こんにちは、藤氏です。
原作十七巻を読みましたので、本編再開させていただきます。
なお、十七巻を読んだ結果、十六章の内容を変えるために、一旦、十六章の話全てを削除し、一からやり直します。
どうかよろしくお願いします。
それでは、どうぞ。
因みに、番外編の方も途中で進めているものもありますが、それと並行して投稿します。
202話
華やかな芸術の都、自由都市ミラーノ。
そこで数十年ぶりに開催された魔術祭典を目当てに、現在、世界中から観光客達がその地へと集まっている。
そして、その魔術祭典の行われているセリカ=エリエーテ大競技場前大広場と、そこに通じる各大通りは、まさに活況の極みにあった。
だが――そんな活気溢れる都のとある一角。
ミラーノに設けられているアメリカ連邦領事館だけは。
まるで活況の世界から切り離されてしまったかのように、閑散としていた。
「祖先の神である汝へ」
そんないつも通りといえばいつも通りの光景の領事館の廊下に一人の男は歩きながら、口すさんでいた。
「自由の創造者へ」
黒い上質のスーツを着た四十代の男だ。
領事館内とはいえ、中折れハットを目深に被っているため、その相貌はよく見えないが、なんとなく、端整な顔立ちをしているであろう雰囲気がある。
そんな男、アレン=べデル=ヴァンデンバーグが廊下を落ち着いた足取りで歩きながら、口すさんでいた。
「我らは汝へと歌う」
アレンが口すさんでいるのは、連邦が公式には制定していないが、事実上、国歌として歌われている歌の歌詞。
「長くこの地が輝き続けますよう」
とても穏やかな表情で、革命が起きた時から歌われていた歌を口すさむ。
「聖なる自由の光と共に」
それは、連邦らしい自由を賛美するかのような――あるいは、アメリカ連邦という偉大な自由の国を建国した父達を賛美するような歌。
「汝の力で我らを護り給え」
そして、その自由の国を護り給えと願っている歌。
「
――建国以来、連邦共和制を取る連邦なのに、なぜか
「ふふふ……なんで、この歌には
男が苦笑しながら、そう呟くと。
ふっと、彼の背後から男が笑い始める。
「そりゃ、なんででしょうなぁ?もしかして、革命戦争の時にレザリア王国が秘密裏に支援してくれたからちゃいます?」
笑っている主――いつの間にか、一人の男がアレンの隣に立っていた。
「そのレザリアの国王を賛歌している歌、ということでしょうか?ふふふ……騙して支援を引き出して”ありがとう”とは……なかなか、洒落がありますな」
まるで旧知の仲なのか、冗談交じりにいう男、ルイス=サザーランドの台詞にも、アレンは苦笑を零す。
「もういっそのこと、王ではなく
そして、ルイスがクックッと笑いながら冗談なのか本当なのかわからない感じで言う。
「女王、か……確かに今後の連邦の在り方を考えるのなら、それもいいかもしれませんが……」
そう意味深に呟くが……アレンは悪戯っぽい笑みを浮かべて返す。
「やはり
「あっはははははッ!確かに、それはそうですなぁ!
「あれは、皮肉みたいなもんですよ」
「ははははははは!」
そう冗談を言うアレンに、一本取られたと笑うルイス。
「それはそうと、明日はいよいよ首脳会談ですね」
「ええ、そうですなぁ」
そして、二人は明日の首脳会談に話題を移す。
「アルザーノ帝国とレザリア王国、北セルフォード大陸の雄と、クスコ帝国とそして我らがアメリカ連邦の新世界――南北メリゴ大陸の雄。この四大国による首脳会談。成功すれば十年の平和が保たれる……」
そう言うアレンに。
「――せやけど、実は……長官はわかっていなはるんでしょう?この会談は
「…………」
「せやから、ミラーノの西に、海兵隊一個師団――一万五千と二十騎からなる海兵隊の騎鳥を配備するように大統領に進言しなはったんでしょう?いざという時のために。まぁ、帝国も五千ばかし派遣しているらしいですが」
そう言って、ちらりとアレンを流し見るルイス。
すると、アレンは肩を竦めて言った。
「確かに、今回は”彼”が出てくるでしょうから、この会談はそうなるでしょう。とはいえ、それは今後の私達にとっては都合が良いことなのかもしれません」
「ほう?」
「彼は残念ながら、賢者ではなく、完全な狂人。永遠に真理に辿り着くことは叶わない。だが、彼は我等の目的――手に入れるべき物に、それに近しい者達に我等を導いてくれるかもしれない。そう――」
一呼吸置いて、アレンはほんの少しだけ表情を堅くして言った。
「――禁忌教典に」
そう話していると、二人は大きな扉の前に立った。
「いずれにせよ、もう少しです」
「もう少しですな」
「もう少しで、歴史は大きく動く。世界は変わる。……さぁ、始めましょう」
そう言って、アレンはその扉を開いた。
