ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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 寒い


25話

 なんと派手なデビューをしてしまったリィエル。

 

 結局、二組の生徒達のリィエルに対する初印象は、完全に『変なやつ』『怖いやつ』『危ないやつ』ということで落ち着いてしまった。これは新顔の編入生としては致命的なまでの失敗である。

 

 そもそも、リィエルは極端に感情表現が薄く、心の機微が読み取りにくい。常に眠たげに細められているその目は、怒っているようにも不機嫌そうにも見え、どうにも話しかけ辛い。当然のように、リィエルが自分から誰かに話しかけるようなことも皆無だ。

 

 おまけに、あのような身の毛もよだつ破壊を目の当たりにした後では、生徒達も正直、怖くて声をかけ辛い。

 

 ……と、言うわけで。

 

「………………」

 

 昼休み時間。

 

「まぁ、こうなるよな~」

 

 自分の席についたまま、リィエルは当然のように一人ぽつんと浮いていた。

 

 何をするでもなく、身じろきすることもなく、ただ、ぼ~っとしているだけである。

 

 そしてその周りを生徒達が遠巻きに見ている。皆、最初の一言のきっかけがまったく掴めないようであった。

 

 ジョセフが見るに、リィエルは生い立ちが少々特殊なのだろう、対人スキルが子供以下なのは今まで接してきた中で確実に言えることだった。そのため、あんな派手なことをやらかしては浮いてしまう…その程度のことすら理解できないのである。

 

(とはいえ、このまま一人ぼっちだと、ちと可哀想だな……)

 

 ジョセフはグレンを見て、彼も深いため息をついて同じようなこと考えていたのだろう。リィエルのもとに歩き始めていた。…その時だった。

 

「ん?」

 

 グレンより先に、リィエルのそばに立った少女がいた。

 

「ご機嫌よう、リィエル」

 

 その少女は大天使様こと、ルミアだった。その後ろにはシスティーナが控えている。

 

「……?」

 

 ルミアの気配を感じたリィエルが、ルミアをちらりと流し見る。

 

 身じろき一つなく、眼球だけを動かして見上げてくるその視線は、まるで睨まられておるようで、人によっては怖く感じる者もいるだろう。

 

 だが、ルミアはそんなリィエルの視線を軽く受け流し、朗らかに微笑みながら言った。

 

「今、ちょうど昼休みになったんだけど…リィエルはお昼ごはん、どうするの?」

 

「……お昼ごはん?」

 

 何その、「お昼ごはん?なにそれ美味しいの?」みたいな反応は。

 

 問われて、リィエルはふと視線をルミアから外し、少しだけ沈黙。

 

 再び眼球だけを動かしてルミアを流し見て、言った。

 

「必要ない。わたしは三日間、食べなくても平気」

 

 そこは合わせろ。

 

「えっ?だ、ダメだよ、それじゃ…身体に良くないよ?」

 

 そんなリィエルの物言いに、ルミアは苦笑いしながら応じた。

 

「ちゃんと食べなきゃ。ほら、リィエルのお仕事にも差し障っちゃうよ?」

 

「……一理ある」

 

 すると、リィエルは目だけでルミアの姿を追うのを不意に止め、ほんの微かに首を動かして、前よりはまともにルミアの姿を見た。

 

「でも、何を食べたらいいかわからない。今回の任務、食料が支給されなかったから。今までの支給分はここに来るときに全部食べたし」

 

(え、マジで…確か帝国軍のレーションって、不味くなかったっけ?ていうか、それしか食べたことないのかよ……)

 

 リィエルが言った食料というのは、この場合、軍用の携帯野戦糧食――帝国軍の場合、豆や麦、芋などの穀物を練り固めて焼いたブロック状の食べ物――のことだ。

 

 ちなみに連邦軍は、牛肉の缶詰とチョコレートなどが支給されている。帝国軍から見れば、かなり贅沢だったが、かなり広大な領土を持ち、畜産農業の規模も――工業もだが――帝国よりも遥かに大きい連邦だからこそ為せることであった。

 

(それはそうとして、そりゃ日常に溶け込んで護衛しなきゃあかんのに、軍用のレーションをかじらせる馬鹿組織があるわけないやろ…てか、食事なしにどうするつもりだったん?)

