ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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それでは、どうぞ。


198話

 

 

 

 

 

 ――疾駆する。

 

 アリッサがフィールドの壁に沿うように、疾駆する。

 

 肩で風を切り、軽やかに疾駆しながら、剣を召喚する。

 

「行けッ!」

 

 アリッサのその一声と共に一直線に飛ぶ、無数の剣。

 

 それが、残像を生むような速度で突進してくるチェイスを捉える。

 

 無数の剣がチェイスの直前まで迫ったその時、アリッサは指を打ち鳴らすと、無数の剣が盛大に爆発する。

 

 上がる爆炎、大気を震わす轟音。

 

 灼熱の火柱が、空を焦がさんばかりに上がるが――

 

 それが左右真っ二つに割れた。

 

「――ッ!?」

 

「甘い」

 

 炎を割り裂いて、チェイスの姿が現れる。

 

 なんと、あの爆発を凌いだばかりではなく、その後の炎を、チェイスの双剣が鋭く斬り裂いたのだ。

 

 爆発後にうねる超高熱の炎などまるで意に介さず、チェイスがアリッサへと迫ってくる――

 

 みるみる詰まる間合いを嫌い、アリッサが跳躍する。

 

 フィールド場から観客席のへりに降り立ち、さらに跳躍。

 

「ちっ……ッ!」

 

 爆炎を切り抜けて迫って来るチェイスに舌打ちし、アリッサはさらに剣を召喚する。

 

 今度は自分の周囲に召喚というわけではない。

 

 今度は、空から無数の剣が、まるで激しいスコールのごとく降り注いでくる。

 

 さっきの一点集中の攻撃ではなく、広範囲面制圧の攻撃だ。

 

 これだけの数の攻撃、いくらなんでも捌ききれるはずがない。

 

 守るしかない。足を止めるしかない。

 

 だが――

 

「はぁああああああああああああああ――ッ!」

 

 チェイスはその双剣を縦横無尽に振るう。刹那に稲妻が閃くような無限の剣は、自分に降り注ぐ剣の悉くを、的確に撃ち落とす。

 

 チェイスの突進は止まらない――蝿でも払うかのように剣の驟雨を払いのけ、アリッサに迫る。まっすぐ、まっすぐ、まっすぐ――

 

「クソが……ッ!」

 

 アリッサは今度は四方八方から剣を召喚する。

 

 前から、後ろから、左から、右から、はたまた上からも。

 

 しかも、それらの剣は触れたら火傷では済まないくらいの真っ赤に燃えていた。

 

 それらが一斉に、迫り来るチェイスを正面左右、上から蜂の巣にせんとばかりに襲った。

 

 だが、それすらも――

 

「し――ッ!」

 

 チェイスは剣を縦横無尽に振り、蹴散らしてしまう。

 

 アリッサが召喚した剣を悉く破ったその現象は、魔術や何らかの神秘によるものではない。

 

 ――腕力。あまりにも原始的で無骨、さながら無駄がなく、それゆえに隙もない純然たる”力”によるものだったのだ。

 

 流石にあれだけの無数の剣を撃ち落としたせいで、剣は真っ赤に燃えて、どろどろに溶解しつつあったが――

 

 チェイスがそれを捨て、何かを念じる。

 

 すると、足下の影が、立体的にチェイスの手元へと伸びていって――変質。

 

 影から創出した二振りの剣を携え、チェイスはアリッサへと鋭く斬り込んでいく――

 

(なんて、やつなの!)

 

 アリッサは駆ける足を止めず、物思う。

 

 吸血鬼についての知識を、脳内に爆速で走らせる。

 

 吸血鬼と対峙した時、警戒すべき能力は――即ち不死性、再生能力、吸血行為による眷属化、影を操る力、毒の力、変身能力、魔眼、絶大なる闇の魔力、元素支配――そのどれもが人を超える、恐るべき規格外の力。

 

 だが、そんな数々の力を押しのけて、もっとも警戒すべきとされている力がある。

 

 それこそが――()()()()

 

 その意味を、アリッサは、ここで初めて悟る。

 

「はぁああああああああああああ――ッ!」

 

「――ッ!?」

 

 悟った瞬間、気付けばすぐ真横にチェイスの姿があった、剣を振りかざし、アリッサを完全にその剣の間合いに捉えている。

 

