『それにしても・・・なぁ、天』
「なんだ・・・・・・ よっと!・・・零!」
戦闘が始まり、月が少し傾いた時。
天と零は目の前にいる敵から意識を外すこと無く切り伏していたが――
ドコォォォンッッ!!!
やはり、ついつい派手なものを見てしまうのは、人以前に生物の本能だと思ってしまう、1人と刀。
「どうしたぁ!こんなものじゃなかろうっ!数の利はそちらにあるんじゃぞぉ?」
ニカッッ!
と、楽しそうに拳で容赦なく粉砕していく轟鬼をしり目に、天と零は感嘆の声をもらす。
『あんな奴がいたなんてな・・・くっく、おもしれぇなあ・・・』
「確かにな・・・」
天は元々妖怪に対する興味があったが、轟鬼の戦う姿を見て――不謹慎だが――殺し合いがしたいと思った。
殺し合いと言ってもただの力比べだが。
「ふぅ・・・結構数が減ったな・・・」
刀を収め、天がそう呟く。
まだ妖怪達はいるが、妖力が小さいものはいないし、中くらいのやつは轟鬼が片っ端から片付けている。
一瞬の静寂を過ぎ――
『やっとか』
ズドンッッッッ!!!
「おっと・・・」
――大きい
まず、そう感じた。
その次に、体が黒光りしており、その目はギラギラ光っている。
特筆すべきは足と手である。
大きな体を支えているのは八本の足であり、どれも先端が鋭く、かなりの硬度を持っているだろう。
さらに手の先は鎌のようになっており、そこら辺の木ならスパスパ切れそうだ。
「蜘蛛の妖怪か・・・それも、かなりの強さ・・・!」
「グガァァァァ・・・!」
『気をつけろよ。もしかしたらこの妖怪・・・』
ブオン!
風が唸り、蜘蛛の鎌が振り下ろされる。
それに合わせて刀を振り上げ――
「なっ・・・・・・!」
天とて不老不死として何百年生きているが、斬ることが出来なかった経験など覚えてない。
あったとしても最後に起こったのは何時だ、という問いにパッと答えることが出来ない。
仕方なく刀をズラし、鎌を地面に激突させる。
そうしたらもう1つの鎌が天の胸に目掛けて振り下ろされるが、それも難なくいなす。
(このままだと埒があかねぇな・・・)
内心ではそう毒づくも、その顔には笑みを浮かべる天。
彼自身はそう思ってないが、かなりのバトルジャンキー・・・つまるところ狂戦士だ。
もっとも殺戮が大好きという訳でもなく、ただ単に強い奴と戦いたいだけなのだが。
(どうする?どうやってこの妖怪を倒す・・・?)
数秒考えたが、どうも考える方に意識を向きすぎたようだ。
「天!来るぞっ!」
零が叫んだ時、天は我に返ったが既に遅く――
ズドォォォンッッッ!!!
黒光りする巨体に押し潰れた。
「ガハァッ・・・」
これには天も堪らず、口から鮮やかな血を吐き出す。
その音、色を見た蜘蛛の顔が喜びに染まり、そして大きく目を見開いた。
「はっ、詰めが甘いぜ・・・」
反対に獰猛な笑みを浮かべる天。
「どんなものにも、必ず弱点はある。人だったら体は大きくなかったり、鳥だったら翼が無ければ空も飛べなくて生きることも難しい」
「グッ・・・ガァァァァ!?!?」
突如訪れた痛みに、蜘蛛妖怪は叫び、悶え苦しむ。
「蜘蛛だった場合は――1番柔らかい腹とか、なっ!」
と、威勢よく血と共に声を出し、押し込む。
天はただ攻撃を食らった訳じゃ無い。
自分に当たる瞬間、刀を蜘蛛の腹目掛けて思い切り突き刺したのだ。
「グゥゥゥッッ!」
痛みを感じ怯んだところで、霊力を込めた両足で、柔らかい腹を思いっきり蹴る。
蹴られたことにより、蜘蛛妖怪の体がほんの少し浮き、天が刀を引き抜いて力強く両手で持ち――
「――天零流刀法・三十七式」
反射した月光が、辺りに煌めく。
「
柔らかいものを斬った時の音と、硬いものを斬った時の音がほぼ同時に響いた。
双絶撃。
もし、1度の太刀で斬れなかった場合、どうすればいい?
