。

 

 ……ああ、報われない。誰も彼も。でも、そんな君だからこそ、私は。

 

「………私が烏野に来たのは」

 

 その時、どんな顔で告白したかわからない。

 飛雄ちゃんは瞳を見開いて、そしてあの日のように目を細めて笑った。ただただ、嬉しそうに。

 

 

 

 

「お疲れ様、桃井さん」

「はい。お疲れ様でした。清水先輩」

 

 初雪のように白い肌。手入れの行き届いた黒髪は風になびいてはさらさらと流れる。涼やかな目元を縁取る長い睫毛と口元の黒子が艶やかで、つい見惚れてしまう。

 

 清水潔子。烏野バレー部のマネージャー。私の先輩。すごく嬉しい。だってさ、中学でも女の先輩いなかったんだよ。及川先輩とのあれこれで牽制されることはよくあったけど。

 

 清廉な美貌を持つ清水先輩と別れてある場所を目指す。後ろの方で田中先輩と西谷先輩の叫び声(恐らく挨拶)がしたので、振り返ってまた頭を下げた。

 

 目指すは校庭の一角。そこで飛雄ちゃんと日向くんがレシーブ練をしてるらしい。あ、あそこだけ明るいから目立つな。……他にも人影が……二人? あの人たちは……って。

 

「何やってるの飛雄ちゃん!」

 

 飛雄ちゃんがいきなり月島くんの胸倉を掴んだのだ。慌てて駆け寄れば物凄い形相の飛雄ちゃんが手を離した。月島くんの嘲った笑みは変わらない。

 

「ね、ねえ日向くん、一体何が」

「えっああああえええあっと、えっと」

「……山口くん?」

「はっはい! 影山がツッキーにガン飛ばしてました!」

「それは見たらわかるから。何があったの?」

 

 笑顔で日向くんを見れば顔を赤くしたり青くしたりして使い物にならない。山口くんはヒエッと震えた声で告げるも、そんなことは聞きたいことではなかった。仕方ない。

 

「月島くん。飛雄ちゃんに何を言ったの? それなりのこと言ったんだよね」

 

 こてんと小首を傾げると冷たい声で尋ねる。すると月島くんもニッコリ笑って答えてくれる。

 

「ああごめんね! 県予選の試合気にしてたの知らなかったんだよ。だってあんな自己チューなトス、普通誰でも我慢できないからさ。庶民のこと、なんにも考えずにトス上げてたのかと思っちゃって。さすがコート上の王様って呼ばれるだけあるよね。君は優秀なアナライザーらしいし、王様にこき使われたんじゃないの? かつてのチームメイトみたいに」

 

 飛雄ちゃんが拳を握ったのが視界の隅に映った。ああ、だめよ、怪我しちゃう。同級生を殴ったとあらば部活入部拒否どころでは済まなくなる。

 

 少しの間だけ肩を震わせたあと、私は月島くんを見上げた。それはもう華のある美しい微笑を湛えて。

 

「思い出した。月島くんって雨丸中学校出身よね。山口くんも」

「……そうだけど」

「月島くんってお兄さんいるよね。名前はたしか、月島明光さん」

 

 今度こそ彼の表情が歪んだ。その反応を求めていた。こちらも攻撃する手段があると示しておかないといつまでも騒がれて面倒だからね。

 

「私、全部知ってるよ。気をつけてね。ツッキー」

 

 なんなら語尾にハートがつく声色で言ってやった。効果覿面だったようで、月島くんは背中を向ける。その際の嫌悪感を前面に押し出した表情は忘れられそうにない。

 

「行くよ、山口」

「あ、うん……」

 

 背の高い二人が、去っていく。その光景に既視感を覚えた私は口の中で言葉を転がす。

 

 なんにもしらないくせに。

 

「お、おい……あの感じ悪いやつ追い払ったぞ……。あの美女おっかねーな……美女なのに。なあ?」

「あ?」

「お前も顔コエーよ! 俺の味方いねえのかよおおお!」

 

 日向くんの嘆く声が夜の校庭に響く。まだ振り返れる精神状態ではなくて深呼吸をしていると、トントンと頭を軽く叩かれた。

 

「……なに」

「別に」

「………はぁー、今反省中なの。またやっちゃった」

 

 俯くと、頭に置かれたままの手のひらがぎこちなく動く。これは……撫でられている? 誰に? 飛雄ちゃんに?? え?

 

「今度は大丈夫だ」

「………うん」

 

 なんか、落ち着いてきた、かも。というか、ジワジワと恥ずかしくなってきた。いや嬉しいけど、なんか、だめだこれは。

 髪の毛がぐちゃぐちゃになってきて顔が隠れているけれど。

 

「お前、静かだ……な?」

 

 真っ赤に染まった耳は丸見えだろうから。

 それでも撫でられるのはまあ、嫌いじゃないので、そのままにしておく。

 飛雄ちゃんは私の異変に気づいたようだが不思議そうな顔をして、ポンポンと仕上げに背中を押した。

 

「帰んぞ」

「……ん。…………あ、さようなら、日向くん」

「お、おお」

 

 校門から出た頃、日向くんが自転車を爆速で漕ぎながら追い抜いていった。その際、「りあじゅうばくはつしろおおぉぉ」とか聞こえたが、気のせいだろう。……気のせいである。

 

 




翌日の3対3で初変人速攻やって「飛雄ちゃん好き!!」ってなるやつ。


予想以上の反応をもらえてとても嬉しいです。感想の返信は次話投稿した時にさせてもらいます。

最近試合描写に悩んでおりまして、ほのぼの(?)するヤツ書きたい! となったのがこの話の起点でした。
そしてちまちまメモしてた高校編を公開してもいいかなと思っています。(中学編の結末は作者にもわかりませんから笑)

なのでアンケート取ります! 中学編を第一に更新していきますが、ちょこちょこIFを番外編で入れられたらいいな……! ただしばらくは更新自体無理そうですが……! これからもこの作品をよろしくお願いします。

活動報告にてネタ募集しています。よろしくお願いします。
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