えっ……ええーーーーーー!!!?
いるもなにも、桃井がそうなんじゃ……。
もしかして浮気か???
そんなわけないだろ!! 影山だぞ!?
じゃあ付き合ってないのにそういう関係に……? やだ影山ってば不潔!!
だから違うはずだって!! ………多分!!
一気に場が混乱に陥る中、桃井はズイと影山に迫った。瞳に光を宿しておらず真顔のままだ。
「いつから。誰。烏野高校の生徒さん?」
「はあ!? 知らねーよ! 誰とも付き合ってねーし日向がわけわかんねーこと言ったんだろうが!!」
「日向くん。どういうことか説明してくれる?」
「ざけんな日向ボゲェ!!!」
ニコニコ優美な笑みを浮かべて尋ねる桃井と目尻を吊り上げて怒鳴る影山。温度差が極端に違う二人に詰め寄られ、日向はヒィィ……! と怯えてながらもなんとか伝える。
「だ、だって山口がそうだって……!」
「お前か山口」
「山口くん??」
「ヒギャッ! ち、違います違います!! 俺じゃないです、助けてツッキー!!」
「僕に振らないで」
「ごめんツッギイイィィィ!!!」
まさに孤立無援。涙目になってアワアワする山口を救ったのは二年生だった。
「ごめん、ちょっといい? お二人は付き合って」
「「ません」」
「シンクロした!?」
「なら、桃井さんが影山にお弁当を届けたのは……?」
「普通に親切心というか……お弁当持っていってなかったから、作ってあげようかと。それにお弁当じゃなくても、おにぎりとかの軽食なら中学時代に毎日作ってましたし……」
「なんでそこまで!?」
「それは……」
「俺たち幼馴染なんです」
「は!!??」
影山があの桃井さつきと幼馴染!!?
衝撃が彼らの身体中を駆け抜ける。
「影山、幼馴染いたのかよ……衝撃的すぎるだろ……」
「ちなみに姉もいますよ彼」
「は!!?? お前姉ちゃんいんのか!?」
「あ、はい。年結構離れてますけど」
「美羽ちゃん実家出たもんね」
女っ気の微塵もない影山に突如降って湧いた二人の女性との繋がりに、場がさらに騒然となる。会いたかったなぁ、と悲しそうに言う桃井が幼馴染であることが、影山の弁当を作るストレートな理由になっていることはわかった。しかし、しかしである。
「さっきの紛らわしすぎる会話は何だったんだよ!?」
「返答次第じゃタダじゃ済まねえかんなァ……!」
田中と西谷に脅されるように訊かれた影山が不思議そうな顔をした。
「さっきの……?」
「誤魔化そうとすんじゃねぇ!! すげぇ声とか我慢がどうとか、そこらへんの会話だよ!!」
「何って……昨日見た、インターハイの動画見た時のコイツの反応っす」
「いんたー……」
「はい……?」
いんたーはい、とは??
いんたーはいいんたーはい………えっインターハイ?? ようやく意味を持った言葉として脳に伝達された二人に、桃井が説明を加える。影山に一発肘打ちを食らわせたあとのことだ。
「影山くんも似たような反応をしてましたよ。私だけじゃないです。私だけじゃ。……私たちが見たのはインターハイだけじゃなくて、Vリーグとか世界選手権大会とかの試合映像です。一日中見て、時間も足らなかったので夜中まで起きてずっと見てました。それでも、私が準備してきた分のほんのちょっとしか見れなかったんですけどね」
5ヶ月ぶりだったのですごく楽しみにしてて、自分の持てる力全て使って動画集めちゃいました〜と照れ臭そうに頰を掻く。恐らく自分たちが到底手に入ることのできない情報も入手したのだろう。だから影山も夢中になった。
「そ、それで影山が寝坊したのはわかったけど………! けどよぉ……!!」
口ぶりからして、二人は一日中家で試合を見ていたはずだ。昼……もしかしたら朝っぱらから、それこそ自己管理に厳しい影山が寝坊するほど、夜遅くまで。
こんなスタイルのいい美女と同じ空間に丸一日いて、何も起きないはずがない……! そう信じてやまなかった。もし自分が潔子さんと二人っきりでいてみろ、きっと1分と保たないだろう。間違いなく潔子さんは出て行く。
それに「激しい動き、すげー声、我慢できなかった」……そんなワードから連想されるものなんて一つしかない。健全な男子高校生たるもの、健全にただ試合を見るだけで終わるなんて、そんなの不健全だ!!
