ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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 ラストです。どうぞ


173話

 

 …………。

 

 ……崩れていく。

 

 ううん、元通りに戻っていく、と言うべきなのだろうか。

 

「お別れだね、リィエル」

 

 一体、何があったのか。

 

 わたしの世界を塗り潰していた、ひめの世界がゆっくりと崩壊していく。

 

 わたしの大好きな世界が、徐々に元の形を取り戻していく。

 

「えらい、えらい……キミはよく頑張ったよ」

 

 わたしを抱きしめ、頭をなでてくれるひめの姿は、少しずつ、ゆっくりと、ゆっくりとその存在が希薄になっていく。

 

「キミがこうしてキミ自身を……キミの世界を失わずに済んだのは、キミ自身の強さと想いのおかげだよ。もし、キミが強くなかったら……キミがキミの世界を好きでなかったら……キミの世界は、もうとっくの昔に壊れていたか、もしくはボクがキミになっていたか……どちらにせよ、キミはキミでいられなかった」

 

「……そう。わたしにはよくわからないけど」

 

 わたしは頭を振って、ぼそぼそと呟く。

 

「でも、それは……多分、わたしの力じゃない」

 

「……?」

 

「よくわからない糸を通してわたしに力をくれた、クラスの皆の声が聞こえたから。わたしを必死に助けようとしてくれたシスティーナやルミア……後、ついでにイヴやジョセフやアリッサの存在も近くに感じられたから……」

 

 そして。

 

「……それに……多分、グレンがわたしを助けてくれたから。だから、わたしは……」

 

「そう。……そうだね。キミは空っぽじゃない。もう大切な物がたくさんあるんだね。……大切にしてね。守ってあげてね」

 

 すると、ひめがそっとわたしから離れていく。

 

「となると……あはは、ボク、完全にお節介のお邪魔虫だったなぁ……そもそも、ボク、キミの世界を崩壊させる病原菌みたいなものだったし……たはは、英雄失格だね」

 

 ひめが曖昧に、ちょっと気まずそうに笑った。

 

 だけど、わたしはそんなひめに言った。

 

「ひめも。……ひめもいてくれたから」

 

「……?」

 

「ひめが励ましてくれたから……だから、わたしはわたしでいられた。だから、ひめのおかげ。……ありがとう」

 

「…………そう。なら……ボクもキミの前に現れた甲斐があったかな……」

 

 そんなひめに、わたしは一つ疑問をぶつけた。

 

「ねぇ。なんで、ひめはわたしを助けてくれようとしたの?だって、わたしとひめ、会ったこともないのに」

 

 すると、ひめは困ったように頭上を見上げ、言葉を選ぶ。

 

「うーん……生まれつきそういう性分ってのもあるんだけど……やっぱり、一番大きいのは、キミが彼女に似ているからかな?」

 

「かのじょ?」

 

「うん、彼女はね、もの凄く怖い魔女でね……自分は空っぽで何もないと、やけっぱちになっててね……ボクはそんな彼女の世話をよく焼いていたんだ」

 

「そう」

 

「キミも、自分自身のことを空っぽで何もないって思ってて、あっさり諦めそうだったからね……つい。……それだけ」

 

 そう言うと。

 

 ひめの存在が急速に希薄になっていく。

 

 身体が光の粒子となって砕け、どんどんと消滅していく。

 

「あ、あちゃあ……いよいよボク、本格的に駆除されちゃうみたい……まぁ、今のボクはただの精神データだしね。キミにとっては害悪以外の何者でもないし、仕方ないね」

 

「そう……残念。わたし……もう、ひめには会えないの?」

 

「……どうかな?キミはどうやら、ボクだった魂の一部を持っているらしい。多分、こうして話せるのもそのおかげ。相性がいいんだ、ボクとキミは。だから、キミの中のどこかにボクという存在は、ほんの少しだけ残る……かもしれない」

 

「……そう。じゃあ、残るようにがんばる。……よくわからないけど」

 

