デジタルモンスター Missing warriors 作:タカトモン
デジタルワールド滞在2日目、タツヤ達は森の中を歩いていた。昨晩はそれぞれ持ってきた寝袋、そして簡易的なテントで寝ていたので体の彼方此方を痛そうにしている。ちなみにだが、テントで寝たのはアサヒとミキ、カケモンとワレモン。寝袋で寝ていたのはタツヤと城太郎だ。それに加え夜は危険だとハックモンが見張りをしていたので一夜を無事に過ごしていられた。
だが身体中の痛みは消えず、城太郎は肩を回しだるそうに口から息を漏らす。
「あぁ〜、さすがに寝袋だと体いてぇなぁ〜」
「しょうがないよ、野宿なんだし」
「うぅ、ベットで寝たいよぉ」
「カケちゃん、大丈夫ですか?」
タツヤが諦めろと城太郎に言い、カケモンの頭を撫でるアサヒ。今までタツヤの家のベットで寝ることに慣れてしまったのか、泣き言を言うカケモン。それに対してワレモンはうだうだ言ってんじゃねぇ、とカケモンの頭を叩いていた。
だがそんな中、一番前を歩いていたハックモンは振り返り少し笑って一言言う。
「安心しろお前達。今晩はゆっくり寝られるかもしれないぞ」
「どう言う事?」
「この先に大森林の集落…緑の里と呼ばれる場所があるからだ」
ミキの質問にハックモンは答える。
そう、この先…ハックモンが目指してる場所、竜の谷に行く途中には緑の里と呼ばれる場所がある。そこはハックモンが言うには、この大森林の中にある唯一の集落で、デジタルワールドにある三つの都市や様々な村に大森林の野菜や植物を売って生計を立てている場所だと言う。デジタルワールド全体からしてみれば田舎だが、様々な場所で多少なりとも重要視されているらしい。そこには友好的な植物系や昆虫系のデジモン達が居て、旅人を泊めてくれるとの事だ。
それを聞いてタツヤ達、主にアサヒとカケモン、こっそりミキは顔を輝かせる。一晩だけとは言え、ちゃんとした場所で寝られ、もしかするとちゃんと体を洗えるかもしれない。そのことに希望を持った三人は残り少ない体力を振り絞って歩みを進めていた。
しかし、そんな彼らの前に茂みからぞろぞろと十数体のデジモンが現れる。タツヤは咄嗟にデジヴァイスの《ANALYZER》を起動させていた。その間にハックモンは敵意を向けながら口を開く。
「………なんだ貴様ら」
「へっへっへ、お前らの持ってるもの全部置いてきな。そしたら命だけは助けてやるぜ」
「うっわ、テンプレかよ」
目の前のデジモン…ゴブリモンの内の一人の返答にワレモンはそう言う。そのセリフを誠に受けるなら、彼らは盗賊なのだろう。色々な場所を旅してきた彼もそうだが、タツヤ達もよくある盗賊のセリフに聞こえてしまい思わず笑ってしまった。だがそれにプライドを汚されたと感じたのか、先程のゴブリモンは緑色の顔を真っ赤にさせて後ろにいる他のゴブリモンに命令する。
「んだとテメェ!?野郎どもやっちまえ!」
「「「うぇーい!!」」」
「来るなら来い。貴様らに灸を添えてやろう」
手に持った棍棒を構えるゴブリモン達にハックモンはその鋭い爪を構える。ハックモンは退化したとしてもロイヤルナイツの一員だ。一つ上の世代が相手だとしても引けを取らない強さを持つ彼ならば今いるゴブリモン達を全員相手にしても問題ないだろう。
そう思ってタツヤ達が一歩下がったその瞬間、緑色の影が上空から一番先頭にいたゴブリモンの背後に接近。瞬く間にゴブリモン達に一撃ずつ攻撃を打ち込むと、何体かを残してゴブリモン達は地面に倒れ伏していた。
「な、なんだぁ!?」
「…また貴様らか。何度もこの近くで悪さをするなと言ったはずだが」
先頭にいたリーダー格のゴブリモンが狼狽える中、緑色の影はその姿を見せる。黒い四肢に緑色の胴体、大きな複眼を持ち背中には昆虫の羽が生えている。ハチなどの昆虫が人型になったようなそのデジモンは地面へと降り立った。
「て、テメェは、スティングモン!」
「今回はまだ未遂の様だが…これ以上何かする様なら、わかっているな?」
「へっ、カンケーねぇよ!テメェらやっちまえ、っていねぇぇぇぇぇぇ!!?」
