デジタルモンスター Missing warriors   作:タカトモン

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十八話 《始まりの街と正義の味方》

デジタルワールド滞在四日目。竜の谷でもてなされたタツヤ達はお土産の薫製肉を貰い、谷から出ていた。その際、ウイングドラモンが近くまで乗せて行くと自ら宣言し、竜の谷の先にある森まで送って行ってもらう事に。また長い道を歩くのかと心配していたアサヒとカケモンはその事に喜んでいた。谷から森までは一日かかってやっと辿り着く場所にあるのだ。タツヤ達は彼の申し出を断る事はなかった。

 

「では、ワタシはこれで。皆さんもお気をつけて下さい」

「ああ、世話になったな」

「エグザモンさんにもよろしくねー!」

 

ウイングドラモンの安全運転(それでも少し早かった)で近くの森に降ろされたタツヤ達。別れの挨拶をしてそのまま竜の谷へ戻るウイングドラモンにハックモンとカケモンはそう言い手を振る。そして完全に見えなくなると、タツヤはハックモンに問いかけた。

 

「それでハックモン、次に向かう場所はどこなの?」

「ああ。今度の目的地はデジタルワールド最古の都である古都だ」

「文明がある場所なんですか?」

「ああ。そこで数日情報収集と携帯食料の調達をする。今残っている同胞の内、何人かは守護するエリアを持たない。通信もできない今の状況では目撃証言を集めるしか無いからな」

 

アサヒの疑問に答えるハックモンは苦い顔をする。ボソリ、と特に師匠はな、と呟いていたがその言葉は誰にも届く事は無かった。

ハックモンは咳払いしタツヤにデジヴァイスを取り出すように言う。《MAP》を起動し、全員で見える位置にデジヴァイスをかざすとハックモンは説明し始めた。

 

「ウイングドラモンのお陰でここから古都まで三日程で到着する。途中で野宿と集落での宿泊を考えたとしても、道のりは楽なはずだ」

「お、マジでか!んじゃあもう行っちまおうぜ!」

「ちょっと、城太郎!」

 

生き生きとした顔で城太郎は前に進み出す。元々持っていた好奇心もあってか、進まずにはいられないのだろう。それを見てタツヤは彼を追いかけ、つられるようにハックモン達も歩き出した。

 

 

進み出してから半日程経過した。日が沈み始める時間帯となり森の中は薄暗くなり始めていた頃、タツヤ達は手頃なキャンプ地を探している。周りは岩や隆起した地層など安定しない地面が続き、それに加えて場所も野生のデジモンが出る可能性もあるので今もタツヤ達は歩き続けていた。既に何人かは体力が限界に近いらしく、顔に疲労の色が見えている。早く見つけないと次の日に引き摺ってしまう、ハックモンが少し焦りを見せた…その時だった。

今いる場所から少し離れた所で爆音が響き渡る。戦闘か何かか、疲れていたタツヤ達は気を引き締め音の鳴った方向に目を向けた。一方のハックモンは音のする方向に心辺りがあるのか、顔色を変えて走り出す。

 

「まさかっ…!」

「ちょ、ハックモン!?」

「急にどうした!?」

 

いきなりの行動にタツヤとワレモンは驚き、タツヤ達は後を追う。一目散に走り出すハックモンは木々を掻き分け前に前にと進んだ先には…

 

 

「ジャスティス…キィィィイックッッ!!」

「うっきぃぃい!?」

 

 

まるでヒーローショーに出てくるヒーローの姿をしたデジモンとそのデジモンに蹴られる猿の着ぐるみを着たようなデジモンがそこにいた。蹴られたデジモンは放物線を描き空中から地面に落下すると、アウチッと悲鳴を上げる。そして数秒蹲ると、すぐさま起き上がりヒーローのようなデジモンに指差し悔しさ全開で叫んでいた。

 

「ムッキィィィ!またやられてしまったわ!覚えてなさい、ジャスティモン!次こそは、つぎこそわあああああ!」

「もう懲りて欲しいけど、しょうがない。今度来た時も相手になってやるさ!」

 

