ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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というわけで、どうぞ。


124話

「と、いうわけでだ、お前ら」

 

 クラスの生徒全員が集まった、二組の教室にて。

 

 グレンは、連れてきたイヴを、生徒達へと引き合わせていた。

 

「来期からこの学院で開講される『軍事教練』の戦術教官講師として、帝国軍より出向してきた、イヴだ」

 

「帝国軍、帝国宮廷魔導士団第八魔導兵団所属、イヴ=ディストーレ従騎士長よ。来期から『軍事教練』の指導を担当させて頂くわ。どうかよろしく――」

 

 イブが淡々と作業のように自己紹介を始めた…その時だった。

 

「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――っ!」」」」

 

 クラス中から、特に男子生徒から歓声が上がった。

 

「い、一体、何よ!?何事!?」

 

 なぜここまで大騒ぎされるのか理解できないイヴが、目を瞬かせて戦く。

 

「あー、イヴさん、いつもの事なので気にしなくていいですよ」

 

 グレンからイヴが特務分室をクビになったということを聞かされたジョセフは、苦笑いしながらイヴにそう言う。

 

 グレンから聞かされたジョセフは、あれから『≪魔術師≫さん』ではなく『イヴさん』と呼ぶことにした(ていうか、イヴからそう呼ぶように言われた)。

 

「うっひょおおお――っ!戦術教官って聞いたから、どんなゴリラな鬼教官が来るかと身構えていたら、滅茶苦茶美人じゃねーかぁあああああああ――っ!?」

 

「なんか、あの物鬱げでアンニュイな雰囲気を表情がいいよなぁーっ!?」

 

「ああ、酸いも甘いも噛み分けた、大人の女性って感じだ……」

 

「いや、待て、皆!美人でも、軍人で教官なんだぞ!?滅茶苦茶厳しい人かも……」

 

「訓練では、酷い罵倒されたり、血反吐が出るまでしごかれたりして――」

 

「「「「それならそれで、興奮するから良しっ!」」」」

 

 カッシュを筆頭とする男子生徒は、イヴの来訪に大歓喜状態であった。

 

「お前らな……」

 

 なんかイヴの印象がすごい強烈なことになってるんだが、とジョセフは頬を引きつらせる。

 

 いや、まぁ、まったく違うとは言わないが。

 

「……グレン…このクラス……」

 

「諦めろ。…ジョセフの言う通り、いつもこんなんだ」

 

 半眼で無表情になるイヴに、グレンが溜息交じりにぼやいた。

 

「ちょっと、男子っ!イヴさんに変な目を向けるのはやめてくださいましっ!」

 

「そうですよ!イヴさんは私達の大恩人なのですから!」

 

 すると、騒ぎまくる男子を宥めるように、ウェンディとテレサが立ち上がった。

 

「先の戦いでは、最後の攻防で出現したゴーレム巨人を前に、その巨人の攻撃からわたくし達生徒を守るため、最後まで危険な最前線に残って、ご自身の身が傷つくことも厭わず戦った、勇敢な御方なのですわよ!?」

 

「ええ、私達がこうして五体満足で無事にいられるのも、イヴさんのおかげなんです。彼女こそ帝国軍人の鑑です」

 

 すると。

 

「そうか!どこか見覚えがある人だと思っていたら、あの時の人か!」

 

「そ、そうえば、私も、あの時はイヴさんに助けられて……」

 

「部隊は違ったけど…そういえば、イヴさん、ジョセフの陰に隠れがちで目立った活躍してなかったけど…ボロボロになりながらも戦ってたよな…俺達のために……」

 

 徐々にイヴへ尊敬の目が集まり始めていく……

 

「な、ななな…何よ、その目は?」

 

 居心地悪そうにイヴが表情を引きつらせる。

 

「ふ、ふんっ!私に助けられた?勘違いしないことね」

 

 そして、腕組みして、そっぽを向きながら皮肉交じりに言い捨てる。

 

「あの時の無能な私には、それしかやることがなかっただけよ。どうせ、私なんか……」

 

 ……が。

 

「おぉ…しかも、誇らず、恩に着せず、なんて奥ゆかしい人なんだ……ッ!」

 

「やべぇ、惚れそう……」

 

「こ、これが真の帝国軍人……ッ!?」

 

 生徒達の、イヴに対する色眼鏡は外れないらしい。

 

 ジョセフは、それを見てくすりと笑う。

 

(ああああ、もうっ!なんなの、この子達はぁ~~っ!?あと、ジョセフはなに笑ってるのよ!?)

