ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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それでは、どうぞ。


172話

 

 

 

 眠い。

 

 もう、わたしの意識をむしばむ眠気は、暴力的なまでになっていた。

 

「……ごめんね、リィエル」

 

 ひめが、わたしを抱きしめながら申し訳なさそうに囁いた。

 

「ボクの世界が、キミの世界を侵食している……どうやら、ボクはキミになるために、キミの世界につれてこられたみたいだね……」

 

 ひめが、何かを言っている。よくわからない。

 

 とにかく、眠いのだ。

 

 重たい瞼を、うっすらと開けば……なんだか不思議な光景が見える。

 

 ひめの身体から、何か変なものが広がっているのだ。

 

 それは……わたしにはよくわからないけど、多分、世界。

 

 暮れなずむ夕日の黄金色に眩く輝く、広漠の海と、無限の空の世界。

 

 煌めく砂浜に突き立つ一振りの剣。他に何もない、寂しげな黄昏の世界。

 

 そんな、ひめの世界が……わたしの大好きな世界を塗り替えていっている。

 

 このままだと、わたしの大好きな世界は、このまま、ひめの世界に飲み込まれ、消えてなくなってしまうのだろう。

 

「ごめん……本当にごめんね……ボクも抑えようとしているけど……所詮、今のボクはただの複製された記録情報に過ぎない……命令に抗えないんだ……」

 

 本当に申し訳なさそうに、辛そうに。

 

 ひめは、わたしを抱きしめ謝り続けていた。

 

「……大丈夫」

 

 だが、ぽつりと、わたしは眠気をこらえて呟いた。

 

「まだ……みんなの声が聞こえる」

 

 そう、聞こえる。

 

 わたしの大好きな世界は、もうボロボロの崩れかけだけど。

 

 それでも確かに、まだ、頑張れ、負けるな、還ってこい、と。

 

 大好きな皆の声が聞こえるのだ。

 

 今、この瞬間にも、命を救ってくれているのだ。

 

「システィーナや、ルミアが、わたしを助けようとすぐ近くにいる」

 

 わたしの大好きな友達の存在を、確かに感じるのだ。

 

「それに……」

 

 そう。グレン。

 

 きっと、わたしの大好きなあの人も、わたしを助けるために戦ってくれている。

 

「だから……大丈夫」

 

「……そう。キミは強いんだね……」

 

 すると、ひめは薄く微笑んで言った。

 

「なら、一緒に信じようか……キミが大好きな人達のことを」

 

「ん……」

 

 そう言って。

 

 全てが崩れ落ち、塗り変わっていく世界の中心で。

 

 わたしとひめは、互いの存在を確かめ合うように抱きしめ合うのであった――

 

 

 

 ――。

 

 サイラスが、蹲るイヴの後頭部に、容赦なくナイフを突き立てようとした――

 

 ――その時であった。

 

「……は?」

 

 サイラスは今、目の前で起きたことを信じられないような目で驚愕していた。

 

 確かに、そこにはイヴが蹲っていたのだ。

 

 これは間違いない。

 

 だが、今、サイラスの目の前には()()()()()()

 

 そこに、まるで最初からいなかったかのごとく、イヴはそこから消えていたのだ。

 

「……消えた?い、一体、どこに――」

 

 一体、何が起きたのかわからず、サイラスはキョロキョロと周囲を見渡すと。

 

 とんとん。

 

 ふと、背後から、誰かの手がサイラスの肩を叩いていた。

 

 サイラスが振り向くと。

 

「初めまして、サイラス=シュマッハ。ご機嫌はいかがかな?」

 

 そこには、連邦軍の士官らしい男立っていた。

 

「――ッ!?」

 

 しまった。この男のことを失念していた。

 

 その男の正体を知っていたサイラスが慌てて跳び下がろうとした、その時。

 

「ひぐぅっ!?」

 

 突然、サイラスが変な悲鳴を上げる。

 

 そして、身体は金縛りに遭ったかのように、ピーンと、一直線になる。

 