ビシィ、と夕陽を背にした彼…ジャスティモンがそう言うと猿の着ぐるみのデジモンは地団駄を踏み何処かへと去って行く。ふぅ、と一息ついたジャスティモンはタツヤ達に気付くと、手を上げて陽気に挨拶をする。

 

「やぁ!そこの君達は旅の人達かな?」

「え、うん。そうだけど…」

「だったらこの先にある街に行くといいよ。もう夜は遅いし泊めてもらうといい」

「あ、ちょ」

「ああ、自己紹介がまだだったね。オレの名前はジャスティモン!通りすがりのヒーローさ!じゃあね、トォ!」

 

ジャスティモンのマシンガントークが終わり、彼は飛び上がると何処かへと消えて行ってしまう。そしてその光景をカケモンがキラキラとした目を向けていた。ああ、やっぱりかと思いながらもタツヤ達は飛び去ったジャスティモンになんか見たことあるような、と考えていたがハックモンがそれを遮る。

 

「…とりあえず行こうか。この先に街がある」

「なーんだ、そこに泊まらせてもらえば野宿する必要なんてねぇじゃねぇか」

「元々通る道では無かったからな。…いや、今となっては好都合か」

 

城太郎の言葉にそう返すハックモンは森の中を進み出す。タツヤ達も続くように歩き出すとある事に気付いた。…ある程度道が整備されてきたのだ。少し前の獣道ではなく、ちゃんとした道になっている。

そして数分後、タツヤ達は森を抜けるとそこには不思議な街があった。カラフルな四角い箱のようなものが地面に敷き詰められている。それ以外にも、四角い箱がいくつか積み上げられた物もいくつか見える。街と言うにはタツヤ達人間からしてみればおかしい話だが、不思議とそこを街だと認識してしまった。

 

「なんだ、ここ?」

「おいおい、まさかここって…」

「ああ、お前の予想通りだワレモン。ここは始まりの街。デジタルワールドにおいてデジタマが現れる場所の一つだ」

「デジタマ?」

「デジモンが生まれる卵だ。詳しくは奥にいるであろう管理者に話を通してからだな」

 

 

「そうですか、ジャスティモンに言われて…。そう言う事でしたら今日はお泊りください。最近は乱暴なデジモンが多いので」

「ああ、そうだな。今晩は泊まってけよ」

 

始まりの街の奥にあった木造の建築物。その中にいた街の管理者…雪だるまのような見た目をしたユキダルモン、そして赤い体毛をしたネズミに近い姿をしたエレキモンはハックモンの説明を聞いてタツヤ達の宿泊を許可してくれた。

ユキダルモンの言う乱暴なデジモンは先程のデジモン…エテモンなのだと言う。その話を聞いたミキはユキダルモンに尋ねる。

 

「さっきのジャスティモンは?彼はここの管理者?」

「いいえ、彼は違うわ。彼はエテモンが現れる少し前からこの街を守ってくれているヒーローなのです」

「そうそう。さすらいのヒーローってな!今までこの街にちょっかいかけてくるデジモンはオイラ達で追っ払ってきたけど、エテモンは完全体だし…オイラ達じゃ勝てないからな」

「彼はワタシ達がピンチの時に現れて助けに来てくれるのよ。でもその後にすぐに何処かに行っちゃうから、お礼しか言えないけどね」

「へぇ…カッコいいねぇ!」

 

二人の話を聞いたカケモンはまたも目を輝かせる。タツヤはそれに苦笑いしながらもふと、パズルのピースがハマるような感覚が走った。そうだ、カケモンだ。正確に言えばver.アルフォースにアップグレードしたカケモンだ。ジャスティモンに何処かで見たような感情を抱いたのはそれが原因だった。だって二人ともヒーロー名乗ってるし、性格も似ている気がする。