 

 基本、イヴにとって、周囲の人間は皆、敵だ。

 

 それゆえに、イヴは面と向かって他人から賞賛されることに慣れていない。

 

「……ほ、本題に入るわよ」

 

 気恥ずかしさとむず痒さを誤魔化そうと、イヴは赤くなりかけの顔を片手で覆い隠し、ぷるぷる震えながら、話を変えるのであった。

 

「話は聞いたわ。貴方達、この学院の改革とグレンのクビをかけて、模範クラスとの生存戦に挑むのでしょう?……はっきり言うわ。今の貴方達じゃ絶対、勝てない」

 

「「「「――ッ!?」」」」

 

 イヴの飾らない斬りつけるような指摘に、生徒達が息を呑む。

 

「ジョセフ以外、こうして貴方達の顔を見ればわかるわ。明らかに勝機のない戦いを前にしているのに、今の貴方達にはいまいち緊張感がない。大変なことに巻き込まれたけど、心の底では、きっとなんとかなるって、楽観している。……違う?」

 

 そんな生徒達の反応を完全無視して、イヴが突き放すように淡々と告げる。

 

「先の戦いを生き残ったっていう自負から?それとも、自分達には頼れるグレン先生と現役の軍人であるジョセフがついているっていう安心感から?断言するわ、貴方達は自惚れている」

 

 しん…と。

 

 先ほどまでの盛り上がりが嘘のような静けさが、クラスを支配していた。

 

「だから、私がここにいるのよ」

 

 静かになった生徒達を前に、イヴは髪をつんとかき上げ、やはり淡々と告げた。

 

「生存戦の開始は、全ての前期末試験が終わる二週間後。グレンは貴方達をその間に徹底的に鍛えるつもりだった。でも、彼一人で貴方達全員の面倒見るのは無理よ。ジョセフの場合もそう。帝国と連邦では教え方が違うから、効果は限定的。だから…私が教官として、力を貸してあげるの。精々感謝することね」

 

「「「「…………」」」」

 

「貴方達には今日から、この学院で泊まり込みの強化合宿に参加してもらうわ。これから、寝る間も惜しんで、死ぬ気で私の特訓を受ければ、まぁ、あるいは……」

 

 ああ、でも。別に嫌ならいいんだけど?

 

 イヴがそう投げやりに締めくくろうとすると。

 

「よ、よろしくお願いしますッ!イヴさんっ!」

 

 カッシュが立ち上がり、頭を下げていた。

 

「た、確かに俺達、この勝負、少し甘く考えてたことあるっす…で、でも…あのマキシムの野郎に、この学院を好き勝手されるのは我慢できねえし……ッ!」

 

「それに、俺達、まだ、グレン先生には色んなことを教わりたいんです!」

 

「どんなことでもしますから…イヴさん、どうか僕達を鍛えてください!」

 

 そして、カッシュを皮切りに、生徒達が次々と立ち上がり、イブに頭を下げていった。

 

「……本当になんなの?この子達……」

 

 先ほどから予想外なリアクションばかりな生徒達に、イブが唖然としていると。

 

「勝たせてやりたくなるだろ?」

 

 グレンがにやりと笑いながら、そんなことを呟いた。

 

「……知らないわよ。……まぁ、随分と物好きな連中だとは思うけど」

 

 そんなグレンへ、イヴは不機嫌そうに、ぷいっと背を向ける。

 

「それはともかく…まぁ、あんがとな」

 

 そんなイブの背中へ、そっぽを向いたグレンが、頬をかきながらぼそりと呟いた。

 

「……どういうこと?貴方が私に礼を言うなんて」

 

「いや…俺とジョセフじゃ厳しいってのは、事実だったんだ」

 

「…………」

 

「どういう風の吹き回しか知らんが、お前が特訓に力を貸してくれるっていうのなら、少しは可能性が出てくる。……だから、まぁ、一応…あんがとな」

 

 すると。

 

「ふん、勘違いしないでよね」

 

 イヴがグレンへ振り向き、鼻を鳴らして尊大に言った。

 

「私は別に貴方のために、この特訓に付き合ってるわけじゃないから。私は私の目的のために動いているだけだから。私は今だって、貴方のことが大嫌いだから」

 

「な…ッ!?ンなのわかってるよ!こっちだってお前のこと大嫌いだからな!?言っておくが、お前のこと、何一つ許してねーからな!?」

 

