「本当に俺の未来が見えなかったの?」
「わっ」
突然天童にそう言われて、桃井はビクッとした。
今は部員たちのストレッチや後片付けが一段落し、帰りのバスを待つ自由時間だ。
背中から覗き込むように天童が桃井に絡んだので、周りは少しだけぎょっとする。というのも、白鳥沢の部員はあれだけ桃井と会うのを心待ちにしていたのに、試合でボコボコにされたから話しかけるのを躊躇したからだ。
負けて悔しいとか、ダサくね俺とか、そういうのじゃなかった。
ひたすらに弱点を突かれたので、もしかして俺って桃井に嫌われてるのかなと思ったからだった。
桃井が立てた作戦はそれだけ性格が悪く容赦がない。彼女の先輩のセッターの男の顔がチラつくくらいだったのである。
中学時代に試合してから大会で会う時は明るく会話したのに。去年白鳥沢に見学に来た時は面倒だって見たのに。めっちゃ短い時間だったけど。
超バレー馬鹿の牛島は、桃井に最も警戒されていることを誇らしく思っていたが、常人メンタルの彼らにはそんなふうに思えなかった。
だからちょっぴり距離を空けていたが、天童が桃井に普通に話しかけたので「あ話しかけてオッケーなんだ」と部員同士で顔を見合わせる。
「俺、モモイちゃんと読み合い勝負するの楽しみだったんだけどなー?」
目を覗き込む仕草をする天童に桃井は苦笑いをする。未来だなんて言い方が大袈裟に思えた。
「天童さんの動きに合わせた指示はなかった。それが全てです」
「見えなかったとは言わないんだ〜」
これは分析できてたけど俺を止める方にリソース割かない方が吉と判断した顔だな、と天童は正しく理解した。
気になることを解消できてスッキリしたので、ひとまず桃井で遊ぶことにする。
「ジャンケン!」
「え、えっ?」
「ジャンケンポンっ、あいこでしょっ」
「ちょっとっ」
「あいこでしょっ、あいこでしょっ、バキバキに〜っ、心折るっ♪」
「今変な掛け声挟まりましたよね!?」
突然ジャンケンを挑まれた桃井は困惑した。しかしその手に迷いはない。次々に出される天童のジャンケンに反応している。
直感の鬼と予測の鬼はジャンケンがとても強かった。相手の目線、心理、そういうものを読み取るのに長けているので、勝負にならないのである。
天童が話しかけたならと、大平や瀬見ら他の部員たちも二人に寄った。
「ずっとあいこか」
「何やってんだよあの二人」
「皆さん」
「あ、終わった」
「ハイ俺の勝ち〜〜」
結局白鳥沢の部員に囲まれたことに気が逸れた桃井は負けた。力のないパーの形のままきょとんとしている。
「一体何だったんですか?」
「読み合い勝負」
天童はピースを掲げてニンマリ笑った。どうやら満足したようだ。
「なあ桃井、俺のプレーについて聞いてもいいか?」
「はい、もちろんです」
「散々狙われたけどやっぱオーバーが苦手でさぁ」
天童がサクッと離れたおかげで、彼女と話すタイミングを掴めた白鳥沢の部員たちは列を成した。東北ならいざ知らず、今や桃井は関西の地に行ってしまった。こういう機会でないと捕まらないのである。自分のプレーをあそこまで緻密に分析してくれる存在なんて。
桃井が先輩たちと話をしているので五色はその列に並んでいた。一年前の見学会で桃井に「応援してる」と言われたので、今日はどうだったか聞きたかったのだ。しかし。
「お、工〜〜! いいところに」
天童に捕まった。首に腕を回されて逃げられない五色は、大人しく先輩の話を聞く羽目になる。列は強制的に離脱させられた。
「モモイちゃんモテモテだねェ。まああんだけの予測ができりゃ当然か」
「て、天童さんだってできるじゃないですか、ゲスブロック……」
言いかけて、五色はウッと眉間にシワを寄せる。天童が妖怪じみた顔でこちらを見ていた。
「俺のとあの子のとは別モンだよ。あの子の分析の恐ろしいところはね、数字だけじゃないってこと」
そして稲荷崎のミーティングで桃井が解説したように、天童も桃井の予測について語り始めた。
