ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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令和初の投稿です。それではどうぞ。


115話

 あれから、グレン達は、≪炎の船≫内部に侵入し、歪んだ空間をルミアがナムルスから一日だけ使えるようにしてもらった≪銀の鍵≫で突破した魔人の元へ向かう道中――

 

 その≪炎の船≫内部でも、激しい戦いは続いていた。

 

「くそッ!まだ結構、居やがるなッ!?」

 

 船内の廊下を、グレン達が駆け抜けている。

 

 その後を追うように、船内に配備されたゴーレム達が隊列を組んで迫ってくる。

 

 極力、無駄な戦闘と消耗は避けたかった。

 

 だが、そうこうしているうちに、前方からも敵が、群れをなしてやってくる――

 

「せ、先生、どうしますッ!?」

 

「やるしかねえなッ!」

 

 駆けながら、グレンが拳を、リィエルが大剣を構えた。

 

「俺とリィエルがまず初撃を入れて離脱ッ!白猫が追撃ッ!前を速攻で片付けて、後ろに対処だッ!いいなッ!?」

 

「ん!」

 

「はいっ!≪冴えよ風神・――≫」

 

 システィーナが足を止めて、呪文詠唱を開始。

 

「うぉおおおおおおおお――ッ!」

 

 同時に、グレンが強く踏み込んで、敵の群れの中へ一気に飛び込む。

 

「ふぅ――ッ!」

 

 グレンが空気を裂いて真っ直ぐ振るう拳打が。

 

「いいいいいやぁああああああああああああああ――ッ!」

 

 リィエルが旋風のように振り回す斬撃が。

 

 隊伍を組むゴーレム達の先頭戦列を容赦なく蹴散らし、吹き飛ばし、足止めさせ――

 

「≪――・剣振るいて・天駆けよ≫ッ!」

 

 その刹那、システィーナの呪文が完成する。

 

 同時に、グレンは天井付近まで跳躍し、リィエルは片膝をついて身を屈め――

 

 そんな二人の真ん中を、巨大な風の刃が神速で吹き抜けた。

 

 黒魔【エア・ブレード】。

 

 横一文字に放たれた真空刀が、前方のゴーレム達を悉く上下に両断し――殲滅。

 

「よっしゃ!次――」

 

 グレンが着地ざまに振り向き、リィエルも立ち上がりざまに後方へ跳躍しようとして。

 

 ――二人は一瞬、硬直した。

 

「…………」

 

 なんと、ルミアが一人で、後方から迫る大量のゴーレム達へと歩み寄っていたのだ。

 

「お、おい――ルミアッ!馬鹿、下が――」

 

 グレンは慌てて警告の言葉を発しようとするが――それは途中から永遠に失われた。

 

 ゴーレム達へしずしずと歩み寄るルミアが、その手の≪銀の鍵≫を前に差し出して……

 

 がちり、と回すような仕草をする。

 

 と、その時、不思議なことが起こった。

 

 そのゴーレム達がいる廊下の風景が、光の枠で長方形型に切り取られ――

 

 その長方形の平面風景が、そのまま、まるで回転扉のように、ぐるんと回転した。

 

 風景の回転扉の向こう側に無限の宇宙が広がっているのが、一瞬、見えて。

 

 やがて、風景の回転が終わると。

 

 ――ゴーレム達だけが、綺麗さっぱりと、その場から消えていた。

 

「な、なんだ、今の……?」

 

 グレンも、システィーナも、リィエルさえも、ぽかんとするしかない。

 

 明らかに――人の範疇を大きく超えた、”異常過ぎる力”だ。

 

「……彼らを異次元空間へと追放しました。ああいう単体の非生物は、強い力を持っていても存在が小さく、世界との縁が弱いので送りやすいんです」

 

「ルミア…お前……?」

 

「段々…思い出してきました。ううん…私の中の誰かが教えてくれるんです…この”鍵”の使い方を……」

 

 ルミアは愛おしそうに≪銀の鍵≫に触れる。

 