生き残った他のゴブリモン達は気絶した仲間を引きずりながらも逃走していた。その事に気付かずにいたリーダー格のゴブリモンは途端に慌て始める。そして数秒、覚えてやがれ、と捨て台詞を吐き捨てると森の中へと消えていった。
それを見届けてスティングモンは出していた腕の棘をしまうとタツヤ達に向かって話し始める。
「お前達は、旅の者か?この辺りはああいったゴロツキや盗賊が多い。気を付けることだな」
「あ、ちょ!」
そう言ってスティングモンは羽を広げて飛び立ってしまう。せめてお礼でも、とタツヤが思って止めようと思ったが、既に遅かった。
今の出来事に城太郎やワレモン達は口々に話し出す。
「何だったんだ…?」
「さぁな、オレが知るかよ。クールぶって嫌なやろうだったぜ」
「カッコよかったねぇ!」
「え?あ、そうだね」
カケモンが目をキラキラとさせながらタツヤにそう言う。ああ、そういえばカケモンってヒーローっぽいの好きなんだっけ、とタツヤは思い出す。アルフォースブイドラモンの時もそうだったが、スティングモンも見方によってはヒーローのように見えるからだろう。とりあえずタツヤ達は気を取り直して再び進み始めた。
数十分後、森の中を歩いていたタツヤ達はある程度整備された道を見つけ、それに沿って歩いていると…ついに目的の場所へとたどり着いた。大きな門に左右には十メートル程の柵があり、近くに見張りのデジモン…ウッドモンがいる。ハックモンがウッドモンに話をすると彼は頷き、目の前の大きな門を開いてくれた。
するとどうだろうか、タツヤ達の目の前に広がっていたのはたくさんの花、花、花。木製の小屋に野菜や果実を育てる為の畑、昆虫型と植物型のデジモンが彼方此方で収穫された野菜を運んでいる光景だ。そして何より目に移るのは、里の中央部分にある大樹だろう。三十メートル強のその大樹が緑の里のシンボルのようにも見える。
この光景を初めて見るタツヤ達の中で、一番最初に口を開いたのはアサヒだった。
「わぁ…!綺麗な場所ですね!」
「緑の里…名前の通り植物で溢れている…」
「あら?貴方達、旅の人達?」
ミキの呟きを聞いてか、近くにあった木の上から誰かが飛んでくる。そしてそのままタツヤ達の目の前に着地する。
ピンクのチューリップのような頭部とドレスを着た木の葉の羽を持つ妖精の女の子のようなデジモンはタツヤ達に向かって元気に挨拶をした。
「ようこそ、緑の里へ!ワタシ、リリモンっていうの!よろしくね!」
「あ、僕たちは」
「ねぇねぇ、どこから来たの貴方達!?ここから近いと古都?それとも大陸中央のセントラルエリア?まさかナイトキングダム!?いいなぁ、ワタシも行ってみたいなぁ。って、そこの三人はともかく、貴方達よく見たら人間!?うっそ初めて見た!今の都会って普通に人間がいるの?!うっそヤバくない!?」
「何だこいつ。話聞かない奴だなー」
「いや、城太郎がそれいうの?」
「ですですっ」
タツヤの言うことにアサヒはコクコクと顔を上下させる。普段の城太郎はあまり人の話を聞かない事が多く、何かとグループで行動すると一人で他の生徒を引っ張って行ってしまう性格だ。そんな彼が言った言葉は盛大なブーメランなのだが、言った本人は気づいていない。
そんな中、ハックモンは大きく咳払いするとリリモンの話を中断させる。放っておくと昼を過ぎてしまうこの会話を切り上げる事もそうだが、彼にも目的があるのだ。
「すまないが質問は後にして貰えないだろうか?それと、村長殿の所に案内してほしい」
「あ、ごめんなさい。それに…村長の所へ?でも…」
「?どうかしたのか?」
さっきと打って変わって、リリモンは歯切れが悪そうにする。一体どうしたのか、リリモンの様子からただ事ではないというのが感じられる。そうしていると、リリモンは意を決したかのようにわかったわ、とハックモンに言う。そのまま彼女は里の中心…大樹に向かってタツヤ達を案内した。
「お初にお目にかかります。オラ…ワタシはこの度緑の里の長となったアトラーカブテリモンです。どうぞ、お見知りおきを」