その事に他の皆も気づいたのか、タツヤと顔を合わせている。特にワレモンはなんとも言えない顔をしていた。…そこまで苦い顔をしなくてもいいと思うけど、とタツヤはまたもや苦笑い。

 

「んじゃ、部屋に案内するぜ。あ、そうそう。ここにはオイラ達以外にも…」

「せ、センパァァイ!」

 

エレキモンがそう言いかけた時、部屋の中に誰かが入ってくる。紫の体をした竜型のデジモンは…様々な色のスライムを体中にくっつけながらエレキモンの前に倒れた。

 

「た、助けてくださいィィィ…」

「モノドラモン、お前またベイビー達をあやしきれなかったのかよ」

「うぅ…皆わんぱく過ぎて…」

「しょうがねぇなぁ」

 

そう言うとエレキモンはそのデジモン…モノドラモンの体中にあるスライムを素早く取っていき、部屋の外に出て行く。それを見送ったアサヒはモノドラモンに近づいた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「う、うん。なんとか…」

「なぁ、さっきの丸っこいの何だったんだ?スライム?」

「ううん。あの子達はベイビー…幼年期の子達だよ」

「幼年期?」

 

聞きなれない単語に反応するタツヤ。おそらくデジモンの世代の一つなのだろう。そう思ったタツヤは背後にいるワレモンとハックモンに目を向ける。デジタルワールドについては彼らに聞いた方が早いだろう。他の三人もそう思ったのか同じく二人に目を向けた。

 

「あー、はいはい。説明しろって事だな。幼年期はオレらで言うガキ…赤ん坊みたいなもんだ。デジタマから生まれたばっかのやつだな」

「ああ。正確には幼年期Iと幼年期IIと分けられる。幼年期Iはそこの彼に張り付いていたようにスライムのような形状をしている。生まれたばかりでデータの情報不足の為にちゃんとした肉体構造をしていない為だ」

「んで、進化すると幼年期IIになる。まぁ、見た目はあんま変わんねぇやつもいるけど、大体丸っこい奴が多いな。そんでここら辺でどんな成長期のデジモンに進化するのかわかってくるんだよ」

「へぇー、そうなんだ」

「って、オメェがわかんなくてどうすんだよ!」

「痛い痛い、痛いよワレモンンン!」

 

同じデジモンなのに知らなかったカケモンに対しヘッドロックするワレモン。カケモンはワレモンに向かってタップするが力を緩める気は無いようだ。それを見かねてタツヤはワレモンにやんわりと止めるように呼びかける。初めて会った時から何度も経験してきた事だ、割とスムーズにワレモンを宥める事が出来ていた。

そんな中、立ち上がったモノドラモンにユキダルモンが近づく。

 

「モノドラモン、大丈夫ですか?」

「は、はい。ボク、子供達好きだから…へっちゃらです!」

「そうですか…ここに来て三ヶ月、あの子達にも十分打ち解けられて来たみたいね」

「でも、まだまだユキダルモンさんやセンパイみたいにはいきませんよ」

「大丈夫、貴方もきっと立派な管理者になれるわ」

 

どうやらモノドラモンはここでは一番の新入りらしい。ユキダルモンのフォローを受けてモノドラモンは大きくはい、と返事をした。そうしていると、ミキは二人に近づくと声をかける。

 

「あの…」

「あら、どうしたの?」

「私、もっと幼年期のデジモンを見てみたい」

「あ、だったら俺も!」

「その…私も興味あります」

「まぁ、そうなの。じゃあ、モノドラモンについて行くといいわ。まだ子供達の部屋でやり残した仕事もあると思うし」

「はい、まだおもちゃの整理とかいっぱい残ってるから、ついて来てください」

 

そう言うとモノドラモンはタツヤ達を誘導するように部屋の外に向かって歩く。ここの責任者とも言えるユキダルモンの許可が出た事もあり、城太郎とアサヒ、そしてミキは彼について行った。残ったタツヤ達にも夕飯まで時間があるからゆっくりして行くようにユキダルモンに言われ、城太郎達の後を追う。

 

 