「そう。それで結構よ。なれ合ってるなんて思われたくないから。お互いの立場を再確認させてもらっただけ」

 

「ンだろぉ!?」

 

 呆気に取られる生徒達の前で、たちまちグレンとイヴの口喧嘩が始まる。

 

「ったく、軍時代から相変わらず可愛くねぇ女だな!だから、行き遅れるんだよ!」

 

「はぁ!?余計なお世話よ!?ていうか、私、まだ十九だし!?」

 

「いーや、断言するね、お前は絶対、売れ残るね!顔は良くても性格ブスだし!」

 

「なっ…そ、そういう貴方だって、絶対、お嫁に来てくれる奇特な人なんていないでしょうね!顔はそこそこだけど、根っからのぐーたらの駄目人間だし!」

 

「あ?なんだよ?やんのか?こら」

 

「ふん!何よ?」

 

 そして、そのまま、ぐぎぎぎと激しく不倶戴天の敵同士のように睨み合う二人。

 

「……二人とも、なに子供のように口喧嘩してるんですか?」

 

 ジョセフはそんな二人を、呆れながらぼそりと呟き。

 

 その子供のようなやりとりに、生徒達は、ぽかんと口を開くしかない。

 

(あ、あれ……?)

 

 と、その時。

 

 何か嫌な予感を、システィーナは覚えていた。

 

 基本、誰に対してもひょうひょうとしているあのグレンが、イブには取り繕うところもなく、素で真っ向からぶつかって――あまりにも意外すぎる姿を晒している。

 

 あのクールで硬質なイヴも、なぜかグレンに対しては、まるで遠慮がないようだ。

 

 一見、二人の仲は悪い。

 

 どこをどう見ても、確実に相性最悪だ。

 

 だが――

 

(な、なんだろう…?なんか、すっごく嫌な予感がする…今は眠れる竜っていうか…何かを切っ掛けに、コロッと何かがひっくり返っちゃいそうな…そんな嫌な予感…その何かが何なのかは、よくわからないけど!よくわからないけど!)

 

 そんな風に戦々恐々するシスティーナに。

 

「……あ、あはは…なんだか…私達に手強いライバルが出現したのかも……」

 

 隣のルミアが苦笑いでぼそりと言って。

 

「ららら、ライバルって何よ!?ライバルって!?わ、私は全然、関係ないし!?そもそもライバルとか言われても意味わかんないし!?」

 

 システィーナが妙にしどろもどろになって慌て始めて。

 

「……システィーナとルミア…なんか変」

 

 ただ一人、かやの外のリィエルが、不思議そうに首を傾げるのであった。

 

 

 

 

 

 その日は一旦、解散となった。

 

 グレンは強化合宿のため、学院の学生会館の宿泊棟の使用許可申請を出した。

 

 この学生会館は、各クラブの合宿や勉強会にもよく使われる総合施設だ。

 

 泊まり込みで特訓に専念するなら、もってこいの施設である。

 

 生徒達は泊まり込みのための荷物を纏め、その日のうちに宿泊棟へのチェックインを済ませた。

 

 当然、男子の部屋があるフロアと女子の部屋があるフロアは別だ。

 

 一方、その頃、ジョセフはグレン達に――

 

「ちょっと、顔を合わせたいやつがいるんで、そいつを連れてきますんで、ちょい遅れます」

 

 と言い、通信機で連絡しながら、学院正門の方へ去って行った。

 

 ジョセフがグレン達に顔を合わせたいやつとは、先の事変の後、マクシミリアンが来期から学院に編入させるある少女のことだ。

 

 ジョセフは、今回のことと、来期からのことを考えると、今まで以上に苦労すると(ある意味で)げんなりしながら、正門前で待っていた。

 

 時分は、西の地平線にもうじき陽が差し掛かるという頃合い。

 

 そらの色合いが微妙に変化し、景色が赤く焼け始めていた。

 

「……来たか」

 

 ジョセフは正門に向かってスーツケースを持った一人の少女が来ているのを見つけ、ぼそりと呟く。

 

 その少女は、誰もが思わず振り向いてしまうほど綺麗な金髪で緩いウェーブをかけた髪は背中と腰の中間辺りまで伸ばしている。

 

 整った顔立ちに、ゆったりとした歩き方は上品で気位の高さを放ち、さぞ高貴な家のお嬢様であろうことが想像できる。ましてや、陽が差し掛かっている今の時間はそれが際立っている。

 

