ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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最後までグレンとは別行動に書いているから、難しい……


104話

「さて、グレン。今回の事の発端から説明しよう……」

 

 件の地下室にて、ジャティスは大仰に手を広げ、そう前置きした。

 

「まず、何から話そうか…そうだね、グレン。天の智慧研究会に二つの派閥があることを、君はご存じかい?」

 

「ああ、知っている」

 

 仕方なくジャティスの話に付き合ってやることにするグレン。

 

 なにせ、『Project:Flame of megido』――そんなものが、このフェジテで動いている以上、正確な情報共有は必要だ。

 

「理由は一切不明だが、今、天の智慧研究会は、ルミアに対する方針で二つの派閥に分かれ、対立している。『現状維持派』は、なぜかルミアから手を引き、『急進派』は未だルミアの『殺害』を狙っている…そうだな?」

 

「その通り…だが、最近、その状況が動いた」

 

「状況が動いた?」

 

「そうだ。君もご存じだろう?『急進派』はルミアを『殺害』するため、これまでかなり積極的に動いてきた……」

 

 グレンは、魔術競技祭や社交舞踏会の一件を思い出す。

 

「だが、動きすぎたんだ。『急進派』の中核を担っていた『魔の右手』のザイードが捕縛され、『急進派』の情報が相当、政府と連邦側に割れた。政府はこれ幸いと、嬉々として帝国内に潜伏していた『急進派』の取り締まりを開始したんだよ…まぁ、大掃除さ」

 

「そういや、ここんとこ、フェジテと帝国各地を行ったり来たりで、アルベルト達が忙しそうにしてたな」

 

「それだけじゃない。連邦はこの情報を知るや、本土から五千名を数える軍を帝国に送り込んで、徹底的に潰し回っている。ここ、フェジテにも五百名ぐらいの連邦軍が展開されているんだ」

 

「じゃあ、あの時の銃撃は連邦軍が『急進派』を掃討するために起こったってことか……」

 

「それに、元々、『現状維持派』は『急進派』を疎ましく思っていた。この機会に『現状維持派』も、様々な手段で『急進派』の粛清に転じた…直接的な粛清、政府側への情報の横流し…まぁ、色々とね」

 

「…………」

 

「そして、この僕も、目障りな『急進派』を、今までずっと帝国内を回って探し出し、片端から殺しまくっていた…まったく、ルミアを殺すだなんてとんでもない…ルミアが死んだら、絶対正義たるこの僕が『禁忌教典』を掴めないじゃないか……」

 

「……『禁忌教典』?……どういうことだ?」

 

「まぁ、とにかく、様々な要因が重なって、『急進派』は窮地に追い込まれたと…そういうわけなのさ…理解できたかな?」

 

 グレンの質問を完全無視して話を進めるジャティス。

 

「ちっ……」

 

 その人を食ったような表情を見る限り、ジャティスはルミアと『禁忌教典』の関係性をここで明かすつもりはさらさらないらしい。…諦めるしか他にない。

 

「正直、『急進派』はもう、虫の息だ…放っておいても確実に滅ぶ…そこまで弱体化しているんだ。だが…それでも、彼らは、ルミアを殺害したいんだ…それが『大導師』のためだと、本気で、心から、信じている……」

 

 ――大導師。

 

 天の智慧研究会の頂点に立つ、未だ謎に包まれた指導者。

 

 組織の構成員からは、派閥問わず絶対的な忠誠を集めるカリスマだ。

 

 帝国でいうなら、まるで女王陛下のような存在だといっても過言ではないだろう。

 

「さぁ、グレン。君ならどうする?君が『急進派』だとして…もう、自分達は滅ぶ他に道がない…でも、敬愛する人のため、どうしてもルミアを殺したい…さぁ、どうする?追い詰められて捨て鉢になった連中は、一体、どんな手段を思いつく?」

 

 そう言いながら、ジャティスが踵で、こんこんと足元の法陣を小突く。

 

 グレンは…ジャティスの足元に描かれた魔術法陣を見やる。

 

 『Project:Flame of megido』――【メギドの火】と呼ばれる魔術を起動するための、一連の儀式魔術手順――その一部。

 

「まさか…?いや、そんな……」

 

