ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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連投です、どうぞ。


暴走!!三人娘と大天使様2

 

 

 

「おい、てめぇ……こりゃ一体、どういうことだ?」

 

 ジョセフがルミアをそっとどかして立ち上がり、システィーナとリィエルがルミアの介抱をしているのを余所に、グレンはオーウェルへ詰め寄った。

 

「ふむ……元々、この薬の効果は異性にしか働かないようになっていたはずだし、ほんのちょっと振りかけるだけで、どんなに非モテな者でもたちまち異性からモテるようになる……あくまで『常識的かつ理性的な範囲内』でな。そういう調整の薬だったのだが……まぁ、異性にしか働かないのはさっきので実証できたのだが……」

 

 そして、オーウェルがジョセフの頭からつま先まで、じっくりと検分して。

 

「なるほど。ジョセフ君は元よりそんな薬に頼らずとも、超絶モテる。そんな彼がルミア君と共に限界を超えて薬を過剰使用したことにより、天元突破した超モテオーラが、理性の壁を爆破粉砕した、ということかッッッ!」

 

「なんじゃそりゃ!?」

 

「今の彼はそこら辺をただ歩くだけで、ありとあらゆる女性が寄り、求愛される存在だろう!これは実に興味深いッ!愛とは単なる――」

 

「ご託はいいんで、これなんとかしてくれません!?このままじゃ、俺、人前――特に女子の前には出られへんのだけど!?ていうか、今、ルミアがいつ起き上がってくるのか怖いんですけど!?」

 

 得意げに語るオーウェルの頭を、ジョセフはがくがくと揺するのであった。

 

「ていうか、疑問!なんで俺もなんだけど、なんで先生達は無事なんですか!?本来なら、全員、社会倫理的に大アウトなこと今頃、ていうか超絶カオスなことが起きていたんじゃないんですか!?」

 

「ふむ、説明しよう!私が無事なのは簡単だ!こんなこともあろうかと、予め専用の『反モテ薬』を使用していたからな!自己保身は基本中の基本ッ!ふっはははははははははははははははははは――っ!」

 

「最低だな、てめぇっ!?」

 

「そして、君達が無事なのは……、……」

 

 と、そこで。

 

 なぜかオーウェルが言葉に詰まり、ちらりとルミアを見たり、ジョセフを見る。

 

「……な、なんですか?」

 

 オーウェルに意味深な視線を送られたジョセフが怪訝そうな顔をし……

 

「……ふっ。私の口から言うのは無粋だな。まぁ、グレン先生達には、たまたま効かなかった……それでいいのではないかな?」

 

「はぁ!?なんじゃそりゃ!?」

 

「そんな些細なことよりも、ルミア君とジョセフ君の『超モテ薬』の効果に、一刻も早く対処する必要がある……だろう?」

 

「あ、ああ。まぁ、そうだな……」

 

 解せないことはあるが、物事の優先順位については、確かにオーウェルの言うとおりであった。

 

「私は早速、『反モテ薬』の調合に取りかかろう!グレン先生は――」

 

 と、その時だ。

 

 ばぁんっ!オーウェルの研究室の扉が、外側から強引に蹴破られた。

 

 壊れた扉の向こうには、一人の女子生徒が、目を血走らせている。

 

「あ、あれぇ~……?うっそーん……」

 

 ジョセフはその女子生徒を見て、脂汗を流す。

 

 その女子生徒は。

 

「ジョセフ、ジョセフぅー……うふふふふふふふふふふふふ……ッ!」

 

「ウェンディ!?」

 

 ウェンディであった。

 

 まことに信じられないのだが、力技で扉をこじ開けたのだ。

 

 明らかに乱心している。

 

 彼女の目には――ジョセフ以外のものは何も見えていなかった。

 

「ふむ。ジョセフ君から溢れ出る史上最強の超モテオーラが、津波のように学院中に押し寄せ、ダダ漏れしているようだ。しかも、どうやら、一部のある特定の女性にしか効果が現れないらしい。最早隠れていても、愛に暴走する者達の本能で、ジョセフ君の居場所は探知されるらしい……」

 

 オーウェルが納得したように、腕組みし、うんうんと頷いている。

 

「ふっ!愛って怖いね!?」

 

「ふざけんなぁ――ッ!?ええい、ウェンディ!とりあえず≪寝て――」

 

 とりあえず、ウェンディを眠らせようと、即興改変で【スリープ・サウンド】を唱えようとするが……

 