(((お、大きい…)))
大樹の中、木のくり抜かれた場所に入ったタツヤ達の前にいたのは自分たちがその手のひらに乗れるほどの巨大なカブトムシだった。おそらく、今まで会ったデジモンの中で一番巨大な彼…アトラーカブテリモンは所々訛りのようなものがあったがハックモンに頭を下げている。おそらく、自己紹介の時に自らをロイヤルナイツの一員だと説明した事がその理由だろう。
だがアトラーカブテリモンの説明を聞いたハックモンは首を傾げた。
「アトラーカブテリモン?緑の里では代々ヘラクルカブテリモンかグランクワガーモンが長になると聞いたが…」
「先代はつい先月寿命で亡くなりまして…。今は里で一番の実力を持つ私が長になりました」
「なるほど」
「それで、かのロイヤルナイツのジエスモン殿…いや、ハックモン殿がどのような要件で…」
「ロイヤルナイツ?そいつがか?」
アトラーカブテリモンの質問に被せるようにタツヤ達の後ろから声をかける者がいた。振り返ると、そこにはタツヤ達が緑の里に入る前に見た、スティングモンが大樹の入り口に立っている。
「あの人、今朝の…」
「スティングモン!オメェ、ハックモンどんに失礼でねぇか!」
「訛ったな村長」
「ああ、あまりにも弱そうでついな。だが、成長期がロイヤルナイツとは…世も末だ」
「スティングモン!!」
「もう、スティングモン!ちゃんと謝って!」
「……………フン」
チラリ、と頬を膨らませるリリモンの方を見るがスティングモンは大樹から出て飛び立ってしまう。それを追いかけようとしたリリモンだが、既にスティングモンはそこにはおらず彼女は再び頬を膨らました。
「あ、行っちゃった…。もう、スティングモンったら!」
「申し訳ありません、最近の若者は礼儀を知らなくて…」
「ホントよもう!」
「オメェもだリリモン!」
「えー?」
アトラーカブテリモンにそう言われて、リリモンは不満そうな顔をするが、ハックモンは気にしないでいいと一言。実際、今の状況的に考えれば間違ってはいない。一々反応するのも馬鹿らしいだろう。
ハックモンはタツヤ達を見ると話が長くなるので里を見て周るといい、と言う。それを聞いて城太郎とカケモン、ワレモンの顔に喜びが浮かび上がり、大樹の中から飛び出してしまった。好奇心が止まらないのだろう、今までの疲れなど微塵も感じさせずに走って行ってしまう。
タツヤとアサヒは彼らを急いで追い、大樹から出て行く。残ったミキもペコリとお辞儀をすると、同じく外へと出て行った。
「さて、ではアトラーカブテリモン殿。話を続けよう」
「ええ。それで、何をお聞きしたいのですか?」
「…今のデジタルワールド。そして、ロイヤルナイツ達の現状についてだ」
大樹から出て数分後、好奇心から出て行ったカケモン達を追い掛けていたタツヤとアサヒだったが、タツヤの走るスピードに追いつけずアサヒは後ろから歩いてきたミキと共に彼らを探していた。場所は里の畑がある少し外れの林の中、彼女達は辺りを見回している。
「浪川くん達どこに行ったんでしょう…」
「私達の歩行速度だと、彼らに追い付く事は難しい」
「はい…」
そう言ってアサヒとミキの会話が途切れてしまう。気不味い雰囲気…そもそも二人はあまり会話らしい会話を今までしていなかった。したとすれば、バルバモンに捕まっていた一室での会話くらい。それが今になって二人きりとなると、会話が続かない。
そうしていると、林の奥のほんの数メートル先に記憶に新しい後ろ姿…スティングモンの後ろ姿を見つけた。さらに言えばドス、ドス、と何かを打ち付けている音も聞こえる。もしかして、ここで特訓をしているのでは…アサヒとミキはそう思いながらもスティングモンにタツヤ達を見かけたか聞きに行こうと近づく。
すると、
「あーーーーーーーーーーーーーー……辛い。リリモンちゃん今日も可愛くて辛い。ほっぺ膨らますとか心臓に悪過ぎ。でもってボクのバカ、何無視してるんだよ。ホンッッットバカ…!」