通常、分析というのはスパイカーが何本中何本決めたのか、決定率や得意なコースは何なのかというものを、数字として打ち出すことだ。絶対的な事実に基づくので客観的かつ誰にだって再現できる。
ローテーションごとにどういう攻撃パターンを採用するか、このアタッカーはどのコースに打つ傾向があるか、そういうのをひたすら遡るのである。強豪校ならどこもやってるし、当然白鳥沢にもその程度のデータはある。
「でもモモイちゃんはそこに直感をプラスしてる。超個人的な感覚! 匙加減なんて外野からしたらわかんないものなのに、正解を引き当てる強さ。まさしく才能とセンスだよね」
桃井のデータは数字の時点で正確無比であり、クオリティは他の追随を許さない。それだけでも価値があるのに、誰にも真似できない勘が加わることでオンリーワンとなった。
例えるなら孤爪の正確な分析力、及川の鋭い洞察力、天童の独特な直感が組み合わさったようなものである。この例えが天童らに当然伝わることはないが。
「モモイちゃんてやっぱすっごくクレイジー!」
この人にだけは言われたくないだろうな……と思って、ともかく五色はあまりの厄介さに口を閉ざした。
すると列に加わっていなかった白布と川西が聞き耳を立てていたようで、しれっと会話に参加してきた。
「あの性格の悪さは及川を彷彿とさせますね」
「そりゃあ北川第一出身だし、影響受けてんじゃね」
川西が白布に言ったところで、場がザワッと沸いた。なんだなんだと四人が列の先頭を見れば、なんと桃井と牛島が対面していた。
さっきは気づかなかったがどうやら牛島は律儀に列に並んでいたらしく、ついに彼の番が来たというわけだ。正確には、牛島を前に行かせたくて「先行っていいよ」と後ろに並び直した部員が大勢いたのだ。
流石に牛島が並ぶのは予想外で、というか囲まれてしまって身動きの取れない桃井は恐縮した。
「すみません、牛島さん。私の方から伺うべきだったのに」
「何故白鳥沢を選ばなかった」
「ッ、……」
牛島は試合前にしたのと同じ質問をした。結局わからなかったからだ。
挑戦できる環境も、素晴らしい才能のセッターである宮侑も、足らないと思った。それくらい桃井にとって影山の存在が大きいと確信していた。
だったら自分の方が、選ぶ理由になるはずだと。
「………」
桃井は困り果てた顔で周りを見ていたが、これ以上躱すことは不可能と判断。やがて観念したように息を吐いて牛島のジャージの袖を引っ張る。あまり大きな声で話したくないから、耳打ちするのでしゃがんで欲しいという意図である。
牛島が屈み、その精悍な顔に桃井は接近した。耳に手を当てて何事か囁く。
「…………お前は」
「内緒ですから」
唇に指を当てて内緒の仕草をすると、牛島はゆっくりまばたきをして屈むのをやめた。その様子を見て、瀬見は牛島が納得する理由だったんだなと気になった。
別に東北だって関東だって強豪校は沢山ある。どうしてこんな遠い関西へ、と新幹線を使ってやってきた瀬見は考える。
「あーーーーッ接触禁止接触禁止!」
「離れろウシワカッ」
やがて事態に気付いた双子が息を切らして人だかりに割り込んだ。桃井を背中に隠すように庇うと二人で牛島を威嚇する。
「話したいなら北さんの許可を得てから来てくださいッ」
「試合も勝ったのは俺らです! お引き取りくださいッ」
「用は済んだ」
ふざけ半分でそんなことを叫べば、牛島はあっさり引き下がった。聞きたいことが聞けたのでそれ以上に用はないとばかりに。
主将が引けば周りの部員たちもなんとなくそれに着いていく。
それに後ろ髪引かれる思いなのは桃井の方だった。
「牛島さん!」
思わずといったふうに声を上げる。
「次戦う時は今まで通り、折れるまで叩き潰します」
好戦的な笑みを携えて不遜な発言をする桃井に、双子はビックリした顔で彼女を見つめた。彼女が使うには物騒なワードだったのである。
「何や今日の桃井は珍しいな」
「試合中もでしたよ。ジャンプしたり高速で拍手したりしてました。テンション高かったっスね」