「歴史が大きく動いた後の世界を――我等が描くこれからの世界を、我等といずれ復活するであろう、あの方の手で築くのです」
その扉を開けた先には、魔術祭典で活況を呈しているミラーノの日常が広がっていた。
「えーと、確か帝国代表選手団に追加護衛が二名、帝国宮廷魔導士団特務分室から執行官が来る。っちゅう話やったんやけど」
「ええ、そうね。確かに准将からそう聞いたわ」
ミラーノの街中を、ジョセフとアリッサが歩いている。
魔術祭典という一大イベントに浮ついた都は、今日も大盛況だ。
「んで、ナンバー7≪戦車≫とナンバー10≪運命の輪≫が来るらしいんだけど……」
「ええ、そうね」
二人は歩きながら、今目の前にいる二人の少女を見る。
そこには、少女が、棒立ちなったナチュラルボーン破壊神へ一歩歩み寄り、手に取る。
きょとんとする破壊神を、少女は互いの吐息すら感じられる距離でじっと見つめている。
「……
「リィエル……わたしは……貴女を……」
少女――エルザがリィエルに切なげに何かを言おうとしていた。
そして。
「えーと……その、お宅ら、往来のド真ん中で、生産性のないラブコメ全開のところ申し訳ないんだけど……」
なんか、アレだったので、気まずそうに二人の傍らに立って声をかけるジョセフ。
――それは、エルザが鍛錬によって鍛え上げた条件反射だったのだろう。
「ひ、ひゃあああああああああああああああ――ッ!?」
途端、顔を真っ赤にしたエルザが、弾かれたように、居合い斬りを放つ。
翻る神速の剣閃。
「ひょ――ッ!?」
素首をすっ飛ばさんと迫る白刃を、ジョセフは咄嗟に拳銃を盾にするようにして受け止める。
間一髪、エルザの刀はジョセフの拳銃のスライドに少し切り込みが入っただけだった。
「ちょちょちょ――いきなり何すんのエルザさんッ!?」
ジョセフは顔を真っ青にして喚き散らす。
「殺す気かな!?いきなり辻斬りなんて殺す気かな!?」
「あ、ああああああ!?ジョセフさん!?す、すみませんっ!いきなり気配が現れたので、敵かと!?」
「訓練されすぎだろ!?もう少し一呼吸置こう!?っていうか、俺達の接近に気付かなかったのは、主にエルザが変な世界作っているからでしょうがぁああああああああああ――ッ!?」
流石にバクバク鳴っている心臓を押さえながら、ジョセフは危険物乙種四類から飛び下がって距離を取る。
「まったく、アルザーノ帝国代表選手団の追加護衛が来るって聞いたから、挨拶がてらここに来たってのに、危うく味方に殺されかけるところだったわ……前代未聞やで」
「す、すみません!すみません、すみませんっ!」
まったく弁明の余地のないエルザはひたすらペコペコ恐縮するしかない。
まぁ、エルザの技量なら、とっさに首の薄皮一枚で止まっただろうが……心臓に悪いことこの上なかった。
「……私のジョセフに、何、斬りかかってるの?ねぇ?」
「ひぃいいいいいいい――ッ!?すみません、本当にすみませんっ!」
ズゴゴゴゴゴっと、黒いオーラを纏い、大量の剣を召喚するアリッサに、さらにペコペコするエルザ。
「……とにかく、これからよろしく頼んます。特務分室執行官ナンバー10≪運命の輪≫エルザに、執行官ナンバー7≪戦車≫のリィエル。……まさか、執行官を二名を護衛として回すなんてな」
「はいっ!よろしくお願いします!」
「ん」
なんか、色々とアレな気がするとため息交じりなジョセフに、エルザとリィエルがそれぞれに応じるのであった。
「……まぁ、それはそうと」
落ち着いたジョセフが、ちらりと魔導士礼服姿のエルザを見る。
「アンタの剣技は、こないだの聖リリィ校留学事件の時に、リィエルを倒した時点で腕はあると思っていた。いずれ特務分室が、アンタを執行官に抜擢する……だろうとは思ってたよ。けど……本当にええの?エルザ。こっちの世界は甘くはないで?」
ジョセフは、エルザに忠告するように言った。
「これから目の当たりにするのは、魔術の闇だ。人間の薄汚い業そのものと言ってもええ。エルザは本当にそれでええのか?お前がもし、その辺りの認識が甘かったら……」
だが、そんなジョセフへ。
「大丈夫です」
エルザは毅然と、きっぱりと迷いなく言った。
「きっと、ジョセフさんの仰る通りなのでしょう。これから私が遭遇するのは、想像を絶する地獄なのでしょう。その片鱗は、これまでの訓練課程と実戦で見てきました。そして、それは入り口に過ぎない……ええ、わかっているんです。でも……だからこそ、私は剣を執らねばならない。私が剣を執る意味があるんです」
「!」
「私の父――元執行官ナンバー10≪運命の輪≫のサキョウ=スイゲツ=ヴィ―リフは、私に教えました。”守るための剣を振るえ”と。”活かすための剣を振るえ”と。
