デジタルモンスター Missing warriors   作:タカトモン

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十四話 《八月一日》

 

「僕は夏休みの間、デジタルワールドに行くよ」

 

ショッピングモールにあるファミレス。その中にある一席でタツヤは静かにそう言った。その一言を聞くのはカケモンとミキ、そして…。

タツヤの言った言葉に遅れて口を開いたのはミキだった。

 

「それって…」

「ハックモンが言ってたんだ。もうじき、アルフォースブイドラモンが目を覚ますって」

 

デジヴァイスを見つめて語るタツヤ。先日、ハックモンが眠っているアルフォースブイドラモンが目を覚ます事を告げられた。その時に言われたのはこれからの事だ。

カケモンとワレモン、二人にデジタルワールドに帰らないかと誘うも首を横に振られ、断られる。カケモンはタツヤと別れるのが嫌で、ワレモンに関しては現実世界での暮らしが気に入っているらしい。それはそれで納得したハックモンだが、次にハックモンはタツヤにこう言った。“お前はどうするのか”、と。

そしてタツヤが出した答えは…。


「僕がデジヴァイス(これ)を持ってたら、またバルバモンがデジモンを送り込んでくる。だから、僕が向こうの世界に行って決着を付けに行くよ」


タツヤはなんでもないことのように平然とそう言った。…普通なら信じられないだろう、タツヤは自ら危険と隣り合わせの世界へ行くというのだから。ハックモンやアルフォースブイドラモン、それにワレモンという向こうの世界に詳しい者もいるが、敵も同じ条件な上に強大。この前の戦いで知っているはずなのに、とミキは狼狽えていた。

短期間ではあるがバルバモンに従っていたので敵の実力は知っている彼女にとってタツヤの行動は信じ難いものだ。


「何を…言っているの?無謀過ぎる、決着をつけるなんて…」

「大丈夫だよ、夏休みの間…一ヶ月くらいだけだから。宿題だって最初の内に終わらせる。学校が始まりそうになったら、帰ってくるからさ」

「そういうことじゃ…!」

「それに才羽さんにはお願いがあるからさ」


タツヤは自らのペースを崩さずに再びミキを見つめる。その目に少し気圧されそうになり、ミキは口を閉じた。有無を言わせないようなその迫力に感情的になっていた彼女の熱が引いていくのを感じる。カケモンは先程から二人の顔を交互に見ながらも不安そうな顔をしていた。

 

「おじいちゃんと一緒にいて欲しいんだ。ああ見えて、結構寂しがりだからさ、趣味に付き合ってくれたら嬉しいかな」

「……源光さんに話したの?」

「才羽さんが初めてだよ。本当は今日か明日におじいちゃんにだけ言おうかなって思ったんだけど…才羽さんが僕達にちゃんと向き合ってくれたから、言っても良いかなって」


自分がしてきた事の罪悪感と不安もあったのだろう。それでもミキは伝えたい事があると、待っていてほしいと言った。それだけで満足だったのだ、タツヤが彼女を信頼するのに十分だったのだ。

だがミキは疑問を持った。デジタルワールドに行く事を話すのはこれが最初。ならば自分よりも付き合いが長い二人に伝えていないのか…。それが気になりミキは口を開く。

 

「沢渡 アサヒと立向居 城太郎には話さないの?」

「…うん。二人に話したら、付いてきそうだから…怖いんだ。もしかしたら、取り返しのつかない事になるかもしれないって思うと…」

「……」

「だから、才羽さん。みんなの事お願い。それと、この事は二人に内緒にしてて」


そう言ってタツヤは笑う。隣のカケモンは心配そうにタツヤの名前を呟くが心配しないでと彼は笑って返す。本来ならばミキは反対するのだろうが、ミキはある一点を見て黙ってしまう。不安そうなカケモンを撫でる腕が微かに震えているのを見てしまったのだ。

開きかけていた口を閉じ、自分にとっての最善の選択をする。それはタツヤの望む選択であり、ミキの望まない選択だった。

「わかった…」

夕方、タツヤ達は一通りの買い物をして帰路に立っていた。ファミレスでの一件からミキの表情は優れず、タツヤは罪悪感を感じながらも隣を歩いている。

そしてそれとは別の場所、タツヤ達を尾行していたアサヒ、城太郎、ワレモンは暗い顔をしていた。タツヤとしてはバレていないと思っていたが、この三人はファミレスの会話をしっかりと聞いていたのだ。互いに無言を通しながらも、城太郎は急に止まりアサヒの腕に抱かれているワレモンを見ずに声をかける。