頭を木に押し付け、片腕をまるで腹パンするように何度も軽く打ち付けている彼の姿があった。小声でスパイキングフィニッシュ、ブツブツ…、と聞こえているので不気味さが増している。一瞬、人違いならぬデジモン違いか、と思って回れ右を仕掛けたアサヒとミキだったが、運悪く小枝を踏んでしまった。しかも二人とも。
「「「あ」」」
当然その事に気付いたスティングモンは振り返り二人を視界に入れる。それと同時にフリーズ。今何が起こっているのか、必死に理解しようとする姿がそこにあった。
数秒たってちゃんとした姿勢で振り返ると、里の外や大樹の中で見せた雰囲気で話し始める。
「………いつからそこにいた」
「えっと、あーーーー、からです」
「正確に言えばその3秒ほど前」
「うっそぉ…!」
が、それは一気に崩れ去りスティングモンは手と膝をついた。見られたくないものを見られてしまった、そんな感じで。
「あ、あのー…」
「うぅ、そうだよ。ボクはいつもあんなクールぶってるけど、ホントはこんな場所でいじけてるヘタレ昆虫なんだよォォォ…!」
「いえ、なにも言ってないんですけど!?」
「勝手に自白を始めた……刑事ドラマの犯人と同じ」
「才羽さん!?」
タツヤの家にいた時に見たのか、ミキの発言に対して驚くアサヒ。普段の彼女らしからぬ事に目を丸めていたが、アサヒは気をとりなおしスティングモンの目線に合わせるようにしゃがみこむ。
「スティングモンさん、大丈夫です。誰にも話しませんから、落ち着きましょう?ね?」
「え…ホントに?」
「はい、本当です」
「……ありがとう」
説得できたのか、スティングモンは姿勢を変えて今度は体育座りし始めた。中々シュールな光景だったが、アサヒはその事を気にせずスティングモンの隣へ座る。ミキもそれを真似してアサヒの隣へと座るとアサヒはスティングモンへ問い掛けた。
「あの、スティングモンさんは、リリモンさんが好きなんですか?」
「うぇ!?いや、それはあのくぁwせdrftgyふじこlp」
「よければお話聞かせてくれませんか?」
パニックになり掛けたスティングモンにアサヒは穏やかにそう聞く。すると、スティングモンは考える仕草をして、わかったと返事を返した。
スティングモンとリリモンは幼年期からの知り合い、所謂幼馴染だ。当時ミノモンとタネモンだった彼らは毎日楽しく遊んでいた。そんなタネモンには夢があった。いつか大きくなったら里を出て、都会に行ってみたいと。しかしそれにはそれ相応の実力がいる。幼年期の彼女はそれを毎日夢見ていたのだ。そしてその事を聞いたミノモンはこう言った。
“ボクがタネモンちゃんを守ってあげるよ!”
だから、一緒に都会に行こうね。そう言って二人は約束をした。いつか、里の外に出る事を夢見て。
「そう、なんですか。なんだかステキですね」
「でも、リリモンちゃんは完全体でボクは成熟期…。このままじゃ約束、守れないよ」
「確かに、世代の差は埋められない」
「そんな事…」
そう不定しようとするが、スティングモンはもう忘れられてるかも、と弱音を吐く。だがそれでも引き下がらないアサヒは口を開こうとするが…。
突如、耳を貫くような咆哮が響き渡った。
数分前、緑の里の高台から見張りのコカブテリモンは有り得ないものを見てしまった。それは何十体もの竜の群れ、エアドラモンの群れが里に目掛けてやってくる光景だった。あり得ない、あり得るはずがないその光景が現実の物だと分かると、コカブテリモンは高台にあった鐘を鳴らした。
「た、大変だべェェェェェェェ!!」
鐘の音は大樹の元まで響き渡っていた。アトラーカブテリモンから話を聞いていたハックモンは何事かと外に出ようとすると、その前に大樹の外からスナイモンとトゲモンが慌てて中へ入ってくる。
「村長、大変だべさァ!」
「え、エアドラモンの群れが近づいているでガス!」
「な、なんだべさァァァァァァァァ!?」
「バカな、エアドラモン…竜だと!?そんなはずは…」
そう、そんなはずはないのだ。この付近にいる竜型のデジモンは全て竜の谷のデジモン。彼がいるのならば、こう言った集落を襲うことは決してない筈だ。なのに何故…。