「え、じゃ、ジャンプ……?」
「なんか、すげー楽しそうでした」
理石にそんなことを明かされて、銀島はふぅんと桃井を盗み見た。稲荷崎の面々にはあまり見せない表情を、白鳥沢相手には見せるんだと思った。
牛島は耳慣れた挑発に振り返る。
「その言い草、及川によく似ている」
「それは……あの人に分析の基礎を叩き込まれたので」
オイカワ? オイカワって誰だ。知らない名前。稲荷崎の部員たちは不可解な顔でザワザワしている。白鳥沢の男たちが一様に「あ〜……アイツかぁ」みたいな顔をしているのがやけに腹立たしい。
自分たちの知らない桃井の一面がポロポロと明らかになっていく。
「なあ、白布、白布くん」
「あ?」
唯一心当たりがある侑は白布の名を呼んだ。今までふざけてシラスとしか言わなかったくせに。
「オイカワって、北川第一の及川?」
「だから何だよ」
「それって桃井の先輩?」
「うるせーな」
白布は侑のことが嫌いなのでそれ以上取り合わなかった。牛島が移動したのでそれに着いて行くという感じで双子を置いていく。
「牛島」
「む」
「桃井」
「はいっ」
よく通る二つの名前を呼ぶ声が聞こえた。牛島を北が、桃井を鷲匠が呼んだのだ。桃井はちらりと不安そうに牛島を見たが、ペコリと頭を下げて返事をした鷲匠の元へと走っていく。
牛島を先頭にした白鳥沢の集団へ、北を中心とする稲荷崎の人だかりが近づいた。
牛島と北が対峙する。双方、同時に手を出した。グッと力を込めて握手をする。
強かった。お互いに。崩れない芯の強さを牛島と北は互いに感じ取っていた。シンパシーに似た感覚。
「桃井の分析を当たり前と思わないことだ」
牛島が突然言ったので、稲荷崎の選手たちは何様なん?? と反発した。
「マウントかぁ? 俺は知ってるアピかぁ?」
「桃井は稲荷崎のモンやぞ!」
「選ばれんかった人がなんや言いよる笑」
言いたい放題である。彼らの中では桃井が稲荷崎を選んだ=官軍であり、選ばれなかった白鳥沢=賊軍であった。よって正義は我らにありと、好きなように煽り散らかしていた。本人いないしバレへんやろの精神である。
桃井が稲荷崎へ進学した理由は、彼らにとっては然程重要ではなかった。進学したんだから別にいいやんという具合で。
それにたまに侑と「俺がいるからやんな?」「違います」なんてやりとりをするので、まあそんな感じなのかなとぼんやり思う程度だ。
だが牛島の本意は別のところにあった。
中学時代の初戦から、つまり桃井の分析のスタートラインから知っている牛島は、今日の彼女の作戦には何か違う意図を感じていたのである。
そもそも話に聞く限り、桃井の分析は頼めばポンと出てくるものではない。
緻密に繊細に積み重ねた努力の上に成り立つそれは、軽々しく扱っていいものではない。牛島は桃井の分析を高く評価し、誠実に向き合いたいと考えている。
故に彼女が無理をしているのではないかと考えた。
よって先程の発言を正確に読み解くならば。
『桃井の分析(はとても時間がかかり中学時代の策とは何か違う。彼女はとても無理をしている。それ)を当たり前だと思うな(きちんとケアをしてあげてください)』
という意味であった。しかし彼の言葉選びは常人と少し違うので、牛島の友達でもなんでもない稲荷崎の選手には、直球ストレートで伝わったのであった。
牛島も流石にあ、今の伝わっていないなとわかったので補足を試みる。
「桃井が中学三年だった時の県予選の決勝。俺は奴に怒りを覚えた」
「!」
「結果は北川第一の優勝。白鳥沢を押し除け大会三連勝。華々しい功績だ。……が、内情は違う」
稲荷崎の男たちに緊張が走る。気付かされたのだ。そういえば桃井が宮城にいた頃の話を彼女の口から聞いたことがないと。
双子の、特に侑は心当たりがあった。桃井は影山とかなり仲が良さそうだったのに、全くその話をしない。避けているみたいな不自然さ。桃井が稲荷崎に来てからの日々に、違和感が浮かび上がる。
『随分ピリピリしとんなぁ。飛雄ちゃん関連か……?』