「……私、嬉しいんです。今までは、先生やシスティ、リィエルにジョセフ君に…守られているばかりだった…でも、私にはこんな力があった…この力で、先生達や皆を守るために戦える…それが、とても嬉しいんです……」

 

 グレン達はそんなルミアの姿に、底知れない危うさを覚えた。

 

 もし、ここにジョセフがいたなら、ジョセフは力ずくでも≪銀の鍵≫を取り上げていただろう。それほど今のルミアは危うい状態だった。

 

「行きましょう、先生。…私も戦います、そして、皆を守ります。この命に代えても…それが、私の使命なんです」

 

 グレンは迷った。≪銀の鍵≫…その凄まじい力それ自体に恐れはない。

 

 他ならぬルミアが振るうのだ。間違った使い方をするであろう筈もない。

 

 問題は――ルミア自身だ。

 

 グレンも前々から薄々感じていた、ルミアの歪み。他者のために、自分の順位が極端に下がってしまう――それが今、悪い意味で浮き彫りになってしまっている。

 

 本来、人間はまず、何が何でも自分のために生きなければならないのだ。それが生物の本能であり、あるべき自然なのだ。

 

 まず、自分がある程度満たされて、初めて他者に何か与える権利を得る。初めて他者に優しくなれる。赤貧聖者の無償の奉仕など、狂人と一緒。あってはならない。

 

 それは人間の、生物の本来あるべき姿ではないのだ。

 

 明らかに、致命的な何かを代償にするだろう≪銀の鍵≫の力。

 

 下手に『力』を得てしまったことで…この状況で追い詰められたルミアの中で、何かのタガが外れてしまったような…そんなイメージ。

 

 使わせるべきじゃない。それを使うには、ルミアは精神的に幼い――

 

「ルミア…≪銀の鍵≫はもう使うな」

 

「えっ?」

 

 ルミアが、なぜ?とばかりに、きょとんと不思議そうに小首を傾げる。

 

「リィエルがさっき言ったとおりだ。俺達がなんとかしてやる。もっと、俺達を頼れ、信頼しろ。お前だけが、そんな人外の力を背負うべきじゃねえ……」

 

 だが。

 

「でも、それじゃ駄目なんです」

 

 そこに、いつもの素直なルミアはいなかった。

 

「……私が…皆を助けないといけないんです。そのためなら、私は――」

 

「お前……」

 

 駄目だ。今のルミアは頑なに過ぎた。

 

 無理もない。ジョセフ以外の同世代の者よりは多少、大人びているとはいえ、まだ十六歳なのだ。

 

 フェジテを襲ったこの未曽有の危機に、精神的に追い詰められ、何かを必要以上に気負ってしまったルミアに、グレンの言葉は届かない。

 

 このままでは、何かを切っ掛けに、ルミアは、≪銀の鍵≫を際限なく使い始めて――

 

「せ、先生…時間が……」

 

 システィーナもルミアに何か物言いたげだが、苦渋の表情でそう告げるしかない。

 

「わかっている。行くぞ……」

 

 今は問答している暇はない。やむをえず、グレン達は先へ進み始める。

 

 言葉を交わさずとも、グレンもシスティーナも、リィエルさえも。

 

 その時、胸中に思っている言葉は一緒だった。

 

 ――自分達が頑張らねば。…ルミアのために。≪銀の鍵≫を使わせないために。

 

 そんなグレン達の胸中は露知らず、当のルミアは、揺るぎない高潔な決意に満ちた、穏やかな表情をしていた。

 

 

 

 

 先を急ぐグレン達。

 

 それから先の行程では、まるで嘘のように敵の攻勢は止まった。

 

 これ以上、グレン達に雑兵を差し向けても無駄だと悟ったか、はたまた別の理由か。

 

 それは――グレン達にはわからない。

 

 船内に幾つかの扉や部屋はあるが、道はほぼ一本道であった。

 

 よって、グレン達は探査系魔術を使って構造を把握しつつ、拍子抜けするほど迷うことなく、≪炎の船≫の最深部へと向かって進んでいく――

 