 

 どう考えても、今回の任務は三日で終わるようなもんじゃないんだが。

 

「あ、そういうことだったら…私達、今から学食に行くんだけど、リィエルも一緒に行かない?」

 

「……学食?……何それ?」

 

「うーん、ご飯を食べるところ…かな。ね、どう?」

 

「……」

 

 押し黙ってしまう、リィエル。

 

 よく注意して見ると、心なしかまばたきの回数が増えている。どうやら戸惑っているらしい。自分と同い年くらいの女の子と一緒に食事をしたことなどなかったのだろう。

 

「あのさ、リィエル。別に無理に…とは言わないわよ?」

 

 その沈黙の間に耐えられず、ついにシスティーナが横から口を挟んだ。

 

「ただ、貴女とは結構、長い付き合いになるかもしれないし、親睦を深めておくくらいいいんじゃない?それに食事は大勢で取ったほうが楽しいし」

 

「……楽しい?…わたしにはよくわからない、けど……」

 

 システィーナの言の一部を反芻し、リィエルはちらりとグレンを流し見た。

 

 グレンは行け、と顎をしゃくって見せる。

 

 それを見たリィエルはこくりと頷き、席を立つ。

 

「ん。わかった。行く」

 

「ふふ、よかった。じゃあ、早速行こう?」

 

 そして、ルミアとシスティーナはリィエルを連れて歩き始める。

 

 ざわざわ、と。

 

 教室に残っていた生徒達が、そんなルミア達を遠目に観察しながら、ざわめく。

 

「ゆ、勇気あるなぁ、ルミア……」

 

「大丈夫なのか…?あの子を誘って……」

 

 そんなクラスメイト達の囁きなど意にも介さず、ルミアとシスティーナはリィエルを伴って、教室の外に続く扉へと向かっていく。

 

「やれやれ…ホンマに大丈夫かなぁ」

 

 ジョセフはため息をつきながら、ルミア達を見送った。

 

 護衛ならば、真っ先に適当な理由を作って、ルミアに接触を試みなければならないのに、護衛対象に接触されるのを待つなど三流もいいところだ。

 

 改めて特務分室のこの人選は疑問しかない。やはり本命はどこかにいるのかもしれない。

 

「さて、俺も飯じゃ、飯じゃあ」

 

 ジョセフは教室を出て、学生食堂に向かった。

 

「ま、いざという時は手助けしてやるさ」

 

 どうせ、なにかあった場合、共同で対処すればいい。

 

 そう思いながら、食堂に足早に向かうのであった。

 

 

 

 

 

「明日は砲弾でも降ってくるんちゃうんか……」

 

 学生食堂の入口にて非常に珍しい女子生徒がそこにいた。

 

 ツインテールのお嬢様、ウェンディである。

 

 上流階級層出身…ウェンディのような貴族や資産家の子女の中には、ここの食堂を利用しないで、学院外の高級料亭で昼食を取る人がいる。逆に、下層階級層出身の苦学生の中には、自分で弁当を用意して、あまりここを使わない人もいる。だが、学院の生徒の大半はここで食事を取る。

 

「明日は砲弾が、何ですって?」

 

 聞こえていたのか、ウェンディが不機嫌そうな顔をしてジョセフを見る。

 

「だって、お前、いつもは学院外の高級料亭を利用する生徒の筆頭やん?せやから珍しいなと…」

 

「たまには庶民の食事情を視察するのも貴族たる者の務めですわ」

 

「そうかい、そりゃまた高貴なことで」

 

「そういう貴方はいつもここを利用しているんですの?」

 

「まぁ、だいたいここで間に合わせてるけど」

 

「学院外で食事を取ることはないのですね」

 

「……もう貴族とかそういう身分じゃないからな」

 

 ジョセフも元はといえ、上流階級層の出身であるのだが、十年前に爵位を返還して、連邦に移住している。

 

 両親亡き後、財産はジョセフが相続しているのだが、どうにも使う気が起きないのである。

 

