ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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今日は西郷どん最終回でごわす!


37話

 

 夜は更けていく。

 

 魔術学院の生徒達が宿泊する旅籠。

 

 宿泊客向けに開放されている、応接間にて。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 ソファーや椅子、机が並び、燭台や古めかしい絵画、シャンデリアで飾られる豪奢な雰囲気のその場所には今、眠れぬ夜を過ごす生徒達が、寄り添うように集まり、まるでお通夜のような雰囲気で重苦しく押し黙っていた。

 

「なぁ…セシル。先生達…大丈夫なのかな……?」

 

 ぽつり、と。

 

 不意に、カッシュがこぼす。

 

「ルミアとリィエルちゃん…ちゃんと帰ってくるんだろうな……?」

 

「わからない…そもそも、僕達には、一体、今、何が起こっているのかすらわからないんだ……」

 

 対するセシルも不安そうにぼそぼそと呟く。

 

 何か、大変な事態が起きている…それはわかる。その解決のために、今、グレンがジョセフと謎の友人アルベルトと共に、何らかの行動を起こしていることも。

 

 だが、具体的には何一つわからない。自分達は完全に蚊帳の外だ。

 

 それが、ひどくもどかしい。

 

「ねぇ…ウェンディ…私…不安なの…嫌な予感がするの……」

 

 カッシュやセシルの呟きを切っ掛けに、リンも胸中の不安を吐露し始めてしまう。

 

「グレン先生は…明日には元通りだって言ってくれた…けど…でも…ひょっとしたら…ルミアも…リィエルも…ジョセフ君も…そして…先生も…ひょっとしたらこのまま…帰って…来ないんじゃないか…って……」

 

「そ、そんなことありませんわっ!」

 

 誰もが心のどこかで予感していたことを涙目で語るリンに、ウェンディがいきり立って、遮二無二否定する。

 

「あの方は確かに紳士の風上にも置けないダメ人間ですけど!それでも私達との約定を違えたことは一度だって……えーと…け、結構ありましたけど、いざという時には頼りになる御方ですわ!それに、ジョセフは頭がキレますし、もし先生がやらかしたとしても何とかしてしまう御方ですわ!」

 

「ウェンディの言うとおりですよ。今はとにかく待ちましょう」

 

 ウェンディの言葉に、テレサも首肯するが。

 

「普段はアホだけど、いざとなると頼りになる人だなんて…そんなことは俺だってわかってるし、ジョセフもかなり頼りになるってこともわかってる…でも…今回も無事に治まるって保証はあるのかよ……?」

 

「……それは」

 

 カッシュの問いに誰も答えられない。

 

 そもそも何でジョセフが先生と一緒に行ったのも、疑問である。少なくとも先生から全幅の信頼を寄せられているのだと思うのだが。

 

 だが、ウェンディはジョセフがただの留学生ではないことに薄々気付いていた。

 

 あの時、カッシュ達と夕食を取るために観光街に行った時、路地裏でジョセフが何やら話していたのをウェンディは一部聞いていたのだ。

 

 護衛対象が動いた、とか、連れ去られた、とか、全部聞いていないから何のことなのかさっぱりだったが、そんなことを言っていた。

 

 一体、彼は何者なのか?

 

 ウェンディはジョセフに問い詰めようかと思っているのだが――

 

 聞かないほうが良い――

 

 なぜか本能ではそういう警告みたいなのが頭を過っていた。

 

(ジョセフ、貴方は一体……)

 

 場の雰囲気がさらに重苦しくなりかけた、その時だ。

 

「ふん、まったく大げさな連中だな。君達は」

 

 苛立ち混じりの言葉が、室内に寒々しく響き渡る。

 

 部屋の隅で、魔術の教科書を開いてソファーに腰かけ、テーブルに足を投げ出しているギイブルが、突然、一同の会話の中に割って入っていた。

 

「先生が何も語らず大丈夫だって言ってるんなら、放っておけばいいのさ。それよりも、遠征学修はまだ途中だ。僕のように起きて勉強をする気がないなら、さっさと眠って明日に備えるべきなんじゃないか?時間の無駄だよ、はっきり言って」

