受験が終わって自由を手にいれた、黒ノ姫です。
というわけで、どうぞ!
「うああああああああ!!」
ヤバい!!
足を踏み入れたらどこかに瞬間移動、的なもの想像していたけど、これは完全に予想外だ!
(どうする!?絶対ケガするぞ!?)
というか、ケガですむのか?
(あ…)
地面が見えてきたが多分、いや、絶対死ぬ。ケガなんて生ぬるいレベルだぜ。ありがとう、マイライフ。楽しかったなー。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ―――
(最後にもう一回永琳さんの紅茶が飲みたかったな…)
そんなことを考えていたら、どんどん地面が近ずいてきた。
怖くて反射的に目をつぶり、俺は人生に幕を閉じ……
―――スタッ
閉じ…え?
恐る恐る目を開けてみると、そこには無傷な俺と冷たい地面があった。
ほっぺが冷たいが、どうやら俺は生きているみたいだ。
(なんでだ?まぁ、生きてるからいいか……)
さて、どうしたものか。
壁?をのぼって戻るのは無理だろう。どこかの黒ずくめの剣士は助走さえあれば壁を走ってのぼることができるらしいが。
「あ」
暗闇に目が慣れ、あたりを見回してみると、どこかにつながっている(はず)の通路を見つけた。
少しでも現状を変えれるものを見つけ、ホッ、としたのも束の間。
(ん?今なにか音がした気が……)
目を閉じ、耳を澄ませるが、音が反響しているせいか詳しくは分からない。
いずれにしよ、今自分ができることは限られている。
「よし、行くか」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「迷った」
歩き始めて数分後。俺は暗い洞窟(?)で迷っていた。
……うん。
いやさ?まぁ、どんどん進んで行ったんだよ?
けど途中で別れ道があって、そのあとも別れ道で、しかもこの暗さだから、最終的に自分の場所すらわからなくなったんだ。
「ハァ。困ったなぁ」
己の軽率な行動を悔やんだ。
その時だった。
「?」
なにかに声をかけられたような気がした。
だが、この暗い場所には何もいない。
空耳か。
「ーーーーーい」
「!?」
間違いない。なにか聞こえた。
声がした場所を見ると、今までとはなにか違う通路があった。
「ーーーー来い」
明らかに来い、と言っている。
だが、この声が女の子を連れて行った変な奴かもしれない。
どうする―――
もしこの声が変な奴と仮定して、なぜ来いと言う?
こっちの場所を知っているのに、来れない理由があるから?なにか悪意が?いや、さっきの声は何も含んでなかった。
………行ってみるか。
これは賭けだ。下手すると自分の身がどうなるか分からない。
だが――
足を一歩踏み出す。
もう、自分の道は決まっている。
俺のことを助けてくれた永琳のように、俺も、困っていそうな人を助けたい。
通路に足を踏み入れた瞬間、数分前の自分が味わった感覚があった。
……あれ?
俺、落ちてね?
さっきのような独特な浮遊感。体にあたる風。
(またか……)
だが、さっき落ちたときは無事だった。まぁ、今度もなんとかなる――
はずもなく。
グギィ!
足首ヲ挫キマシター!
な ん で さ。
さっきは無事だったじゃん…。
ーーーーーーーーーーーーーーー
落ちた、という事はすなわち、さっきの場所より下にいるということだ。
「ーーちに来い」
さっきの声だ。声の場所に近づいているのだろう。
声がした方向に向かって歩き始める。
足は少し痛いが、多分問題ない筈だ。
歩き初めてすぐの場所に、扉があった。
普通の。どこにでもあるような。
だが、なぜか警戒してしまう。
体は普通だが、脳がこれ以上はヤバい、と危険信号を発している。
(気のせいだ……)
不安な心を消し、ドアノブに手おかけ、ひねって引いてみる。
――カチャ
……鍵はかかってないようだ。
扉を開けると、とても大きいところに出た。
さっきより寒い。
足が一歩出た。
自分は何も意識していない。
勝手に動いた。
前を見つめる。
「こっちに来い」
あの声だ。
足を進める。
ドクン、ドクン
心臓がうるさい。まるで、耳のすぐ横にあるかのように、高鳴っている。
やがて、何かが見えてきた。
そこだけなぜか明るい。まるで、月明かりの下にあるかのように。
立ち止まる。
そして息を飲んだ。
――そこには、とても美しい刀があった。
刀は触ったことすら、ましてや見たことがない。
だが分かる。
この刀はすごい、と。
何がすごい、かは分からないが。
(それにしても……)
刀を見て思う。
全体的に灰色に近い白の色に、鮮やかな、少し薄い紫色の模様がほどこされている。
そんな刀が、なぜこんな所にある?