(――速い!?しま――)

 

 悔恨している暇も無い。

 

 容赦なく振り下ろされようとするチェイスの双剣。

 

 同時に薙ぎ払い、アリッサの身体が四つに解体されるという凄惨で最悪の光景が現出しようとした、その時。

 

「――ッ!?」

 

 チェイスが目を微かに見開く。

 

 チェイスの視界が一瞬、真っ白になる。

 

 その直後に、大気を震わす轟音が鳴り響く。

 

 そして、視界が元に戻ると、そこにはアリッサはいなかった。

 

 その刹那――鋭い風切り音。閃く閃光。三閃。

 

 どす、どす、どす。

 

 チェイスの背中に、光が灯っている剣が三本突き立った。

 

「貴方の目を眩ませてもらったわ。そう簡単に喰らうわけないでしょう?」

 

 見れば、観客席のより高所に、アリッサが陣取り、チェイスを見下ろしていた。

 

「お見事。……これが連邦か」

 

 特に気にした風もなく、チェイスがその真紅の目でアリッサを見上げる。

 

「恐ろしいほど緻密で高威力……おまけに変幻自在である帝国の魔術。これと共に絶妙に組み合わさっている連邦の科学。直接法力をぶつける、パワー一辺倒の法術ではこうはいかない。なるほど、王国が連邦に惨敗するわけだ」

 

「時代遅れなのよ、レザリアは……連邦にいたら、改めてそれを実感するわ」

 

 不敵に言いつつも、アリッサは内心の驚愕と動揺を禁じ得ない。

 

(何なのよ……こいつ……ッ!?)

 

 今、アリッサがチェイスの背中に撃ち込んだ短剣は、不浄を滅する浄化の光をありったけ付呪した代物だ。

 

 これぞ、レノ家代々に受け継いでいる秘伝【聖光の短剣】。並の吸血鬼ならば、一本で何回も滅ぼせるくらいの浄化力を持っていると自信を持って言える。

 

 だが、触れれば不死者をたちまち灰に帰すその短剣を、チェイスは無造作に背中へ手を伸ばして掴み……引き抜いていく。捨てていく。

 

(まるで効いてないじゃない……)

 

 チェイスが吸血鬼という話を思い出して撃ち込んだ【聖光の短剣】だが……これが、わりと切り札だったのだ。これがまったく通用しないとなると……アリッサが苦い顔で舌打ちする。

 

「仮にも真祖の末席だからね。普通の吸血鬼達とは違うんだ。陽の光も苦手なだけで、致命的ではないし。僕を倒すつもりなら”釘”でも持ってこないと」

 

「……釘?」

 

「まぁ、ただの魔術師に過ぎない君じゃ、僕に勝てないってことだ」

 

 チェイスがアリッサを見上げながら、悠然と剣を構える。

 

「しかし、惜しいな。君のその卓越した戦闘技量……多分、僕が人間だったら、君の勝ちだったんだろうけどね」

 

「うっさいわね!黙りなさいよ、この変態吸血鬼!」

 

 アリッサが無数の剣を背後に召喚する。

 

 それを、すぐさまチェイスへ容赦なく襲わせる。

 

 観客席の一角が大爆発を起こして、爆炎が巻き起こり、容赦なくチェイスを呑み込む。

 

 だが――

 

 ざざざ――その爆炎の中から黒い霧が現れ、移動していく。

 

 やがて、その黒い霧はとある場所でわだかまり、形を作る。

 

 現れたのは、まったく無傷のチェイスであった。

 

「何度やっても無駄だ。君に勝ち目はない。それでも戦うのか?」

 

「貴方達が手を出さなかったらこんなことにならなかったのにね。……でも、これが仕事だから仕方なく、ね」

 

 いかにも嫌そうに吐き捨てるアリッサ。

 

 本当はこんな奴と相手するなんて心底うんざりするし、出来ることならば、徹底的に解体して二度とこの世に現れないようにしてやりたい気持であった。

 

「そうか……なら、こちらも全力でお相手しようか」

 

 すると、チェイスの足下に沼のように濃厚な影が、侵食するように広がった。

 

 そして、その影の沼から”何か”が次々と出現する。

 