 それにジョセフはウェンディには話してはいないが――正直、話すのが怖い――現役の軍人である。階級も少尉(この年齢にしては異例なのだが、デルタの場合、全員が少尉以上の階級であるため)なので、給料も高い。それに特殊部隊に所属しているため高額な手当ても入ってくるのだから、あまり物を買わないジョセフにはそれで間に合ってしまうのである。しかも帝国の物価が連邦――ニューヨークよりも安いため、結構余っている。

 

「……それなら、今度一緒に料亭で食事を取りません?」

 

「今度、料亭で?」

 

「貴方も元はといえ、貴族の者なのですから、いつもここで利用するのもどうかと思いましてよ?それに…たまには貴方と食事したいと思いますし……」

 

 そう呟きながらぷいっとジョセフから顔を逸らしたため、最後は何言っていたのかよく聞き取れなかった。

 

「Ok、まぁ、たまにはええかな。そいで、いつにするん?」

 

「そうですねぇ…明後日はよろしくって?」

 

「了解。そいじゃあ明後日ね」

 

 そう言って、明後日の食事を約束すると、先ほどの不機嫌そうな顔はなく、むしろ機嫌がよくなっていたのか、微笑みながらこっちを見る。

 

(ホンマにこういうところは可愛いよな……)

 

 十年ぶりに再会し、今や美少女になった彼女の笑顔はそこまで女性に興味があるわけではない(だからといってアッチの方にはまったく興味ないのだが)ジョセフでもついそう思ってしまうほど、可憐なものだった。

 

「あ、ウェンディにジョセフ君…珍しいね、ウェンディがここにいるなんて……」

 

 ふと振り返るとそこには小柄な女子生徒、リンがいた。

 

 せっかくなので三人で食事をとることにし、食堂に入っていく。

 

 広大な食堂内には、白いクロスがかけられた長大なテーブルがいつものようにいくつも並んでいる。燭台で飾られたそれは、なんとなく高級感を感じさせた。

 

 そして、大勢の生徒達が厨房カウンターで注文した料理を持ってきては、思い思いの席につき、談笑しながら食事を取っている。

 

 今日も今日とて魔術学院の学生食堂は、昼食時特有の活気で賑わっていた。

 

 三人は人を掻き分けながら奥のカウンターへと歩き出す。

 

 カウンターの向こう側の厨房では、たくさんの調理師達がまるで戦争のようにせわしなく料理を行っているのが見えた。

 

「さて、今日は何しましょうかね……」

 

 ジョセフがカウンターの傍に据えられた、立てかけボードに記載されている本日のメニューリストに目を通しながら、考えていた。

 

 ……しばらくして。

 

「さて、ではこれから席を探そうかと思っていましたが…何で今日に限ってこんなに多いんだ……」

 

「今日の食堂は、席があまり空いていませんわね…どうしましょうか?」

 

「あ…二人とも…あそこ、空いているよ?」

 

「お、ホンマやな」

 

「あら、本当ですわ」

 

 三人でその空いている席に向かおうとした、その時だった。

 

「あの三人は……」

 

 目の前の席に見覚えのある生徒三人がついていて、食事を取っていた。システィーナとルミア、リィエルである。

 

「あら?システィーナ?」

 

 ウェンディも気付いたらしく、システィーナに声をかける。

 

「ウェンディ。…リンにジョセフも」

 

 システィーナも気付いてこの珍しいメンバーを見る。

 

「珍しいわね、ウェンディ。貴女がこの食堂を利用するなんて」

 

 やっぱりジョセフと思ったことが同じらしく、意外なものを見たように、システィーナが軽く目を瞬かせる。

 

「貴女なんて昼食は学院外の高級料亭を利用する生徒の筆頭じゃない?それにリンとジョセフと一緒だなんて…どういう風の吹き回し?」

 

「ふふん。たまには庶民の食事情を視察するのも貴族たる者の務めですわ」

 

「わ、私はその…たまたま、食堂の入り口で二人に会ったから……」

 

「ホンマ、明日砲弾が降ってくるで……」

 