 

「ワレモン、お前知ってたのか?」

「……予めタツヤに言うなって言われてたからな、オレは」

「そっか」


普段とは真逆の落ち着いた雰囲気と言動。それだけで今の彼の状態が普通でない事がわかった。それは怒り、悲しみ、そして呆れのようなものがいくつも混ざり合って彼の体の中を駆け巡る。


「沢渡、お前どうする?」

「何が、ですか?」

「わかってんだろ、そんな事」


アサヒにもそう投げかける。彼女の顔は髪に隠れてわからないが、確実にいい顔はしていないだろう。そんな彼女の力の無い返事を聞いても、城太郎の奥に秘めた彼の炎が揺らぐ事は無かった。

2日後、長い校長先生のスピーチを聞き、学校の終業式を終えてタツヤは昇降口から家へ帰ろうとしていた。だが彼の顔は浮かない…自分が隠し事をしているという事実と何故かアサヒとミキ、そして別のクラスでも毎回やって来る城太郎でさえ、タツヤと会話をしなかったのだ。

こんな日もあるのだろうか、そう思い家に帰ろうとすると、肩に腕を回される感覚がした。


「よーう、タツヤ!今日から夏休みなのに何湿気った顔してんだよ!」

「…この世全ての人が城太郎みたいに頭のネジが吹き飛んでるわけじゃないんだよ」

 

どこか安心したように腕を回した相手、城太郎にいつものように返す。何かがあったのではないか、そう思っていたが城太郎は能天気そうな顔でタツヤに話しかけた。


「それよりもさ、お前夏休み何するか決めたか?俺は海に祭りに大忙しの予定だからなー」

「それいつも通りだよね。去年もその前も聞いたよ。…それに僕だって予定が」

「へー、予定できたのか。どっか旅行にでも行くのか?」

 

どこか違和感を感じ疑問に思うタツヤ。普段ならもっとがっつくような態度を取る筈だ。それなのに、何故?城太郎に心境の変化があったのか、それとも…。

タツヤは少し身構えながらも返答する。


「…まあね。おじいちゃんは都合は悪いから、僕とカケモン達で行くつもりだよ」

「遠いのか」

「そうだね、凄く遠いよ」

「いつまでいるんだ?」

「夏休みが終わるまで、かな。いつ帰るかまだわからないけど」


嘘は言っていない。ただ自分は場所の詳しい情報を伝えていないだけだ。そしてそれを聞かない城太郎にちょっとした不信感を抱きながらもタツヤの中では罪悪感が渦巻いていた。


「俺も行っていいか?それに才羽と沢渡も」

「城太郎予定あるんでしょ?それに、チケットはもう売ってないよ」

「じゃあ見送るからさ、いつ行くか教えてくれよ」

「…8月、2日。家に来るなら朝にしてよ」

 

自分は表情を変えていなかっただろうか。

目はそらさなかっただろうか。

声は震えて居なかっただろうか。

タツヤは念のために言った一言に動機が早くなると、城太郎の腕を肩から下ろして前へ進む。表情を読まれまいと、城太郎より先に外へと出た。自分の言った、恐らく数える事しかした事がない嘘に自分自身が怯えながら。

「ああ、2日だな。わかった」

数分後、城太郎は彼の実家へと飛び込むように帰宅した。いつもの彼なら歩いて倍以上の時間をかける帰路を、今日彼は全力で走って来たのだ。だというのに息切れを全くして居ないところから彼の並外れた体力を持っている事がわかる。

城太郎は実家の居間に転がりながら入ると、大声を出しながらも律儀に帰りの挨拶をした。

 

「ただいまぁぁ!父ちゃん、今いるか!!?」

「あらおかえり。父ちゃんなら今珍しく自転車の修理に出掛けてるわよー」

 

そういうのは城太郎の母。彼女は大家族であるため一般より多い洗濯物を畳みながらも城太郎にあんたも手伝いなさい、と洗濯物の一部を城太郎の前に差し出す。が、城太郎はそれよりも早く母親に顔を向けた。

 