 それは狼だったり、鳥だったり、蛇だったり……ありとあらゆる動物達を形取った影の大群であった。

 

 実体化した黒い魔獣達が、次々と際限なく出現し、アリッサを取り囲んでくる。

 

「…………」

 

 アリッサは冷静に、そんな影の魔獣達を睥睨しながら、剣を召喚すべきポイントを脳内検索する。

 

「僭越ながら、吸血鬼の闘争というものを教授させてもらうよ。……行くぞ!」

 

 そう言って。

 

 チェイスが再び、双剣を閃かせ、アリッサに向かって突進してくる。

 

 同時に影の魔獣達が、アリッサ目掛けて、動物という規格を超えた恐ろしい速度とパワーを以て、一斉に押し寄せてくる。

 

「本当に、ムカつくね、貴方はッ!」

 

 対するアリッサが召喚した剣が風切り音を鳴らして、影の魔獣達目掛けて襲いかかっていった――

 

 

 

 

 

 

「ほーれ、ほれほれほれほれぇ――ッ!」

 

 ジョセフの手練の抜き撃ち、全弾掃射。

 

 連続ファニングによって、吐き出される六発の45口径弾。

 

 ストッピングパワーが強力なその弾には、どんな強靭な身体をしている敵でも、骨に当たれば砕け、内臓に当たれば無事では済まされない威力を持っている。

 

 だが、それを――

 

 六発の弾丸が、ルナの眉間を、左胸部を、腹部を、右手を、両足を穿つが――その悉くが弾き返されてしまう。

 

「あ、やっべ――」

 

「はぁあああああああああ――ッ!」

 

 そんなこと言っているジョセフとの間合い十数メトラを、翼の羽ばたきを以て、一瞬で消し飛ばし、ルナが剣をグレンへ振り下ろす。

 

 その剣には壮絶な法力が漲り、眩い光に輝いている――

 

「うひゃあッ!?」

 

 ジョセフは、それをトマホークで受け流す。

 

 トマホークには、強固に【ウェポン・エンチャント】が付呪されていたが――

 

「ちょ、ちょ、ちょ――ッ!?」

 

 受け流したトマホークから伝わる、これまで経験したことのない、凄まじい剣圧。

 

(まともに受けたら、潰れっぞ、これ!?)

 

 ジョセフの右脇腹を掠めて、地面を穿つルナの剣。

 

「ふ――ッ!」

 

 泳いで勢い余ったルナの腹に、トマホークを猛然と叩きこむが――

 

 ガキンッ!まるで大岩でも斬っているかのようにルナは動じない。

 

 その硬さはむしろ、トマホークが壊れかねないくらいだ。

 

「ちぃ――ッ!」

 

「――ふんっ!」

 

 刹那、ルナが身を翻す。

 

 聖剣がぎらりと光り、横薙ぎ、袈裟懸け、神速で翻り、ジョセフを襲う。

 

「おっとっとぉ――ッ!」

 

 ジョセフは体を捌き、間合いを外し、トマホークで受け流し――それを回避する。

 

 たんっ!

 

 やがて間合いを完全に外し、トマホークを構えなおす。

 

「……ふっ」

 

 ルナは剣を振り抜いた格好で残心したまま、ジョセフへこれ見よがしに笑いかけた。

 

「言っておくけど……今の貴方の攻撃、全部、わざと喰らってあげたわ」

 

「あっ、そう……」

 

 ジョセフはそう言っておきながら、知っていたと内心歯噛みする。恐らく、ルナが全身に纏う超高密度の法力が、その身体を恐ろしく強固なものにしているのだろう。

 

 まぁ、アレさえ使えば、それもなんとかなるわけだが。

 

「あの程度の攻撃……全部、見えてるし、よけられる。本来なら一発たりとも喰らわない。でも、敢えて受けてあげた……この意味わかる?」

 

「格の違いでも見せつけているわけ?」

 

「そうよ」

 

 ルナが剣先を下げ、ジョセフへ真っ直ぐ向き直る。

 

「わかったでしょう?理解したでしょう?貴方は人間、私は天使。規格が違うの。貴方は先の戦争で≪黒い悪魔≫って呼ばれて王国ないじゃ随分と恐れられていたらいしけど、それでも最初から貴方に勝ち目なんてない」

 

「…………」

 

「貴方には、私を止める力がなかった……ただそれだけ。でも、それは別に恥じゃない。世の中、どうしようもないことってたくさんあるもの。だから、退きなさい」

 

 そして、ルナは勝負は終わりだとばかりに、ジョセフへ、ふいっと背を向ける。

 

「何度も言うけど、私、別に貴方達を殺したいわけじゃ――」

 

「富竹フラッシュッ!」

 

 どんっ!