廊下を出て1分ほど、わいわいがやがやばぶばぶと廊下からも騒がしい声がある扉から聞こえてくる。おそらくあそこが子供達の部屋なのだろう。幼稚園にあるような装飾が施された扉に見慣れない文字…後にこれはデジ文字と呼ばれるものだとハックモンに説明される…が書いてある。モノドラモンは扉に手をかけて開けようとするが…その前に城太郎が思い切りドアを開いた。

 

「俺イッチバーン!」

 

だがその瞬間、

 

「もがっ」

 

彼の顔面にピンク色の何かが張り付いた。あまりにも高速で見えなかったが、それはまっすぐ彼の顔全体を覆う。

そして、

 

 

「じょ、城太ろぉぉぉおおお!!?」

 

 

珍しく叫び出したタツヤの声が建物の中に響き渡った。

 

 

 

 

始まりの街から少し離れた木の上、夜になったこの場所でエテモンはやけ酒ならぬ、やけバナナをしていた。エテモンは毎回毎回ジャスティモンにやられてはこのように木の上でやけバナナするのがお約束となっていたのだ。それもこれも彼の目的に問題があるのだが、それはまた別の話。

 

「キィィィ!何よ、何なのよもう!今に見てなさいあんな奴ゥゥ!」

「よぉ、オレが力貸してやろうか?」

「むぐぅ?」

 

口にバナナを突っ込みながらも背後から声が聞こえてきたので振り向く。するとそこには…暗闇の中で羽を広げた堕天使が、歪んだ顔で笑っていた。

 

 

一方、始まりの街では、

 

「じょー、おなかすいたー」

「ほいほい、夕飯まであとちょっとだから我慢なー」

「じょー、うんちー」

「よーし、じゃあこっちでやりなー」

「じょー、ひーろーごっこしよー」

「お、いいぜー。誰がヒーローだー?」

「「「ぼくたちー」」」

「ヒーロー沢山いるなー。よっしゃこーい!」

「「「わーー」」」

 

沢山の幼年期のデジモン…プニモンやツノモン、ユキミボタモン、ニャロモンなどといった幼年期のデジモンが城太郎と遊んでいた。

タツヤの絶叫の後、城太郎は顔に張り付いてきたデジモン…コロモンを剥がして中に入ると直ぐ様人気者になった。やれなんかやって、やれ抱っこなどと大忙しだ。現在はヒーローごっこをしているのだが、無数の幼年期達に体を覆われ…もはや別のデジモンと言っても過言ではない姿になっていた。

そんな彼を見るのはグミモンを抱いて座るアサヒとチョコモンを抱いて座るミキだ。余談だが、少し前のアサヒは幼年期のデジモン達を見て可愛いです、と近くのポヨモンに頬ずりして我を忘れていた。その際ミキも近くのチコモンの頬を指で突いていたのは別の話。

 

「……意外です。小さい子のお世話が上手なんて」

「うん」

「まぁな。伊達に五人兄妹の長男やって無いからな!子守りのエキスパート何年やってるんだって話よ!」

「そう言えばそうだったね」

 

そう言ってタツヤは膝に乗るギギモンとリーフモンを撫でる。何気に懐かれたのか、彼らの顔はリラックスしている。

城太郎の幼馴染を何年もしているタツヤだ。城太郎に強制的にではあるが自宅に連れていかれたこともある。知っていて当然だろう。

そうしていると城太郎は体に幼年期達をくっつかせたまま語り出した。

 

「小六の塔二(トウジ)は俺と違ってしっかり者でさ、母ちゃんの家事を自分から手伝いに行くんだぜ?で、小三の三堀(ミホ)はオレと同じで運動のエキスパートでな、タツヤも会ったことあるだろ?ほら、いつも泥だらけの」

「ああ、あの子か…」

 

思い出すのは約三年前、まだ小学校の頃。無理矢理連れてかれた城太郎の家に必ずいた少女がいた事を思い出す。外で遊ぶ事で焼かれた肌と遊んだ事でついた泥が特徴的な少女だった。