「……不気味だな。いくらなんでも順調すぎる」

 

 廊下の先頭を走るグレンが、不意に呟いた。

 

「確かに、学院防衛組の奮闘による陽動が効いている…とは思うが……」

 

「出来すぎている…あの魔人が何かを策しているってことですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 システィーナの問いに、グレンが神妙そうに頷いた。

 

 確かにシスティーナも少しおかしく思い、油断なく周囲を警戒しながら、童話『メルガリウスの魔法使い』のストーリーラインを頭に思い浮かべてみる。

 

(作中、≪鉄騎鋼剛将≫アセロ=イエロが登場するのは大きく二回…一回目はラースの国で≪炎の船≫に乗って…二回目は最終章、魔都メルガリウスでの決戦にて……)

 

 この内、件のプロット崩壊…ご都合主義が起きるのは二回目の戦いだ。

 

 唐突に登場した”正義の魔法使いの弟子”が、小さな棒で突くとかいう、なんだかよくわからない手段で、アセロ=イエロをあっさり倒してしまう。多分、アセロ=イエロを強く設定しすぎて、著者ロランも扱いに困ったのだろう。

 

(ていうか、いつの間にか、ただの童話を普通に魔将星攻略の鍵にしちゃってるわね)

 

 そうは思うが、今はわらにも縋りたい気分だった。

 

(さて…一回目は確か、ラースの国を救うため、正義の魔法使い様ご一行が、とあるドラゴンに乗って、≪炎の船≫を破壊するために、殴り込むんだったっけ……?)

 

 こんな所まで一緒だと、苦笑いするしかない。

 

(そして…≪炎の船≫の中に攻め込んだ、正義の魔法使い様、ご一行は――)

 

 そこまで思い出して、システィーナは、はっとした。

 

「せ、先生っ!気をつけてくださいっ!」

 

 システィーナの上げた警告に、グレンとリィエルが振り返った。

 

「どうした!?」

 

「すみませんっ!今、思い出しました!≪鉄騎剛将≫アセロ=イエロは、≪炎の船≫内部の空間を自由に操ることができるんです!」

 

「なんだと?」

 

「正義の魔法使いとの戦いでは、それを利用して、≪炎の船≫に乗り込んだ正義の魔法使いと、彼の仲間達を、別々の空間に分断してしまいました!ひょっとしたら、私達にもそれを仕掛けてくるかもしれませんっ!私達、もっと集まって行動を――」

 

 と、その時、それに気付いてしまい、一行は一斉に足を止めた。

 

「ルミアのやつ…どこ行った?」

 

 そう。いつの間にか。本当にいつの間にか。

 

 ほんのさっきまで、その足音と息づかいが聞こえていたのに。

 

 今や、ルミアの姿は――どこにもなかった。

 

 今は手元に『メルガリウスの魔法使い』がないし、あっても読み返している暇などなかったとはいえ、なんで、もっとよく最初から思い出しておけなかったのか――

 

「ルミア…ルミアァ――ッ!?どこ!?返事をして!?」

 

「……落ち着け」

 

 グレンも顔に拭いきれない焦燥を浮かべつつも、システィーナを宥める。

 

「自分を見失っている場合じゃねえ。今からでも、急いでルミアに追いつくしかねえ」

 

「そ、それは、そうですけど…でも…ッ!でもぉ……ッ!?」

 

 狼狽えきり、今にも泣き出しそうなシスティーナ。

 

 その原因はよくわかる。遠い子供の頃、グレンが夢中になって読んだ『メルガリウスの魔法使い』。今となっては、その内容をほとんど忘れてしまっているが……

 

 グレンも、思い出してしまったのだ。

 

 正義の魔法使いから分断された仲間達は――その先に現れたアセロ=イエロの手によって、皆、無惨に殺されてしまったのだ。正義の魔法使いは間に合わなかった。

 

「大丈夫…大丈夫だ……ッ!」

 

