デジタルモンスター Missing warriors   作:タカトモン

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デジタルワールド
十五話 《新たなる旅路》


虹色に輝く空間…上下左右、あらゆる場所の光景が映し出される空間。現実世界とデジタルワールドを繋ぐデジタルゲートの中、今ここに存在しているのはアルフォースブイドラモン、ジエスモン、そしてタツヤ達人間の子供達の合計六名。実際にはデジヴァイスの中にカケモンとワレモンもいるのだがそれは余計な一言だろう。

アルフォースブイドラモンはゲートの出口へと先に進み、ジエスモンはタツヤ達に近づく。

 

「お前達!一つに固まれ、はぐれるぞ!」

 

そう言ってジエスモンは手を伸ばす。どうやら連れて行ってくれるようだ。この空間で迷子になったら恐らく永遠に彷徨うのではないか、ジエスモンの語尾の強い言い方にそう予測したタツヤは三人に手を伸ばした。

 

「才羽さん!」

「うんっ」

「沢渡さん!」

「は、はい!」

「城太郎!」

「あだだだだだだだ!?何で俺だけ顔ォ!?」

 

ミキとアサヒの手を取りジエスモンの元へと送り届けると次に城太郎の顔面を掴み、乱雑に放り投げる。普段ならこんな事は出来ないが無重力状態のこの空間だからこそできるのだ。三人を移動させると自分もジエスモンのいる場所へ移動する。それを確認したジエスモンは捕まっていろ、と一言言うとアルフォースブイドラモンが抜けた出口へ加速して行く。強力な圧を感じるタツヤ達は目を瞑ってしまった。

 

 

風を感じた。

無重力の空間に風が吹くと言う違和感を感じタツヤは目を開ける。その行為はタツヤだけではなく、城太郎達も同様に行った。

広がっていたのは幻想的な景色だった。場所は雲に手が届くほど、はるか上空。太陽が昇り月が沈む、丁度朝を迎える頃合いとも言える光景が目に入る。現実世界では見られない、見る事のない美しい景色に誰かが息を漏らした。それは自分だったかもしれないし、近くにいる誰かだったかもしれない。よく見ればカケモンとワレモンもいつのまにか出て光景を見ている。

タツヤは、自然とその光景を口ずさんでいた。

 

「すごく、綺麗だね…」

「ああ、ここが我々デジモンの住む世界」

 

ジエスモンが答える。その事に意識が向いているのかいないのか、あやふやであるがやけに耳に入った。それに、答えたジエスモンはなぜか面白おかしいような様子でこちらを見る。今のタツヤ達の様子を見てそう思ったのか、それとも別の何かなのか。

 

 

「ようこそ、デジタルワールドへ」

 

 

 

暗い闇の中、宮殿のような場所。暗黒の力が渦巻くその場所で一体のデジモン、バルバモンは杖を何度も突き、イラつきながらも近場を右往左往していた。仮面で見えないがその顔は決していいものでは無い。むしろ面倒事が増えたような、そんな顔だった。

 

「奴らめ、現実世界からこちらへとやって来おったか」

 

そう言ってバルバモンは近くの段差に腰掛ける。そしてそのまま思考を続けた。

現在浪川 タツヤ達はデジタルワールドに移動し、恐らくはこの場所を目指して移動するだろう。例外として他のロイヤルナイツの生き残りを頼って各エリアを訪問する可能性もあるがそれは問題ない。奴らの位置は常に把握している。どこに居ようが関係ない、むしろ自分のいるデジタルワールドに来てくれたお陰で順調に事は進むだろう。

思考を終え一息つくとバルバモンは杖を支えに立ち上がる。既に落ち着きを取り戻した彼にとってタツヤ達などなんの障害にもならないと結論付けたからだ。定期的に刺客を送りつけて様子でも見る程度にしか認識していない。

 

「ああ、“A”も呼び戻さねばならんのか。全く面倒じゃわい。そう思わんか?––––“L”よ」

 