タツヤが思い出している間も城太郎は続ける。

 

「で、小一の四門(シモン)は気が弱くってよ。なんか物音する度にビクビクしてんだぜ?でもウチの家族の中で一人だけゴk」

「それ以上言わないでください怒りますよ?」

「あ、ワリィ。まぁ、Gを退治できるんだよな。そんで末っ子の五壁(イツカ)は甘えっ子でな。幼稚園入ったばっかなのに家でも外でもとーたんかーたんにーたんねーたんって甘えまくってるんだぜ」

 

アサヒの謎の圧力に一緒たじろいだが城太郎は下の弟と妹の事を言い終わると満足げに、そしてどこか切なげに笑う。そして幼年期の中から一匹、ポロモンを両手で持ち上げると、独り言のように呟く。

 

「…なんつーか、いつもはうるせぇけど……一ヶ月も会えねぇって思うと、案外寂しいもんだよな」

「城太郎…」

 

城太郎の言葉をポロモンは理解していないのか首を傾げる。それを見たタツヤはなんともやるせない気分になった。が、それは一瞬の事。城太郎はいつものように笑顔になるとタツヤの肩をバンバン叩く。

 

「なーんつってな!そんな顔すんな!」

「…わかってるよ、君がそんなキャラじゃないことぐらい」

「そ、そういえばここの子達って大きくなったらどうするんですか?もしかして旅に出るとか?」

「そう言う子もいるけど、大体はトレイルモンに乗せられてデジタルワールドの各エリアに移動するんだよ」

 

話を変えようとしたアサヒにバブモンをあやすモノドラモンが答える。モノドラモンがアレを見てと窓の外を指差すとそこには列車のレールが敷いてあった。列車型のデジモンであるトレイルモンが来るためのものらしく、デジタルワールドの各エリアに少なくなったデジモンの数だけ始まりの街などから生まれたデジモンを運ぶそうだ。そうする事で各エリアのデジモンの数を一定に保つ決まりらしい。

だがそんな決まりを破ろうとするデジモンもいる。生まれたばかりの幼年期のデジモンを攫って悪の道に引きずり込ませ、自分の手足のようにしようとするデジモンもいるのだ。それがつい先ほど会ったエテモンなのだとモノドラモンは語る。そしてそんなデジモンの為にこの街には特殊な結界が張ってあるのだと付け加えた。

 

「そうなの?」

「うん、昔からの決まりでね。確か……神様がそう決めたとか?」

「「「神様?」」」

 

ミキのその言葉にモノドラモンは不思議な事を言う。神様、という日常生活ではあまり聞きなれない単語に現実世界出身であるタツヤ達は首を傾げた。まさか宗教上の問題とか、そういうのじゃないのか…タツヤはそう思ったが、モノドラモンはこれ以上はわからないよ、と返す。

そうしていると、トコモンに尻尾を噛まれながら我慢しているワレモンの横にいたカケモンがモノドラモンに声をかける。その手にはボタモンがすっぽりとはまっていた。

 

「ねぇねぇ、ジャスティモンってどこに住んでるの?」

「え?えーっと…」

「ボクね、ジャスティモンにまた会いたいんだ!」

「あー、それはね…」

「ダメダメ。ジャスティモンは正義の味方、ヒーローだからな。悪が現れない限りはやってこないのさ」

「そ、そうそう!」

 

なぜか挙動不審なモノドラモンに背中にリーフモンを抱えたエレキモンが答える。それに乗っかるようにモノドラモンも頷く。

どこか怪しいと思いながらも、タツヤは膝の上にいる二匹を撫でていた。そして夕飯の支度ができたとユキダルモンが部屋の外から呼びかける。とりあえずそういう事は後で考えよう。タツヤはそう考えてカケモン達と一緒に部屋から出て行く。

そして何事も無く、夜は更けて行くのだった。

 

 