しかし、しかしである(二回目)。こんなことを直球に聞いたら桃井に絶対零度の視線を浴びせられることになる。あ、それはいいかもしれない。でもダメだ! 潔子さんと谷っちゃんが接近している。こういう話題で盛り上がっているとバレたら軽蔑されるだろう。あ、それもいいかもしれない。だけど……。
「影山ァ……ちょっと表出ろ……」
「うっす……?」
結果、影山は怖い顔をした田中と西谷に外に連行されていった。その様子を、「お願いだから変なこと漏らさないでよ……」と念を送る桃井。ちなみにこういった場合において桃井の願いが叶えられたことは一度たりともない。
「えぇ……じゃあマジで昨日はずっと試合観戦をしてた、と……」
「はい、ずっと」
「……他には、何も?」
「他がどういった行動を指すのかはわかりませんが、基本ずっと見てましたね」
それが何か? 小首を傾ける桃井に、マジなのか……と残りのメンバーが顔を見合わせる。
「あっ、でも」
「え、なになに!?」
「途中、ウズウズした影山くんがどうしてもトスを上げたくなったみたいで、それに付き合って……。スパイク打つのなんて数年ぶりで、実は筋肉痛が……」
「激しい動きってそれ!? っつーかスパイク打つ場所なんてどこに……」
「コートみたいなのが近所の公園にあるんですよ。すごくボロボロですけど」
あ、だからリビングに上着とタオルが放ってあったわけだ。勢いで出かけて勢いで帰ってきてって感じだったし。と朝の光景を頭の中でリプレイする桃井はひっそりと決意する。あんなに走らされ跳ばされ、その上騒ぎ疲れてリビングの床で二人とも寝落ちしたなんて、言わないでおこう。それにしても影山くんは大して影響なさそうだったのに……やっぱり運動してないからかなぁ。ちょっと習慣を変えてみるべきか。
桃井が考えを巡らせている間にも烏野バレー部員たちの思考は止まらない。
二人は付き合っていないし、そういう関係でもない。幼馴染で元チームメイトという間柄。とはいえあの影山が気を遣うだろうか。女の扱いに慣れるどころか興味すらなさそうなら影山が……? どうにも引っかかる。先程の「疲れてるだろ」という発言の理由が解明されても、影山の態度に違和感が拭えない。
というか試合観戦してただけでこんな勘違いが生まれるものか。あれか、桃井は菅原みたいなタイプか。常識人だと思ったら実はかなりの変人なのか。そもそも「激しい動き」は解決しても、「すげー声」とか「あそこまで言っておいて」とかは未解決のままだ。
聞きたい。聞きたいけど深く切り込めない……! ここぞという時に活躍する田中と西谷は影山を尋問中だし……かといって影山からそんな繊細な情報が引き出せるとも思えない……!