 ふいに壊れた扉から無数の剣が飛来し、ジョセフの周りの壁に突き刺さった。

 

「…………」

 

 硬直するジョセフ。そのせいで詠唱が中断してしまう。

 

 無数の剣を飛ばす女子生徒なんか、一人しかいない。

 

 いや、正確にはジョセフと同じ軍人なのだが。

 

 そこには、金髪の育ちのいい良家のお嬢様に見える女子が立っていた。

 

「うふふふふふふ~。ジョセフぅ……ジョセフはぁ~、私のものよ……ふふ、ふふふふふふふふふふ……」

 

 ――やはり彼女も、ウェンディと同じく乱心しており、ジョセフ以外に眼中にない状態である。

 

 連邦陸軍第一特殊部隊デルタ分遣隊所属・ナンバー7≪メリーランド≫、アリッサ=レノ。

 

 彼女もまた『超モテ薬』の影響を受けていた。

 

「お前もか~いッ!?」

 

 その間にも二人の女子がジョセフに迫ってくる。ジョセフはじりじりと後退する。

 

「こ、これってジョセフが捕まったら、絶対、成人指定的な展開じゃね!?」

 

「あ、あわわわわわ……ッ!きょ、教授、これ、何とかしないとマズいですって……ッ!」

 

「むぅ……若さゆえの衝動とは恐ろしい!私は今から急いで『反モテ薬』を作る!ジョセフ君は逃げるのだっ!薬ができるまで、なんとか持ちこたえてくれっ!」

 

「「ジョセフゥウウウウウウウウ――ッ!」」

 

 オーウェルの宣言と共に、ウェンディとアリッサがジョセフ目がけて、飛びかかってきて……

 

「いやぁあああああああああ――ッ!?教授!先生!システィーナ!三人とも、後で覚えてろよぉおおおおおおお――ッ!?」

 

 ジョセフは三人にそう叫び、迫り来るウェンディとアリッサを体捌きで避けて、研究室を飛び出し、廊下を猛然と駆けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「どいて、どいてぇええええええええ――っ!?お願いだから、どいてぇえええええええ――っ!?」

 

 そう叫びながら廊下を疾風のように駆けるジョセフ。

 

 その後ろを……

 

「ジョセフゥウウウウウウウ――ッ!」

 

「なんで私から逃げるのよぉおおおおおおお――ッ!」

 

 ずどどどどどどど――っ!

 

 ウェンディとアリッサが追いかけてくる。

 

 あまりに鬼気迫る表情でどくように叫ぶジョセフに、道行く生徒達はどき――

 

「どいてくださいましっ!」

 

「邪魔ッ!」

 

「「「「ぎゃぁあああああああああああ――ッ!?」」」」

 

 ジョセフの愛を求める二人の少女に、生徒達は吹き飛ばされる。

 

「あかん!あかんって!襲われるぅうううううう――ッ!?」

 

 猛ダッシュで廊下を駆けながら、涙目でそう言う。

 

「なんで逃げるんですの、ジョセフッ!わたくし達、小さい時に貴方のお嫁さんになるって約束したでしょう!?」

 

「私を一人にしないよね!?ねぇ!?一人にしないって約束したよね!?」

 

「頼むから、正気に戻ってぇええええええええ――ッ!?」

 

 後ろには、愛に飢えた少女達がそう叫びながら追いかけてくるし……

 

「おい!ジョセフ=スペンサー、貴様ぁ!廊下は走るな――」

 

「どいてぇええええ――ッ!チャーハン先生ッ!」

 

 そう言って、ひょいっと踏み台にして飛び越える。

 

「ぶへぇッ!?貴様ぁあああああッ!何、人を踏み台にしているんだッ!?ていうか、全ッ然、名前が合ってないぞ!?貴様といい、グレン=レーダスといい、貴様らは――」

 

「「邪魔(ですわ)ッ!」」

 

「ぎゃぁああああああああああ――ッ!?」

 

 ……ウェンディとアリッサに吹き飛ばされるハーレイなのであった。

 

「これ、マジでヤバいんやけど!?このままじゃ――」

 

 ジョセフが廊下の曲がり角を曲がった――その時であった。

 

「お!ここなら、誰もいないし、隠れられる!」

 

 誰もいない部屋があったので、ジョセフはすぐに扉を開ける。

 

 なんという幸運。鍵はかかっていなかった。

 