 今にも泣き出しそうなシスティーナと、自分に言い聞かせながら。

 

 グレンは、ルミアに追いつくため、再び駆け出し始めた。

 

 

 

 

「ほれ!弾薬持ってきたで!」

 

 学院で正午からの激戦が続く中。

 

 ジョセフは下層階に保管してあった、弾薬箱数ケースを、二人の男子生徒達と取りに行き、対空射撃をしている連邦軍の元に届ける。

 

 屋上の柵付近の地面は、空薬莢が無数に散らかっており、気をつけなければ、転んでしまいそうなぐらい足場がなかった。

 

 さらに昼から撃ちっぱなしのため、硝煙の臭いが立ち込めていた。

 

 弾薬を届けた途端、すぐさま蓋を開け、ベルトに繋がれた弾帯を取り出し、それぞれの銃座に持って行く弾薬係。

 

 ジョセフは周囲を見たが、昼頃と比べると、火力が明らかに落ちていた。

 

 敵ゴーレム人形達が連邦軍の対空射撃が脅威であるために優先的に排除しようとしたのか、集中的に攻撃を受けていた連邦軍の戦力は半分以下に減ってしまっていた。

 

 損害は負傷者が多いが、戦死した兵士も少なくない。

 

 屋上では横たわって動かない兵士がそのままになっており、中庭などにも、ゴーレム人形に投げ飛ばされたのであろう、地面に倒れたまま、動かなかくなった兵士もちらほらと散見されている。

 

(これは…ちょいと厳しいな……)

 

 その状況を見て、ジョセフは流れが芳しくないと認識する。

 

 今のところ、まだ持ちこたえているとはいえ、あれから数時間戦闘が続いているのである。そろそろ、生徒達にも疲れが見え始める頃合いである。

 

(先生の方は…まだ終わってないだろうな)

 

 迫ってくるゴーレムを大鎌で一刀両断し、ジョセフは空に浮かぶ≪炎の船≫を見る。

 

 ≪炎の船≫は未だに健在と言わんばかしに、空に堂々と浮かんでいた。

 

(あの船の内部は空間が歪んでいるらしいが、それはルミアによって無事に突破できているはず。問題はルミア本人なのだが……)

 

 ジョセフは、ふと、戦闘開始前のルミアの様子を思い出す。

 

 ≪炎の船≫に乗り込むため、学院の北にある迷いの森にグレン達が向かう際、ジョセフはルミアを見たのだが、彼女がどこか危なげなく思えてしまっていた。

 

 あのままだと、彼女は自分の命を投げ出すのではないのかと。この状況を導いたのは自分のせいだと追い詰めてしまい、おかしくなっていくのではないのかと。

 

 グレンや皆を守るためにルミアは自己犠牲をするつもりなのだろうが、それが本心ではないことはジョセフは見抜いていた。

 

 あの時、ルミアが二組の生徒達に打ち明けて受け入れられた時の彼女の表情を見るに、ルミアは本当は――

 

(だが、今のルミアは、その本心を抑えて、偽りの本心で魔人に臨もうとしている。偽りの本心、それが本当の本心なのだと思い込んだまま……)

 

 多分、ルミアは、自分の命に代えてでも、アセロ=イエロに立ち向かうかもしれない。

 

 もし、本当にそうしているのならばルミアは――

 

(――本当にそうならば…大馬鹿野郎だ)

 

 ジョセフは、そう思いながら、どうかグレン達がルミアをそういう行動をとらせないようにと祈りながら――

 

 もう一体のゴーレム人形の首を刎ねた――

 

 

 

 ――。

 

 ――特に、恐怖や動揺はなかった。

 

 むしろ、ほっとしたような、ありがたいような…そんな気分。

 

 それが正直な感想だった。

 

「………」

 

 ルミアは、不思議なほど落ち着き払って、ただ一人、延々と続く通路を歩いていた。

 

 今の≪銀の鍵≫に目覚めた自分には、このあまりにも唐突なはぐれ方が、敵の空間操作であり、自分が意図的にグレン達と遠ざけられた…というのが直感的にわかった。

 

 そして、敵の狙いが、自分(ルミア)であることも――

 

 だが、それでいい。あの魔人の狙いが自分であるならば、それはそれでいいのだ。

 

 グレン、システィーナ、リィエル――ルミアの大切な、愛しい人達。

 

 彼らを危険な目に遭わさずに済む。

 

 人間を超えた化け物に、人間が勝てる道理はない。至極、真っ当で単純な理屈。

 

 化け物を倒すのは、いつだって人間?