ぐぬぬ……と尻込みする彼らを他所に、桃井は近づいてきた二つの人影に目を輝かせた。軽やかなステップを踏むようにして距離を縮めると、満面の笑みを浮かべる。
「あの! はじめまして、桃井さつきです。烏野のマネさんですよね? お会いできて嬉しいです!」
「え、ええ、はじめまして。私は清水潔子。それで……」
勢いに押された清水が自己紹介をすると、清水の背中に隠れるようにしている谷地に視線がスライドする。桃井と清水、タイプの違う美女二人の視線を浴びて、谷地は生まれたての小鹿のように足を震えさせた。
「あばばばばば……! や、ややややち、ひひひひひとかでありますっ!!」
「ややちさん?」
「谷地仁花ちゃん。あなたと同じ一年生」
「そうなんだ…! よろしくね、仁花ちゃん!」
初めて出会う同学年のマネージャーに嬉しくなった桃井がニコパッと光のオーラで微笑むと、谷地は眩しそうに腕で顔面をガードする。
「う、うう、私なんかがこんなところにいていいわけが……!」
「私なんかがって言わないで。仁花ちゃんに会えて、私とっても嬉しいから! もちろん清水さんにも……。あの、潔子さんとお呼びしてもいいですか?」
「うん、好きに呼んで。……私もそうしていいかな」
「はい!」
清水にとっても仲良くしてくれる友人が増えるのは嬉しいことで、ふふっと美しく口元に弧を描いた。至近距離で二人の美女の笑顔を浴びてしまい、谷地は成仏してしまうのでは!? と真剣に悩んだ。
完全に先ほどの話題が消えてしまい、それでも女子たちがキャッキャッうふふな会話を楽しめているようでよかったな〜と満足する男たち。そんな中、その空気に突進する猛者がいた。
「ねぇねぇ、さっきの試合の動画って何のやつ!? 俺すげー気になる!!」
会話が一段落ついたところで切り込むその素早さは、これまで何度も烏野を救ってきたものだった。日向は誰かが躊躇するところを迷いなく攻める。
「うーん、一言では言えないかな。気になるなら貸そうか? どうせ影山くんにあげちゃうし」
「あげちゃうの!?」
「うん。私はもう全部見て試合内容覚えてるから」
「へー! すっげー!!」
自分の奇声と奇行は覚えているくせに、試合を見た発言と影山の反応は覚えていない。どうせなら自分のことだけ忘れてしまいたかったが……。まあ試合関連の分析データは残っているから大丈夫か。
さらっととんでもない発言をした桃井と、それをする〜っと流してしまう日向がワイワイ盛り上がっていく。その様子を外野で見ていた彼らは、やっぱり桃井さんも立派なバレー馬鹿の一人だった……と認識を改めた。
「で、実際のとこどうなんだよ」
「何がっすか」
「だぁーから桃井さんとその……なぁ??」
影山の肩に腕を回し、コソッと尋ねても本人はクエスチョンマークを頭に浮かべたままだ。ここまで言われても気づかないのか……と田中が衝撃を受ける間に、西谷は影山の真正面に立った。
「桃井さんとセックスしたのか?」
「してないです」
西谷が腕組みをしてズバッ! と言い放った質問に、影山がこれまたズバッ!!と勢い良く答える。恥じらいも思慮もかなぐり捨てられたこの場において、どちらかと言うと常識人よりの田中を置き去りにするように、ハイスピードで質疑応答が成された。
「じゃあすげぇ声ってなんだ、喘ぎ声のほかにあるのかよ」
「たしか深夜の頃だと思いますけど、スパイクが決まった瞬間とかスーパーレシーブを見た瞬間に、さつきが叫んだんです。すげー! とかおわー! とかふぅー!! とか、なんかすげぇ声で」
「へ、へぇ……」
桃井さんって綺麗な顔してテンション上がると結構ブレるタイプだったんだな……菅原さんタイプかぁと田中は納得する。
ちなみに公衆の面前では滅多なことがない限り、桃井が羽目を外すことはない。今の自分を見てるのは影山だけだという安心感が昨夜の奇声を引き起こしたのだということに、男三人は気づかなかった。
「じゃ、あそこまで言われてってのは? 桃井さんが何か言ったのか?」
「何を言われてお前は我慢できなくなったんだ?」
「それは……」
影山が視線を落とす。昨夜の記憶を思い出しているのだろう、僅かに眉根を寄せて瞳を伏せると、片方の口角がくいっと吊り上がる。己よりも先をいく存在を見ているときの、負けないと追いかける挑戦者の顔。悔しそうで、だけどそれ以上のナニカを腹に抱えた表情に、田中と西谷は瞠目した。
「あいつ、コートがよく見えるんです。俺が気づかないことをペラペラ喋って、次ここに打ってくるとか試合展開とか言って、それが全部当たるんです」
「……すげぇ」
「それ聞いてるうちに……こう、ウズウズしてきて、さつきを引っ張ってバレーしました」
「バレーかよ! 健全で大変よろしいですけどね!?」
セッターは攻撃を指示する司令塔としての役割を持つ。コートや選手の状況把握や相手ブロッカーと思考の読み合いに優れてナンボのポジションである。
そんなセッターというポジションに誇りを持ち、素晴らしい才覚と弛まぬ努力で突き進む影山にも見えていないものを、桃井は当然のように見えていた。彼女の解説を聞いた翌日、影山のプレーに変化が訪れたとて不思議ではない。そんな力を桃井は持っている。
「ははーん、なるほど。"お前にわかるんだから俺にもわかるに決まってんだろボゲェ!!"ってことだな?」
「いや、違います」
「なら"プロはこんなことまで考えてプレーしてんのか……こうしちゃいられねぇ、練習だ!!"ってわけだな?」
「……多分? ……あー、なんか違う気もします」
首を捻る影山に、もうこれ以上は何聞いても無駄だろうなと肩を落とす。影山が何もかも言語化できるわけがないのだ。
何はともあれ田中と西谷が危惧していたことは何一つ起きていなかった。その事実だけで今日は安眠できるだろう。よかったよかった。桃井さんは誰のものでもないんだな!!