そう言って背後…宮殿の奥深くに振り向きそう言う。暗いこの空間の一層深いその場所で、何かが動いたような気がした。

姿も見せず、そこにいた何か…いや、存在しているかどうかもあやふやなそれはバルバモンを見た。そして思考する事数秒、“L”と呼ばれたそれは闇の中で声を響かせる。

 

 

「…愚問だ、“G”。我々の計画に狂いは無い。ただその時を待つのみ」

 

 

 

上空からタツヤ達を連れてジエスモンは地上へ降りる。既にそこにはアルフォースブイドラモンがおり、周りの様子を見て害意があるデジモンがいないか確認していた。

ジエスモンはタツヤ達を降ろすとハックモンへと退化し、全員いるな、と声を掛けた。タツヤ達は全員の無事を確認し大丈夫だと言うと同時に、ハックモンは浅くため息をつく。

正直、城太郎達くる予定が無かった三人がいる事に頭を押さえたい気持ちもあるのだが、この際仕方のない事だ。再びゲートを開こうにも彼らは帰らないだろう。

そう思い諦めたハックモンにタツヤは声をかける。

 

「ハックモン、これからどうするの?来たのはいいけど…バルバモンがどこにいるのか分からないし」

「心配するな、それなら既に考えてある」

 

そう言うとハックモンはアルフォースブイドラモン以外の全員に座るといいと声をかける。長い話になるのが予測され言われた通りにタツヤ達は座ると、ハックモンは語り出す。

 

「まず我々が目指すのはダークエリア…現実世界でいう地獄のような場所が目的地だ」

「じ、地獄、ですか…?」

「そうだね、一番近い表現がそれかな」

 

怯えたアサヒに今も周りを確認しているアルフォースブイドラモンがそう言う。目線をたまにこちらに合わせて彼はダークエリアの詳細を説明する。

 

「戦いによって死んでいったデジモン達が行く場所でね。善き魂は転生され、悪しき魂は葬られる…そんな場所さ。同時に暗黒の力を持った堕天使型デジモンや魔王型デジモン…七代魔王の巣窟でもあるんだ。というのも、」

「ここから先は長くなる。機会があったら話そう。タツヤ、マップを出してくれ」

「あ、うん」

 

アルフォースブイドラモンの話を切り上げハックモンはタツヤにそう言う。言われたタツヤはデジヴァイスを取り出しあるアイコンを起動させる。

それは《MAP》と表示されたアイコン。タツヤはそれを開くとその場にいた全員に見せるように、近くにあった切り株にデジヴァイスを置く。

 

「これはオレの記憶しているデジタルワールドの地形をデジヴァイスに転写したものだ。数日前に試したのだが、上手くいってな。見てわかるようにすればお前達も分かりやすいだろうと思ってタツヤに頼んだのだ」

 

そう、ハックモンは今から数日前に、デジタルワールドに行く際の備えとしてタツヤの持つデジヴァイスに自らの持つ記憶から、デジタルワールドの地図をダウンロードしていた。もしも自分が側に居ない時、やむ終えず戦線離脱してしまう時の為に作ったのだ。

ハックモンはマップにある地図の内、逆三角形で示されている現在地を説明する。

 

「今いるのがデジタルワールドの南東の森…ここだな。対して目的地であるダークエリアはここ、北極エリアの奥にあるゲートを抜ければ辿りつける」

「おいおいおいおい!遠いじゃねぇか!なんでもっと近くに来なかったんだよ!」

「いきなり敵のいるかもしれない場所にゲートを開くのは危険だからね。それに、ボクらは少し寄り道しなきゃいけないし」

 

ワレモンの文句にアルフォースブイドラモンが困った顔で返す。確かに彼の言い分には一理ある。今の状況で敵地のすぐ側に行けば返り討ちになる可能性が高い。ならば敵地よりも遠くから向かうのがベストかもしれなかった。

ワレモンがそうかよ、と悪態をつくとカケモンはハックモンに声をかける。

 