 ふと思いついた、あまりにもバカげた発想に、グレンは全身から冷や汗を流した。

 

「嘘…だろ…それは…あまりにも……ッ!」

 

「【メギドの火】――正式名称、錬金【連鎖分裂核熱式】――原子崩壊の際に生じる質量欠損が莫大な破壊エネルギーを生み出し、全てを滅ぼす禁断の錬金術だ。戦略級と称されるA級軍用攻性呪文なんて比じゃない…まさにS級と称しても過言ではない、大破壊を振りまく、災厄の術式さ。起動すればフェジテなんて一瞬で焦土と化すだろう」

 

「…………ッ!?」

 

「まったく、未完成で研究が凍結された代物だったはずなのに、どこから技術提供を受けたんだろうね…?まさか、連中が【メギドの火】なんて持ち出してくるなんて…くっくっくっ…その出所は余程、邪悪な組織に違いない……」

 

「出所はどうでもいいっ!つまり『急進派』の連中は――ルミアを殺すため、このフェジテを丸ごと吹き飛ばすってことなのかよッッッ!?究極の自爆テロでッ!?」

 

 そんなグレンの指摘に、ジャティスは薄ら寒く笑いながら、それでも、その眼には怨念にも似た昏い憤怒を燃え上がらせ、言った。

 

「当然――そんなことは、この正義の代行者たる僕が許さない」

 

 そして、更に説明を続ける。

 

「グレン、『Project:Flame of megido』について、説明しよう。現在の【メギドの火】の起動には、潤沢なマナが流れる霊脈と、『マナ活性供給式』と『核熱点火式』に二種類の魔術式が必要だ」

 

「潤沢なマナが流れる霊絡を有する霊地…つまり、フェジテか?」

 

「その通り。そして『マナ活性供給式』とは、土地の霊脈の霊点に直接接続させ、その霊脈に流れる外界マナを臨界点まで励起活性化…土地に張り巡っている霊脈を通して、その『臨界励起マナ』を『核熱点火式』へと送る術式だ」

 

「つまり…そいつだな」

 

 グレンが、ジャティスの足元の魔術法陣に目をやる。

 

「ああ…この『マナ活性供給式』は、中央区、西区、そしてここ南区の三か所に敷設され、すでに全開稼働していた。僕はルミアの『感応増幅者』を使い、その三か所の『マナ活性供給式』を解呪して回った…グレン、君が敵の目を引付けているうちにね」

 

「ちっ……」

 

 悔しげに、憎々しげに舌打ちするグレン。忌々しいにもほどがある。

 

 ルミアを攫うことで、連鎖的にグレンをこの舞台へと引きずり出し、敵の目をグレンへと集中させる。その間に、自分は悠々と事をなす――攫ったルミアの力を使って。

 

 ジャティス=ロウファン。さすがは、かつてたった一人で帝国政府に喧嘩を売って、グレンに倒されるまで、ほぼ完全勝利寸前の大立ち回りを演じた怪物である。

 

(この悪魔染みた計略を支えているのは…やはり、やつの謎の固有魔術か……)

 

 ジャティスが得意とする『ほぼ予知に近い行動予測』、一体、その正体は何なのか?

 

(それに…『この国は滅びるべき』などと言っていた男が、なぜ今になって、こんなフェジテを救うなんて善人面を…?どうも腑に落ちねえ……)

 

 訝しむグレンを他所に、ジャティスは話を続ける。

 

「さて、僕は連中の計画を掴み、それを防ぐため、連邦軍と手を組んで必死に立ち回ったんだけど…何せ初動が遅れてね。三か所の『マナ活性供給式』は解呪したんだが、もうすでにかなりの量の『臨界励起マナ』が、霊脈を通して『核熱点火式』へと供給されてしまったんだ…このままでは、やはり【メギドの火】の起動は…フェジテの滅びは避けられない…尽力はしたんだがね」

 

「ふん…本来なら、帝国宮廷魔導士団が総出で当たらなきゃならん案件だ…てめぇ一人で、そこまでやったことだけは褒めてやるよ」

 

 そう言ったグレンだが、ふと、ここでジャティスの言葉に違和感を感じた。

 

(まて。今、こいつは連邦と組んだって言ったよな?つまり、連邦はこのことを知っていたいうのか?ジョセフも……?ジャティスがルミアを攫うということも、知っていて黙認していたというのか?)