「ふふっ、ありがと」

 

 すると。

 

 ひめは、くるりと背を向けた。

 

「……じゃ、お別れだね。さようなら、リィエル」

 

 そうして、ひめはその存在を崩しながら、眩い光の中へ向かって歩いて行く。

 

「……待って」

 

 最後に。なぜかどうしても聞きたくなったことを、わたしはその背中に聞いた。

 

「ひめ。あなたの本当の名前は……なんなの?」

 

「!」

 

「多分……名前を知らないと、わたし、あなたのこと覚えられない……そんな気がする」

 

「そっか。そうだなぁ……」

 

 すると、ひめは何かちょっと気恥ずかしそうに迷った。

 

「どうしようかなぁ?贔屓目に見ても、ボクの名前は今頃、きっとそれなりに有名になっているはずだろうし、きっと教科書にも載って……ああ、でも今は聖歴何年?ひょっとしたら、もう皆、すっかりボクのことを忘れ去って……?うぅ……英雄の名前が風化するのは平和な証拠なんだけど、それはそれで寂しい……」

 

 そんな風に、少しの間、ひめはぶつぶつ自問して。

 

 やがて、少しだけ誇らしげに、わたしに言った。

 

「……エリエーテ。ボクは≪剣の姫≫エリエーテ=ヘイヴン。音に高き≪灰燼の魔女≫の相方を務めた、帝国史上最強と謳われた剣の――」

 

「なんか長い。やっぱ、ひめでいいや」

 

「……ちょ!?んもう、キミってやつは……」

 

 なぜか、ひめは転びそうになって、呆れたように頭をかいて。

 

「まぁ、それじゃ……改めて、さようなら、リィエル。また、いつか」

 

 光の中へ消えていく――

 

 ――わたしはそれをじっと見つめながら、見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 ――。

 

「……リィエルはどうやら無事に済んだようやな。リィエルを救い、サイラス達を止めたことで、≪星≫さんの使命も果たせたし、俺達の任務も完了した」

 

 時間が経って、リィエルの下へ向かいながら、呟くジョセフ。

 

「帰ったら、ウェンディにぶたれるなぁ……本当に、ごめんな……」

 

 やがて、リィエルの下へ歩み寄り、リィエルの頭を撫でた。

 

「ねぇ、ジョセフ。そろそろ教えて頂戴。貴方達は一体、何していたの?」

 

 システィーナの問いに、ジョセフはしばらく黙り、やがて口を開いた。

 

「……結論から言うと、≪星≫さんが女王陛下暗殺をしかけたというのは……大嘘だ。本当は暗殺しようなどしてないし、≪隠者≫さんと≪法皇≫さんも殺していない。つまり、狂言ってことさ」

 

 でしょうね。システィーナ達は安堵の息を吐いた。

 

「現在、帝国軍と連邦軍では、女王陛下の勅命ならびに大統領の命令の下、とある極秘任務が遂行されているんや」

 

「極秘任務?」

 

「そう。それは――蒼天十字団の壊滅」

 

「!」

 

 システィーナとルミアがジョセフの横顔を見ると、ジョセフは淡々と説明を始めた。

 

「蒼天十字団……帝国政府の裏機関ながら、天の智慧研究会と裏で繋がっているという、いわくつきの組織や。……まぁ、聖リリィの時にマリアンヌがリィエルを連れ去ろうとした時の組織や」

 

「蒼天十字団……聖リリィの短期留学の時、マリアンヌがリィエルとエルザを連れ去った事件で聞いた組織……やっぱり存在していたのね」

 

「天の智慧研究会と繋がっていたというバートレイ卿の死後、卿が密かに運営していた蒼天十字団――今まで闇に包まれていたその存在が、少しずつ明るみになってな。そして、D.Cは中央情報局からある情報を得ることができた。それは特務分室の新室長サイラスが、蒼天十字団の団長、そして、その子飼いの≪剛毅≫のファーガス、≪太陽≫のニコル、≪節制≫のシャルロッテ、そして、≪月≫のイリアが、そのメンバーである可能性が浮上したんや。……限りなく黒に近いグレーでな」