ハックモンは混雑する思考を一旦切り替え、近くにいたスナイモンへと声をかける。
「里中に知らせろ。戦える者は集まり、それ以外の者は安全な場所へと隠れるようにな!」
「わ、わかっただぁ!」
「ワタシ、スティングモン探してくる!」
「リリモン、止まるだ!リリモン!」
アトラーカブテリモンの制止を振り払い、リリモンは大樹から出て行く。後を追いかけようにも彼はこの緑の里の長、今は他のデジモン達に避難の支持を出すことが優先されるだろう。ハックモン達はすぐさま外へ出て行った。
その頃、外へと出て行ったカケモン達に追いついたタツヤは空の向こうからやってきた翼竜の群れ…エアドラモンの群れに追いかけられていた。突然の事に彼らはがむしゃらに走り、他の里のデジモン達も同じく逃げている状況だ。
「「「ギシャアアアア!!」」」
「ぎゃあああああ!?なんだこいつらァァァァァァァァ!?」
「エアドラモンだ!食われる前に逃げるぞ!」
「二人とも行って!僕たちが足止めする!カケモン、行こう!」
「う、うん!」
タツヤはデジヴァイスを取り出しオメガモンのカードを具現化させると直ぐにスキャンし隣を走るカケモンにデジヴァイスを向ける。そして放たれた光はカケモンを包み込むと後ろのエアドラモンの群れへと向かって行く。
「セットアップ、オメガモン!」
「アップグレード! カケモン ver.オメガ!!」
アップグレードしたカケモンはウェポンΩの刃を近くにいた一匹のエアドラモンを切り裂く。さらに別の方向にいた里のデジモンと思われるコクワモンを襲っているエアドラモンに向けて砲撃する。その行為を目にした他のエアドラモンはカケモンに向かって次々と襲いかかった。
「コキュートスハウリングッ!!」
だがカケモンは四方にコキュートスハウリングを打ち込み何体かのエアドラモンを氷のオブジェへと変える。そして大きく飛び上がるとカケモンはタツヤの方を見た。一方のタツヤはカケモンの意図がわかったのか新たにデジヴァイスにジエスモンのカードをスキャンさせる。
「セットアップ、ジエスモン!」
「アップグレード! カケモン ver.ジエス!!」
ver.ジエスへアップグレードしたカケモンは空を飛ぶエアドラモンを足場に更に上にいるエアドラモンを次々と落として行く。そして全て落とし終えると、手にした短剣を構え地面に這いつくばるエアドラモンに向かって行った。
「行くぜオラァァアアアアア!!」
「グルルルル…!!」
「ぐ、ぐぅぅ…!」
「スティングモンさん!もうやめてください!」
「ダメ、今背を向けたら全員やられる…!」
森の奥でスティングモンは満身創痍になっていた。それを見ていたアサヒはスティングモンに逃げるように言うが冷静に状況を見ているミキに待ったをかけられる。それもそのはずだ、今目の前にいるデジモンは強大な力を持っていたからだ。
機械で改造された頭部と両腕を持ち脚のない緋色の体を持つ巨大なサイボーグ型デジモン…名をメガドラモンは目の前にいるスティングモンを弄ぶように攻撃を繰り返していた。最初に現れた時はアサヒとミキに攻撃しようとしていたのだが、それをスティングモンが防ぎ今の状況に至る。だがそれはあまりにも無謀だった…何故ならメガドラモンは完全体、彼より一つ上の世代のデジモンだからだ。
しかし彼は下がらなかった。このまま逃げれば里の方へと奴は追いかけてくる。そうすれば、里の皆にも被害が出るだろう。もちろん、リリモンにも。それは彼が望む選択ではない、だからこそ立ちふさがる。しかし、そんな彼の前に来て欲しくはない者が現れてしまう。
「スティングモン、無事!?」
「リリモンちゃ…リリモン!何故ここに!?」
「そんなの貴方が心配だからに決まってるじゃない!–––––フラウカノンッ!」
両手を合わせ咲かせた花の砲台から発射された攻撃はメガドラモンに当たるが、何事もなかったように平然としている。そんな、とリリモンが驚きの声を漏らすとメガドラモンはリリモンに向けて己の尻尾を巻きつけた。