 

 それに、グレンの頭に横から殴られたような衝撃が襲った。

 

 帝国の友好国が帝国政府の敵である男と組んでいたのだから。

 

(いや、『自分に益があれば、味方すら出し抜く』という国だ。そう考えると、ジャティスと組むというのはまったく予想外というわけじゃねえ…予想外じゃないというのはわかってるがよ…)

 

 仲が良かったクラスメイトが攫われるというのに、それを黙認したジョセフに対し、怒りがふつふつ湧くが、それを抑えるグレン。

 

(……わかってる。あいつは好きでそんなことしたわけじゃねえ。軍では上の命令は絶対だ。責めるなら連邦政府の上層部で、ジョセフじゃねえ)

 

 そして、グレンは疑心の目で鋭くジャティスを睨んで、問い詰める。

 

「……で?その最後…『核熱点火式』、はフェジテのどこに敷設されているんだ?それさえ解呪しちまえば【メギドの火】の起動は防げる…そうだろう?」

 

「ああ、その場所とは――アルザーノ帝国魔術学院」

 

「――ッ!?」

 

 ジャティスの言葉に、グレンとルミアが息を呑む。

 

「……さて。密かに仕掛けられた『核熱点火式』は、すでに『初期起動』を終えており…後は『二次起動』…そして『最終起動』の時を待つのみだ…僕の計算によると、その時限は本日の日没――その時、フェジテは滅びる」

 

「………ッ!?」

 

「グレン…今、この時に限り、僕達の利害は一致しているはず…ここは一つ、しばらくの間、共同戦線を洒落込まないかい?共にこのフェジテを救おうじゃないか……」

 

 そう善人面をして、堂々と語るジャティスの眼は。

 

 どこまでも底知れない闇を湛えていた――

 

 

 

 ――その頃。

 

 フェジテ警邏庁北館にて。

 

「確か、ここの医務室だったはず」

 

 領事館から警邏庁まで移動してきたジョセフは、通路をつかつかとやや速足で通っていた。 

 

 あれから、警邏庁に着いたマクシミリアン一行は、警邏総監であるロナウドと対面。

 

 本来、これは非公式な作戦であり、部外者に口外すべきではなかったのだが、すでに銃撃戦で双方死者が出てしまった以上、事情を話さなければいけなくなった。

 

 もちろん、全てを話すわけじゃなく、ジャティスのことは隠していたし、グレンの件は真犯人ではなく、テロリストが人質を取って脅迫。犯行声明を読まされていたということでマクシミリアンがロナウドに話していた。

 

 グレンが真犯人ではなくなったことを納得したロナウドは、天の智慧研究会を取り締まろうとするが、すでに連邦軍により、フェジテ全域の天の智慧研究会≪急進派≫は全滅。

 

 今は、被害状況を把握し、混乱を収めるべきだというマクシミリアンの提案に、ロナウドは賛成し、今は連邦軍と警備官共同で事態の収拾を図っている最中だ。

 

 因みに、指揮を執っていると思われるイブ=イグナイトと話をしたいとマクシミリアンは申し出たが、イブは警邏庁におらず、どこに行ったのか、警備官全員、誰も把握していなかった。

 

 ジョセフは、今、システィーナがいるという北館の医務室の扉の前にいた。

 

 システィーナがジンと交戦したということを聞き、心配したので見舞いというか、一度顔を合わせた方が良いと判断したからだ。

 

 コンコンコン、と。扉を三回ノックするジョセフ。

 

 しばらくすると、聞き覚えのある声が聞こえたので、中に入る。

 

「よぉ、無事だったか、システィーナ」

 

「じょ、ジョセフ!?」

 

 中に入ると、ベッドに銀髪の生真面目な優等生が横になっており、ジョセフを見るなり目を見開いていた。

 

 その優等生――システィーナの状態はボロボロでジンとの交戦がいかに苦戦してギリギリの戦いだったのかを物語っていた。

 

「よかった…貴方も無事で……」

 

 システィーナは今までの騒動で、共に対処していた仲間の姿を見て、心底、安堵の表情で呟く。

 

