ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員   作:藤氏

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エアコン大活躍でござる…


7話

 東館二階の2組の教室の扉の前に着いたジョセフは、まず扉を確認する。あのチンピラ男が何か仕掛けているかもしれないから、それを確認するためだ。

 

 すると、扉の取っ手部分に魔術式のロックが施されていた。どうやら、完全に閉じ込めていたらしい。

 

(ふむ、作りは、結構雑だな…それでも生徒が解除するには時間が掛かるが。いや、そもそも解除できないか。)

 

 何せ、今日は魔術学会でセリカ含む教授や講師陣はおらず、本来は休校日なのだが、2組だけ授業の進行が遅れていたので、例外的に授業があるはずだった。そこに天の智慧研究会が侵入してきた。

 

 そのため今学院にいるのは、生徒と、グレン(連中は始末したと思っているが)、そしてジョセフである。

 

(生徒しかいないから、多少手を抜いても大丈夫だと思っているらしいが、この世は何が起きるかわからないから、例えばここにデルタがいるとは思ってないだろう。だが、それが命取りになることがある。)

 

 ―――その任務がどれだけ簡単だろうが、決して手を抜いてはならないし、ありとあらゆる状況を想定していなければ、死ぬだろう。

 

 これは、ジョセフが軍学校にいたいた時、『連邦の狂犬』と呼ばれ、かつ自分の師匠から耳にタコができるほど聞かされた言葉である。

 

(連中は、どんな状況も想定していない、あるいは楽観視している。まあ、こちらとしては動きやすいが。)

 

 

『本当は魔術で解除したいが、今は時間がない。直感でフィーベルの件はグレン先生に任せてしまったが…万が一のこともある。ここは蹴破るしかないか。』

 

 こんな雑な作りのロックなら、蹴破れる。そう思い、ジョセフは、扉に向かって回し蹴りをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2組の教室内は、早朝の騒がしい時とは違い、完全にお通夜のような雰囲気になっていた。

 

 突然、テロリストと名乗る二人組の男が入って来て、【ライトニング・ピアス】を乱射し、ルミアを連れ出して行ったのだから、無理もなかった。おまけに、グレンは死んだとダークコートの男に言い渡され、絶望の状況だった。

 

 ダークコートの男――レイクがルミアを連れ去った後、ジンは教室に残された生徒達全員を【マジック・ローブ】で縛り上げ、呪文の起動を封じる【スペル・シール】の魔術をかけ、完全に無力化した。

 

 一作業が終わった後、何を思ったかジンはシスティーナを連れて教室を出ると、ロックの魔術で教室に鍵をかけ、生徒達を完全に閉じ込めた。

 

 ウェンディは、そんな絶望的な状況の中、一人の男子生徒の行方を案じていた。

 

(ジョセフ…貴方は一体どこにいるんですの?)

 

 レイクからグレンは死んだと言い渡されたが、あの二人組の男から」、ジョセフの名前は出てこなかった。生徒一人殺したという話も聞いていない。

 

 となると、おそらくは生きていると思うのだが、はっきりしない以上、不安が大きくなってくる。

 

(ルミアとシスティーナは連れて行かれたし、グレン先生は死んだと言ってますし、あ後は彼が生きて私達を助けて来てくれるしか…)

 

 ウェンディはそう祈るしかなかった。彼は頭がキレるというのは小さい頃から知っている。だから、そう簡単には殺されるはずがない。そう思わないと、神経が持たなかった。

 

 だが、もし、あの二人組に殺されていたら…

 

(やめて……)

 

 だが、悪い予感がすると、次々とネガティブ考えが浮かんでくる。もし、そうなった場合、万事休す。あのテロリストに何されるか分からない。

 

 初日に自分をイジって笑っていた彼の顔を思い出す。決して悪意はなかった笑顔。

 

(せっかく再会したのに…いやですわそんなこと…助けて下さいまし!ジョセフ、助けて……ッ!)