 

「…………」

 

「団長であるサイラス逮捕・告発すれば、帝国は政府機関の裏側に隠れる蒼天十字団の全容が明らかになるし、連邦はそれを通して、天の智慧研究会の情報を得られる可能性がある。そして、蒼天十字団を潰せる。だが、証拠が無い」

 

「なるほど。だから、アルベルトが女王陛下を暗殺したという狂言を仕組んだのね?」

 

「そうです。女王陛下暗殺未遂……そして、≪星≫さんの連邦への亡命。そんな狂言を引き起こし、俺達はサイラス達を帝都から引き離す。その間に、奴さんに縁のある各所を、帝国軍は限られた精鋭で打入捜索し、証拠を掴む。そして、その全容を明らかにした所で、帝国軍と海兵隊を中心とした連邦軍と合同で、蒼天十字団を――潰す」

 

「だが、その計画の前段階で、厄介な問題が発生した。それが≪戦車≫がエーテル乖離症で倒れたこと、そして、サイラスが≪戦車≫とシオン・ライブラリー――≪戦車≫の霊域図版を使って、『Projecrt:Revive Life』の真の完成を目指し、準備を進めているということ」

 

 ジョセフの言葉を引き継ぐように、マクシミリアンが言った。

 

「真に完成した『Projecrt:Revive Life』を使えば、かつて帝国に名を馳せていた英雄達を蘇生し放題になるらしい。連中の裏には天の智慧研究会もある。もし、そんな物が成り、天の智慧研究会へ流出してしまえば……帝国は終わりだし、連邦も甚大な被害を被る。……仮令、蒼天十字団を潰せたとしてもな」

 

 ようやく、イヴ達にも話の全容が見えてきた。

 

「だから、アルベルトは、あえてここ、マレスに陣取り、サイラス達から神殿を守っていたのね。その計画を妨害するために」

 

「ご名答。俺とジョセフとアリッサがここに来たのも、サイラスと子飼いの連中をここに誘き寄せて、計画を潰すためだったというわけさ」

 

 そう、証拠を掴むために、サイラスを帝都から引き離し、その目をひきつけるだけなら、各地を転戦していれば良かったのだ。一か所に――ましてや、こんな所に留まる必要はない。 

 

 だが、サイラスの計画だけは、どうしても防がなければならなかった。

 

 だから、仲間が蒼天十字団の証拠を秘密裏に押さえるまでの時間稼ぎをしつつ、サイラスの計画を妨害・阻止しなければならなかった。

 

 もし、サイラスが帝国と連邦の極秘計画に感づけば、帝国内部の蒼天十字団達は一斉蜂起して抵抗してくるだろう。真に完成した『Projecrt:Revive Life』を得るためならば、天の智慧研究会の外道魔術師共も出張ってくるかもしれないし、連邦も黙っているわけがない。

 

 そして、帝国軍・連邦軍と全面衝突すれば、夥しい被害が発生したことだろう。

 

 ゆえに、アルベルトとジョセフ達は、グレン達を裏切るという役をあえて演じなければならなかったのだ。

 

「極秘で言えなかったとはいえ、何も言わずに去ってしまい申し訳ありません、イヴさん、システィーナ、ルミア。本当にご心配おかけしました」

 

 ジョセフとアリッサはベレー帽を脱ぎ、イヴ達に頭を下げる。

 

「……ふん。別に心配してないし?それに謝るなら、ウェンディに謝りなさい。彼女、相当取り乱していたんだから。まぁ、ぶたれるだろうけど、覚悟しなさいな」

 

「ですよねー。うへぇ、勘弁してくれ~」

 

 イブの突き放すような物言いに、ジョセフは溜め息交じりに呟く。

 

 そして、グレンとアルベルトの下にイヴ達とデルタは向かう。

 