うん、わかんない。
(ちょっと触ってみようかな…)
恐る恐る触ってみる。
ツン
特に反応はない。
(……持ってみよう)
好奇心のまま、刀を持ってみる。
ズシッ
重い。
が、持てないほどじゃない。
(…………抜いてみようかな?)
これだけすごい装飾なんだ。きっと本体もキレイなはず――
抜こうと力をこめる。が――
ギッ
「?」
抜けない。
「ぐううう……」
力をどんどん入れていっても、一向に抜ける気がしない。
「ぐぐぐぐぐ…………はぁ」
無理だ、と悟ってしまう。
諦めて刀を置こうとしたときだった。
(ん?)
急に
なんというか、今なら抜けそうな気がする。
確信がなかったが、それがすぐに起こった。
ス――
刀が動いた。刃が少し見える。
その刃は、まるで月のような色だった。
だが、そこで異変を感じた。
体が重い。
さっきに比べて少しだが、刃が見える範囲が広くなっていくほど、疲れてくる。
そして、刀をすべて抜いた瞬間――
バキンッ!
まるで、限界まで張っていた鎖が切れたような音がした。
そして――
「やっとか」
「!?」
さっきの声が聞こえた。間違いなく、この刀が
「…お前か?」
「ッ」
「俺様の封印を解いたのは」
「ふ、封印?」
「あぁ。お前、俺のことを抜いたんだろ?」
「あぁ、抜いた」
「だろ?なら感謝する。なにせ、あの状況なら何も出来なかったからな」
「お、おう。そうか」
しばし流れる沈黙。
「……驚かないのか?」
「まぁ、な。喋る刀は珍しいが、今までのことよりは薄いかな」
迷子だったり神様に会ったり。
「………そうか」
「て言うか、お前名前あんの?」
「どっちだ?」
「え?」
「刀か?それとも、俺様自身の名か?」
刀と自分を分けた。ということは、別々の存在なのだろうか?
「んー、お前のほうだ。」
「そうか。俺様の名はそうだな……
「零、か。変な名前だな」
「あ?」
おっと、ついつい本音が。
「お前の名前はなんだよ?」
「白憑 天。天でいい」
「天、か。いい名だな。これから頼むぞ」
刀、いや、零を鞘にいれていると、急に変なことを言ってくる。
「おう。…あ?」
ん?頼むって、何をだ?
「?どうかしたか?」
「いや、頼むって?」
「あ?そりゃあお前…」
「?」
何かあるのか?と言おうとしたとき――
「うぇーーん!えーーん!」
泣き声が、聞こえた。
少し前に聞いた、女の子の。
「!」
「なんだ?うるせぇな…っておい、どこに行く気だ?」
「女の子の所に!早く行かないと!」
自分がなぜここに来ているかを忘れる所だった。
「…はぁ」
零がため息をつく。
「おい、天。俺様を連れてけ」
は?
「は?」
なぜ?
「癪に障るが、手伝ってやるよ」
「お前、さっき何も出来ないって…」
「刀が勝手に動ける訳ねぇだろ。出来るけど」
「いや出来るんかい」
「まぁいい。ただ、お前じゃ助けれねぇぞ?」
「なんでだ?」
「ま、見りゃいやでも分かる。天、行くぞ」
「分かった。でも、どこに?」
「…俺様の言う通りに進め」
「分かった」
会話を打ち切り、俺は刀を持ちながら走り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「次は右だ」
「あぁ」
左右の別れ道を迷わず進んでいく。
「次も右だ」
「少し見にくいが、左だ……そこだ、そこ」
「そこから上にあがれ」
そんなカーナビに従い数十秒後。
「うぇーーん!」
泣き声がどんどん近くなってきた。
「止まれ。ここからは音を立てるなよ?」
さっき零といたところよりは狭いが、ひらけた場所に出た。
「コクコク」
「そうだな……あそこの隙間に行け。様子を見るぞ」
「なんでだ?」ボソッ
「見りゃわかる」
「そうか。というか、お前の声が聞こえるだろ」ボソッ
「あ?じゃあどうすればいいんだよ」
「それは…何とか出来ないのか?」ボソッ
「しょうがねぇな…」
ヌルッ
「うっ!?」
何かが俺の中に…!?
「うるせぇ。だが――」
『 これでいいだろ?』
(コイツ!直接脳内に!)
『何言ってんだが』
(というか、何をした?)
『あ?あぁ、少し繋いだだけだ』
繋ぐ?
『おっと、見えたぜ』
「なッ!」
『おいとい、うるせぇな。バレるだろが』
(いや…でも…)
女の子は見えた。特に目立った傷はない。
が、問題が――
(なんだよ、アレ…)
そこには黒いなにかがいた。
人の形をしているが、身体中全部真っ黒だ。
『さあな?』
(さあな?って…)
「うええええええん!!!!!」
「ッ!」
女の子が今までで一番大きな泣き声を上げた。
(おい、零!どうすればいい!?どうすれば助けられる!?)