 

 目から涙が溢れ、幼馴染に心の中で必死に助けを求める、その時だった。

 

 バアンッ!――

 

 扉がまるで吹き飛ばされるのではないかと思わせる大きな音を立て開けられる。生徒達はビクッとして開けられた扉の方を見る。

 

 そこには全身黒ずくめの人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

(良かった…皆無事なんやな。二人連れ出されたから完全に安心できんけど。)

 

 一応室内を見渡すと、真ん中の席周辺に小さい穴が4つ空いていた。クラスの人達を見て、二人連れ出されたが、それ以外の人達は無事であることに安心する。

 

(それにしても、やってもうたな…)

 

 それと同時に、ジョセフは扉を回し蹴りで無理やり開けた行動を後悔した。

 

 生徒達の顔を見ると、自分達が何されるか、分からない状況で怯えている中、開けた人物が制服姿のジョセフだったら、まだ安心できたかもしれない。

 

 しかし、ジョセフは今黒ずくめの服装だ。生徒達から見たら、テロリストと思われていてもおかしくない。現に、生徒達はものすごく怯えていた。

 

「な、なんだ?」

 

「まさか、テロリスト?今度は何するつもり?」

 

(ああもう、テロリストと完全に間違えられているよ、チクショウッ!)

 

 やってしまったことをあーだこーだ思っても仕方がない。ジョセフはカッシュに向かう。

 

『おい、お前。』

 

「や、やめてくれ…」

 

 カッシュは怯えた様子でこちらを見る。何かされるのか分からないのだろう。そう懇願してくる。回し蹴りしなきゃよかった…

 

『……お前、怪我はないか?他の連中は大丈夫か?』

 

「け、怪我?」

 

『あるのか?ないのか?』

 

「いや、大丈夫だ。怪我している奴はいない。」

 

『OK。安心しろ俺はテロリストではない。まあ…この服装を見て信用しろというのは難しいかな?』

 

「もしかして、帝国軍?」

 

『いや、帝国軍ではない。そうだな…腕章を見れば分かるか。』

 

 ジョセフは、左腕に付けられている腕章をカッシュに見せる。カッシュはそれを見て驚愕した顔で見た。左腕に付けられている腕章は星条旗が付けられていた。

 

「連邦軍!?何でここに?」

 

 自国の軍ではなく、他国の軍が帝国の公的機関にいる。それを知っただけでクラス中がざわめく。

 

「な、なんで、連邦軍が?」

 

「敵ではないなら、味方なのか?」

 

 その囁きに答えるように、ジョセフは目的を説明する。

 

『実は、ある組織の壊滅を政府から命じられてね。で、その組織に所属していると思われる二人組の男、一人はダークコートの男、もう一人はチンピラ風な男を追っている。そして、今ここにいるという事さ。』

 

 ジョセフは一通り説明すると、【マジック・ローブ】の解呪を開始する。

 

『今から、【マジック・ローブ】と【スペル・シール】を解呪する。≪解除≫』

 

 ジョセフが一節詠唱を唱えると【マジック・ローブ】はほどけて消滅し、カッシュの両手が自由になる。

 

『よし、これで魔術を起動できるはずだ。』

 

「あ、ありがとうございます。その、俺も手伝います。」

 

『いや、残りの連中も俺が解呪するから、その代わり、いくつか質問するから、答えられる範囲でいい、答えてくれないか?』

 

「あ、はい。」

 

『他の人も、答えられるだけ答えてほしい。』

 

 クラス達を見渡すと、何人か頷く。どうやら敵ではないと分かってもらえたらしい。

 

『まず、二人組の男についてだが、連中がどうやって学院に侵入したか、分かるか?』

 

「えっと、確か、チンピラの男が正門にいる守衛を殺して、結界を破ったといってました。」

 

 ジョセフの質問に、カッシュが思い出すように答える。

 

(結界を破ったのか?あれは一流の魔術師でも解除するのにかなり時間がかかるぞ。それを短時間で破ったということは…やはり裏切り者がいるな。)

 

『OK、連中の目的は?何か言ってなかったか?』

 

「その…ルミアという女子生徒を探していました。」

 

 今度は小柄な女子生徒であるリンが答える。先ほどのチンピラ男に絡まれたことを思い出したせいか、リンは今にも泣きそうな顔をしていた。

 

『……他は?その女子生徒以外はこれで全員なのか?』

 

 システィーナが連れ出されたということは知っているが、知らないという感じに聞いてみる。ジョセフは今、ウェンディの所に行って解呪作業を始めている。

 

「……もう一人連れ出されましたわ…私達を縛って無力化した後、突然、システィーナがチンピラ風の男に連れ出されんですの。」

 

『何?、それは標的としてではなく、なんの理由もなく?』

 

 ジョセフの問いにウェンディは頷く。

 

『ああ、クソッ、どうやらルミアって子よりもシスティーナっていう子のほうが危険だな。』

 

 ジョセフは今までの話を聞いて誰を最初に救出し、敵を始末するか、計画を練っていく。その中でシスティーナが何の理由もなく連れ出されたということは、彼女を1番に、続いてルミアを救出することになる。とにかく、今一番危険な状態なのは、システィーナだ。