 

「お前、そんな言い方はねえだろ!?」

 

 流石に聞き流せず、カッシュが怒声と共に立ち上がる。

 

「お前は先生達が心配じゃねえのかよ!?」

 

「心配?ふん、馬鹿馬鹿しい。どうせあの妙な転入生が、とうとう取り返しのつかない間違いを犯してしまっただけだろう?監督不行き届きの自業自得じゃないかな。いつかやるとは思っていたけど…はっきり言って迷惑だね」

 

「て、てめぇ…見損なったぞ……ッ!」

 

 カッシュが肩を怒らせて、すかし顔のギイブルに歩み寄ろうとそた…その時だ。

 

「システィ!?」

 

 リンの叫びに応接間に集う生徒達の視線が、一斉に入り口の扉に集まる。

 

「…………」

 

 そこには、システィーナが立っていた。

 

 まだ疲労が色濃く表情に残っているが、目元はしっかりしている。

 

 どうやら、目を覚ましてここまでやってきたらしい。

 

「システィ、大丈夫なの?顔色がすごく悪かったから、凄く心配したんだよ?」

 

 リンがシスティーナの下に駆け寄る。

 

「心配かけてごめんね。私は大丈夫。それよりも……」

 

 相変わらず我関せずと本に目を落とすギイブルと、ギイブルに詰め寄っているカッシュに、システィーナは呆れたような目を向ける。

 

「子供じゃないんだから、二人共こんな時に喧嘩しないの。ギイブル、貴方もいくら先生達が心配だからって、人の神経を逆なでするようなこと言わない」

 

「君が何を言っているのかさっぱりだね。僕があの連中の心配なんかするわけ――」

 

「ふうん、まぁいいけど。ところで、ギイブル…貴方、勉強の時には本を逆さまに読むんだ?随分、器用なのね?」

 

「っ!?………ちっ!」

 

 システィーナの指摘に、ギイブルは忌々しそうに舌打ちし、教科書の向きを元に戻す。

 

「ねぇ、システィーナ。ルミアやリィエルは一体、どうなったんですの?先生はどうして死にかけていたんですの?先生とそのご友人、ジョセフは一体、どこへ何をしに?貴女なら何か詳しいこと知っているんじゃなくって?」

 

 ウェンディが誰しも思っている疑問を代弁する。

 

 対するシスティーナは、その疑問について、ほとんどの答えを持っている。グレンとアルベルト、ジョセフの行き先は流石にわからないが、白魔儀【リヴァイヴァ―】に立ち会った際のアルベルトの言葉から察するに、皆の前から姿を消した三人が何をしに行ったのか…そのくらいは容易に想像がつく。

 

 だが……

 

「それは…ごめん、言えない」

 

 システィーナは申し訳なさそうに、そう呟いた。

 

「……どういうことですの?」

 

「皆に嘘は吐きたくないの…かと言って、本当のことを言って今までのこと全部なかったことにもしたくない…だから……」

 

 システィーナ自身、自分で言った言葉に驚いていた。

 

 リィエルには、あんな怖い目に、惨めな目に遭わされたというのに…自分はまだ、心の底のどこかで、リィエルを信じていたらしい。信じたいらしい。

 

 だから。

 

 自分の正直な心を再確認したシスティーナは改めて覚悟を決めた。

 

 待つことしかできない自分は――せめて彼らが帰ってくる場所を守らなければならない。

 

 それゆえにシスティーナは、クラスの村八分になる覚悟で、言った。

 

「安心して、皆。先生が、必ずなんとかしてくれるわ。先生ならきっと、ルミアもリィエルも連れ戻して来てくれる。今回のことを、後に『そんなこともあった』って、きっと笑い話にできるようにしてくれる…私は、そう信じている……ッ!」

 

 そして。

 

 システィーナはクラス一同の前で頭を下げていた。

 

「だから、皆も先生を信じて…お願い……ッ!」

 

 しばらくの間。

 

 一同の間を重苦しい沈黙が流れる。

 

 ……やがて。

 

「……まったく。面を上げてくださいまし、みっともない……」

 