「あぐっ…!うぅ…!」
「リリモンさん!」
「いけない…あのままだと!」
「や、めろぉ!リリモンちゃんを離せェェェェェェェ!!!」
苦しげに声を漏らすリリモンにスティングモンは痛む身体に鞭を打ち付け飛び上がる。そして声を上げると自らの腕にある針を伸ばしメガドラモンの胸へと突き刺す。スパイキングフィニッシュをまともに食らったメガドラモンは痛みにより咆哮、リリモンを拘束していた尻尾を自由にすると、
……それはスティングモンの胸を貫いていた。
「スティングモォォォォン!」
リリモンの絶叫が響き渡る。力無く落ちて行く彼に手を伸ばしたが、それは届かない。スティングモンは薄れる意識の中で、リリモンとの約束を守れない事に後悔を覚えていると、誰かに抱きとめられた。
「よくやったぜ、ニイちゃん」
薄っすらと視界に映ったのは、見たことのないデジモンだった。少なくとも里のデジモンではない、そう思った矢先にそのデジモンはスティングモンをそっと草の上へと下ろす。
「後は任せて休んでな。こっからは…オレのターンだ」
そのデジモン…カケモン ver.ジエスは肩に担いだランサーJを振り回し持ち直すとメガドラモンを睨みつける。別の場所にいたエアドラモンをあらかた片付けた彼は大きな爆発音がしたこの場所へと急いで走って行き、丁度今着いた所だったのだ。
カケモンは飛び上がるとメガドラモンに向けてランサーJを突き付けるがそれは回避され逆に腕を振るわれ地面に叩きつけられる。すぐさま飛び起き今度は木の上から再び飛び上がると今度はメガドラモンは機械の腕を展開させ無数のミサイルを発射させた。カケモンはミサイルを時に躱し時に跳ね返すがいくつか当たってしまう。
「ぐっ、流石完全体って所だな!」
「グオオオオオオ!!!」
咆哮を上げるメガドラモンを睨むカケモン。すると、ふと彼はある事に気付いた。それはメガドラモンの胸に未だ塞がっていないスティングモンのつけた傷が残っていた事。それを見つけカケモンはバイザーの奥で口の端を上げるとアト、ルネ、ポルを呼び出し再び飛び上がった。
「ありがとよ、ニイちゃん!武槍乱舞ゥゥゥゥ!!」
カケモンに向かって突進してきたメガドラモンをアト、ルネ、ポルのサポートを受けながらも避け、カケモンは胸の傷に向かって蹴りを入れる。それにより再び咆哮を上げるとメガドラモンは地面へと落下。痛みによって暴れ回るがカケモンは追い討ちをかけるように傷へと向かってランサーJを突き刺す…メガドラモンは暴れるのを止め、次第に動かなくなった。
勝った、そう思ったカケモンはランサーJを抜きダメージを負った体を引きずりリリモン達の所へ行こうとする。だが、後ろで何かが動く気配がし、急いで振り向くと…そこにはフラフラになりながらも体を起こしたメガドラモンがいた。
「ヤロォ…!まだ動けるのか…」
「グルル…ギシャアアアア!」
「まずっ…」
「ホォォォォォン、バスタァアアアアアーー!!」
まともに動けず万事休すかと思われたが、カケモンの後ろから電撃が放たれたメガドラモンに当たる。その事でメガドラモンは完全に沈み、体から粒子を出して消え始めた。カケモンは振り向くと、そこには里の長のアトラーカブテリモン、タツヤに城太郎にワレモン、それにハックモン。他にも里のデジモン達が走って来ていた。どうやら騒ぎを聞きつけて来たらしい。
安心して膝をついたカケモンにワレモンは彼の膝を叩くと、元の姿に戻る。だが安心してはいけない。まだスティングモンの件が残っている。
「タツヤ、スティングモンさんを助けて!アサヒ達を守ってくれて死んじゃいそうなんだ!」
「うん、わかったよ!」
「いや、ダメだ。デジコアを、核を破損している。自然治癒を促進するデジヴァイスだけでは間に合わん…」
「嘘だろ!じゃあどうすればいいんだよ!?」
城太郎の混乱する様子を見て回りは既に諦めかけている。もう助からない、既にそう思い始めていた。だが一人、リリモンだけはスティングモンの手を掴み必至に叫んでいる。
「スティングモン!しっかりして、生きてよ!生きて、約束…守ってよぉ…!」