「じゃあ、母ちゃんでもいい!頼みがある!」

「何よ、小遣い上げるのは無理って…」

「俺に勉強教えてくれ!つーか、手伝ってくれ!」

「父ちゃぁぁぁぁあああああん!!!城太郎がぁぁぁぁぁああああ!!!」

「母ちゃん待ってくれえええええええ!!!」


勉強、という単語を聞いた瞬間、彼女は洗濯物を放り出して夫のいる方向へ向かおうとする。それよりも前に城太郎は彼女の駆け出す方向に先回りし、その場で正座し出した。


「待ってくれ母ちゃん!俺は夏休みの予定を全部パーにしてもやらなきゃいけねぇ事が出来たんだ!だから俺は宿題とも向き合わなきゃいけねぇ!頼む、俺は勉強のエキスパートじゃねぇんだ!!」

「あんた本当に大丈夫なの?!風邪?それともインフルエンザ!?死ぬのにはまだ早いでしょあんた!?」


自分の事は言え割と酷いことを言われるが、そこは察するしか無い。いつもの城太郎なら夏休みの宿題など最後の二、三日でやっと始めるレベルだったのだ。だがしかし、今の彼は初日どころか前日に手を出そうとしている。それを考えると、そう言ったとしても仕方ない…かもしれない。

「お母さん、今いいですか…?」

「どうしたのアサヒ?そんなにあらたまって…」


夕方、沢渡家の一室。夕飯後の後片付けを終えた沢渡 夜空は布団を敷いて居た。そんな中、娘であるアサヒが部屋へと入ってくる。アサヒがあらたまるのは別に不思議ではないが、何故か彼女の雰囲気からただ事ではないという予想が頭を過った。

アサヒは部屋に入り戸を閉めるとその場で直ぐに頭を下げる。

 

「…ごめんなさい。夏休み中の合宿、参加できません」

「あらそう。いいわよ」

「ダメですよね……はい?」


否定されると思い、覚悟をして居た彼女だったがそんな心配はケロリといった顔の夜空が吹き飛ばしてしまった。敷布団を敷いて彼女は自分の娘の元へ近づくと頭を撫でる。そっと大事な物を扱うような、そんな仕草で。


「何か、やりたい事が出来きたんでしょう?合宿よりも大切な事が」

「お母さん…」

「理由は聞かないわ。お父さんには私が言ってあげる。だからあなたの思うようにやりなさい」

「……はい!」

 

まず父ではなく母に相談しよう、そう思って居たアサヒだったが、いい意味で予想を裏切られる。それと同時に彼女は夜空に精一杯の返事を返した。今はまだ話せない、だけどいつか話せる日が来るなら…アサヒはそう思いながらも胸の中にある決心をより一層固める。

全ては、目的の日のために。

 

 

 

 

 

 

「源光さん…」

「おや、どうしたんだい?眠れないのかな?」

 

夜、既に日付が変わった頃、リビングで本を読んでいた源光の元へミキがやってくる。猫のイラストが描かれたパジャマ(この間買ったもの)を着ている所から源光は眠れないと思っていたが、彼女は首を横に振る。


「私は…悩んでいる。浪川 タツヤの希望を聞くべきか、それとも彼の後を追うべきか」


タツヤに言われた時から悩んでいた。デジタルワールドに行くという事はバルバモンの他にも様々なデジモンが襲いかかってくる可能性があるという事。いくらハックモンという案内役がいるとは言え、安全とは言えない。ましてや七大魔王の一人と戦うとなると、生死をかける戦いになる。そう考えると……胸の奥の騒めきが収まらなかった。

 

「教えて欲しい、私はどうしたら」

「それは君次第じゃよ。私が出す答えじゃない」

 

いつもと同じ表情で、ミキの言葉を遮る。穏やかだが、厳しさが見え隠れしている源光を見て、一瞬驚く。第一印象が優しい老人だった源光のイメージが揺らいだように思えたからだ。だが源光は雰囲気をいつもの穏やかなものに戻すと優しくミキへと微笑む。