 そんな気品の高いお嬢様――連邦陸軍第一特殊部隊デルタ分遣隊所属、ナンバー7≪メリーランド≫のアリッサ=レノは、ジョセフを見つけるなり、相変わらずのゆったりとした歩きで近寄ってくる。

 

 因みに、ちゃんと学院の制服姿である。

 

「……お待たせ」

 

「ん。悪いね、急に呼んじゃって」

 

「別に。ちょうど、退屈してたから」

 

 正門前で、そう話すと、二人は同時に正門をくぐり、学生会館に向かう。

 

「んで、さっき連絡した通り、学生会館に荷物を置いたら、グレン先生と元・≪魔術師≫のイヴさん、それとクラスの生徒達と顔合わせするからな。部屋の方はここに来る前に先生に言っといたから、多分、大丈夫や」

 

「うん、わかった。それと、ジョセフ」

 

 確認という形でこれからの予定を一通り言うと、アリッサがジョセフの袖を掴んで引っ張っていた。

 

 ジョセフが振り返ると、心なしか、アリッサは恥ずかしそうに顔を少し伏せている。

 

 ああ、と。ジョセフはアリッサが言わんとしていることを察した。

 

「ああ…えっとな、その制服やろ。うん、まぁ、感想はわかってる」

 

「ちょっとこれ…恥ずかしい……」

 

 ですよねー、とジョセフはアリッサを見る。

 

 連邦では軍学校はおろか、各魔術学院でも()()()()()制服はない。

 

 しかも、傍から見るとかなりの軽装で、今までの服装ではわからなかったアリッサのスタイルがはっきりとしている。

 

 透き通るような白い肌、ルミアと同じ身長に、戦闘力はリンと同じぐらい――要するに、スタイルはかなり良い――で、絶対、男子から声をかけられるぐらいのスタイルのよさだった。

 

「まぁ、それは慣れるしかないというか…俺もなんでそんな軽装なのかまったくわからん」

 

「……?聞いてないの?」

 

「聞けると思うか?」

 

「ジョセフなら女子は皆、簡単にスリーサイズを――」

 

「言うわけないやろ!そこまでモテとらんわ!いや、モテるモテない以前に普通に言わないと思うよ!?」

 

「そうなの……?」

 

「……お前も言うとらんやろ……」

 

「じゃあ――」

 

「言わなくていいっ!」

 

 そう、サラッと自分のスリーサイズを言おうとしたアリッサに、ジョセフは慌てて彼女の口を抑える。

 

(もう、ホンマに…大佐ぁ~~)

 

 あぁ、安寧な学院生活が…と、ジョセフはさめざめと泣くしかない。

 

 ジョセフが、アリッサのことをクセが強いと思うのは、彼女、とにかくドストレートに物言うのである。オブラート?なにそれ、オイシイの?と言わんばかしに。

 

 その空気を完全に読まない、絶対に言ってはいけない言葉をさらりと言い、泣かされた男(女性に対しては、ある程度配慮しているのだろうが、それでもストレートに言う時がある)は数知れずである。

 

 そのため、見た目は上品なお嬢様だが、口を開けば時に下品な言葉を出してくるという『残念な美少女』に見事にランクインしている(だがしかし、当の本人は気にしない)。

 

 とまぁ、こんな感じなのだが、なぜか憎めない。

 

 しかも、実戦ではかなり頼れるため、しばしばペアを組んで任務にあたっていたこともある。

 

 それに、仲間には何かあった時は色々と助けたりと、なんやかんや言うが、根は優しい子であるのだが。

 

「ねぇ、ジョセフ。貴方がいる二年次二組の子達って…どういう人たちなの?」

 

「んー、そうやなぁ……」

 

 話は変わり、アリッサからそう聞かれると、ジョセフは顎に手を当てる。

 

「あのクラスには貴方の幼馴染がいるのでしょう?どんな子なの?」

 

 ずいっと、近寄るアリッサ。どうやら彼女はジョセフの幼馴染、つまりウェンディに興味があるらしい。

 

「ああ、ウェンディか。そうだな…ウェンディは先の事変の時に俺達と同じく学院校舎南館にいた、ツインテールの子だ。一回顔を見ているはずだが、まぁ、見れば思い出すだろう。彼女はナーブレス公爵家という地方の有力な領地貴族の娘でな、まぁ、十年前までは、両親がナーブレス領に向かう時、よく遊んでいたんだ。大貴族の娘なのか、少々高飛車な性格で強気で気位が高いが、根は心優しいやつさ。ま、ドジっ娘でどんくさいところがあるなど、不器用なやつだが。そこが彼女らしいというか」