 こうして、空に輝く月が見守る中、今回の騒動は幕を閉じるのであった――

 

 

 

 

 

 ――その後。

 

 帝国宮廷魔導士団特務分室・新室長にて、蒼天十字団サイラスの野望を退け、その隙にサイラスと蒼天十字団、天の智慧研究会の繋がりを看破した帝国政府は、同じく看破していた連邦政府の支援のもと、帝国魔導省の各機関を隠れ蓑にして存在していた蒼天十字団を一斉検挙することに成功した。

 

 この蒼天十字団撲滅作戦の際、帝国軍統合参謀本部長アゼル=ル=イグナイト卿が、卓越した作戦指揮手腕を見せ、帝国軍に所属する軍人達はこぞってイグナイト卿を英雄扱いし、イグナイト卿の帝国政府内における影響力と発言力はますます高まることになる。

 

 蒼天十字団こそ、アルザーノ帝国が常に天の智慧研究会に出し抜かれる大きな一因でもあったため、天の智慧研究会との長きにわたる熾烈な戦いに終止符を打つ日も見え始め、政府関係者は喜びに沸き立ち、イグナイト卿の歴史的偉業を讃えることとなった。

 

 中には、現・女王陛下よりも、イグナイト卿の方が、アルザーノ帝国を統べる王に相応しいのでは?そう唱える者も散見されるようになる。

 

 イグナイト卿は王家の遠縁だ。冗談にならない流れが、あまりにも英雄的業績を上げ続ける、かつ、現在外交面で連邦に主導権を握られつつある状況を打破できる存在になりうるイグナイト卿を中心に、帝国政府上層部に渦を巻きつつあったのである――

 

 だが。

 

 帝国上層部や民衆達が、そんな輝かしい勝利に沸き立つ中――連邦政府はこの冗談じゃない流れになりつつあった状況に、特段、懸念も何の反応も示さなかった。

 

 特にこの情報を真っ先に受け取った、アメリカ連邦中央情報局長官アレン=べデル=ヴァンデンバーグはむしろ歓迎しているように微笑むのであった。

 

「ありがとう、イグナイト卿。卿のおかげで、我々は必要最小限で必要なデータを手に入れることができた。本当に感謝するよ。ありがとう」

 

 アレンの執務机には一つの魔晶石が置いてあった。

 

 そんな帝国上層部と連邦中央情報局の、不穏な動きなど露知らず――

 

 

 

 

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおお――ッ!リィエルちゃああああんっ!」

 

「お帰りぃいいいいいいいいいいいい――ッ!」

 

 フェジテのアルザーノ帝国魔術学院に帰還するや否や。

 

 リィエルは、駆け寄ってきたクラスメート達に、もみくちゃにされることとなった。

 

「はぁ……まぁ、もみくちゃにされちゃって」

 

「……そうね」

 

 グレン達に続くように、ジョセフ達を乗せた槍騎兵が着陸する。

 

 神鳳よりも一際大きい黒鳥に、生徒達は一瞬驚き、後ずさる。

 

 やがて、着陸した槍騎兵からジョセフ達が地上に降り立つと。

 

 生徒達の輪の中から、一人の女子生徒がジョセフに向かってきて。

 

 やがて。

 

 ぱんっ!

 

 女子生徒――ウェンディが突然ジョセフの頬を平手で張った音が響き渡り、一同が思わずぎょっとするが……

 

 次の瞬間、ウェンディはジョセフの身体を、固く抱きしめていた。

 

「~~~~~~ッ!~~~~ッ!」

 

 ウェンディが涙ぐみながら、ジョセフに何事かを捲くし立てる。

 

「ごめんな……本当にごめんな」

 

 抱きしめられるままのジョセフも、ウェンディの頭をなでながら、謝る。

 

 そんな姿を見て。

 

「……今日はずっと傍にいとけ」

 

 グレンがジョセフの肩を叩きながら、そう言った。

 

「……わかってます」

 