「寄り道?どこに行くの?」

「…今のデジタルワールドの現状、それに他の同胞の行方を知るために各地を周る」

「ボクも自分の守護するエリアがどうなっているか気になってね。だからここからは別行動を取らせてもらうよ」

「えー!?アルフォースブイドラモンさん行っちゃうの!?」

 

アルフォースブイドラモンの離脱を聞きカケモンは不満そうに大声を出す。その事に困ったようにごめんね、と謝るアルフォースブイドラモン。二度しか会っていないのにえらく懐かれているな、とその光景を見てハックモンは呆れ混じりのため息を吐く。

 

「はぁ…それに、もし他のロイヤルナイツの生き残りや我々に協力してくれるデジモンが居れば協力を要請する必要がある」

「たしかに、戦力を増強すれば倒せる可能性が高くなる」

 

ミキは口元に手を当ててそう言う。勝率を上げるのであればそれが一番いい選択だろう。特にロイヤルナイツであれば尚更だ。現状何体残っているかわからないが、デジタルワールドを守護する者達が集まれば、可能性があるかもしれない。もしくは、ロイヤルナイツに匹敵するデジモン達が居れば可能性は上がるだろう。

ミキの計算で数パーセント以下の可能性が少しづつ上がる中、ハックモンは頭を抱えて唸っている城太郎をチラリと見て要点を纏めて一言言う。

 

「つまりだ。我々は現在のデジタルワールドの情報を収集しつつ、ダークエリアに向かう」

「お、おう…」

「そうだね、それでいいと思うよ」

 

大体わかったような城太郎と今後の予定を聞いて納得したタツヤは頷く。この世界について詳しいハックモン、そして騒がしさに痺れを切らしカケモンをぶっているワレモンが頼りだ。今後の方針はそれでいい、後の事はその時に考えればいいだろう。タツヤはそう思いながらも、ワレモンを止めに行った。

 

ワレモンが落ち着いた頃、アルフォースブイドラモンは背にある翼を広げる。どうやら自分の守護するエリアに行くつもりらしい。彼は表情に出しては居ないが、心配と焦りがあった。自分がいない今、どうなっているか、住んでいるデジモンはどうなるのか。考えずにはいられないのだ。

 

「じゃあボクは行くね。落ち着き次第、できる限りの情報と戦力を連れて君達に追いつくから」

「うん。気を付けてね」

 

タツヤがそう言うのと同時にアルフォースブイドラモンは上空へ飛び立つ。そして目的のエリアの方角を見ると、一目散に飛んで行った。

タツヤ達は大声で別れの挨拶、再開の言葉を言うと振り返り自分達の目指す場所へと歩を進めようとする。別れは一時、すぐにまた会える…そう信じて。

–––––––信じて、いたのだが…背後からの突然の絶叫にそれが揺らぐ。その絶叫はまるで、今まで調子に乗って究極体のままだったので途中で制限時間かスタミナが切れて退化してしまい落下中の某聖騎士型デジモンのものにしか聞こえなかった。

タツヤ達は立ち止まり、ハックモンを凝視する。

 

「ねぇ、今のって…」

「…………………………………………大丈夫だろう、彼は」

「締まらねぇな、オイ」

 

ワレモンの呟きに誰も反論することができない。とりあえず、アルフォースブイドラモンことブイモンに黙祷を捧げ、立ち止まっていたタツヤ達は再び歩き出す。

ありがとう、アルフォースブイドラモン。

君の事は忘れない、永遠に。

 

 

「––––––––わああああああ、ちょ、調子に乗りすぎたぁあああああああ!!?」

 

 

 

絶叫を聞きながらも歩を進めたタツヤ一行。途中、大人しいデジモン達…《ANALYZER》とハックモンとワレモンの説明で分かった、アルラウモンやコエモンなどと言ったデジモン達とすれ違うと言う場面があった。攻撃する事も無く、ただ此方を観察するようなデジモンばかりだった為、タツヤ達は難なく進んでいく。