 そして、そのままビターンと倒れる。そして、その次の瞬間、圧倒的火勢の烈火が渦を巻き、帯状になって、サイラスの腕を、胴を、首を、足を、まるで蛇のように猛速度で伝い走り、締め上げていく――

 

「――ぁぎゃああああああああああああああああああああああああああああ――ッ!?」

 

 上がるサイラスの悶絶の絶叫も、口元を塞ぐ炎の蛇に阻まれ、封じられてしまう。

 

「ん~~~~~~ッ!?ぅ――――ッ!?んぐぅ~~~~ッ!?」

 

 全身を完全に炎で縛りつけられ、動きと呪文を封じられ、無様に床に寝転がるサイラス。

 

 されど、その炎が消し止められることはなく――そして、その体に火傷一つない。

 

 黒魔【フレイム・バインド】。身を激しく焼き焦がす苦痛はそのままに、肉体そのものには何ら損傷を与えず、拘束・無力化する拷問用の呪文であった。

 

 もちろん、それを起動したのはイヴである。

 

 しかも、連邦の士官――マクシミリアンがサイラスの身体を動けなくしたため、サイラスは余計に苦痛に感じることとなった。

 

「ふん……大の男が、この程度でピーピーみっともないわね。だからモテないのよ」

 

「ねぇ、イヴちゃん、君、ドSなの?いや、ドSでしょ?」

 

 そんなイヴに、マクシミリアンは頬を引きつらせる。

 

「なんだと……ッ!?今のは――()()!?違う、それだけじゃない、今のは――ッ!?」

 

「そう……今のは、()()()()()

 

 イリアが目を剥いて、狼狽える中、マクシミリアンは言った。

 

「”私が、貧しい農民から、連邦の大統領になったのは、なぜかと聞かれることが多いが、私はその度にこう答えます。「根拠なき思い込みがあったからこそ、大統領になれたのです」”。……アメリカ連邦第三代大統領、マーティン=フィルモア。つまり、そういうことだ」

 

 すると、マクシミリアンは訥々と語り始めた。

 

「人っていうのは面白い。思い込みで上手くいったり、いかなかったりする。例えば、太った体形で中々痩せれない人がいたとしよう。そして、友人はこう言うんだ。”君なら、水を飲んで、後は普段通りの食事をすれば痩せられる”と。その人を信じ込ませるんだ。信じ込んでしまったその人は数週間後、あら不思議、スリムな体形に痩せてしまったんだ。特別に運動したわけでもない、ただ水を飲んで、いつものような生活を送っている。それだけで、だ」

 

「…………」

 

「先のマーティン元・大統領もそうだ。彼には学も、教養もなかった。生まれも上流階級ではない。にもかかわらず、彼はやがて、大統領になったんだ。まぁ、多少は学や教養を身に付けたんだろが……それでも粗野な人物だったらしい。当時、上流階級の人間が大統領になれるというのが常識だった時代、いや、今もだが、彼はその常識を破ったんだ。”根拠なき思い込みで”」

 

 マクシミリアンは、ニヤリと口の端をつり上げながら、話を続けた。

 

「俺の場合、サイラスとアンタに対し、そこにイブちゃん達がいると”思い込ませたんだ”。もちろん、魔術でそう仕向けたんだけどな。そして、思い込んでしまったアンタは、本当は誰もいない所に、【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】を撃っていたのさ」

 

「そんな、馬鹿な……ッ!?」

 

 マクシミリアンのタネ明かしに、イリアは未だ信じられない顔で、狼狽える。

 

「確かに貴様のその魔術は、恐ろしいものだ。だからこそ、我々はお前を警戒していた!見逃す筈が――」

 

「そう、勘の鋭いアンタは見逃す筈がない。だから、もう一品、用意していたんだ。な?イヴちゃん」

 

 すると、イヴが指を立て、その指先に、ぽっと小さな炎を灯す。

 

「そうよ。まさか、幻術が貴女の専売特許だとでも思った?熱と炎を極めたイグナイトを舐めるんじゃないわよ。秘伝【火幻術】――火の揺らめきで、相手へ催眠をかける。そんな魔術もあるの。……秘伝の奥の手だけどね」