「悩んでもいいんだよ。悩む事は生きている証拠さ。答えはどれが正解かはわからない。だけど、後悔をしない選択をしなさい」


そう言ってコーヒーを飲むと再び本に視線を戻す。まるで胸の内を透かされたような気分になったが、同時に言われた言葉を頭の中で繰り返す。

後悔をしない選択、今までバルバモンに従っていたミキにとってそれは難しく、厳しい行為。それをやるという事はミキにどういう影響を及ぼすのか。

ミキはしばらく立っていたが、ゆっくり頭を下げると借りている部屋へと戻っていった。

夏休み開始から4日が経過、月が変わった最初の朝。タツヤはその休みの間、学校の宿題に費やしていた為中学生らしい過ごし方は出来ずにいたが、そのおかげで既に手をつけられる宿題は全て終了。源光もタツヤの予定を聞いた上で見守っていた為、特に何もいう事は無かった。ちなみにだが、ミキは朝早くから出掛けており家には居ない。また本を借りに行ったのだろうかと思いながらも不思議がっていたのはこの際余談であろう。

そしてタツヤとカケモン、ワレモン、それにハックモンは庭へと出ていた。タツヤは手にデジヴァイスを持ち、少々緊張した顔をしている。

 

「タツヤ、準備はいいか?」

「うん」


そう言ってタツヤはデジヴァイスを正面に向ける。そう、今日はデジヴァイスの中にある別のフォルダにいたアルフォースブイドラモンが目覚める日だ。本来であれば終業式の日辺りで傷は癒えていたのだが、タツヤの準備の期間もあり少し遅れての目覚めとなった。

デジヴァイスから青い光が出て目の前に巨大…ではなく小さいシルエットが浮かぶ。そこにいたのは蒼い聖騎士…でも無く青い小型の竜のようなデジモン。赤い目に額の黄色いVが特徴的なデジモンだった。

目の前のデジモンは大きく欠伸をするとタツヤ達に向かって軽く手を振る。


「ふぅー、よく寝たぁ。あ、みんな久しぶりー」

「え、っと…誰?」

「ん?あー、そっか今退化してるんだっけ。ボクだよ、アルフォースブイドラモン。今はブイモンだけどね」

 

そうやってアルフォースブイドラモン、もといブイモンは頭に手を添えてアハハと笑う。その姿にやれやれと頭を振るハックモン、ボクと一緒だー、と言ってはしゃぐカケモン、少し呆れ気味のタツヤとワレモンと十人十色の反応をしていた。

実を言うとアルフォースブイドラモンはブイモンに退化してからデジヴァイスの中に入るつもりだったのだ。成長期へと退化する事でデータ量を減らし、回復を早める予定だったのだがアルフォースブイドラモンは話を聞かずに中へ入り休眠。今日まで長い時間をかけて傷を癒していたのだ。

そんな事を気にせずブイモンは身体中を懐かしそうに見渡す。

 

「この姿久々だなぁ。色んなものが大きく感じるよ」

「そうなんだ…」

「むしろ今の方が合ってんじゃね?色んな意味で」

 

そう言うワレモンにカケモンとブイモン以外が苦笑いで返す。たしかにブイモンの性格上今の姿の方が様になっている。それに加えて何故か生き生きしているブイモンを見ると威厳とかそう言った硬いものが無くなって肩の荷が下りたようにも見えた。

そうしているとブイモンは思い出したかのようにカケモンの方を見る。

 

「あ、そういえばカケモン」

「?何ー?」

「キミさ、ボクとどこかで会ったことある?」

「?」

 

そう言われてカケモンは首を傾げる。表情的にもカケモンはブイモンと初対面のはずだ。何に彼からそう言われて不思議そうにしている。タツヤとワレモンも同じく首を傾げているが一人だけ、ハックモンはその様子をじっと見ていた。

そして、

 

「あ…、ごめん。お腹空いちゃった」

 

ブイモンのからグゥと腹の虫が鳴る。どうやら長い間眠っていた為空腹のようだ。今までの雰囲気が台無しになりワレモンは吠え、ハックモンは深くため息をついた。

 

 

「うっわ何これ美味しい!?見た目泥っぽいけど甘くておいっしい!!」

「スーパーのセールで安かったからねぇ、いっぱい食べてもいいんだよ?」

「ありがとうございます、源光オジイさん!」

 

あれから十数分経ち、タツヤ達は家の中でブイモンの食事風景を見ていた。既に朝食を終えていたタツヤ達だったが、源光がまだ食事の余りを片付けていなかった事から今の光景が生まれている。それに加えて、スーパーで安かったチョコの詰め合わせを掃除機並みに吸い込むブイモンを見ているとあっぱれ、と言った表情でタツヤ達は見ていた。むしろこっちの腹が減ってくる、そんな気持ちで。