デジタルワールド滞在五日目、ぐっすりと眠ったタツヤ達は始まりの街から出発しようとしていた。街の入り口にはユキダルモン達と幼年期のデジモン達が集まっている。

 

「じゃあ、お世話になりました」

「また何かございましたらいらしてください」

「「「じゃーねー!」」」

 

タツヤがそういうとユキダルモンと幼年期デジモン達が元気よく別れの挨拶をする。数匹タツヤ達についていこうとするが、エレキモンやモノドラモンが引き止めていた。

タツヤ達が森へ入りその姿が見えなくなると、ユキダルモンは幼年期デジモン達に向かって話し出す。

 

「さ、みんな中に入りましょ。今日は何して遊び…」

「殺戮ごっこなんてどうだ?センセー」

「え?」

 

悪意を含んだその言葉にユキダルモンは思わず振り返る。そこにいたのは…

 

「…ネイルボーン!!」

 

 

「いやー、楽しかったなー」

「そうか?オレ尻尾噛まれたんだぞ?」

「まぁまぁ、まだ赤ちゃんなんですし…」

 

森に入って数分、城太郎とワレモン、アサヒは始まりの街での事を思い出しながら歩いていた。アサヒに関してはもっといたかったな、と少し思っていたが、それは別の話。ミキもミキで幼年期デジモン達の頬の感触を忘れられずにいた。

そんな中、タツヤは昨日から気になっていた事をハックモンに聞く。それは話に聞いた…“神様”に関してのことだ。

 

「…ねぇ、ハックモン」

「どうした」

「神様って、いるの?」

「……それは、」

 

ハックモンが言い淀んでいると、タツヤ達の後方から爆音が響く。タツヤ達は思わず振り返ると、ある場所から煙が上っているではないか。しかもその場所はつい先程出発した場所…始まりの街だった。

何故街の方から爆音が、と驚くハックモンだが嫌な予感がする。タツヤも同感なのかカケモンと目を合わせるとデジヴァイスを取り出しカードを具現化させた。

 

「セットアップ、アルフォースブイドラモン!」

「アップグレード! カケモン ver.アルフォース!!」

 

光に包まれ、カケモンはver.アルフォースへとアップグレードする。そしてすぐさま始まりの街の方へ駆け出していった。

 

 

始まりの街では混乱が起きていた。急に現れたデジモン…スカルサタモンが街の中へと侵入してきたからだ。何故結界が発動しない、どうして…ユキダルモン達はそう思いながらも街の奥へと逃げて行った。

それはスカルサタモンの技、ネイルボーンが原因だとは誰も答えてくれない。データに異常を起こし破壊する技…それを使い結界を破壊したのだ。

ユキダルモン達はとうとう自分達の住む建物まで追い込まれてしまう。このままでは子供達を守りきれない…絶望しそうになったユキダルモンとエレキモン。だがその時、彼は現れた。

 

赤いマフラーをなびかせるヒーロー…ジャスティモンだ。ジャスティモンの登場にユキダルモン達、そして子供達は歓声を上げる。だが、何故か彼らの中からモノドラモンがいなくなっていたのに気がつかなかった。

これで大丈夫、安心だ…そう思っていたのだ、その時までは。

 

 

「ぐあああ!」

「ジャスティモン!」

「卑怯者!二人掛かりで、しかもこの子達を狙うなんて…!」

「オホホホホ!聞こえないわねぇ〜!」

 

ジャスティモンの体が宙に浮き地面へと倒れる。その先にはスカルサタモンとエテモンの姿があった。

ジャスティモンはスカルサタモンと戦おうと駆け出した。しかしそれよりも前に別方向からエテモンが現れ、ユキダルモン達…正確に言えば幼年期デジモン達を狙い出したのだ。それに気付いたジャスティモンはエテモンの攻撃を防御。しかしそれは罠だった。防御しているジャスティモンにスカルサタモンは手に持つ杖で攻撃してきたのだ。その攻撃に対処できず、ジャスティモンはダメージを負う。さらに今度はスカルサタモンが子供達を攻撃し…