そして休憩を挟みながら森を歩く事数時間…タツヤ達は川岸へとたどり着いた。キラキラと太陽の光を反射する川を見て水分を補給しようと提案するハックモン。だが、それを見計らったように盛大な腹の音が二つ、やや控え目な腹の音が響く。見てみると、ワレモンとカケモンが座り込み、ミキがそっぽを向いていた。

 

「腹減った…」

「ぼ、ボクも…」

「…………」

(あ、才羽さんもお腹空いてるんだ)

「確かに、今は昼頃だな。昼食をとって休むとしよう」

 

そう言ってハックモンは川岸へと近づいていく。それに続くようにタツヤ達も後を追う。そしてなるべく平たい場所へと座ると荷物を持っていたタツヤ達は自分達の背にあったバックを下ろして行った。中にそれぞれ色々なものを持ってきたのだろう、下ろした時にいくつかの金属音が聞こえる。

それを聞き、タツヤは気になったのか三人に尋ねる。

 

「そういえばみんな何持って来たの?僕は非常食とか救急箱だけど」

「俺はロープとかライト…あとサバイバル用品だな。あ、カップ麺とやかんもあるぜ!」

「私はお料理する必要がありそうだから、簡単な調理器具と、調味料です」

「私は浪川 タツヤとほとんど同じ。あと源光さんからこれを借りた」

 

それぞれ言っていく中でミキは一人、バックからあるものを取り出す。それは銀色の四角い箱のような機械…カメラだった。

 

「なんでカメラ…?」

「夏の思い出を撮るためにって」

「おじいちゃん…」

 

今は居ない祖父に対して頭を押さえるタツヤ。別世界に行くのに何故思い出…?そう思ったが、割とそういうところがある人であったとタツヤは諦め気味にため息をついた。

カメラは置いておき、タツヤは昼食に何を食べるか考えていた。手っ取り早いのは、タツヤ達の持つ非常食だが、これは非常時に食べるものだ。今食べるのは勿体無く、後々の事を考えると森の中にあるものを取ってくるしかないだろう。

 

「とりあえず非常食はなるべく食べないようにして、近くにあるものを調達しよう」

「ではオレ達が食べれる物を分別しよう」

「だな。オレらならそういう知識もあるし妥当だろ」

 

そう言ってハックモンとワレモンは自分達の知識が役立つ事を強調する。二人はサバイバル経験が豊富な事と、食べられるものについて詳しい。その事を思い出し、タツヤはじゃあよろしくね、と二人に頼むことにした。

 

その後、タツヤ達は食事の用意をする組と食材を調達する組に分かれることとなった。食事の用意はアサヒ、ミキ、ワレモンの三人。アサヒとミキが調理する担当でワレモンが川から魚を捕る担当だ。そして残り、タツヤ、城太郎、カケモン、ハックモンは森に入って食材を取る担当となった。

タツヤ達はアサヒ達に準備を頼むと森の中へ入っていく。ハックモン曰く、森の中では様々な食べ物があると言う。川にしてもそうだが、デジタルワールドには魚や果物などの食材があるのだろうか、とタツヤは半信半疑で歩いていると、城太郎は一番前を歩くハックモンに質問する。

 

「なぁハックモン、俺達が今向かってる場所ってどこなんだ?」

「竜の谷だ。ここから2日程でたどり着く場所にある。そこは竜型や恐竜型、爬虫類型のデジモンが暮らすエリアだ。同時に、同胞が守護するエリアでもある」

「へぇ…。あれ、でも聖騎士なのになんでそこを守護するの?てっきり街とか想像したけど…」

「それは彼がロイヤルナイツであると同時に竜帝と呼ばれる存在であるからだ」

「へー!すごいんだ、その人!」

「ああ。…ん?早速見つけたぞ」

 