そうしていると、ハックモンはブイモンの元へ行き少し焦ったように口を開く。

 

「ブイモン、腹を満たしたらすぐにゲートを開くぞ。デジタルワールドの状態を一刻も早く知る必要がある」

「わかってるよ。他の同胞達の事と、時空の歪みでボクらが飛ばされた正確な時間を知りたいしね」

 

そう言うブイモンは食事の手を止めて真面目な顔になる。やはり威厳が無くともネットワークの守護神とも言われるデジモンの一体だ。加えてハックモンよりも長い年月を生きている事もあり、冷静に状況を判断している。その顔はロイヤルナイツに相応しい顔つきだ。…口に散らばっているチョコに目を瞑れば。

 

「それと…カケモンの事なのだが…」

「?何?」

「…いや、なんでもない」

 

そう言ってハックモンは庭へと出る。

ずっと気になっていたのだ、先程のブイモンの言葉を、カケモンにあった事があるのではないかと言う疑問を。これはブイモンだけでは無くハックモンも抱いた疑問だ。人違い、ならぬデジモン違いとは思えない。なぜか引っかかりを覚える、そんな表情でハックモンは気を鎮めていた。

 

 

ブイモンの腹が膨れて十数分後、ようやく食べた物が消化されて庭へと移動するタツヤ達。ハックモンとブイモンは離れた所に立つと、全身から0と1の模様を浮かび上がらせ輝き出す。

 

 

「ハックモン、ワープ進化!––––ジエスモン!!」

「ブイモン、ワープ進化ァ!––––アルフォースブイドラモン!!」

 

 

輝いた二人の体は段々と別々の影を浮かび上がらせながらも巨大な人型に近い姿へと進化した。それぞれ色褪せてはいるが、ハックモンはジエスモンへと、ブイモンはアルフォースブイドラモンへとワープ進化する。

二人は互いに頷きあうと目の前に手をかざす。そして声を揃え、一種の認証コードを入力する。

 

 

「「デジタルゲート・オープン!!」」

 

 

その一言でジエスモン達に前に虹色に光る穴、デジタルゲートが開いた。何度かゲートが開く光景を見たが、未だに緊張感が残るタツヤ。それとは裏腹に、ワレモンは軽く腕を回しゲートへと進んだ。

 

「んじゃ、帰るか。久々に向こうによ」

「……ねぇ、タツヤ。本当に良かったの?」

「カケモン?」

 

同じくゲートへ向かおうとするタツヤに今まで黙っていたカケモンが問いかけてきた。思わず振り返りカケモンを見るタツヤ。カケモンの顔に不安は見られないが、少し後悔のようなものが感じられる。本当に良かったのか、それは何に対してなのかわからないがタツヤの足を止めるには十分だった。

 

「本当に良かったの?ミキ達も一緒じゃなくて」

「…いいんだ。みんなを巻き込みたく無いし…それに、これは僕がやらなきゃいけない事なんだ」

 

そうだ、これでいいんだ。この選択は正しいんだ、そうタツヤは自分に言い聞かせる。

もしも、あの三人が一緒に来たのなら、自分は全員守りきれる自信が無いのだ。怪我をしたら、それが重傷だったら、はぐれてしまったら、もう会えなくなってしまったら、

…死んでしまったら。

そう思ってしまう、そう考えてしまう、だけどそんな事があれば自分は、浪川 タツヤはどうなってしまうのかわからない。だからこそ、これが正しい選択だと主張するのだ。

 

そうしていると、アルフォースブイドラモンは先にゲートの中に入って行く光景が見えた。どうやら先導してくれるそうだ。開いたゲートの先はアルフォースブイドラモンの指定した場所らしいので、彼がすると言い出したらしい。

ジエスモンもアルフォースブイドラモンに続くようにゲートの前に立つとタツヤの方に手を差し出す。

 

「さぁ、タツヤ。行こう」

「わかったよ。…じゃあおじいちゃん、行ってきます」

「ああ、気を付けて行って、そして無事に帰って来なさい。––––みんなでね?」

 

そう言って源光はニッコリと笑う。タツヤから事情を聞き、彼を送り出す源光の顔はいつも通り…いや、少し違っていた。まるで悪戯をしているかのような、そんな笑みを浮かべていたのだ。その事に何故か違和感を覚えながらもタツヤはデジヴァイスにカケモンとワレモンを入れて、背中にある大きなリュックを背負い直しジエスモンのいるゲートの前へ立つ。

