「そっちはどうだ、シレーネ」
「はい、準備できました」
洗面所の戸を開けて、出てきたシレーネは、いつもの見慣れて私服とは違い。受験に受かった武偵校の臙脂色を基調とした制服を着用していた。
「いや~、シレーネの制服姿か。身に染みるものがあるな」
教授の命令とはいえ、マフィアを潰して助け出したシレーネが立派に成長した姿というのは、読み書きや一般常識を教えてきた身としては、感じる部分が多々ある。
出会った当初とは違い、成長したシレーネは綺麗になった。
髪の長さこそ当時と変わっていないが、バランスの取れた食事。趣味の楽器や歌を自由に歌い奏でている。最近では、シレーネと同じように、俺が戦場や裏のゴタゴタで拾ってきた部下の一人に化粧が習ったらしいが、けばい化粧はしない。分かりやすいおしゃれと言えば、音符の形をしたヘアピンを顔の左側の髪を留めているぐらいだ。まあ、俗に言う、ジト目は相変わらずだが。
「そいうのはいいので、早く行きましょう。バスが行ってしまいます」
そう言って、扉を開けて先に行ってしまったシレーネ。
…照れたな。
無事にバスに乗り込み。人生初の入学式を終えて、一年間生活するクラス1-Aに移動する。教室の扉を開けると、一斉に俺に視線が集まった。特に俺が受けた
「よお、キンジ。久しぶりだな」
「ああ、ラウか。久しぶり」
空席だった席に腰を下ろし、隣に座っていたキンジに声を掛け。シレーネは空いていた後ろの席に座った。
キンジと他愛もない話で続けていると、いかにも優男という風貌のイケメンスマイルの人物が現れた。
「初めまして、僕は
キンジが俺は…、と自己紹介をしようとした時、不知火がそれを遮って、俺とキンジの名前を言い当てた。
「なんで、俺とラウの話を知っているんだ?」
キンジが不知火に聞き返すと、当たり前じゃないか、と言いたげに、
「入試でランクSを取った二人が、有名にならないわけがないじゃないか。今じゃ、学校中で噂だよ」
隣の席に頭を抱えているキンジだが、それもそうだろう。監督官を倒すような高校生は一般の武偵に当てはまるわけがない。
「諦めろよ、キンジ。というか既に後の祭りだ!」
ガタン!と大きな音を立てて扉を開けて教室に入ってきた女子生徒が一人。
「呼ばれてないけど飛び出して!ジャジャジャジャーン!りっこで~~す!」
……凄まじい登場をした。
彼女の名前は峰・理子・リュパン四世。フランスの大怪盗アリュセーヌ・リュパンの曾孫だ。『イ・ウー』での同期に当たり、ナイフと銃の使い方を教えた弟子にあたる。
150未満の身長に、金髪のツーサイドアップ。教室の男子陣の目が釘付けになっているのは、その登場姿だけではなく、その背丈に似合わない。たわわに実った胸にだろう。いわゆるロリ巨乳というやつだ。
「あ!シレレーン!」
俺の後ろに座るシレーネと理子の目があると、獲物を見つけたとばかりにシレーネの元へ高速で移動して抱き着いた。
「久しぶりだねシレレーン。前より可愛くなったけど、胸も大きくなったね。」
「ひゃ~!理子さん離してください!胸なら自分のを揉んでくださいよ!私の胸はラウさんだけのものです!」
「シレレーンはやっぱり、ラウラウにゾッコンだね。ペロ」
「ひゃう!」
理子に胸やらお腹やらを揉まれ、弱点である耳をペロリと舐められてシレーネは、普段出すことのない甘い声を上げてしまった。
諺に女三人寄れば姦しい、という言葉があるが、この場合はバカと美少女が居ればイヤらしい、となるようだ。
二人の百合な行動に思春期真っ盛りな男子たちは興奮を隠せないようだが、シレーネの「私の胸はラウさんだけのものです!」のセリフは一瞬にして俺へと非リア充のヘイトを集める事となった。
そろそろ助けてやるか。
シレーネの腕を引っ張り、理子の胸の中から助け出すついでに受け止めつつも抱きしめる。
「理子。シレーネは俺の
偶然にも、シレーネの胸に俺の手が当たる態勢になってしまったが、問題ない。なにせ、今までに幾度となく触っている。
「ふぅ~!ラウラウ大体だね!」
こうして、俺が非リア充からのヘイトを集め、シレーネは俺の女としてクラスに位置づけられた
@@@
一日目の学校が終わり。武偵校に所属した俺の部下たちを招集した。
「あひゃひゃひゃ!アタシの勝っちだ!」
手札をぶっちゃけてたシャウ・テル。金髪にボサボサの髪質のベリショートが特徴でウィリアム・テルの子孫で狙撃銃の名手。戦場で出会い助けて以来、部下として付き従ってくれている。
その隣では、黒髪のショートに149と理子並みの低身長。
「む~、また私の負けか」
口に咥えてポッキーをポリポリと食べ進めるエルフリーデ・グランデルト。
コイツに関しては軍人の名門の出だが、低身長を理由に正当な評価が受けられなかったことで軍人であることを捨て、途方に暮れているところを拾った。
「二位は俺様だな」
自分を様つけで呼んでいるのが石川
「自分も上がりッスね」
特徴的な語尾に黒いストールを首に巻き、黒髪に小さく作ったサイドポニーテル。望月 千羅。望月千代女の子孫でリアルくノ一だ。
千羅は、元は山奥にある忍者の里に暮らしていたが、試験で幼馴染の親友に裏切られ大怪我を負い。俺が仕事終わりに血を川で洗い流していた時に、桃太郎の桃の如く流れてきた。それからは、前の名前も捨てて俺に忠義を誓ってくれている。
「キシシシシ!エルはポーカーフェイスが下手なんだよ」
頭から生えた一本のアホ毛が目印の彼女は、鳥羽 鶉。
元は昔の日本で諜報活動をしていた家だったが、彼女が依頼された仕事を完遂したのはいいが、その依頼が上司にバレ、自分の立場が危うくなると彼女をスケープゴートにした。家も両親も巻き込まれることを危惧して彼女を切り捨て、後ろ盾を失った彼女は本来なら殺されるはずだったが、上司と知り合いだった俺に鶉を殺害が依頼されたが、鶉から話を聞いたら口違いが出てきたので、再調査させたら出るわ出るわ汚職の数々。結局、鶉の依頼者は海の底へコンクリに詰められて。鶉は、裏切った家にも帰る気にはなれずに、俺の部下になった。
「シレーネさんは心音で嘘か本当かわかるんで、ゲームに強制的に非参加ッスけどね」
「別にいいです。その分、ラウさんにくっつけるのです」
俺の膝に頭を乗せているシレーネの頭を撫でながら全員を見る。
「他のメンバーは、武偵校に入学する奴もいるが、入らない奴もいるからな。日本内の仕事は基本、このメンバーで動くことになるぞ」
俺の部下は、大半が家やら自分の出生に問題を抱えている。それは俺自身もだ。それでも生きていかなくてはならない。
世界に平等はなく。正義も悪も関係ない。
なにせ、生きることに夢中な奴は、正義だ、悪だと考える余裕がないからだ。
俺たちはただ”生きる”。誰にも邪魔されずに自由に、思うがままに。