「り、り…」
既に意識も薄れて来たスティングモンは驚く。もう、忘れられていたと、そう思っていた約束を…彼女も覚えていてくれたその事に。そしてそれを知ると、スティングモンは生きる事を諦められない、諦めたくないと思い始めた。
すると、その時不思議なことが起こった。少し離れた場所にいたメガドラモンの体から出てきた粒子の一部がスティングモンの元へと流れて行き、胸の傷の中へ入っていく。そして段々と傷を癒していくと、スティングモンの体が浮かび上がった。
そして、
「スティングモン、超進化!–––––ディノビーモン!!」
光に包まれスティングモンは進化していた。元のスティングモンの体の一部に青い竜のような腕と尻尾、翼等が追加され一回り大きくなった完全体のデジモン…名をディノビーモン。本来ならエクスブイモンというデジモンとジョグレス進化という特殊な進化をする事で誕生するのだが、彼の前世に竜種やディノビーモンに進化したという情報があった事により、メガドラモンのデータを取り込み進化したのではないかと後にハックモンが語った。
スティングモン改めディノビーモンが復活した事によってタツヤ達は歓喜の声を上げる。だがその中で、一人だけ顔を伏せている者がいた……リリモンだ。それを見たアサヒはある予想を立てて顔を青ざめる。もしかすると彼女はディノビーモンを見てショックを受けているのではないか。スティングモンの時はまだ洗練された、人間からしてもカッコいいと呼べる姿に対して今は悪く言えば交ざり物のような見た目をしている。それがリリモンの好みに合わなかったのではないか…そう思ってしまったのだ。そう思ってアサヒはリリモンに声をかけようとするが…小声で彼女は何かを呟いていた。
「き、き…」
「キモカッコいい〜〜〜〜!!」
「「「え?」」」
リリモンは目を輝かせるとディノビーモン目掛けて突進、否、抱きついた。その事に彼は混乱しながらも素のままの口調で話し始める。
「り、りりっリリモンちゃん!?どうっ、どうしたの!?」
「ウチの里の連中、パッとしないのしか居ないから諦めてたけど…スティングモン!ううん、ディノビーモン!あなたステキよ!キモカッコいい!」
「そ、そうかな?」
「そうよ!」
どうやらタイプだったようだ。ディノビーモンは照れながらも頭を掻いて顔を赤くさせていた。その光景を見て緑の里の、主に古参のデジモン達はええぞー、もっとやれー、とヤジを飛ばしている。その光景を見て、タツヤ達人間の四人は喜んでいいのやら呆れていいのか、微妙な顔をしていた。
「あれ、褒めてる…のかな?」
「褒めてる、でいいんでしょうか…?」
「まぁ、あいつらがいいんならいいんじゃね?」
「理解できない…」
その日の夜、緑の里では宴が開かれていた。それは完全体へと進化したディノビーモンの祝いの為でもあり、里を救ったタツヤ達をもてなす為でもあった。出された料理は取れ立ての野菜を使ったサラダに野菜炒め、フローラモンの(頭の中でミックスして)作ったスープ、マッシュモンの焼いたキノコやフルーツ盛り合わせ。どれも絶品でカケモンとワレモン、ミキが次々と皿を空にしていく光景が目の前で普通に行われていた。その事に苦笑いしながらも肉食いてぇ、と呟いていた城太郎の顔を掴み力を込めるタツヤ。アサヒはアサヒで、一緒に笑い合いながらも食事をしているディノビーモンとリリモンを見て微笑んでいた。
そんな宴の中、ハックモンは後回しにしていた思考を再開していた。あり得ない竜型のデジモン達の強襲、これに対する答えが見つからないのだ。ならば、とハックモンは答えを出していた。
「行くしかあるまいな、竜の谷へ」
一週間ぶりですタカトモンです
年も開けてもう直ぐ一月ですねー
一年過ぎるのも早いです
今回の話は少しネタが多い気もしますw
いつも読んでくれている方々ありがとうございます
何かご不明な点やご意見がございましたらなんでも言っていただけると嬉しいです
それでは〜
なんか派遣会社とのやりとりみたいになっちゃった笑笑