 

「ふーん……」

 

「まぁ、お前でもなんやかんや受け入れちゃうやつだから、大丈夫さ。他にも、ウェンディと一緒に南館にいた女子生徒、テレサ=レイディは、帝国の有力商家・レイディ家の娘で、ウェンディの親友だ。普段はおっとりとした、まぁ、クラスのお姉さんなんだが、商家の生まれなのか、時には抜け目ない。それでいて剛運の持ち主だ。彼女にも色々よくしてもらっている。彼女と知り合うのも悪くはないだろう」

 

 それから、ジョセフは二組の主な生徒のことについてアリッサに教える。

 

「システィーナ=フィーベルは、魔術の名門フィーベル家の跡継ぎだ。ここの学院を主席で入学しているし、成績もトップだ。だが、彼女が凄いのは、潜在的な魔力容量など魔術師としての素地が一流の魔術師に匹敵するか、もしくはそれ以上だということ。潜在的な魔力容量に至っては、あの≪星≫のアルベルトを超えている。さらには

ルミアを中心に起きた天の智慧研究会などによる騒動でも、彼女はグレン先生と修羅場をくぐりまくったためか、まだまだなところもあるが、学生としては充分すぎるほどの実力を持っている。このまま上手くいけば、彼女はとんでもない魔術師になれる。彼女のような人物は連邦にはいない」

 

「ルミア=ティンジェルはご存知の通り、エルミアナ王女のことだ。彼女は、天の智慧研究会が仕掛ける騒乱で、常に中心人物として狙われていたからか、精神的な面では彼女に勝る連中はいない。普通、学生がパニックになるようなことでも、常に冷静だ。それに人の心の機微にかなり敏感だ。わかっているとは思うが、彼女には必ず接しなければいけんからな。件の組織の『急進派』が壊滅したとはいえ、主流派がまたいつ再び狙いを定めるのか、わからんからな」

 

「リィエル=レイフォードは、こっちも知っての通り、帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー7≪戦車≫のリィエルだ。ルミアの護衛でここに来ているのは知っているな?彼女は初等魔術がロクに使えないが、接近格闘戦ではとにかく強い。騒動があった時はよく組んでたわ。これからも、よう世話になると思うから、まぁ、仲良くしとき」

 

 と、主な生徒を紹介していきながら、歩いて行くと、学生会館宿泊棟に着く。

 

 そこで管理人に、アリッサの荷物を預け、二人はグレンとイブそして二組の生徒達がいる魔術競技場に向かった。

 

 その間にも、ジョセフはカッシュやセシル、ギイブル、リンなどをアリッサに紹介しながら、歩いて行く。

 

 やがて、二人は魔術競技場に入り、フェイールドに向かう。

 

「――と、まぁ今はこんなもんか、後は――」

 

 と言いかけた、その時だ。

 

「ん……?」

 

 ジョセフ達は、フィールドに入った瞬間、二人は異変に気付き、立ち止まる。

 

 いや、気付いたというよりも、ジョセフ達の視界の先にすでに異変があった。

 

 フィールド上には、グレン、イヴ、二組の生徒達がいる――

 

 が、さらに別の集団――ジョセフには見覚えがないため、おそらく模範クラスの連中だろう。

 

「……模範クラスの連中?なんで、連中がここに…?いや、それよりも……」

 

 それよりも、ジョセフが感づいた異変は、二組の雰囲気がお通夜状態になっているということである。

 

「一体、何が――」

 

 ジョセフが怪訝そうに模範クラスを見た、その時。

 

「――ッ!?」

 

 模範クラスはニヤつくなど嫌らしい顔をしながら、二組の女子生徒にからんでいくのが見えた。

 

 なるほど、状況は読めた。

 

「――アリッサ。来て早々なんだが……」

 

「ん。いつでもいける」

 

 アリッサも状況を把握したのか、半眼になって答える。

 

 模範クラス達は、今、二人の女子生徒にしつこく絡んでいる最中だ。

 

 しかも、絡まれている二人はジョセフがもっともよく知っている生徒だ。

 

「OK、お前はあの紫色の髪の子を頼む。俺はツインテールのやつを助ける。察知されないように行くぞ」

 

「その後は?」

 

「……言わなくてもわかるだろう?」

 

「ふふっ、了解」

 

 そう言うと、二人は察知されないように静かに模範クラスの背後に忍び寄るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







今回はここいらで。
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