 ジョセフはベレー帽を、腋に挟み、システィーナのベッドの側の壁に寄りかかる。

 

「……その…ジンと交戦したんだよな……?」

 

「……え、ええ……」

 

 安堵の表情をしていたシスティーナはジンという、自分を嬲り、犯しかけたその男の名を聞いた瞬間、表情を曇らせた。そいつのことは、もう二度と思い出したくないのだろう。

 

「その、すまなかった…実はお前がジンと交戦状態だったのは知っていた。先生がレイクと交戦していたこともな。けど、こちらも天の智慧研究会の掃討と…なにより、連中の暗示魔術に操られた警備官と交戦。そのせいで起きた混乱で、身動きが取れなかった」

 

 ジョセフは助けに来れなかったことをシスティーナに頭を下げ、陳謝する。

 

「じゃあ、あの時の銃声は、連邦軍が天の智慧研究会を……」

 

 システィーナはあの時、フェジテ中で起きていた銃撃戦を思い出す。

 

「ううん、いいの…もう、終わったことだから。それに、私は生きているし、もう大丈夫よ」

 

「…………」

 

 ジョセフは顔を上げて、システィーナに今、フェジテで起きている騒乱と経緯、状況を説明する。

 

「ここに来たのはな、今、フェジテで起きていることをお前に話しといたほうがいいと思って来たんや」

 

「フェジテで起きていること?」

 

「まず、ここまでの経緯なんやけど、今、帝国軍と連邦軍、天の智慧研究会の≪現状維持派≫とジャティスが天の智慧研究会≪急進派≫を一掃しているんや」

 

「ちょ、ちょっと待って……ッ!」

 

 説明の途中で、何か引っかかったのか、システィーナが割って入る。

 

「どうして、天の智慧研究会同士で戦っているの!?≪現状維持派≫と≪急進派≫って何なの!?」

 

「サイネリア島での一件以降、向こうは今後の方針を巡って二つの派閥に分かれたんや。一つはなぜかルミアから手を引こうとしている≪現状維持派≫。もう一つはなにがなんでもルミアを≪殺害≫しようとしている≪急進派≫。この二つにな。魔術競技祭の時の女王陛下暗殺未遂、社交舞踏会の襲撃は全部、≪急進派≫の連中が画策したことや」

 

「…………」

 

「そいで、あの社交舞踏会で『魔の右手』、ザイードが捕縛されたやろ?そいつの取調べでな、ウチらに≪急進派≫の潜伏先が割れたんや」

 

「じゃあ、今回のは……」

 

「潜伏先を知ることができた帝国政府と連邦政府は、≪急進派≫の取り締まりを開始。連邦は帝国に五千名の軍を派遣してまで徹底的に潰している。それだけじゃない、≪現状維持派≫はこれを機に≪急進派≫の粛清を始め、ジャティスはそいつらを片端から潰しまくったんや。そして、フェジテでもこの作戦が開始されたってことや」

 

 ジョセフは、一旦、言葉を区切り――

 

「連中はもう追い詰められている。都市伝説と言われた第三団≪天位≫まで現場に出てくるほど追い詰められているんだ。それでも、未だにルミアを殺すことを諦めていない」

 

「そんな…狂ってる……」

 

「追い詰められた急進派は、なんとしてもルミアを殺すため、ある計画を立てた」

 

「け、計画……?」

 

 ジョセフの計画という言葉に、システィーナは嫌な予感がする。

 

「連中は今までのようにルミアだけ狙う、ピンポイントの襲撃をやめて、自分ごと、街ごと道ずれに自爆することにしたんだ」

 

「――ッ!?」

 

「つまり、今回はルミアだけではない、俺もお前も、先生も学院の連中、フェジテ自体が危ないっちゅうわけや」

 

「な、なんてこと…でも、そんな大掛かりなこと、どうやって……ッ!?」

 

「『Project:Flame of mrgido』――【メギドの火】」

 

「……ッ!?」

 

「連中は【メギドの火】を使って、フェジテごとルミアを殺す気だ。ジャティスは、フェジテに敷設されている三か所の『マナ活性供給式』を解呪。ルミアの『異能』を使って、先生とシスティーナに敵の目を引き付けてな。そして、ジャティスはこの三か所の解呪は成功しているはず。『核熱点火式』はまだ、わからない。そもそも、どこにあるのかわからないんだ」