 呆れたようなウェンディの呟きが漏れる。

 

 のそのそと顔を上げるシスティーナに、ウェンディが告げる。

 

「わかりましたわ、システィーナ。貴女がそこまで言うのでしたら…私達は、今は何も問いません。先生を信じて待つことに致しますわ」

 

「そうだな…ま、どうせ、俺達が本当のことを知ったところで、何かできるってわけでもないだろうしな」

 

 カッシュも肩を竦めてそう続ける。

 

「ふん…どうせ案外つまらないことなんだろう?喧嘩がこじれたとかさ。まったく人騒がせも大概にして欲しいね」

 

「それに、何か僕たちには想像もつかない大事だったとしても…先生はテロリストを相手に大立ち回りして、僕ら皆を救っちゃうような凄い人なんだ…うん、きっと大丈夫」

 

 ギイブルもセシルも口々にそんなことを言う。

 

 見渡せば、この場に集った生徒達全員が、聞きたいこと、言いたいことがたくさんありそうな表情だ。それはシスティーナの懇願を了承しても変わらない。

 

 だが、先ほどまでのお通夜みたいな雰囲気は、その場から払拭されていた。

 

「皆…ありがとう……」

 

 システィーナが安堵の息をついた、その時だ。

 

「……本当に…ありが、とう……」

 

「……システィーナ?」

 

 ウェンディが、それに気付いた。

 

「貴女…どうして、泣いているんですの?」

 

「……え?ううん…なんでもない…なんでもないの……」

 

 いつの間にか溢れる涙に濡れた目元を拭いながら、システィーナは呟く。

 

 なんでもなくはない。

 

 今、この時のシスティーナの心を占める感情は――ただただ『悔しさ』だった。

 

 本当は。

 

 こんな風に、グレンに守られているだけの立場なんて嫌だった。

 

 蚊帳の外に取り残されて、大切な人達が無事に帰ってくることを、信じて祈って、待つだけの立場なんて本当は嫌だった。

 

 かけがえのない親友を、自分の手で守ってあげたかった。

 

 グレンと肩を並べて戦うことまではできなくとも…せめて、いつもルミアのために命を賭して戦うその背中くらいは守ってあげられるようになりたかった。

 

 大切な人達に頼るばかりではなく…祈るばかりではなく…大切な人達を、自分の手で支えてあげられるようになりたかった。

 

 そのための努力は今まで惜しまなかったつもりだし、自分の才覚ならば、そんなことは簡単にできるようになる…そう、本気で思っていた。自信もあった。

 

 なのに、現実はこれだ。

 

 恐らくこれが――今の自分の力の、嘘偽りのない『限界』なのだ。

 

 無力だ。

 

 魔術学院で、成績優秀者だと周囲からちやほやされても…多少の戦闘訓練を受けて天狗のなっても…今の自分は、こと『現実』を前に途方もなく『無力』なのだ。

 

 まだ齢十五に過ぎない少女だとか、温室育ちのお嬢だとか、そんなことは関係ない。

 

 自分は――無力だ。どうしようもなく――無力だ。

 

 それが情けなくて、悔しくて……

 

「……先、生…私………」

 

 ――強く、なりたい。

 

 困惑するクラスメート達の視線が集まる中、システィーナは心からそう思い、静かに涙を流し続けた。

 

 

 

 

「ふはははははッ!どうしたどうした戦争犬ッ!」

 

 バークスの哄笑が上がり、広間内に木霊する。

 

「そうれ!そうれ!そうれ――ッ!」

 

 バークスが魔薬によって得た『人体発電能力』をフル発動させ、漲るほど帯電したその全身から無数の稲妻が一斉に放たれる。

 

「うひゃあ、これは、まぁ元気なおじいちゃんなことで」

 

 ジョセフはガラス円筒の残骸に隠れて、M1903の弾倉に五発の銃弾が纏められたグリップを押し込み、再装填する。

 

 その間に蛇のようにうねる極太の稲妻は四方八方へと手当たり次第に喰らいつき、バークスを中心に円を描くように疾駆するアルベルトの背中を掠めていく。

 