高校生になった途端、桃井に隙はなくなっていた。稲荷崎で時を過ごすうち、だんだん柔らかくなってはいたが……今日の白鳥沢への態度の砕け方は別格だった。
昔の彼女はもっと……。
「桃井は負けず嫌いだ」
「!」
「気が強く、よく笑い、面倒そうな顔をする」
侑が初めて桃井と会話をしたのはもう三年前のことになる。その時の桃井もそんな印象だった。とにかく負けん気が強く、したたかな性格で、プライドが高い。自分と似ているとも感じたのだ。
牛島の言う通りだ。
「………今の桃井は大分、おりこうさんよな」
難しい顔をした侑がそんなことを呟く。
試合に勝ったのに実は負けていた、みたいな空気が流れていた。
その頃、男たちが自分の話を熱心にしているとは知らない桃井は、
「それで、五色くん! 一年前の見学会よりもずっと洗練されたストレート、本当にかっこよかったです! 特に牛島さんを徹底マークしていたうちの守備が五色くんのスパイクにやられた瞬間、震えました。あの場面で牛島さんではなく五色くんを選んだ白布さんの判断力も、あの緊張感の中で失敗しない五色くんのメンタルも、どちらも素晴らしいですね! "個"を崩さないでチームを作る、そのバランスの中で最大限に優れた選手を選ぶ鷲匠監督の感覚の鋭さは流石です!」
熱心に選手の話をしていた。笑顔で拳を握り、まくしたてるような勢いで鷲匠に語っている。興奮で顔が少し赤かった。
鷲匠は最初は「ケッ、勝ったチームは余裕だな」と思ったが、次第に「フーンよく見てるな」と感心し、しまいには「話が長い」とうんざりした。桃井の勢いが凄くて口を挟む隙がないのである。
それを遠いところで見ている稲荷崎の黒須監督とコーチは、桃井にあんなに打ち解けられているのを少し羨ましく思った。じいちゃん先生って女子高生に慕われることが多いから、それかなぁと考えていた。鷲匠先生をただのじいちゃん先生と言い切るには少々苛烈だが。
「もういい、もういい」
「えっ、まだちょっとしか言ってないです」
「充分だわ。そういうのは男共に言え」
鷲匠は鬱陶しそうだ。既にほとんど用事は終えたからである。
桃井を呼びつけた鷲匠は、まず白鳥沢の選手らのFBをしていた。今日出場した選手の動きについて話し合い、今後伸ばす点や引き締めたいポイントを調整した。
呼ばれた当初、桃井は少しビクビクしていたが、求められているものを理解すると、遠慮なく意見を出した。そのほとんどが鷲匠の考えと一致し、しかも彼が見落としていた視点まで触れていた。
やはり彼女を獲得できなかったのは大損害だなと思う。
「あ、あの。こんなことお願いするのは、私をスカウトしてくださった鷲匠監督に失礼かもしれませんが」
「なんだ」
「私の分析、フィードバックしていただけませんか!」
そして今度は桃井の分析を講評した。監督らと同じ目線で選手を指導する立場の桃井だが、選手らと同じように挑戦する立場でもある。他校の監督に指導される機会は彼女にとっても大変貴重で、鷲匠の指摘をフンフン頷いて必死にメモを取っていた。
「あとはそうだな、中学ん時と比べて、指示が荒っぽくなったな」
「荒っぽい、ですか」
「過保護じゃなくなったと言うべきか。前なら窮地に立たされた時点で助け舟を出したはず。なのに今回は何もしなかった。……おかげで厄介な速攻が生まれたわけだが。指導方法でも変えたのか?」
双子速攻が生まれるシーンでは、桃井は何の指示も下さなかった。以前なら間違いなくタイムアウトや選手交代を選ぶタイミングだったのに。
そのような感じで、全体的な指示も北川第一時代と比較して不干渉気味だった。ここまで弱点や指示は出すからあとは自由にしてね、みたいな感じだった。
「それは……たぶん、稲荷崎だからですね。ある程度の情報さえあれば、あとは選手たちが自由に動いて得点できる土台があるんです」
答えながら桃井は「やっぱりこの人の見る目はすごい」と感心する。白鳥沢を春高に連れていく猛将は伊達ではない。