同胞を褒められ珍しく頰が緩んだハックモンは茂みの中に手を突っ込む。早速食材確保か、タツヤと城太郎は流石慣れているだけあるなとハックモンに感心する。

そしてハックモンが取り出したのは、タツヤ達にも見慣れたもの。縞模様が目立つ球体、その上にご丁寧に茎までついてあるその食材の名前は…

 

「メロンだ」

「いや、おかしいでしょ」

 

 

一方、アサヒとミキは川岸で食事の準備をしていた。と言っても、人数分の腰掛ける椅子代わりの石を運ぶか、もしくは川の水で貯水しているかのどちらかだ。

そして彼女達とは別にワレモンは近くにあったもので作った簡易的な釣り竿で魚を釣っていた。ワレモンの腕がいいのか、それとも場所がいいのか、次々と魚が連れて行く。ただ、その種類は安定していなかった。鮎はまだしも浅瀬で鮭や秋刀魚が釣れているからだ。このまま放っておけば、マグロでも釣れそうだ、そう思いながらもアサヒは用意した石の椅子に座ってバックの中からライターを出す。

 

「えっと、とりあえずお魚だから…念のために火を通さないといけませんね。あとお塩も必要…」

「沢渡 アサヒ。私は何をすればいいの?」

「そうですね…。あ、そういえば才羽さんってお料理どれくらいできるんですか?確か一人暮らししてたんですよね?」

「していた。けど、私は料理の経験はない。いつもインスタント食品を食べていた」

 

そのことにアサヒは目を丸くする。てっきり自炊して生活していたものとばかり考えていたので、その返答は予想外だったのだ。それに対してアサヒはダメです、栄養が偏っちゃいますよ!と抗議の声を上げていた。

 

「そんなんじゃダメです!そんなことじゃお嫁に行けませんよ!」

「お嫁…?」

「はい、才羽さんだって女の子なんです。将来素敵な方と出会って結婚すればそう言った機会だって必ず出てくるんです!そうじゃなくてもいつか役に立つ時が必ず来ますよ」

「そう、なの?」

「はい!」

 

そう言ってアサヒはミキに笑いかける。珍しく熱くなったが、アサヒは言いたいことが言えて満足のようだ。そして言われたミキの方も、料理=意味のあるものと認識し始めていた。今度ゆっくりとしたらアサヒに教えて貰おう、そんな軽い気持ちで。

 

だが平穏な時は唐突に終わりを告げるものだ。そう、まさしく今のように。

 

 

「テメェら、そこから離れろ!」

 

 

突然のワレモンの叫びにアサヒは反応が遅れてしまった。だがその手はミキがしっかりと握り、すぐ真横へと移動させられる。その一瞬…先程まで自分達がいた場所には鋭い牙…いや、鋭い顎が突き刺さっていた。

その事実にアサヒは血の気がサァ、と引くとそこにいた元凶を見る。赤く巨大な体を持つクワガタのようなデジモン。それは何の偶然か、タツヤとミキが初めてデジタルワールドに来た時に遭遇したデジモン。

その名は、

 

「クワガーモンだ!クソ、こんな時に出るとか最悪じゃねぇか!」

「ギィィィィッ!!」

「こっち…!」

 

吠えるクワガーモンにミキはアサヒの手を取り走る。川岸では砂利が邪魔してうまく走れない。ならば、障害物がある森に移動し身を隠すしかない。

足場の悪い今、ミキ達は森へと駆け出すが、その前にクワガーモンが彼女達の上を飛び越え森の前に着地。道を阻むように叫びをあげる。

だが、そんなクワガーモンの背後の森から白い小さな影が飛び上がった。その正体はハックモン…彼は自らの爪を立てて、クワガーモンの背を切り裂く。

 

「フィフスラッシュ!」

「ギィィ!?」

「ハックモンさん!」

「バッカヤロウ!もっと早く来やがれ!」

「その様子だと大丈夫そうだな」

「沢渡さん、才羽さん!」

「ワレモォ〜ン!」

「お前ら大丈夫かー!?」

 