 

「火の揺らめき!?ま、まさか、最初にあのモノリスを燃え上がった炎は――ッ!?」

 

 イヴの【火幻術】は、イリアの対人【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】のように、その存在を知って、精神的防御を予め強固に構えていても、それを貫通して幻術に嵌めてしまうほどに強力な幻術ではない。それが幻術だと意識・認識していれば、破ることは容易。

 

 要は普通の幻術である。ただ、火を使って嵌めるという部分が特殊なだけの。

 

「ご明察。あれでアンタ達の俺達に対する認識を誤魔化したんだ。その隙に、俺がアンタらの認識を弄ってそう思い込ませたんだ。大事なことだからもう一度言うけど、あの場所には最初から()()()()()()()()()

 

 幻術は個人を対象に仕掛ける魔術だ。認識していれば破ることは容易だが、意識させなければ、精神の虚を突けば、幻術に嵌めることは容易になる。

 

 マクシミリアンのいう思い込みも、認識させていなければ容易に嵌めることができるのである。

 

「くっ……いや、待て……()()()()()、だと……ッ!?まさか――ッ!?」

 

 マクシミリアンのタネ明かしに含まれた言葉に、イリアは焦燥を露にシスティーナ、ルミア達へと目を向ける。

 

 すると、イヴ同様、虚ろな目で跪いていたシスティーナとルミアの姿が、ない。

 

 祭壇に振り向くと、そこにはリィエルの下にいた。

 

 当然、リィエルを治すためだ。

 

 イリアは一杯食わされたのだと、今ここで認識するのであった。

 

「おのれ、小癪なぁああああああああああ――ッ!」

 

 イヴとマクシミリアンに翻弄され、あまつさえ一本取られ、誇りを傷つけられたイリアが激高し、指先に白い月のような光を灯し、叫んだ。

 

「――【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】ッ!」

 

 が――

 

「――ッ!?」

 

 不発。

 

 【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】は、なぜか起動しなかった。

 

 なぜかというと――

 

「が……あぁああああ――ッ!?」

 

 指先に光を灯した方の腕から血が流れている。

 

 イリアは、突然の痛みに思わず、腕を押さえる。

 

 そこには、指一本分ぐらいの穴が開いており、そこから血が出ていた。

 

 まさかと思い、祭儀室の出入り口を見ると。

 

 そこには伏せた状態で、小銃を構えているジョセフがいたのだ。

 

 銃口から硝煙が上がっていることから、ジョセフが狙撃したのは明らかであった。

 

「お、おのれぇええええええええ――ッ!」

 

 怒りの灯った目でジョセフを睨み付けるイリア。

 

 その時――

 

「――横、気をつけた方がええで?」

 

 マクシミリアンが口の端をつり上げながらそう言う。

 

「――ッ!?」

 

 我に返ったイリアが、突然、気配を感じた方向に振り向くと。

 

「吹っ飛べぇえええええええええええええええ――ッ!」

 

 アリッサが、イリアに向かって烈風のごとくイリアに突進してきたのだ。

 

 小銃を銃口を自分の方に向けている。銃床で相手を殴る時の構えだ。

 

 バットを振るような構え方で、アリッサはイリアに猛速度で突進する、突進する、突進する。

 

 イリアは回避行動をとろうとするが、身体が動かない。

 

 すでに、イリアの身体はマクシミリアンの支配下にあるようなものだった。

 

 イリアがなんとかマクシミリアンの支配下から脱しようともがくが。

 

「ぁああああああああああああああ――ッ!」

 

 アリッサが猛接近し――

 

「あああああああああああああああああ――ッ!」

 

 小銃の銃床でイリアの顔面を殴った。

 

「ぶっ――ッ!?」

 

 顔面に小銃の殴打を食らったイリアは、まるでバットに打たれたボールみたいに水平に吹き飛ばされ――壁に激しく激突する。

 