そしてゲートへと入る、筈だった。

 

 

「え…!?」

 

 

そう、何事もなく入ろうとしていたのだが、背中に衝撃が走る。まるで誰かにぶつかったような感触…そう考え切る前にタツヤはゲートの中へと入ってしまった。

タツヤは眩い光に目を瞑り、浮遊感がある空間の中で恐る恐る目を開けると…そこにいたのは、いる筈のない人物達。

 

「城太郎!?それに沢渡さんに…才羽さんまで!?なんで…」

「なんでじゃねぇよ水臭ェ!デジタルワールドに行ってあのジジイとケリつけるんだろ?だったら俺も行ってやる!夏休みに別の世界行くのも悪くないしな!」

 

そう言って大きなバックを持った城太郎は歯を見せながら満面の笑みを浮かべる。それに俺助っ人のエキスパートだしな、と言い出す始末。笑みは浮かべているが決して面白半分で来ているわけではなく、彼の目には覚悟のようなものがギラギラと燃え上がっていた。

 

「でも、これは僕達が…!」

「浪川君は一人でなんでも背負いすぎなんです!カケちゃん達の事もそうですけど、なんでもかんでも一人でやれると思わないでください!」

 

同じく大きなバックを背負ったアサヒはなれない無重力の空間の中でいつも以上にそう叫ぶ。心配、その感情があるとはいえ彼女がここまでの行動力を示したのは驚きだった。それ以上にタツヤ達の存在が大きい、そう感じさせるほどに、彼女の瞳の力は…輝きは強い。

 

「源光さんは言っていた、後悔をしない選択をしろって。だから私も行く。それが私の選択…“私”自身が考えて、出した答えだから。私も連れてって」

「みんな…」

 

迷い、疑問、それらの心のモヤが渦巻いていた。その中で自分が見つけ出した、自分の答え。従っていたばかりの自分が出した選択。強大な敵が相手でも、勝てる確率が限りなく低くても、タツヤが、タツヤ達から貰った、ミキの中にできた炎は…勇気の炎は消せなかった。

 

タツヤは三人の中に強い覚悟がある事を感じ取った。それと同時に、自分の心臓が高鳴るのを感じ取る。爆発したかのように、喜びを感じるかのように激しく脈打つ自分の心臓に胸を当て目を瞑る。

ああ、そうだこの感覚だ。カケモンと初めてあった時と同じ感覚だ。まるで、欠けていたものがそこにあるような、そんな感覚。カケモンを見て、自分自身が願ったように今度もまた、タツヤは彼らと居たい、旅をしたかった事を実感する。

タツヤはそれを実感しながらも、答えがわかっていながらも問う。いや、これは再確認だ。

 

「三人とも……覚悟はできてる?」

「ああ!」

「はい!」

「うん」

 

思っていた答えが返って、思わずタツヤの口角が上がる。そしてタツヤの中で覚悟が決まった。

守ってみせる…代わり映えしない日常ではなく、掛け替えのない、大切な日常を…大切な友達を、絶対に。

覚悟はできた…ならば、タツヤの出す答えはただ一つ。

 

 

 

「––––行こう、デジタルワールドへ!」

 

 

 

「さて、少しの間寂しくなるかの」

 

源光はタツヤ達が飛び込んだゲートが閉じるのを確認すると、そう呟く。だがその顔に憂いや悲しみ、心配など無く、只の飄々とした老人の顔があった。

大丈夫、あの子達は帰ってくるだろう。苦しみや辛さ、悲しみがあったとしても、過酷な運命が立ち塞がったとしても、絶対に乗り越えられると信じて。

源光は家の中へと戻る。何事も無く、いつも通りの日常の中へ。彼らが帰ってきても、変わらない場所であるように。

 

 

こうして、浪川 タツヤ達は未知なる新天地へと向かう事となる。

 

現実世界、地球、日付は8月1日。運命に選ばれた少年少女達はデジタルワールドへと旅立って行った。

 

 

もう一度言おう–––

 

 

これは、欠けたもの同士がまだ見ぬ明日を掴み取る物語である。

 

 




こんにちはタカトモンです

あけましておめでとうございます。
今回で人間界編は終わりになります
次からデジタルワールドに入り少しずつですが物語が進んでいきます
これからもどうかよろしくお願いします
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