ハックモンに続いてタツヤ達もその手に森に実る筈のない果物や植物を抱え森から出てくる。そしてその場に置くと、タツヤはカケモンと目を合わせるとデジヴァイスを手に取った。

 

 

「セットアップ、アルフォースブイドラモン!」

 

 

《X EVOL.》を起動させアルフォースブイドラモンのカードを呼び出すとスキャンし、カケモンへ光を放つ。光を浴びたカケモンはその体を強靭なものへと変化させる。

 

体は巨大に、腰にバックラーUを装着、全身に蒼を主体とした鎧を装着。長いマフラーをなびかせ頭部のVを象った兜の口元のバイザーを閉じると、正面をXに切り裂き名乗り上げた。

 

 

「アップグレード!カケモン ver.アルフォース!!」

 

 

ver.アルフォースへとアップグレードしたカケモンは瞬時にクワガーモンの懐に移動し、その顎を拳で打ち上げる。そしてそのまま転倒、怒りを露わにしながらもクワガーモンは標的をカケモンへと変えた。

 

「こっちだよ!」

「ギギギィィ!!」

 

カケモンはクワガーモンを挑発するように森の中へ入って行く。それにつられてクワガーモンはカケモンを追いかけて行った。

…ここまではカケモンの予想通りだ。挑発し、森の中へ誘い出す。タツヤ達を巻き込まない為にカケモンはあえて森の中へと入って行った。それが相手のテリトリーだとしても、彼は森を駆け抜けていく。クワガーモンが木々を薙ぎ倒しながらこちらへ進んで行くのを確認すると、カケモンは手頃な木の枝を掴み一回転、後方のクワガーモンへ向かって蹴りを食らわせていた。

 

「はぁっ!」

「ギッ…!」

 

頭部に当たりよろけるクワガーモンに対してカケモンは瞬時に距離を取る。

クワガーモンの武器はその強靭な顎だ。つまり、距離を取って対処すれば攻撃は当たらない。それに加えて今のカケモンはver.アルフォース、スピードに特化した形態だ。地の利が向こう側にあるとしても、カケモンが有利な状態に変わりはない。

カケモンはアルフォースアローを具現化させると、クワガーモンに向けて構えた。だが、そこに待ったをかける者が現れる。

 

「カケモン待って!」

「タツヤ…!?どうして来たんだい!?」

 

カケモンは走って来たタツヤに驚きを隠せない。ここは危険だ。なのに何故…。そう思っているとタツヤはクワガーモンの方を向き、話し始める。

 

「さっき、ワレモンが言ってたんだ。ここはクワガーモンの縄張りなんじゃないかって。だとしたら、僕達はそれを知らずに入ってしまったんだ。悪いのは僕達だよ」

「ギギ…」

「クワガーモン、勝手に入ってごめんね。だけど少しの間だけ待っていて欲しい。少し休憩したらすぐに縄張りから出るよ。約束する」

「そうだね…悪いことをしていないのに攻撃するなんて、ヒーロー失格だ。ごめんよ、クワガーモン」

「………」

 

タツヤとカケモンは揃って頭を下げる。そう、知らなかったとはいえ縄張りに入ったのは自分達だ。なら侵入者を排除しようとするクワガーモンにも納得できる。

クワガーモンは頭を下げる二人を見て数秒沈黙すると、彼らに背を向け森に中へ入って行く。誠意が通じたのか…既にクワガーモンからは敵意は感じなかった。

 

 

タツヤとカケモンが帰ってきて約十分。タツヤ達は採ってきた野菜や果実、釣った魚を調理し食べていた。ちなみに実際に作ったのはアサヒ、手伝いはタツヤとハックモンだ。

献立は季節外れの秋刀魚、鮭、鮎の塩焼きや色とりどりのサラダ、そしてデザートにメロンだった。正直どんな生態系してんだと言いたいがここはデジタルワールド、タツヤ達の住む現実世界の常識が通用しないと考えていいだろう。