 

 ルナが背を向けた瞬間、猛然とダッシュしたジョセフが、ルナの背中目掛けて、容赦なく跳び蹴りを喰らわしていた。

 

「ぐほへぇ――ッ!?」

 

 流石に背中から急に蹴られて、その威力でゴロゴロと転がっていくルナ。

 

「何すんのよ!?信じられない!普通、敵とはいえ女の子に対してそれやる!?バカじゃないの!?」

 

 ビキビキと青筋を立てながら、ルナが涙目で立ち上がって激憤する。

 

「言っとくけど、平気なだけで、今さっきの結構痛いんだからね!?」

 

「うっせーわ!勝手に勝ち誇って敵に背中向けた奴が悪ぃーんだよ、バーカ、バーカ、ヴァーカッ!」

 

「バカバカうるさいわね!ていうか、バカバカ言うな、バカッ!」

 

 何やら、子供じみた悪口を言い合う二人。

 

「くぁあああああ――ッ!?アンタってグレン=レーダスと同じぐらい、いや、それ以上に気にくわないわ……ッ!」

 

 地団駄踏んで憤るルナ。

 

「もういい!貴方だけは絶対、私がこの手でボコってやる!覚悟なさいよ!?」

 

 すると、ジョセフはそんなルナを油断なく見据えながら、弾倉交換しつつ、しばらく物思い。

 

「……にしても、やっぱりわからんな、アンタらの最近の行動」

 

「……は?」

 

「いや、前々から不思議に思ってたことなんだけどさ、アンタらって、要は、帝国代表選手団を魔術祭典から脱落させたいんやろ?どんな手を使ってでも」

 

「そうよ?いまさら一体、それが――」

 

「だったら、なんでわざわざ先生達の前に現れて、警告なんかしたんだ?」

 

「…………ッ!」

 

 ジョセフの問いに、ルナは目を見開く。

 

「いや、だって、アンタらのやっていることって、わざわざお空に”これから帝国代表の妨害行為をします”って書いているようなもんやで?しかも脅迫するなら女王陛下に脅迫状を送りつければええ話だしな。なぜ、わざわざ警告する必要性もないグレン先生に絡んだんだ?目的もそうだが、行動もいまいち理解できないんだよ」

 

「………ッ!」

 

 すると、ルナが噛みつくように、苛立ったように、ジョセフを睨んでくる。

 

 そして、唾棄するように言った。

 

「人間は――弱いわ」

 

「……?」

 

 前後の読めないルナの言葉に、ジョセフが訝しんでいると、ルナが淡々と続ける。

 

「もちろん、強い人間もいる。英雄と呼ばれるごく一部ね。でも……大多数の人間は弱いわ。どんなに努力しても、どうしても壁を越えられない……私もそうだった……」

 

「…………」

 

「どんなに誰かを守りたいと思っても、力がない限り……人間である限り、どうしようもない状況って多すぎるのよ、この世の中は……貴方もわかるんじゃない?」

 

「…………」

 

「全てを守りたい……最初はそうだった。でも、そのうち、せめて自分の目の届く範囲内だけでもって……そうなった。そうやって少しずつ妥協していって……諦めていって……最後は、せめて自分の大切な人達だけでもって。でも、私は、それすらも――……」

 

 そして、ルナはジョセフを睨む。

 

「だから、私は人間を辞めたのよ……弱い人間であることに耐えられなかったから!」

 

「…………」

 

「今や私はただの決戦兵器!皆が私を化け物扱いしたわ!でも、色んなものを失ったけど後悔はないわ!むしろ、嬉しかったわ!誇らしかった!何の取り柄もない自分に、≪戦天使≫へ転生する資質があったことが――とても嬉しかった!」

 