ともかく良かった。鷲匠に呼ばれた時は心臓が冷えたが、用事はFBであり世間話ではない。彼に白鳥沢ではなく稲荷崎を選んだ理由を詰められたら、桃井は全てを白状していただろうから。あんまり気にしていなかったのかも。
ホッと胸を撫で下ろす。
「それで、ウチを選ばなかった理由は」
「!」
気にしてないわけがなかった。桃井はバツが悪そうに鷲匠を見る。メディア用の回答が口から自動的に滑り落ちた。
「強くて個性的なチームが好きだからです。白鳥沢ももちろん牛島さんをはじめとして素晴らしい選手ばかりで……」
「御託はいい」
「本心なのに……」
拗ねたような表情になってから、桃井は一息吸って真面目な眼差しを向ける。
とても言いづらい内容だけれど、この人には誤魔化しも効かない。何より誠実に対応したかった。お礼として試合で全力を出したように、聞かれたことには素直に答えたい。
先程牛島に話したのもあって、口が少しだけ軽くなっていた。
「稲荷崎のチームとして全国優勝を目指しているのは事実です。懸命に努力する彼らを支えたい、共に勝ちたいと思うのも。本心から、そう願っています」
「ああ」
「………。その中で、最も重要なのは、セッター」
「! 宮侑か」
桃井が固い声で話し出したので、鷲匠は食いついた。
「はい。侑選手の素質と技術はこの世代で全国No.1でしょう。セッターとしての誇りと双子の治選手の存在が、彼をもっと先へと導く。二刀流サーブも素晴らしい。両方がハイレベルな選手なんて中々いませんから。……それに」
「それに?」
「バレーボールに捧げる"愛"が、私とよく似ていると思って」
気になることがあると解消しなければ気が済まない。上手くやれそうな時は感覚を掴むまでとことんやる。負けず嫌いでは収まらない上達への執着心。
バレーボールという競技への向き合い方が常人離れしている。
桃井は侑のそういう部分が気に入って、稲荷崎を選んだのだと鷲匠監督は思った。
しかし、話はそこで終わらない。
「私、影山飛雄の隣にいたいんです」
全く違うことを言い始めた。
桃井はゆっくりと微笑む。一見、花も恥じらうような可憐な笑みだったが、鷲匠にはどこか不気味に映った。あまりに完璧で、まるで機械のような微笑みだったからだ。
「影山飛雄には強くなって、自由にバレーボールをしてほしい。だから強い敵が必要なんです。できれば同じポジションのセッターで、競い合うような、そんな敵が」
「………」
「それに私も強くならなくちゃ。彼の隣に立てた時、中学で迷惑をかけた分、今まで以上に支えたい。セッターへの理解をもっと深めていきたい。それには宮侑が最適だった」
「……つまり、お前は」
桃色の瞳がギラついている。
鷲匠は急に喉がカラカラになり、ゴホンと咳払いしてから低い声で言った。ゾ、と鳥肌が立つ。
「宮侑を影山飛雄に捧げようとしているのか?」
高校No.1セッターと呼ばれる日も近い選手を、あの自己中心的な王様に。
未だ芽を出していない可能性に全てを賭け、捧げるつもりなのだと。
それはなんというか……とても贅沢な発想だ、と鷲匠はまず思った。桃井の計画の途方もなさは、無邪気な子どもが描いた夢物語のようだった。
「はい。その通りです。当然、チームは強ければ強いほど良いから、稲荷崎にはもっともっと高い壁になってもらいます。どんなチームも蹂躙できるくらい、圧倒的に、絶対的に」
あまりに長かったので切ります。あと一話あります。
稲荷崎ラスボスルート開拓やったね!
桃井の二つ名どうする問題(影山が"コート上の王様"なので対比でいるかなと考え中です。せっかく高校編に入ったし)
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いる
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いらない
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どっちでもいい