「それにしても、影山がそこまで言う桃井さんの解説、一度でいいから聞いてみたいよなー! にわかには信じがたい……」
「龍、気持ちはわかるが本当だぞ。あの人ならできる」
「おお、ノヤッさんのお墨付き……あー! さらに気になるぜ!!」
そう言って体育館内に戻る田中と西谷。影山はゆっくりと歩を進めながら、昨日の記憶を振り返っていた。
小さい頃からバレーボールが好きだった影山は、試合観戦をするのが大好きだった。大画面のテレビで見るのも好きだけど、生の試合を見に行くのはもっと好きだった。
でも歳を重ねるにつれて一緒にバレーを見てくれる人が、三人から、二人になって、そして一人になった。その最後の一人である桃井も中学卒業と同時に離れてしまい、影山は広いリビングで、独りバレーを見ていた。数ヶ月もすれば慣れていた。
かつては背中を追いかけていた姉も、優しく見守ってくれた祖父も、同じ熱量を共有できた幼馴染もいなくなって、しかしそれは仕方のないことだと言い聞かせた。
『ほら見てよ! このDVDの山!! すごく頑張って集めたの、海外のやつも入ってるし国内リーグだって……あっそれはロメロ選手の初試合の映像で、こっちは……』
『今12番の選手の動き、明らかに相手セッターを誘うものだったね。釣られなかった相手セッターも凄いけど……あんな動きできるものなのね……勉強になる……プロって一体……』
『私が打つの? 正気?? ほかに人呼べばいいじゃん……いないのチームメイトにそういう人。日向くんいるでしょ? なんで呼ばないの? 呼べないの? ………アッごめん、愚問だったね』
『えっそこから打つの!? わっ、決まっ、あっ、リベロッ、リベロ拾った!! うおーー!!! 流れるように一本とった!!! すごー!!! 何回見てもここ鳥肌立つわ……!』
『ね、影山くん、バレーって面白いね!』
それなのに、あいつは。さつきはそういうのぶち壊して来やがった。何の陰りもない笑顔で言われて、忘れていた渇きが蘇ってくる。手放さなくてもいいという安堵を感じたら、欲が出る。次が欲しくなる。
中学に上がってから、さつきはなんとなく変わったなと認識していた。でも根っこの部分は変わってなくて、昔のあいつのまんまで、安心した。なぜだかわからないけど、ほっとした。
「あっ、影山ー! 今日お前ん家行ってもいいか?」
「………は?」
もうそろそろ昼休憩も終わる。体育館内に入ろうとする影山と、出ようとする桃井。次会うとしたらいつだろうかとぼんやり思っていたら、相棒の声がその思考を断ち切る。
「さっき、どうせなら試合観戦をみんなでしないかって話に落ち着いてさ」
「今なら桃井さんの解説付きだって知ったら行くしかねーだろ!?」
「俺らも見てみたくて」
「まあ、影山がいいならって感じなんだけど……」
「お家の方にもご迷惑がかからなければ……」
どうだ? と先輩からも期待の目をされて、影山は目を白黒させた。だって、そんなことは初めて言われたのだ。中学時代にも「お前らそこまでバレー好きなのかよ」と言われたことはあれど、「じゃあ俺も参加していい?」などと言われたことがない。
「………あ、その」
思わず口籠る影山に助け舟を出したのは桃井だ。
「ご両親ならきっと喜ぶと思うよ。なんなら泊まっていきなさいとまで言い出しそう」
「………お、おう」
「ご飯とかお菓子とかジュースとかなら私とご両親が準備するし。流石に今日の影山家に私が泊まるわけにはいかないけど、夕方くらいまでは解説のためにいれると思う」
「……おう」
「まだ見れてない試合はたくさんある。せっかくの夏休みなんだから、こういう日があったっていいんじゃない?」