その剣こそが、私の全て。そのスイゲツの名が示す教えが、私に剣を執らせ、私の魂を衝き動かすんです。安寧なる生に一体、何の意味があるのでしょう?剣で開く苛烈な道の中にこそ、私の生の証がある。それこそが――私の運命なのだと」
「…………」
「心配しないでください、ジョセフさん。私はこの選択に後悔しません。それは長い道のりとなるのか……あるいはとても短い道のとなるのか、わかりませんが。私はこの剣と共に、最期まで道を歩みきってみせます」
それは――恐らく、武士道と呼ばれる、死に方に道と意味を見出し、己を高めていく東方独特の思想を汲むエルザならではの境地なのだろう。
(これは……准将も欲しがるだろうなぁ……)
ジョセフは、エルザのどこか悟りを開いたような目を前に、そう確信した。
エルザのそれは、結果ではなく、そこに至る道中にこそ意味があるのだろう。
「……
ジョセフは、ふっと苦笑し……やがて、静かに敬礼する。
「アメリカ連邦陸軍第1特殊部隊デルタ分遣隊所属、ナンバー6≪マサチューセッツ≫ジョセフ=スペンサー中尉、そして――」
ジョセフがアリッサに促すと――
「同じくアメリカ連邦陸軍第1特殊部隊デルタ分遣隊所属、ナンバー7≪メリーランド≫アリッサ=レノ少尉よ」
「ちゅうことで、だ。改めてよろしくな、エルザ従騎士長」
そう言うジョセフに。
「はいっ!よろしくお願いします!」
エルザはビシッと敬礼するのであった。
……因みに。
この後すぐにグレンが合流してきたが、まーた、リィエルと変な世界を作っていたエルザがグレンに居合い斬りをしかけてグレンがそれを左手の指で摘まみ受けたり。
リィエルがグレンの背中に張り付き、エルザから北海の氷水をぶっかけられるような視線をぶつけられたりして、グレンは早く元の平凡な生活に戻りたいと願うのであった。
そして。
「アリッサ、ひっつきすぎ」
「大丈夫よ、ちょっと腕を組んでいるだけだから」
「……この後が怖い……昨日のことがあるから怖い」
「……大丈夫よ」
「どこがだ!?どこが大丈夫なんだ!?暴走三人組の一人さんよぉ!?」
「あの二人だけが暴走――」
「お前もじゃぁああああああああ――ッ!痛ってぇええええ――ッ!?」
据わった目で腕に胸を密着して抱きついてくるアリッサに、ジョセフはうがぁっ!と突っ込みまくるが、昨日の絶対に真似してはいけない綱引きと第十三聖伐実行隊のドンパチでバキバキになった身体なため、腰に手を当てて蹲るのであった。
今回は、カリフォルニア州です。
人口3900万人。州都はサクラメント。主な都市はロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴ、サンノゼ、アナハイム、ロングビーチ、リバーサイド、オークランド、サクラメント、フレズノ、ベーカーズフィールド、ストックトン、モデストなどです。
愛称はゴールデンステートで、31番目に加入しました。
アメリカ合衆国の州のうちでは最大の人口を誇り、米国大統領選の選挙人数も最多であります。ブラジルのサンパウロ州に続いて南北アメリカ大陸で2番目に人口の多い行政区画です。
ワシントン州、オレゴン州と共にリベラルな気風で、保守的な中西部に対して「レッド・カーテンの向こう側」と称されています。
元々、スペインの植民地でメキシコが独立した後はメキシコの領土になりましたが、米墨戦争でアメリカ領になり、31番目の州として合衆国に加入しました。
4000万弱の人口を抱える全米一の巨大州。北部にサンフランシスコとサンディエゴという大都市を抱えています。ヨセミテ国立公園など自然資源にも恵まれています。ただし、山火事と地震が多いのが悩みです。
シリコンバレーに代表されるIT産業やロッキード・ダグラスなどの航空機産業、演出のためには金をいくらでもかけるハリウッドなどの映画産業が盛んです。
サンノゼはアドビ、Googleなどの本社を持つシリコンバレーで有名で、全米のあちこちに湧いたシリコン○○の元ネタとなっています。
サンディエゴはメキシコ国境にある美しい港町で、アメリカとは思えないクッソ狭い空港でも有名です。
内陸の都市は日本人にはあまり馴染みがないですが、実際現地のアメリカ人ですら馴染みが薄いです(大半がメキシコからの移民、そしてマフィアの巣窟となっているせいで、軒並み治安が悪い)。
因みに、カリフォルニア州を一つの国であるとするならば、GDPではイタリアに匹敵する第10位、人口でも第35位、国土では第59位になります。
そして、一部地域の分離・独立の試みが繰り返し行われており、1800年代から2011年代までに少なくとも27回、失敗に終わっています。