「そして、明日、一発殴らせろ」

 

「おい、ちょっと待て。おい」

 

 途端、グレンがロクでもない顔でそう言い、ジョセフが待ったをかけた。

 

「なんで、先生にまで殴られなきゃいけないんですかね?確かに、コイツを泣かせたのは悪かったですよ。でも、先生に殴られる覚えはないですけどね」

 

「何を言っている。女の子を泣かせただけで、罪だし、有罪だ!というわけで、殴らせろッ!」

 

「意味わからんわッ!?」

 

 ジョセフのツッコミもむなしく、グレンが拳をパキポキすると。

 

 途端、グレンの周りに無数の光の剣が突き刺さった。

 

「あ、あの~……アリッサさん?これはなんですか?」

 

 一体、誰からなのかがわかったグレンが、脂汗を流しながら、アリッサに振り返ると。

 

「≪死ね≫」

 

 ちゅどぉおおおおんっ!

 

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ――ッ!?」

 

 アリッサがそう呟くと同時に、一本の剣から誘爆するように盛大に爆発し、グレンがお空の彼方へ吹っ飛んでいくのであった。

 

 リィエルが倒れてから一週間以上。学院に再び日常が戻るのであった。

 

 

 

 

 

 そして――

 

 そんな魔術学院があるフェジテから発った、一台の車の車内にて。

 

「どうでしたか?准将」

 

 運転席に座って運転していたシュタイナーが、後部座席で外の景色を眺めていたマクシミリアンに問いかけていた。

 

「ああ、≪星≫の討伐部隊に紛れていたよ。恐らく、最初からな」

 

 マクシミリアンは、視線をそのままにしてそう言った。

 

「中央情報局の奴ら、サイラスの部隊に紛れて隙を見て、≪戦車≫に密かに接近していた。間違いなく『Project:Revive Life』関連だろう」

 

「しかし、連中、なにが目的でそんなことを?」

 

「さぁな。噂なのだが、連中は新兵器か何かを開発しているらしいが……それと『Project:Revive Life』……一体、何が関係があるのやら」

 

 溜め息を吐いて、中央情報局の意味不明な行動に頭を悩ませるマクシミリアン。

 

「イグナイト卿の動きも気になる。シュタイナー、サイラス達はどうだ?」

 

「サイラスは、≪剛毅≫≪太陽≫≪節制≫共々、何者かに獄中で暗殺されました。≪月≫のイリアは、脱獄、行方がわかりません」

 

「わからないと言うより、そこに最初にいなかったかのようになっていたんじゃないか?なんせ、何重にも幻術を重ねているだろうしな。恐らく、サイラス達を暗殺したのはイリアだ。イグナイト卿の命令だろう」

 

 恐らく、不良債権になった蒼天十字団の息の根を完全に止めるために暗殺をしたのだろうとマクシミリアンは推測する。

 

 バートレイ卿を殺害したのも、蒼天十字団を一時的に牛耳ったのも、蒼天十字団が所有する、真なる『Project:Revive Life』――【英霊再臨の儀】の雛形を手に入れるため。

 

 サイラス達蒼天十字団を潰したのは、不良債権になってしまい、もう用済みだったから。そして、大衆に対し”強き指導者の下、皆で力を合わせて陰謀を打ち砕いた”という物語的な事実を示し、大衆の心を掴むこともできる。いや、出来ている。

 

(この行動から見て、イグナイト卿がクーデターを企んでいる可能性がある。そして、イグナイト卿に気付かれずに中央情報局は便乗している。己の企みを実現するために)

 

 イグナイト卿の不穏な動き、中央情報局の不気味な動き。

 

「……今回の事案、かなり深い裏があるし、これらが何時かなんらかの形で顕現するかもしれんな。……はてさて、どうなることやら」

 

 フェジテから帝都に向かう車の後部座席にて。

 

 マクシミリアンは誰へともなく、景色を見ながらそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 







 次回から、14章に突入します。
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