あとは影山くん次第だよ。
優しい笑顔を浮かべてそう言った桃井にフワフワと温かな気持ちが湧き上がってくる。ポンと優しく背中を押され、影山はどうにか言葉にした。
「えと、多分、大丈夫だと思います」
「マジ!? よっしゃあああ!!」
「なんだかんだ初めてだなー、こういうの」
「俺ワクワクしてきちゃった! ね、ツッキー!」
「なんで僕まで……」
喜ぶ彼らを影山は驚きの表情で見ていた。その光景を愛おしそうに見ていた桃井が、じゃあまたあとでと体育館を出る。
その際にマネージャー二人に手を振って仲良くなれたことを喜び、顧問と監督とすれ違った瞬間には綺麗な微笑みで挨拶をし、素知らぬ顔で帰っていった。
「こんにちは」
「あ、こんにちは?」
「おーっす……………ん? んん!? ちょっ、アンタは!」
武田はあんな生徒うちの学校にいたっけ? と疑問を持ち、烏養は正体に気づくも時すでに遅し、桃井の姿は小さくなっていく。
よかった。本当によかった。
影山くんがチームメイトと仲良くやれていて、本当に安心した。
中学を卒業してから不安でたまらなかった。軽く調べて彼が好調なのは知っていたし、滅多にしないメールの内容も不穏じゃなかったから、大丈夫だとは思っていたけど。でも、やっぱり心配で仕方なかった。
ああ、よかった。仲間想いのいい人たちばかりのチームで。
私たちがああなることはなかったけれど、烏野で彼らに出会えたのは、影山くんにこれまでにない素晴らしい経験と学びをもたらすだろう。
だから、これでよかった。
ようやく仲直りができてよかった。
幸せだった。夢みたいだった。もう満足だ。思い残すことは何もない。昨日から今朝まで彼を独り占めできたんだから、それでいい。
好きな人に喜んでもらえた。
夢中になってもらえた。
それだけで私は報われる。
視界が滲んできて、あふれそうになるのを腕で拭った。
数時間後、練習を終えた彼らは各々の家に帰ると影山の家に集合した。
「おおー! 決まったー!!」
「あ、そのオヤツとってくれ」
「影山の家って広いなー」
「ああああっ、惜しい!! ちょっ、もう一回リプレイしてくれ」
「何勝手にリモコン操作してんだ! だったらさっきのスーパーレシーブも見せてくれよ」
「おい、田中の飲みもんに変なの入れてやろうぜ」
「影山ー、これ食べていいの?」
「お前ら、あんまり騒がしくするんじゃない!」
「うるさくてテレビの音聞こえないし……」
「勝ったああぁ!! おっしゃ!!」
「今のプレー痺れる……すごい……」
いくら家が広くても、男子高校生たちが集まれば狭いに決まっている。ガヤガヤ騒がしく、リビングもどんどん散らかっていく。
昨日みたいだけど、昨日と全く違う。
独りになって、相棒ができて、仲間ができて。もうこれ以上はないと思っていたのにさらに更新されていく。どこまで望んでいいのだろう。どこまで叶えられるだろう。
ただそこにあるのは、孤独だった影山が手に入れたかった光景だった。どこか夢見心地で、果たしてこれは現実なのだろうかという気さえしてくる。
そのくらい仲間という存在が眩しかった。
「影山くん、これ持ってって。………影山くん?」
「…………ありがとう」
「え?」
軽食をのせた皿を手にしたままきょとんとする幼馴染に、影山は少しだけ口元を綻ばせて笑った。
この話はとあるリクエストを元に書きました。全然展開も内容も違いますが、そこから妄想を膨らませてしまいました……。リクエストをくださった方、本当にありがとうございます。
まあこれ番外編なんで本編と一切関係がないんですけどね。