 無駄に得意げにウェンディが胸を張り、おどおどとリンが説明し、ジョセフは遠い目でどれくらい珍しいか例えている。

 

 すると、ルミアが名案だと言わんばかりに、ぱっと笑って手を打ち合わせる。

 

「そうだ、ねぇ、三人とも。よかったら私達と一緒に食べない?ほら、リィエルと親睦を深める意味も込めて」

 

「えっ?」

 

「皆で一緒に食べれば、きっと楽しいし、美味しいよ?」

 

「そ、それは……」

 

「……その……」

 

 だが、そんなルミアの提案に、ウェンディもリンも途端に言葉を濁らせ、複雑な表情で、ちらりとルミアの隣のリィエルを見た。

 

「……まぁ、そうなるよな……」

 

 ジョセフは二人の反応を見て、そう呟いた。

 

 恐らく、この時、ウェンディとリンの脳裏に浮かんだのは、先ほどの魔術実践授業で見せつけられたリィエルの超人的な能力と、それがもたらした破壊だろう。

 

 事実、リィエルを前に、ウェンディはいつもの貴族然としたすまし顔を崩し、冷や汗を浮かべて心なしかジョセフの方に寄り、気弱なリンなどはウェンディの背後に微妙に隠れてしまっている。ジョセフはそんな二人を見て、複雑な表情になる。

 

 正直、あれを見たら、実戦経験を積んだ軍人じゃない限り、誰でも怖がるのは当然だった。ましてやリィエルは特務分室に所属している、現役の軍人だ。実際に何人もの外道魔術師を始末している。そんな人物に二人が怖がらないわけがなかった。

 

 もし、自分の正体がバレたら――

 

 ジョセフも他人事ではなかった。リィエルがどれだけ敵を始末したのかわからないが、ジョセフは『黒い悪魔』として、先の戦争で三百人もの敵を始末しているのである。

 

 もし、バレたら、ウェンディはどんな反応をするのか。恐らくこんなものではないはずだ。

 

 幼馴染が戦争で三百人も殺した――

 

 考えたくもなかった。

 

 結局、『はい』とも『いいえ』とも言えず、三人は押し黙ってしまう……

 

「……ダメ、かな?」

 

 ルミアがほんの少しだけ悲しげに笑った、その時である。

 

「やぁ、カワイコちゃん方!そういうことなら俺もご一緒させてもらうぜ!」

 

 気まずい空気を吹き飛ばす、場違いなまでに明るい声が背後から上がった。

 

「なにせ、学院内でも評判の、うちのクラスの美少女陣が見事にそろい踏みだ!この流れ、もう乗るっきゃねえだろ!あと、ジョセフだけこの流れを独占するのは許さん!」

 

「いや、独占してるつもりないんやけど……」

 

「あはは、カッシュったら。それはそうと、僕もいいかな?リィエルと色々話してみたいんだ」

 

 やってきたのは、大柄なカッシュと小柄で女顔のセシル、二人の男子生徒である。

 

「あら、珍しいじゃない。セシルはともかく、カッシュが食堂使うなんて」

 

 思わぬクラスメイト達の登場に、システィーナがきょとんとする。

 

「昨日、代筆屋のバイト代が入ってな!今日はちょっと豪華にいこうと思ってさ」

 

 カッシュもセシルも料理の載ったプレートを抱え、呆気にとられるウェンディとリンを尻目に、カッシュはルミアの隣――セシルはリィエルの正面に腰かけ、セシルはカッシュの隣に腰を落ち着けた。

 

(俺も座ろうかね)

 

 ジョセフも、システィーナの隣に腰かける。

 

「よっ、リィエルちゃん!」

 

 威勢の良いカッシュの声にびっくりしたのか、流石のリィエルもタルトから意識をそらして目を瞬かせ、カッシュを見た。

 

「さっきの授業のアレ、バリバリ―って剣を作って、どびゅーんと剣を飛ばして…アレ、凄かったな!一体、どうやったんだ?」

 

「すごい?わたしが?」

 

「ああ。俺、あんな魔術見たことねーぜ」

 