 どうやらバークスはアルベルトを先に始末し、次にジョセフを始末する心算らしい。

 

 逸れた稲妻は、その軌道上にあったガラス円筒の悉く打ち砕き、粉砕していく。

 

「ちっ!邪魔な障害物が多過ぎて狙いが定まらんのぉ――ッ!」

 

 自身が発する荒ぶった稲妻の渦中、バークスの哄笑が響き渡る。

 

「まったく、こうなってもとことん役に立たんゴミ共めッ!まぁいい!先に宣言したとおり、野良犬駆除のついでに大掃除だッ!」

 

「……ッ!」

 

 ぎり、と。

 

「……テメェッ!」

 

 アルベルトが歯ぎしりする音が、人知れず鳴り、ジョセフの口からは微かに怒りの声が漏れる。

 

「貴様は命を何だと思っている?俺も外道だが…貴様は外道ですらなそれ以下だ」

 

「はっ!何か言ったか、戦争犬!?犬はそうやって無様に逃げ回っている姿がお似合いだぞッ!死ねぇ――ッ!」

 

「≪――・――疾く駆けよ・天に舞って踊れ≫!」

 

 バークスがさらに『人体発電能力』を発動させようとすると、すかさずアルベルトは先読みで唱えていた黒魔【プラズマ・フィールド】を起動する。

 

 バークスの全身から放たれた稲妻と、アルベルトの呪文によって巻き起こる雷嵐が真っ向からぶつかり、衝撃音を立てて紫電が爆ぜ踊り、視界を明滅させる。

 

「ちぃ、小癪な…随分と電撃の扱いに長けたやつめ…ならば!」

 

「させるかよ!」

 

 ジョセフが隙を見て、銃を構え、バークスの右腕の大動脈を狙い、撃つ。

 

「ぐぅ――おッ!?」

 

 だが、血が流れるのはほんの一瞬、大動脈を貫いたその傷は、バークスの『再生能力』で、すぐに閉じていく。

 

「おのれ、連邦のハゲワシめッ!さっきからちょこまかとッ!まずは貴様から灰にしてやるわ!」

 

 今度はバークスはジョセフに、炎熱系のB級軍用攻性呪文に匹敵する『発火能力』を発動させる。

 

 だが――

 

「≪氷狼は疾走す≫」

 

 アルベルトがそれに合わせ、C級軍用魔術、黒魔【アイス・ブリザード】を起動。

 

 降り注ぐ炎獄の豪雨を、渦巻く氷の嵐が迎え撃つ。

 

 だが、そもそもバークスの異能とアルベルトのC級攻性呪文では、根本的な威力規格が違う。アルベルトの【アイス・ブリザード】は、完全にバークスの『発火能力』で生み出された灼熱炎に威力負けし、押し返され、飲み込まれる――が。

 

「ぐぉ――ッ!?」

 

 氷の嵐が瞬時に蒸発・気化したことによって巻き起こる大量の水蒸気に、バークスの視界一面が真っ白に染まり――

 

 厚く渦巻く水蒸気を鋭く切り裂き、一条の銀光が、もう一方からは銃声と共に一条の火線がバークスへ飛来する。

 

 その銀光はバークスの首筋を、火線は左脚をそれぞれ正確に切り裂き、撃ち貫いた。

 

「む――ぐぅ!?」

 

 だが、血煙が上がるのはやはりほんの一瞬、慶剛脈や大動脈にまで達したその傷は、、バークスが魔薬で得た『再生能力』により、すぐに閉じていく。

 

 バークスは背後の壁へ、忌々しそうな目を向けた。

 

 今、不遜にもバークスを傷つけた銀光の正体がそこに突き立っている。

 

 ナイフだ。なんの呪的効果も付呪されていない、ただのナイフ。

 

「貴様ら…さっきからこれは一体、何の冗談だ?」

 

「……………」

 

「……………」

 

 黒い男と魔術学院の制服を着た少年――アルベルトとジョセフは何も語らず、ただ静謐に、バークスを鋭く見据えている。

 

 そう、バークスの言うとおり、アルベルトは戦いが始まって以来、バークスに対して攻性系の魔術を使用した直接的な呪文攻撃をまったく行わない。ジョセフに限っては、魔術をまったく使っていない。