 そして、ルナはジョセフを――恐らく、グレンに対してもだろうが――まるで親の仇のように睨み付ける。

 

「なのに――なんで、あの男は人間のままでいられるのよ!?あの男だって私と同じように弱い人間のくせに!なんで弱い人間のままで、人を救い続けることができたのよ!?誰かのために戦いつづけることができたのよ!?」

 

 呆気に取られるジョセフにルナが吠える。

 

「見たわよ!グレン=レーダスの軍時代の功績を!今までの功績を!何よ、アレ!?弱い人間である彼がなんで、あれほどの多くの人々を救い続けることができたのよ!?私には無理だったのに……ッ!なんでよ!?ズルいじゃない!ズルいよッッッ!」

 

「…………」

 

「私はあの男のことなんか認めないわ!あの男が、私の邪魔をするなんて許さない!私には守らなきゃならない人がいる!そのために人間を捨てたの!負けられない!あの男にだけは、絶対に、負けるわけにはいかないのよ……ッ!」

 

 すると。

 

 ジョセフは呆れたように溜め息を吐いた。

 

「呆れた……どんな大層な理由かと思えば……ただの言いがかりじゃん」

 

「そうよ、言いがかりよ!悪い!?なんとでも言いなさい!強い人間で、私とは違って失っていない貴方にはわからないでしょうね、私の気持ちがッ!」

 

「……あ?強い人間?何も失っていない?お前、それ本気で言ってるんなら、大馬鹿野郎だぞ」

 

「は!?だって、現に――」

 

「そりゃ、確かに先生の軍時代の書類だけ見りゃ、項目にはさぞかし景気のいいことが踊ってるんだろうよ。だが、その裏で、先生がどんだけのものを零し落としてきたと思っとんや?守りたいものを守れなかったのが、アンタだけだと本気で思ってんの?」

 

「―――――ッ!?」

 

「俺だって、守りたいものを守れなかったし、救いたいやつも救えんかったわ。何も失っていない?馬鹿言うんじゃねーぞ、おい、コラ。去年の秋には母親を失ったし、あの戦争で俺はダチ全員失ってんだぞ?あ?わかる?全員だぞ、全員!今までバカやってきた連中が、あの戦争で死んで、おかしくなって自殺していなくなったんだぞ!中には、骨は愚か、遺留品でさえまだ本国に帰って来ていない連中だっていやがんだ!一年だぞ!?そろそろ一年経とうとしているのにだぞ!?これで、俺が何も失っていないだと?守りたいもの守れなかったのが、てめーだけとは思ってんじゃねーぞ、このドアホ!」

 

 そんなことをルナに吠え、やがて、一息ついてからジョセフは言った。

 

「要は、現実を前に、諦めることができた利口な人間がアンタで……諦めきれなかったバカが先生なんでしょうよ。……ただ、それだけの差や」

 

「諦めなかった……ですって……ッ!?」

 

 がり、とルナが歯ぎしりして、ジョセフを憎々しげに睨み付ける。

 

「何よ……私が間違ってたっていうの……ッ!?」

 

「何をどう聞いたら、そんな風に聞こえんだよ?きっと、アンタが人間辞めたおかげで、大勢の人間が救われたんじゃない?だったら、それでええじゃん。誇ってもいいと思うわ」

 

「それでも……ッ!私は――やっぱり、貴方もあの男も気にくわないわ……ッ!」

 

「話にならん。ガキかアンタは?まぁ、ええわ」

 

 そう言って、ジョセフが静かに身構える。

 

「アンタが何を抱えているのか、四年前に何があったのか知らんけど……こちとら退けないからね。力尽くでもアンタを黙らせる」

 

 そんなジョセフの姿に、ルナが忌々しそうに歯噛みした。

 

「いいわ……絶対に折ってやる……ッ!貴方にも、グレン=レーダスにも打ち勝って……私はあの時の決断が正しかったって証明してやる――ッ!」

 

 そう叫んで――

 

 

 

 

 ――Ya...ALaLaLa,Lala...Ah,YaLaLa,Lagha...♪

 

 

 

 ルナが再び、歌を口ずさみ始める。

 

 曲調が今までとは違う。これまでのように人の心に忍び込む歌ではない。

 

 むしろ、それは自分自身へと捧ぐ歌。

 