「剣を飛ばしたのは身体能力強化の魔術を乗せた単純な体術だと思うんだけど…剣を作ったのは錬金術だよね?あんなに速く錬成できるなんて凄いなぁ。どこで習ったの?」

 

 カッシュとセシルが次々とリィエルに話しかける。

 

「な、な、今度、俺にもコツ教えてくれよ!あんなに素早く錬成できるなら、何かと役に立ちそうだし!」

 

「僕はどういう錬成式を使っているのか、そっちの方が興味深いかな」

 

「………………」

 

 しばらく、リィエルは何かを考え込むように無言を決め込み……

 

「……ん。暇なときに教えてあげる」

 

「おお!よっしゃ、サンキューッ!」

 

 そして、カッシュが呆然と立ち尽くすウェンディとリンに振り返る。

 

「な、ウェンディ、リン、お前らもどうだ?きっと魔術師としての位階昇格の力になると思うぜ?」

 

 そんな風に盛り上がるカッシュ達を前に、ウェンディとリンは顔を見合わせ、そしてジョセフを見る。

 

 いいんじゃない?とジョセフが頷くと、二人は毒気を抜かれたように頷き合い、そして……

 

「確かにあの高速錬成は見事なお手前でしたわ、リィエル。…けれど、貴女、あの【ショック・ボルト】は一体、なんなんですの?」

 

「あ、あはは…それに関しては私も全然、ダメダメだったけど……」

 

 ウェンディとリンの二人も、リィエルの周辺に腰かけていた。

 

「わたし、黒魔術はあまり習ってないから」

 

「まったく…【ショック・ボルト】なんて、黒魔術系攻性呪文の中では基礎の基礎ですわ。もっとしっかり練習しなければ、次の位階に進めませんわよ?」

 

「うぅ…耳が痛いよ……」

 

「もし、よろしかったら教えて差し上げてもよろしくってよ?リィエル」

 

「……………」

 

 ウェンディの申し出に、リィエルがちらりとルミアの顔を窺った。

 

 ルミアは、にこりと笑って言う。

 

「いいじゃない、リィエル。教えてもらったらいいと思うよ」

 

「何なら今度、勉強会でもするか?」

 

「お、それいいな!」

 

 ジョセフが勉強会を提案し、カッシュが賛成する。

 

「……わかった。教えて」

 

 決して自分から他人へ積極的に話しかけることはないが、リィエルは比較的、受け答えはしっかりしている。無愛想に見えて、不思議と周囲との会話は成り立つようだった。

 

(ありがとな、カッシュ)

 

 リィエルを中心に一同の会話が盛り上がる中、ジョセフはカッシュに心の中でお礼を言った。

 

 思えば、カッシュは社交性が高く、誰とでも話せる性格の持ち主だ。ジョセフも最初はカッシュから話しかけられ、それからウェンディはもちろん、セシル、テレサやリン、システィーナ、ルミア、そしてリィエルなど交友関係が広がっている。

 

 カッシュはルミアにデートに誘おうとするが、ルミアから天使のようににこやかに断られ、テーブルに頭をぶつけていた。

 

「フラれたな」

 

 曖昧に笑うセシルのなぐさめに、ふて腐れたようにカッシュが応じる姿を、ジョセフは苦笑いで見ていた。

 

 一方、リィエルはひょんなことから始まったウェンディとシスティーナの口論を、黙々とタルトを齧りながら聞き流している。

 

「ま、その内、受け入れていくようになるさ」

 

 なんやかんや言いながら受け入れてしまうのが二組の生徒達である。

 

「あれはくしゃみをして外しただけですわ!」

 

「あら言い訳なの?」

 

「ムキィイイイ――ッ!」

 

「むしろあのタイミングでくしゃみっちゅうのが凄いんだけどなぁ。ある意味」

 

「それよりもジョセフ!あの呪文は何だったんですの!?謝罪を要求しますわ!」

 

「え?何のこと?」

 

「きぃいいいい――ッ」

 

 ジョセフは本日二回目のシェイクをウェンディから食らうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 もう今年も一ヶ月切ってしまいましたね。

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