いや、だとしても、

 

「メロンは森で採れないよ普通」

「浪川 タツヤ、食べないの?」

「あ、食べる食べる。だから僕の分まで取ろうとしないでね才羽さん」

「うんめぇぇぇ!この秋刀魚脂乗りすぎぃ!さすが秋の味覚だぜ!」

「今秋じゃないんですけどね…。でも美味しいです」

「ワレモンワレモン!このキノコすっごく美味しいよぉ!」

「それオレの松茸だ!食うな、バカチンが!」

(ふむ、この辺りはいい食材が多いな。と言うことは近くにあの場所が…。それにしても、ビーフシチューが食いたい…)

 

見た目に反して料理を大量に食べるミキ、色々突っ込みどころがある事を言う城太郎、カケモンとワレモンの会話、さり気無く源光の料理が恋しくなるハックモン。デジタルワールドに来て初めての食事だが、タツヤ達は充実していた。

そして食べ終わり、片ずけをしているとタツヤはふとミキにある事を尋ねる。

 

「ねぇ、前から気になってたんだけどさ」

「?何?」

「その、浪川 タツヤって、フルネームで呼ぶの何でかなって思って」

 

そう、今までミキはタツヤ…もっと言えばアサヒと城太郎の事もフルネームで呼んでいた。それが癖なのか故意なのかわからないが、今まで気になっていたのだ。

一方のミキは意味が分からないかのように珍しくキョトン、としながら答える。

 

「名前で呼ぶのは当たり前」

「いや、そうなんだけど…ちょっと他人行儀過ぎるかなって。おじいちゃんの事は普通に呼んでるし、それに友達だしもっと気軽に呼んでいいと思うけど…」

「気軽…」

 

タツヤにそう言われてミキは口元に手を当てる。たしかに彼の言う通り、彼は自分のことを友達と言ってくれた。なら自分もそれに答えるべきではないか、そう思ったのだ。

それにフルネームだと色々と効率が悪い。そう考えると、呼び方を変えるべきだとミキは考えた。

 

「じゃあ…タツヤ。あなたはタツヤ。これでいい?」

「うん。それでいいと思うよ、才羽さん」

「違う」

「え?」

「ちゃんと名前で呼ぶべき。苗字で呼ぶのは他人行儀。それに、不公平」

 

ジト、と分かりにくいが目を細めるミキにタツヤは少し困った顔をする。今自分は友達だから気軽に呼べばいいと言った。言ったのだが…それを自分ができるかと言われれば素直にはい、と答えられない。今まで異性のことを下の名前で呼んだことが幼稚園以来無いタツヤにとって精神的にくるものがあった。

タツヤは話をはぐらかそうとするが、ミキは何度も不公平と他人行儀を連呼し名前で呼ぶ事を主張する。そしてそんな事を繰り返せば、押しに弱いタツヤが折れるのはすぐだった。

 

「わかったよ、ミキ」

「……うん」

 

名前で呼ばれ、ミキは珍しく微笑む。まるで花が咲いたかのような雰囲気を出す彼女と慣れない異性の名前呼びで顔をほんのり赤らめたタツヤと言うなんとも言えないこの光景。

そしてその光景を見ていたアサヒは思いっきりうろたえ、城太郎はなぜかアサヒを励ましていた。

 

「あわわわわ…!」

「こりゃ一本取られたかー。沢渡どんまい」

「…何をやっているんだ、お前達は」

 

この先どうなるのか、二重の意味で心配になってきたハックモン。だが、歩みは止めない。

次の目的地である竜の谷に向けて、タツヤ達は再び進み始めた。




すいません遅くなりましたタカトモンです!
いよいよ本格的にデジタルワールドです!
こっから冒険が加速していきます
僕がタカトモンとしている通りテイマーズが好きでデジタルワールドとの時間が同じになっていますがそこはよろしくお願いします
少しずれてはいますけどねw
それではよろしくお願いします
ではでは〜
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