その問に対しての答えは簡単だ。
斬れなかった所を、もう1回斬ればいい。
一太刀、次のための布石。故に命までは刈り取ることが出来ず。
二太刀、命を、全てを断つ。
「お前がどれだけ硬くても、必ず斬られれば死ぬ。なら俺は、お前が死ぬまで斬ってやる」
蜘蛛妖怪は真っ二つになって、そのまま地面に崩れ落ちた。
天は敵の最後を見て、ふと轟鬼の様子を見ようとし――
ゾワッ
嫌な予感がし、後ろを振り向く。
するとそこには、大きな蜘蛛・・・ではなく、大量の小さな蜘蛛が重なり、絡み合い、さっきの大きな蜘蛛の形になっていた。
「なっ・・・」
さっきの蜘蛛が実は小さい蜘蛛だったのか――、と考えるも、すぐにその考えを否定する。
さっき斬った時に感触はあった。よく目を凝らして見ると、小さい蜘蛛1匹1匹の背中に傷がある。・・・何故か両断された筈なのに生きてはいるが。
そして天が観察していると、小さい蜘蛛全てがニヤァァッッと笑い――
空中にバラバラになって飛んだ。
逃亡など、天が容赦することなく全て斬ろうとしたが、あることに気になったので止める。
『おい追わねぇのかよ。逃げられちまうぜ?』
「追いかけたいが・・・さっきからうずうずしてる奴がいるからな。そいつに任せる」
ピタッッッッ!!!!
「「「「「「!?!?!?」」」」」」
「カッカッカッ!すまんのぉ、天!ちょっとの・・・」
「別にいいぜ。さっきから端でずっとうずうずしてたからな。・・・じゃあ、任せた」
「おう!恩に着る!」
そういうが早く、轟鬼は手を大きく広げ、無造作に握りこんだ。
たったそれだけの作業で小さな蜘蛛たちはミシミシと音をたて――
バァッッン!!!
弾け飛んだ。
これを見て天は確信する。
「轟鬼、お前能力を持つ妖怪だったのか・・・強すぎじゃないか・・・?」
「いや、そんな大したもんじゃないぞ。儂の能力は」
「ストップ」
そういい、天は轟鬼が喋るのを止ませる。
「能力は言うなよ?もしお前と殺るとき、分かってたらつまらないだろ?」
そう言うと轟鬼は目を丸くして、心地の良い、まるで子供の様な無邪気な笑みをその顔に浮かべる。
「カカッ、面白いことを言うのう!・・・それよりも天、もう敵は来ないかの?」
「いや、あと一体いるな。そしてコイツが1番強い妖力を持っているな」
「ほう・・・それは楽しめそうじゃの!」
「・・・ああ。そうだな」
あえて口に出さないが、その妖力、さっきの戦闘中にあったりなかったりしたのだ。
完全に妖力を消すことなんて、不可能だ。
もしかしたらもう逃げた、と天も考えたが、それも杞憂に終わりそうだ。
「来たぞ」
2人は目を細め、向かって来る妖怪を見る。
薄い紫のワンピースに、これまた薄い紫の瞳。
頭には帽子を被っているが、(多分)彼女の派手な金髪の上に乗っているという感じである。
更にその片手に日傘を持っており、優雅に頭の上に開いている。
「おぉ・・・」
轟鬼が声をもらす。それも仕方の無いことだろう。
目の前の女性はあまりに美しすぎた。
一歩踏み出し、天が問う。
「おいあんた、この妖怪達のまとめ役・・・じゃなさそうだな。・・・騙したな?」
「!・・・何故、そう思ったのですか?」
「いやあんた胡散臭いじゃん」
「ゔっっ」
そう。
先程美しいと言ったが、彼女の顔にニヤニヤとした笑みが張り付いているため、どこか胡散臭さを感じる。
「・・・初対面の人になんてことを・・・」
「いやあんた妖怪だろ」
「うぅ・・・」
ちょっと目の前の女性を弄るが、本題にはちゃんと入る天。
「そんで、なんでこんな真似したんだ?」
すると目の前の女性は目を閉じ、深く深呼吸してこう言った。
「お願いします・・・どうか、力を貸しては頂けませんか・・・」
この時天は、嫌な感じを覚えた。
そして同時に、歯車がカチリとハマるような、パズルのピースがピタッとハマったような。
そんな、なんとも言えないような感じに陥っいった。
今、2つ目の物語が幕を上げる。
これからは1週間に1話ペースで小説を書きます。
次回予告
「力を貸すって、何をすればいいんだ?」by天