 

「…………」

 

 ジョセフから語られる敵の計画を聞いて、言葉が出ないシスティーナ。

 

「まぁ、ここまでが現在の状況だ。色々と疑問があるんだがな」

 

「疑問?」

 

「まず、なんでジャティスは突然、善人面し始めたのかということ。だって、『この国は滅びるべき』と言っている男だぜ?そんな男がフェジテを救う?どう考えても、不自然だろ」

 

「言われてみれば、確かに」

 

「それと、それ以上におかしいのが、敵の動きだ」

 

「敵の動き?」

 

「確かに、ジャティスは最強クラスの魔術師だ。そう簡単に捕捉されることはないにしても、ルミアを攫ったり、市庁舎の爆破。誰かが自分達の計画を妨害しているというのは知っているはずだ。なのに、連中はジャティスを見つけようとしなかったし、止めようとしなかった。いくらなんでも泳がせ過ぎだ」

 

「ジャティスが天の智慧研究会と手を組んだというのは……?」

 

「あり得ない。ジャティスはある意味、一貫している男だ。一度自分の敵だと認定したら、撤回することはないし、手を組むことはあり得ない。先生だけは例外らしいが」

 

 ジャティスと天の智慧研究会。両者のおかしな動きに、ジョセフは顎に手を当てる。

 

「【メギドの火】を使ってフェジテを滅ぼす…なんだが、なんか別の思惑がある気がする。そんな気がするんだ」

 

 今回の騒動、何かがおかしい。

 

 フェジテで『核熱点火式』を敷設するに相応しい場所はどこだ?

 

 いや、そもそも、この『Project:Flame of megido』は誰が発案した?

 

(確か、『Project:Flame of megido』を計画したのは…アリシア三世。四百年前のアルザーノ帝国の女王だ)

 

 アリシア三世。歴代の女王の中でも、優秀で、帝国が魔導大国となる基礎を築いた人物。そして、晩年はなにかといわく付きの人物だ。

 

 『Project:Flame of megido』もだが、蒼天十字団の創設者だったという噂も、そんな中で生まれた話だ。

 

 そして、彼女が魔導大国の基礎を築いたというのは。

 

(アルザーノ帝国魔術学院は、アリシア三世が莫大な国費で設立した教育機関や。この学院が設立されたおかげで帝国は今は魔導大国としての地位があるし、それは帝国から独立した連邦の魔導技術にもそれは脈々と受け継がれている)

 

 帝国から独立し、分家筋みたいな連邦の魔導技術にも、当時はアルザーノ帝国魔術学院出身者が多数を占めていたため、百年経った今でも帝国と似通っている所は少なからずあった。

 

 と、ジョセフがそんなことを考えていた時。

 

(ん?待てよ?『Project:Flame of megido』はアリシア三世が発案したんだよな?)

 

 ジョセフは、窓ごしにある学院に目を向ける。

 

(確か、『Project:Flame of megido』は学院が設立される前後だったはず。まさか、『核熱点火式』は――アルザーノ帝国魔術学院か!?)

 

 もし、本当に『Project:Flame of megido』がアリシア三世の発案だとするならば、学院に敷設されていてもおかしくないし、なにせ莫大な国費を費やしてまで当時片田舎だったここに学院が設立されたほどだ。あそこほど相応しい場所はこのフェジテ以外にない。

 

「…………」

 

「ジョセフ?」

 

 考え込んでいるように固まっているジョセフに、システィーナが声をかける。

 

 すると、ジョセフはシスティーナに振り向き――

 

「なぁ、システィーナ。ジャティスはどうやって先生と通信した?」

 

「え?確か、いつの間にか私のポケットに入っていた通信魔導器から連絡を取り合ったわ。…そういえば、あれ、先生がジョセフのって言っていたわ!なんで、貴方の物が私のポケットの中に入っていたの?」

 

 システィーナが思い出したかのように言い出し、ジョセフに問い質す。

 

「…………」

 

 ジョセフはその質問には答えず、黙ったままだった。

 

 

 

 

 

 

 

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