先程からそれの繰り返しだった。エレキモンはジャスティモンに駆け寄り、ユキダルモンは目尻に涙を溜めながら叫ぶ。それを見て滑稽なのかエテモンは笑っていた。だがそんな状況でも、ジャスティモンは立ち上がる。

 

「負けるわけには…いかない…」

「ヒャハハハ!!無様だなぁ、見捨てりゃ楽になるのによぉ。ヒーロー続ける為には、そいつら守んなきゃいけねぇなんて辛いねぇ」

「…いいや、違うさ」

「あらん?何が違うのよぅ?」

 

スカルサタモンの下衆な笑いにジャスティモンはキッパリ否定する。そうだ、スカルサタモンの言っている事は違っている。ヒーローを続ける為に、ヒーローになる為に守るんじゃない。むしろ逆だ。

 

「ヒーローは、みんなに呼ばれて初めてヒーローになれるんだ。…みんながオレをヒーローと呼んでくれてるからこそ、オレがオレでいられる。立ち上がって、戦える!だからこそオレは、ジャスティモンで居られるんだ!」

「わけわかんねぇ…もういいわ。死ねよお前」

 

そう言いスカルサタモンは杖から光の玉を作り出す。ネイルボーン…食らえば一撃で命を落としかね無い技。それをジャスティモンに食らわせる気だろう。ジャスティモンは避けようにも側にはエレキモンとユキダルモンが、そして後ろには子供達がいる。万事休すか…ジャスティモンが諦めかけたその時。

 

「そうはさせないよ!」

「ぐおっ!?」

 

スカルサタモンの背後から蒼い影が飛び蹴りを食らわせる。その衝撃でスカルサタモンは前のめりに倒れ、蒼い影はジャスティモンの前に着地。突然の事でエテモンは混乱しヒステリック気味に叫ぶ。

 

「な、何よ!?なんなのよ突然!?」

「彼をやらせはしないよ」

「誰だテメェはよぉ!」

「ボクが、誰かって?」

 

怒り心頭にスカルサタモンの叫びに蒼い影は自らを指差す。そう、それはまるでジャスティモンのような…ヒーローのように。

 

 

「奇遇にも、ボクも彼と同じヒーローさ!」

 

 

蒼い影、カケモンver.アルフォースは自信を込めてそう言う。ユキダルモンとエレキモンはぽかんと、子供達は新しいヒーローの登場に盛り上がる。そんな中でジャスティモンはカケモンに話しかけた。

 

「キミは、まさか…?」

「ジャスティモン、ボクも戦わせてもらうよ。だって、ヒーローは助け合いだからね!」

「…ああ!」

 

ジャスティモンはカケモンの横に立ち、互いの敵に向かって走り出す。カケモンはエテモンに、ジャスティモンはスカルサタモンに拳をぶつける。そして二手に別れて別々の場所で戦いだした。カケモンはアルフォースアローを使った遠距離戦で、ジャスティモンは右腕を巨大な機械的な腕…アクセルアームに変えた近距離戦で戦う。互いの長所を生かした戦い、戦場が交差する度に互いをフォローするその姿はさながらヒーローショーのようだった。それに加え、遠くから幼年期デジモン達の声援も聞こえている。

そんな中、カケモンはエテモンとの戦いを終わらせようと目の前に接近する。

 

「君は退場してもらうかな?」

「え、やだ…イケメン…」

「たぁ!」

「嫌いじゃないわぁぁぁぁぁああああ!!?」

 

急に目の前に来たカケモンにときめいたエテモンだったが、回し蹴りを食らって始まりの街の遥か遠くへ飛ばされてしまう。エテモン自体あまり害があるデジモンでは無い為、そこはジャスティモンに任せよう。そう思った故の判断だった。

カケモンはエテモンのリタイアを確認すると高速でジャスティモンの戦う戦場に飛ぶとスカルサタモンにドロップキックを食らわせる。

 

「ぐぅ!?に、二体一は卑怯だろ!」

「それは…」

「お互い様だよ!」

 

