新世界より   作:桃源郷也

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破壊された日常

「じゃあ樋暮(ひぐらし)さんは、ここに来るのは2回目なんだ」

 電車に乗りながら、俺と樋暮さんは雑談をしていた(主に樋暮さんの事について)。

「そうなんですよ。でも、前に住んでたのは2,3歳の頃だったからあまり覚えてないんです」

「なるほどね。そこから今までドイツにいて、こっちに帰ってきたってわけか」

 樋暮さんはドイツ人の母を持つ、いわゆるハーフらしい。外見は日本人よりだから、あまり意識しなくても良いような感じだ。

「てことはドイツの公用語は…ドイツ語か。ドイツ語話せたりするの?」

「もちろん。国語ですもん。一応、ドイツ語日本語。それから英語の3ヶ国語を話せるから、トリリンガルということになりますね〜」

「Really? How did you learn such an volume?」

 英語でどうやってそんな量を勉強したのか訊いてみた。

「Uh... I learned German when I heard mother was speaking. Likewise, I learned Japanese when I heard that my father was speaking. I learned English at school.」

 なるほど。ドイツ語と日本語は両親から、英語は学校で、か。どこの国でも英語はやるんだな。少し文法がおかしいと感じるのは、様々な言語がごっちゃになってるからだろう。多分。

「俺も親が外国人だったら外国語喋れるようになってたのかなあ?」

「良いものでもないですよ?2ヶ国語で話しかけてくるから大変です。パパはドイツ語を勉強して、少し話せるようになってますけど、まああまり話せてはいませんね…」

「そうなのか。ハーフってのは大変なんだな…。っと、着いたぞ」

 目的地である双鳴高校の最寄り駅である、双鳴駅に着いた。

「ここからすぐだから」

「わかりました。今は7:30…。一般生徒にしてはかなり早くないですか?桃源さん?私は初日だから手続きやらなんやらで早く出ましたけど…」

 登校完了時刻は8:20だ。彼女が言うように、駅の近くは双鳴の生徒も、別の学校の生徒も少ない。

「ああ、俺は学年一位を死守しなきゃ親に何言われるかわからないからね。厳しいだろう?」

「双鳴って周りの学校より頭いいじゃないですか。そんな所で一位だなんて…。私はとっても運がいいですね!」

 満面の笑みで彼女は言った。

 …利用する気か…。まあいいだろう。かわいい子に頼られるのは悪い気はしない。

「桃源くん!赤信号!」

「え?」

 考え事をしていたら赤信号を渡っていたらしい。

(ここなら戻った方がいいか)

 そう思った刹那、俺の身体は宙を舞った。

 大型トラックに轢かれたのだ。

「うぁ…ぐっ…ハ!」

 宙を舞い、地面に叩き付けられるまでの時間が長く感じられた。

 頭から墜落していった。

 

(ここは…)

 気が付くと真っ白い世界にいた。

(ああ、死後の国ってのか…)

 三途の川やお花畑なんてものは何も無く、ただただ無が続くだけの世界が広がっている。

『ようこそ、黄泉の国へ』

 声のする方を向くと、長髪の男がいた。声は女の様だ。

「誰だ?」

『誰、か…。名乗る名は生憎、持ち合わせていないが…。…そうだな…仲間からはイザナギと呼ばれているから、そう呼べば良い』

 イザナギと名乗った男は、問いを投げかけてきた。

『卿は、死に戻りというものを信じるか?』

「死に戻りだと?」

 死んだらまた同じ人生を歩む…。難しく言うならば永劫回帰ってのになるのかな?

『それとも転生を信じるか?』

 永劫回帰の反対側、死んだら別の人間、或いは別の生物として生まれ変わる、輪廻転生。

「どっちかって言われたら、永劫回帰、死に戻りの方かな」

『そうか。ならば、再び君の人生に戻りたいと思うかね?』

「出来ることなら。知っている人生の方がやりやすくていい」

 そう答えると、イザナギは大きく口を開けて笑った。

『ははははははは!そうかそうか。君くらいの年齢の男子なら皆、転生を望むものなのだがな。良かろう。戻してやろう。そのかわり、我らの実験台となってもらおう』

「実験台だと…?」

『そうだ。君には、前世というものがある。君が否定した転生を既に君は経験しているのだよ。その時に身を宿していた力を、桃源郷也の身体に宿らさせてもらう。普通に生活をするには支障はないはずだから気にすることは無いよ』

 厨二病的なことを言いやがって…。俺はそういうのがあまり好みではないんだが…。

『さ、戻れ。選別試験受験者第六百六十六番-□□□□□□□□-よ』

「え…?」

 イザナギがなにか呟いたのを聞いたが、そこで意識が断絶してしまい、何と言ったのかよく分からなかった。

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