 

 それは、ただの人間至上主義の理由無き願望――否、妄想に過ぎない。

 

 この世界には、ちっぽけな人間では決して覆せない、絶対的で絶望的な壁というものが確実に存在する――今のルミアにはそれが、理屈でなく魂で理解できる。

 

 例えば…自分の内に、ひっそりと眠る、もう一人の自分の存在――

 

 化け物は、同じ規格の化け物でしか、抗し得ない。至極、真っ当で単純な理屈。

 

 アセロ=イエロ――魔将星は、人間をやめた正真正銘の化け物だ。

 

 なれば――同じ化け物である、私が一人で戦うべきだろう。だから――

 

 望むところ…ルミアは胸中でそう呟いて、歩を進めた。

 

 やがて、ルミアは大きな門を発見し、そこを迷いなく、くぐる。

 

 そこは――広い楕円状の大広間であった。

 

 その半楕円のカーブに沿うように、巨大な黒いモノリスがずらりと無数に並んでいる。床には禍々しい幾何学紋様が折り重なるように刻まれている。

 

 がらりと閑散としたその広間の最奥には、玉座のような席。

 

 そこに――

 

『……ようこそ、ルミア=ティンジェル』

 

 魔人が悠然と腰掛けていた。

 

『流石に驚いたぞ。まさか…貴女が≪銀の鍵≫に目覚めていたとは……』

 

 ルミアが、その魔人へ向かって、無言で歩み寄っていく。

 

『成る程。…現状維持派の連中が、今の貴女で完成だ、充分だ、と大騒ぎする筈だ…まさか、貴女がその域まで完成されていたとは…な』

 

 魔人がおかしそうに、肩を震わせていた。

 

『だが、私に言わせれば、未だ不充分。偉大なる大導師様のため…そして、我が主のために…私にはもっと、完全なる貴女が必要なのだ』

 

「ごめんなさい。貴方達の都合は…知りません」

 

 ルミアは真っ直ぐと魔人を見据えた。

 

「私は貴方を倒します。フェジテのために…皆のために。…この命に代えても」

 

 すると。

 

 しばらくの間、魔人をルミアをフードの中の闇の奥からじっと眺めて……

 

『……成る程。やはり、貴女はあの方にそっくりだ…これは私ではなく、アセロ=イエロの記憶ではあるがな』

 

「……?」

 

『もっとも、あの方の器として誕生したのだから、それも当然か……』

 

 そして…魔人はゆっくりと立ち上がり…ルミアの前に立った。

 

『聞こう。戦い方はわかるか?…その力の使い方は?』

 

「……わかります」

 

 ルミアは恐れも虚勢もなく、それが当然であるように応じた。

 

「貴方こそ、心してください。今の私は多分…システィよりも、リィエルよりも…そして、先生よりも…強いです」

 

『そうか。ならば、いいだろう』

 

 最後にそう言って、魔人はルミアに向かって構えた。

 

『ルミア=ティンジェル。我が悲願のため――その命、貰い受けるッ!』

 

「アセロ=イエロ。私が愛する人達のために――私が貴方を滅ぼします!この私の命に代えてもッ!」

 

 互いにそう言い合って。

 

 魔人が闇の霊気を纏って、手刀を構え――

 

 ルミアが、白銀に眩く輝きだす≪銀の鍵≫を構える。

 

 人知を超えた戦いが――此処に始まった。

 

 

 

 

 




今回はここいらで

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