先程までの自分を棚に上げてスカルサタモンはそう言うがカケモンとジャスティモンは問答無用と言わんばかりに同時にアッパーを繰り出す。そして宙に舞うスカルサタモンだが彼は空中で体勢を戻し宙に浮かぶ。それを見たカケモンとジャスティモンは互いに顔を見合わせた。

 

「カケモン!」

「うん!アルフォースアロー!」

 

アルフォースアローをスカルサタモンに飛ばしながら飛び上がるカケモン。だが飛ぶ事が得意なのかスカルサタモンは悠々と避けるとカケモンに向かってくる。このまますれ違う時にネイルボーンを打ち込む気なのだろう。

後十メートル…五メートル…三メートル、互いにぶつかりそうになったその時、カケモンは急に降下する。その事に呆気に取られたスカルサタモンだが、その顔は驚愕に変わった。地上からジャスティモンが勢いをつけて飛び上がりカケモンの元へとたどり着く。そして彼の肩を踏み台の代わりにし更に飛ぶと一回転し踵落としをスカルサタモンに喰らわせたのだ。

突然の事にスカルサタモンは対処できず地面に落下。脳震盪で揺れる頭を揺さぶり膝をつきながらも起きようとする。そして上を見上げる……それがスカルサタモンの最期の光景だった。

 

 

「ジャスティス…」

「アルフォース…」

 

 

「「ダブルキィィィィックッッ!!!」」

「ぐああああああ!?」

 

ジャスティモンとカケモン、二人の必殺技がスカルサタモンに当たる。そしてそのまま反転する二人は地面に着地。何も言わず振り向くと、背後から爆音が響いた。スカルサタモンの最期である。

カケモンはジャスティモンの方を向くと手を差し出した。

 

「ジャスティモン、やったね」

「カケモン、ありがとう」

 

ジャスティモンはカケモンの手を握るとそう言う。もう本格的にヒーローショーみたいになっているが、そう言ってくれる者は誰もいない。このまま素直に終わるか、そう思ったが…

 

「あいたー!?」

「あんな技なかったろうがー!!」

 

助走をつけてワレモンは錐揉みしながら蹴りをカケモンに食らわせる。実はワレモン、というよりタツヤ達は二人が戦い始めてからいたのだが、空気を読んで傍観していたのだ。だが色々突っ込みたいのかワレモンが飛び出し…元に戻ったカケモンにサソリ固めを決めているわけだった。

だがそんな中で、ジャスティモンはカケモンとワレモン、そしていつのまにか来ていたタツヤ達とユキダルモン達、そして幼年期デジモン達に目を向ける。

 

「ありがとう、カケモン。そして皆!君達のお陰で助かったよ」

「「「じゃすてぃもーん!!!」」」

「じゃあ皆、また会う日まで!トォ!」

 

そう言うとジャスティモンは何処かへと飛び立って行った。幼年期デジモン達はまたねー、ありがとー、と大声で見送る。そして声がだんだん収まり出すと、エレキモンの背後から何故か疲れ気味のモノドラモンが現れた。

 

「せ、センパイ…」

「モノドラモン!お前今までどこ行ってたんだよ!?」

「あ、あはは…スカルサタモン来た時に気絶しちゃって…」

「情けねぇなー。お前ジャスティモンいる時絶対いないよな、いつもだけど」

 

今回もジャスティモンすごかったんだぜ、とモノドラモンの背中をバンバン叩くエレキモン。ヘースゴイデスネ、と何故か棒読みで答えるモノドラモンを見て城太郎はタツヤに何か言おうとするが…。

 

「なぁ、あれって…」

「しっ。世の中にはね、知らなくても良いことがあるんだよ」

 

自分の口に指を当てそう言うタツヤ。タツヤだけでなく、街の住民以外の者(カケモン除く)は気付いてしまったのだろう。だが言わぬが花だ。このままでいいのだろう。

何故ならこの街には、ヒーローがいるのだから。

 

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