 扉を開け、逃げ込むジョセフ。

 

 そして、扉をすぐさま閉じ、人払いの結界をかける。

 

「「待ちなさいぃいいいいいいいいいい――ッ!」」

 

 その部屋の外を、愛の亡者となったウェンディとアリッサが駆け抜けていく――

 

「た、助かった……」

 

 一難が去り、ジョセフがほっとしたように胸をなで下ろした。

 

「な、なんとか……これで一息つける……マジで、危なかった……」

 

 扉の前に腰が抜けるようにへたり、そして、すぐに立ち上がる。

 

「とはいえ、今のは即席……いずれあの二人にバレるし、より強固にしないと――」

 

 ――ずるずる。

 

「……強固にしないと」

 

 ずるずるずるずる。

 

「……強固に、しないと……」

 

 ずるずるずるずるずるずる。

 

 ……なんでだろう。

 

 結界をより強固にするために扉に張ろうとしているのに、なぜか手が届かない。

 

 ていうか……

 

「あ、あるぇ~?なんでだろう、扉がどんどん遠ざかっているぞぉ?なんでだろう?」

 

 なんか、ずるずると引きずられているような気がした。

 

 いや、実際に引きずられている。

 

 ――そもそも。

 

 なんで、この部屋、鍵がかけられていなかったんだろう?

 

 そんな疑問が、今になって芽生えたジョセフ。

 

 だが、もう時すでに遅しであったと悟った。

 

 嫌な予感がする。

 

 そして――

 

 ぽよん。

 

 ジョセフの後頭部に二つの柔らかい何かが当たった。

 

 けっこう大きい何かが。

 

 そして、ぎゅっと、誰かがジョセフを抱きしめていた。

 

 白くきめ細かな腕は、どう見たって女性である。

 

「…………」

 

 それを見たジョセフは硬直する。

 

「うふふ……ジョセフ。ああ、ジョセフ」

 

 そして、この聞き覚えのある声。

 

 ジョセフが恐る恐る振り向くと、そこには紫色の髪の毛のモデル顔負けのおっとりお姉さんな女子生徒がいた。

 

 その女子生徒は。

 

「……あの……なんで、こんなところにいるんですかね?テレサさん……」

 

 そう、おっとりとしたクラスのお姉さん的存在、テレサであった。

 

 頬は上気し、吐息が妙に熱っぽくて目が潤んでいる。

 

「うふふ……愛があれば貴方がどこに来るのかわかるものですよ?」

 

「…………」

 

 あ、これはアカンやつや。

 

 ジョセフは瞬時に悟った。

 

「それはそうと、ジョセフ……私、貴方の子供が欲しいんです、貴方を私のものにしたいんです……」

 

「うん、これはアレや!アカンやつや!」

 

 ジョセフが慌ててテレサの腕を振りほどいて逃げようとするが、前に進まない。

 

(しまった!これ、テレサのやつ【サイ・テレキネシス】で俺を捕まえてるパターンや!)

 

 そうこうしているうちに、テレサが普段の力とは思えない力で取り押さえ、床に押し倒す。テレサの熱に浮かされたような目が、ジョセフを真っ直ぐ見下ろしてくる……

 

「ちょ、ちょちょちょちょちょ……ッ!?て、テレサ……ッ!?そ、その、どうか、お気を確かに……ッ!落ち着こう!?ね、落ち着きましょう!?」

 

「ああ……ジョセフ……聞こえるかしら……?私、胸が凄く高鳴っていて……今にも破裂しそう……身体が……熱い……ッ!ああ、ジョセフ……ッ!」

 

 そして――

 

 どかぁあああんっ!

 

「「ジョセフはここにいるのねぇええええええええええええ――ッ!?」」

 

 扉を蹴破って、ウェンディとアリッサが部屋に踏み込んでくる――

 

「どわぁあああああああ――ッ!?え、ちょっと!?バレるの、早くありません!?」

 

「「愛があれば問題ないわッッッ!」」

 

「うっそだろ、お前ら!?ええい、ここでくたばってたまるかぁああああああ――ッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 ジョセフは無理矢理、火事場の馬鹿力の如く、テレサをどかして逃走し――

 

「「「待ちなさい、ジョセフゥウウウウウウウウ――ッ!」」」

 

 愛に飢えた少女二人+一人追加の三人が追いかけていくのであった。

 

 

 

 

 

 








ここまでで(笑)
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