 そのまま血反吐を吐きながら意識を失い、床に崩れ落ちる。

 

「……ホームラン。アリッサ選手、今ので通算、四本塁打です」

 

 マクシミリアンは、アリッサの姿を流し見て、満足そうに口元を歪めるのであった。

 

 そして、システィーナ達の姿を流し見ると。

 

「システィ、急いで!」

 

「わかってる!このタイプの古代モノリスは……うん、使い方わかるわ!魔導考古学論文で読んだことある!」

 

 システィーナとルミアが、リィエルの下で心霊手術に取りかかっていた。

 

「さて。戦いしか能がない私は、どうするか……?」

 

 隣では、イヴが腕組みしながら、そんなシスティーナ達の背を見送る。

 

「どう!?システィ!」

 

「だ、大丈夫よ!良かった、跡だわ!深層意識部は少し上書きされたけど、まだ表層の人格部分の書き換えには至ってない!今から止めれば絶対、間に合うわ!」

 

「良かった!」

 

「ルミア!あの時みたいに≪王者の法≫を!【ファンクション・アナライズ】で一気に、この遺跡の機能を把握して、リィエルを助ける!」

 

「うん!それに霊域図版も手に入ったから、エーテル乖離症も治療しないとね!」

 

「そっちは……できる?ルミア」

 

「任せて!セシリア先生に教えてもらったから!」

 

「まぁ……どのみち、もう俺達の出る幕はないな。……まったく、頼もしい子達で」

 

「……そうね。私達の出る幕はなさそうね」

 

 不思議と勝利を確信して。

 

 マクシミリアンとイヴは、通信魔導器を取り出し、耳に当てるのであった――

 

 

 

 

 

 それは――まったくの同時、だった。

 

 グレンの繰り出した全身全霊の右拳打が。

 

 アルベルトの繰り出した身魂心骨の左拳打が。

 

 空気を切り裂いて唸りを上げる拳と拳が、肘と肘で交叉し、まったく寸分違わない同時タイミングで互いの頭部を捉えたのだ。

 

 タイミングは互角。されど、格闘技量で、体格差で、腕力差で、魔力量で、これまでの戦いで蓄積した疲労度と損傷度。

 

 ありとあらゆる条件でグレンが不利であり、アルベルトが有利だった。

 

 タイミングが同時ならば、それらが如実に物を言う。

 

 グレンが押し負け、アルベルトが押し勝つ。それが道理。

 

 だが。

 

 それでも。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――ッ!」

 

 グレンが――吠える。大気が鳴動せんばかりに漲る気迫。

 

 あり得ないことが――起きる。

 

 ゆっくりと。

 

 ――ゆっくりと。

 

 グレンの拳が――アルベルトを押し込んでいって――押し込んでいって――

 

「ぉおおおぁあああああああああああああああああああああああああああああ――ッ!」

 

 そして――ついに振り抜かれる。

 

「――ッ!?」

 

 競り負け、殴り飛ばされた勢いで、水平に吹き飛ばされるアルベルト。

 

 そのまま、その背中が建物の尖塔の壁に叩き付けられ、その壁が砕け――

 

「――ぐっ……ぅ……ッ!?」

 

 ずるり、と。壁に背を預ける形で、アルベルトは力なく崩れ落ちるのであった。

 

「……へっ!どうだ……ッ!?参ったか、このヤロぅげほっ!ごほ!?」

 

 拳を掲げ、グレンが勝利を宣言する。酷い有様だ。無数の打撲や擦り傷で顔を腫らし、全身痣だらけでフラフラ、膝はがくがくと笑っている。

 

 だが、それでも最後に立っているのは、グレンであった。

 

「ぜぇ……ぜぇ……ごほっ……くそ、身体が、動かん……何故だ……?何故、俺は負ける……?俺の信念が……背負う覚悟が……足りないと言うのか……ッ!?」

 

 同じく満身創痍のアルベルトが俯いたまま、絞り出すように呟く。

 

「一体……な……ぜ、だ……?」

 

 すると、グレンはこともなげに答えた。

 