 歌と共に、ルナが纏う光の法力が徐々に強くなっていく――

 

「はぁ、マジか……」

 

 ――聞いたことがある。

 

 ≪戦天使≫は、神の名を歌い讃えながら剣を振るうという。

 

 天使言語魔法【賛美歌】。歌っている間、歌い手の能力を少しずつ上昇させていくという、強力な自己強化術だ。

 

 歌を止めると、自己強化は即座に全てを失われてしまうが……逆に言えば、歌が続く限りその上昇幅には際限がない。神話で≪戦天使≫が最強の天使たる所以だ。

 

「ただでさえ、厄介なのに、これ以上、厄介になったらなー……」

 

 そんなジョセフを蔑むように流し見て、ルナが眼で語る。

 

(――どう?絶望したでしょう?諦めて降参するなら今のうちよ?)

 

「……んじゃ、少々早いが、こちらも本気でいきましょうかね」

 

 すると、ジョセフは左手をかざし、何事かを呟いた。

 

(――ッ!?)

 

 途端、ジョセフの左手辺りが一段と闇が濃くなる。

 

 いや、空間から闇の空間が出てきたような感じだ。

 

 そして、その闇の空間から人振りの剣が出てくる。

 

 東方の剣――刀だ。

 

 闇から召喚された刀の鞘をジョセフは左手で握ると、ジョセフに闇が纏っているように見えた。

 

(何よ、あの刀!?この圧倒的な力は……ッ!?こんな代物を持っていたっていうの、アイツは――ッ!?)

 

「さて、ルナさんよ。アンタは時間が経つごとに強くなっていくらしいが、こちらは逆に時間が経つごとに魔力を喰われるからなぁ。ま、どっちにしろ短期決戦になるわけで……」

 

 ジョセフはそう言うと、足を広げ、腰を一段と低くし、右手は柄を握る体勢――居合の姿勢を取る。

 

「さぁ、第二ラウンド開始や。天使とダンスだ」

 

 そして――

 

 ルナが歌いながら剣を振りかざし、翼をはためかせる。早くも【賛美歌】の効果が出始めたのか、先程にも増した猛烈な推進力で、ジョセフへ突進してくる。

 

「来い」

 

 刀を持った途端、身体能力が強化された状態で、突進してくるルナを待ち構える。

 

 二人の間合いが縮まる。どんどん縮まっていく。

 

 そして、二人がある間合いまで入った時。

 

 ジョセフが鞘から刀を抜きだし。

 

「――――――――――――――ッ!」

 

 ルナが振り下ろした剣が。

 

 ――天使と悪魔の斬撃が真っ向から激突し、極光と撃音で大気を震撼させる。

 

 大競技場に、天変地異じみた衝撃が走るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








今回はネバダ州です。

人口は290万人。州都はカーソンシティ。主な都市にラスベガス、リノ、カーソンシティ。

愛称は銀の州で、36番目に加入しました。

州名は近くにあるシエラネバダ山脈から採られました。シエラネバダとは「雪に覆われた山脈」を意味するスペイン語です。

スペインがアルタ・カリフォルニアの一部として領有権を主張し、後にメキシコがスペインから独立した後はメキシコの領土になります。

1848年、米墨戦争で勝利したアメリカがこの領土を獲得し、1850年にユタ準州として組み入れられました。

1859年、コムストック・ロードにて銀が発見され、人口が急増し、1861年にはユタ準州西部がわかれてネバダ準州が創設されました。

1864年10月31日にはアメリカ合衆国36番目の州になりました。

ネバダ州の愛称である「銀の州」はその歴史と経済における銀の重要さを反映したものであります。

また南北戦争の間に州昇格を果たしたので「戦闘が生んだ州」、あるいは土地固有セージフラッシュ(ヤマヨモギ)があるので「セージフラッシュの州」とも呼ばれています。

内陸の砂漠地帯にある州で、人口はまだ少ない方ですがそれでも20年で100万人近く増加しました。

今日では全米随一のカジノ州として名高く、ラスベガスとリノが世界的に有名です。

税金が非常に安いため、企業進出も著しいです。

元々人口が少ない過疎の州だったため、ネバダ核実験場が置かれていました。

他に飛行機の墓場やエリア51など特徴的な物件がある州です。


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