 

(多分、正義感の強い彼女のことだ。なんやかんや楯突きまくったんだろう。それをチンピラ男が気に食わなくなるのは当然だ。ああいう奴は女に言われたらすぐカッとなるからな。ティンジェルはおそらくすぐ殺されることはないはずだ。殺すならば、今すぐこの場で殺害するだろう。となると、何らかの利用価値がある、だから連れ去ったという考えも納得がいく。それでも急がなければいけないが。)

 

「…それと、あともう一人…」

 

『……ッ!』

 

 ウェンディがこちらを見ながら言葉を続ける。そのもう一人が誰なのかは、ジョセフは想像できた。

 

(俺のことだ……)

 

「……男子生徒が一人行方が分かりませんの。私の幼馴染で、まだ、数週間前に連邦から来たばかりで…」

 

『……』

 

 ウェンディが不安な瞳でジョセフが行方不明になっていると、告げる。ジョセフは彼女の瞳を見ると、胸が痛くなってきた。

 

 一瞬、帽子を取って、姿を見せようと帽子に手を近づけ――やめた。正体を明かすわけにはいかない。少なくとも今は――

 

『OK、そいつも探してみるとしよう。大丈夫さ、アメリカ人はしぶといからな。二人組の男は、その生徒の子について何か言ったか?』

 

「いえ、何も…」

 

『だったらまだ生きているな。今頃、どこかに隠れているはずだ。』

 

「分かりました。頼みますわ。」

 

『よし、じゃ、早速動くとするか。まずはシスティーナという女子生徒の救出からだな。あー、それと…君達の担任と思われる講師のことだが…安心しろ、生きているし、今この校舎内にいる。』

 

 全員の解呪作業を終えたジョセフは、グレンがまだ生きていることを告げると、クラス中が安堵する。

 

 そして、ジョセフはポーチから、二枚の羽根を取り出し、軽く振ると、そこにはライフル銃と拳銃、2丁の形の異なる銃が出てきた。

 

「な、なんだあれ?」

 

「銃だよな?でもあんな形見たことがないぞ。」

 

「魔術師相手に銃で挑むなんて…正気か?」

 

 クラス全員、その銃を物珍しい目で見る。この時代の銃はライフル・マスケット銃、拳銃はパーカッション式リボルバーが主流であった。弾薬を銃口から装填し、ハンマーを起こして撃つ。射程は長いが、一発撃った後の再装填時間が長く、リボルバーも連発できるが、同様に再装填の時間が長い。そのため、帝国軍では銃は、補助的な装備に位置づけられていた。

 

 一方、ジョセフが出した銃は一見すると同じように見えるが、全く違っていた。まずライフル銃は、ハンマーが見当たらす、拳銃はシリンダーがないリボルバーのような形状をしていた。

 

 クラスのそんな囁く声を無視し、2丁の銃の状態をチェックする。

 

『2丁とも内部に異常なし。』

 

 内部の点検を終えると、ジョセフはそれぞれの銃に箱型の物体を装着していく。そして、装着するとライフルは銃身の下にある突起物を押し、拳銃は上部にあるスライドを動かす。すると、どちらもカチャっという音がした。

 

『装填完了。他に異常は…ないな。』

 

 一連の作業を終えると、短剣型の銃剣をライフル――M1907 SLに装着し、拳銃――M1911は腰についているホルスターに収納する。

 

『逃げろと言いたいところだが、連中が何か仕掛けているか分からない以上、ここにいた方がいい。扉の方にはロックをするから大人しくしておいてくれ。』

 

(それに、やすやす逃がすはずがないしな…)

 

 生徒達にそう告げると、ジョセフは扉に向かい、廊下に出た。今のところ敵影は見当たらない。

 

『さて行くとしますかね。』

 

 そういって、扉を閉め、ロックの魔術を賭ける。辺りを見回すと、チンピラ男が、システィーナを脅しながらある部屋へ入っていくのが見えた。

 

『あの部屋は、魔術実験室か。急がないとな。あとは、まあ、グレン先生と合流する形になるな。』

 

 そう呟いて、ジョセフは急いで魔術実験室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかのM1907が初っ端から出てくるという。

BF1では大変お世話になった銃です。

史実では当時はまだ信頼性が高くなかった半自動小銃の中で、この銃は信頼性が高い銃として前線の兵士からの評判が良かったらしいです。
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