 

 様々な手段でバークスの隙を作っては、馬鹿の一つ覚えのようにナイフの投擲や銃の射撃を繰り返し、バークスの頸動脈や四肢に通う大動脈などを正確無比に穿つ…それだけだ。

 

 実際、バークスの周囲には無数のナイフや空になった金属薬莢が散らばっている。

 

 本来、このようなナイフ攻撃は【エア・スクリーン】の一枚でも張っておけば、バークスに届きもしないのだが、アルベルトはそれを【ディスペル・フォース】で解除までして、ナイフ攻撃に拘ってくるのだ。ジョセフの攻撃もそうだが、『再生能力』ですぐに傷が癒えるため、なんの損害にもならないというのに、それでもアルベルトとジョセフはナイフ投擲や、射撃を繰り返す。

 

 まるで嫌がらせのような二人の攻撃に、バークスは舌打ちせざるをえない。

 

「こんな玩具で、この私をなんとかできると本気で思ってるのか?もっとも、今の私にただの三属攻性呪文など通用しないがな……」

 

 バークスが魔薬で得た能力の中には『耐熱能力』、『耐冷能力』、『耐電能力』なども存在する。それらを発動すれば、発動中は対応する三属呪文を完全に遮断できるのだ。

 

 炎熱、冷気、電撃の三属攻性呪文を主力とするアルベルトと電撃が得意なジョセフには、圧倒的に不利な状況のはずなのだが……

 

「貴様を仕留めるのに攻性呪文など必要ない。…此れで充分だ」

 

「別にお宅にはこれで充分に倒せるやさかい、魔術を使うこと自体、魔力の無駄や」

 

 二人は冷たい声色でそんなことを言い、アルベルトは新たなナイフを取り出し、ジョセフは銃を構える。

 

 その見下したような物言いが、先ほどからバークスの神経を逆なでするのだ。

 

 だが、同時にバークスは内心、侮蔑と共にほくそ笑んでいた。

 

(ふん、馬鹿が。貴様らごときの企みなど見抜けぬ私だと思うたか)

 

 バークスは周囲に散らばるナイフの並びと位置に注目する。

 

 ナイフは一見、なんの意味もなくばらばらに散らばっているだけだが――その配列には魔術的意味が隠されていることに、バークスはとっくに気付いていた。

 

(ルーン文字の暗号象徴変換――しかもこの型式は幻といわれるツァール表記法。抜け目のない男よ。無意味なナイフ投擲を繰り返している振りをして、実は私を陥れる魔術結界を構築しているとはな。それもあの連邦の少年も絶妙なタイミングで、注意を逸らしながらそれをわかりにくくしておる。並みの魔術師ならば見抜けずに引っかかるだろうて)

 

 なるほど、確かにアルベルトとジョセフという若僧が図に乗るのもわかる。これほどの技量・戦術をあの若さで持てば、有頂天になるのは仕方のないことだ。

 

(ふん、井の中の蛙め…舐められたものだ!この私はバークス=ブラウモン!その程度の小細工で搦め捕れるような相手だと思うたか!)

 

 だからバークスは敢えてこの二人の企みに気付かぬ振りをしていた。

 

 二人の狙いが判明している以上、それはどうとでもなることだし、このいけ好かない男達が自分の目論見が外した時の動揺振りを、バークスは何よりも見たかった。

 

「…………」

 

「さてと……」

 

 バークスの内心など露ほども知らず、アルベルトは懐からナイフを取り出し、ジョセフはボルトを引き銃弾を薬室に装填する。

 

(そうだ、やれ!もっとやれ!せいぜいマヌケに踊れ!そして最後の最後に、貴様らに極上の絶望と魔術師としての根本的な格の違いというものを思い知らせてやる!)

 

 確定した勝利の愉悦に歪む顔で、さらにバークスは異能を発動する。

 

 そして、とうとうバークスはジョセフの不気味な笑みに気付くことはなかった。

 

 二人はバークスの異能攻撃を捌きながら、淡々と攻撃を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






こんなもんかな
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