「へっ、そんなん決まってるだろ?お互いにゴチャった荷物下ろしゃ、お前はリィエルを切るために、俺はリィエルを守るために戦ってたんだぜ?」

 

「……それが……どうした?」

 

「わからねえのか?男は可愛い女の子のために戦う方が強ぇって、昔から相場が決まってんだよ」

 

 そんなことを真顔で堂々と言われて。

 

 しばらくの間、アルベルトは呆気に取られたように、目を見開く。

 

「ふん。どうやら……幻などではない、まさしく本物だったようだ。……俺に勝てるお前が、幻な筈が無い」

  

 やがて、アルベルトは観念したように目を閉じて……

 

「……お前には敵わん。……俺の完敗だ」

 

 どこか吹っ切れたように、口元を歪めるのであった。

 

「……アルベルト?」

 

 グレンは、そんなかつての相棒を見る。相棒を殴りつけた拳を改めて見る。

 

 やはり――不本意であったのだろう。九を救うために一を切る。その鋼の精神でそれを実践しようとしても、己を犠牲にする覚悟は固めることができても。やはり、心の底のどこかで、仲間のリィエルを切ることには抵抗があったのだ。

 

 それが、最後の最後の一歩の踏み込みに、ほんの僅かに現れた。

 

 だからこそ、絶対勝てないはずの競り合いを、グレンが制することができたのだ。

 

(まったく……あの最後の一歩を、微かとはいえ躊躇う情の深ぇ男が、九を救うために一を捨てて、心が痛まない筈がないだろうによ……)

 

 だが、誰がそんなアルベルトを責められるか。

 

 帝国旧手魔導士団特務分室は、過酷な職場だ。その身と心は、どこまでも残酷な現実の前に、常に摩耗していく。

 

 頑なに十を救う正義の魔法使いであろうとしたグレン。頑なに九を救うために一を切る偽悪者であることを決意したアルベルト。名誉と手柄に固執したイヴ。戦いをギャンブルのように楽しむバーナード。女王陛下を盲信するクリストフ。独善的な正義を貫くジャティス……皆、どこか歪まないとやっていられなかったのだ。

 

 それでも、皆、人を救うために、戦わなければならなかった――

 

(アルベルト……こいつは、今までずっと一人で背負って、耐え続けて来たのかよ……ガキで未熟だった俺の分まで引き受けて……俺が逃げ出した後も、ただ黙って……)

 

 そう、アルベルト=フレイザーという男はそんな強さを持つ男だった。

 

 だが、決して倒れない大木など、この世界にはない。

 

 今は一人で耐えうる強さを持っていても、いつかは……

 

「……この馬鹿野郎。……馬鹿野郎が……」

 

 呆れたように、そう言い捨てて。

 

 グレンはその場に大の字になって倒れ、遠い夜空を見上げるのであった。

 

 ……と、その時だ。

 

 きぃん、きぃん、きぃん。不思議な金属音がグレンのポケットから聞こえた。

 

「お?そろそろだと思っていたぜ。……上手くいったか?」

 

 アルベルトの話を中断し、グレンが力の入らない手をなんとか動かして、宝石型の通信魔導器を取り出し、耳に当てる。

 

「……イヴか?……そうか。それで?首尾は……、……、……ああ。お前らなら、やってくれると思ったよ……ああ、こっちも上手くいった。……アルベルトのアホ?ああ、ったく、ようやく大人しくなったよ……ああ、その通りだ……」

 

 しばらくの間、グレンは宝石越しに会話をして。

 

 やがて通信を切り、アルベルトへ言った。

 

「安心しろ。アルベルト。終わったよ。……サイラスとイリアは、イヴ達とデルタが潰した。……リィエルも無事だ」

 

「……、…………そうか」

 

 ぼそりと。感情の色を見せずに呟くアルベルト。

 

「だから、言ったろ?……俺を……俺達を信じろって」

 

 グレンは空を見上げたまま、そう投げやりに呟くのであった――

 

 

 

 

 








次で、ラストです。
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