完全にテンパっている。頭では分かっているが、制御できない。
『なぁ、天』
急いでいる俺に対し、どこか間延びした零。
(なんだよ!?早くしないと、女の子が)
『 天。お前――
――何がしたいんだ?』
「は?」
頭が真っ白になる。
何がしたい?か、だって?
(だから、女の子を――)
『あぁ、言葉が足りなかったな。』
零が変わらずに言う。
『 なんで助けたいって思ったんだ?』
なんで…なんでだ?
『お前にとっては、ただの他人だろ?』
ただの他人。
『それなのに、なんでお前がわざわざ危険な目にあってでも、助けたいって思ったんだ?』
(そ、れは…)
確かに、零の言う通りだ。
俺はあの女の子について、なんも知らない。
ただ話しかけられただけ。
それ以上、それ以下でもない。
(でも、俺は――)
だが、それがどうした?
それでも俺は。
(他人だろうが、なんだろうが。
目の前に危険な目にあいそうな人がいるなら。
手を差し伸べたいんだ。
自分が出来ることをしないで、この先生きていくなんてことで。
俺は、後悔したくない!)
これが俺の本心だ。偽りなんてない。
『 ……それは、本当か?』
(あぁ。当たり前だ)
『 ……クッ』
(?)
『ハハハハハハハハハハハハ!』
(あ?)
『ハハハハッ、と、わりぃわりぃ』
何が面白いのか、零は笑う。
高らかに。滑稽に。
『いや、お前、面白いな。初めてだ。そんな答えを出したのは』
(…面白いってなんだよ)
『今までの答えがな?全員「自己」を守ることしか考えていなかった。まぁ、例外はいたが。そいつもぶっ飛んでたなぁ。ククッ』
零は笑う。でも、どこか悲しそうな声だった。
『そうだな…俺を抜け』
(お、おう)
スゥゥ――
刀を抜いていく。
ゆっくり、ゆっくり。
刀を抜ききり、零に問う。
(どうすればいい?)
『あ?おまえ、そりゃあ刀を抜いたならやることは決まってんだろ?』
(は?)
『斬れ。思いっきり』
(は?いや、俺――)
斬ったことも、握ったのも今日が初めてだぞ?と、言う前に――
『大丈夫だ。何も考えるな』
(はぁ…分かったよ)
頼れるのは零だけ。
『 …覚悟は決まったか?今からアイツを殺すんだぞ?』
覚悟、か。
そんなもの、決まってるわけない。
でも――
(大丈夫だ。さっき、零がそういっただろ?なら、俺はお前を信じる)
『そうか・・・クク、じゃあやりな』
黒いやつがいるところを見る。
こちら気付いている様ではないようだ。
『息を吸え。迷うな。立ちはだかるヤツ、そのすべてを――』
全力で走り出す。視線はずらさない。
――殺せるか?俺に?
無駄なことを考えるな。
女の子がこっちを向く。
俺は、静かに笑う
――大丈夫だよ。
黒いヤツがこっちに気付いた。だが、もう遅い。
刀を振り上げる。
黒いヤツが避けようとするが、間に合わない。
走った威力を殺さずに、そのまま振り下ろす。
『――断て』
ザシュン!
ーーーーーーーーーーーーーーー
肉を斬るときの、生々しい感触。
怖い。
「ハァ…ハァ…」
息が荒くなり、足がすくむ。
心が耐えきれず、零れ落ちる。
――怖い。
「お兄ちゃん……」
「!!」
そうだ、女の子が……!
女の子をみると、無事だった。
「もう…大丈夫だよ…」
ペタ
膝を付く。
安心、恐怖、心配。
様々な波が押し寄せてくる。
「うっ、えっぐ」
女の子は泣き止まない…
それもそうか。
目の前には、殺人者がいるんだから。
「よがっだょぉ、ひっぐ」
「!?」
なんと、俺を心配してくれたのだ。
「…ハハ」
まぶたが重くなる。どうやら、俺が思ってた以上に疲れてたようだ。
『疲れただろ?眠ってもいいぞ?』
(ハッ、悪い、零)
これ以上は、無理だわ
ドサッ
スゥ…スゥ…
そこには、一太刀の鮮やかな刀と、安心しきった顔をして寝ていた一人の少年がいたとさ。
はい、如何だったでしょうか?
楽しんでもらえたら幸いです。
これからは3日に一話ペースでいこうと考えます。
では、次回予告です!
次回
「ちょっとツクヨミさん!?不味いですよ!?」
by天
次回もお楽しみに!