デジタルモンスター Missing warriors 作:タカトモン
「「「わぁあああああああああああ!!?」」」
「このバカ!大バカ!大バカケモンがぁあああああ!!」
「ごめぇぇぇええええん!!」
森の中、茶色い毛玉の様なデジモンに追いかけられている。タツヤ達はただ真っ直ぐ、その毛玉から逃げていた。その中には見慣れない赤いデジモンが一匹、タツヤ達と同じく森の中を駆け抜けている。
そんな中でワレモンは叫び、カケモンはそれに比例する様な大声で謝る。彼が一体何をしたのか、そしてこの赤いデジモンは誰なのか。
時間は三十分程前まで遡る。
「また来て欲しいんだぞ!その時は今よりもっと立派になってるんだぞ!」
「うん、じゃあまたね!」
ダムから流れ出した大量の水の脅威から夜が明け、朝となった。デジモン達の避難場所でオメカモン達との別れを済まし、タツヤ達は昨晩いたキャンプ地へと進んでいる。多少の眠気がありながらも彼らは歩いていた。
「いやー、それにしても危機一発だったなー」
「はい。でも村が無事でよかったですね」
「でも眠たいよぉ〜」
「我慢しろバカ。オレだって眠いんだよ」
そう言いカケモンとワレモンはふぁ、と欠伸をかく。それを横目にタツヤは苦笑いすると、今この場にいないハックモンの事を思い浮かべる。
結局あの後タツヤ達とは合流しなかったハックモンは一体どうしたのだろうか。ダムの方に行ったのは確かだが、何かあったのだろうか?まさか流されたのでは、そう思ったタツヤは首を振る。そんな事は無いだろう、彼はロイヤルナイツの一員だ。きっとキャンプ地に戻っているはず。
そう思っていたタツヤの答えは的中した。いつのまにかキャンプ地へと戻っていた彼らの目の前にはハックモンとその隣に見慣れないデジモンがそこにいたのだ。
「来たか」
「ハックモン!やっぱり戻ってたんだ。…隣にいるのは、知り合い?」
「ああ。彼は……オレの知人のギルモンというデジモンだ」
そう言って紹介したデジモンに目を向ける。大きさはカケモンやハックモン達よりも大きく、モスドラモンと近い体格をしていた。赤い恐竜の様な見た目、黄色い瞳を持ち唯一白い腹部には四つの三角形が合わさった様な模様がある等と今までに無い特徴をしたデジモンだ。
そんな彼、ギルモンは一歩前へ出るとその見た目とは裏腹にフレンドリーな雰囲気で挨拶をした。
「ボクギルモンだよ〜」
「ギルモンって言うんだ!ボクね、カケモンって言うんだ!ヨロシクね!」
「こっちこそヨロシク〜」
ギルモンの挨拶にカケモンが同じくフレンドリーに返す。波長が合うのだろうか、直ぐに仲良くなれた様だ。そうしていると今一番の疑問に思っている事をミキはハックモンに投げかける。
「……彼はどうしてここに?」
「ああ、ダムの近くに行った時に流されそうになっていた彼と会ってな。助けたついでに連れてきたのだ」
「そうなんだ」
「なんでも、あるデジモンを探す旅に出ているらしくてな。色々と不安だから彼と途中まで旅を共にしたいのだが…いいだろうか?」
「僕は問題ないけど、みんなは?」
「俺もいいぜ!」
「はい、旅は賑やかだと楽しいですから」
「うん」
タツヤ達の許可が出たことにより、ハックモンはありがとうと頭を下げる。ハックモンの知り合いであれば問題はないだろう。現にカケモンとも打ち解けられたし、ワレモンも満更でもなさそうだ。
ハックモンの話を聞いた後、彼は出発しようと言う。どうやらタツヤ達が来る前に荷物を纏めていたらしい。タツヤはハックモンに感謝するとあることに気付いた。カケモンとワレモン、ギルモンがどこにも居ないのだ。さっきの会話の途中から静かだったので気付かなかったが一体どこに…。
そう思っていると、森の奥から複数の…それもドスドスと怒りを込めた様な音が近付いてくる。タツヤ達は何か嫌な予感がしながらも、森の奥を見つめ、
「「「逃げろおおおおおおおお!!!」」」
冒頭へと至る。
タツヤ達はひたすら前へと走り続ける。追いかけてくるデジモンにはなぜかタンコブが付いていた。
後からわかるのだが、カケモンはギルモンという新しい友達が出来たことによってはしゃぎすぎ、木の根に足を取られ転倒。森の奥まで転がって行った結果、寝ていたデジモンの一体に激突し起こしてしまったのだ。タンコブはその時のものだろう。
息も切れ切れのタツヤ達。もうだめだ、追いつかれる…そう思っていた矢先だった。
「右に飛び込め!」
ハックモンがそう言い、全員反射的に右へと飛ぶ。飛び込んだ先は洞窟だった。周りは石で構成されている。そうしていると今まで追いかけてきたデジモン…ジャングルモジャモンはキョロキョロと周りを見た後、どこかへと去って行った。
「……行った?」
「ああ、その様だな」
「怒ってたね〜」
「こ、怖かったぁ…」
「お前のせいだろバカちんが!」
「いったぁ!?」
ワレモンに叩かれるカケモンに周りは苦笑いする。事故とはいえこのやり取りはもう慣れていた。慣れていいのか悪いのか、そう思っているとミキはふと少し奥の洞窟の壁を見つめた。そして何かに導かれる様にその場所に進む。
そうしていると彼女の行動が気になったのか、タツヤ達は彼女の周りへと集まった。
「どうしたの、ミキ?」
「これ…」
指差した部分を見つめるタツヤ達。見ると特に変わった所は無かったが…ただ一点だけ、不自然に盛り上がっている場所があった。まるで何かのスイッチの様な…。
「ほい」
「「「あ」」」
緊張した雰囲気の中、城太郎は迷わず盛り上がっている部分を押した。ガコン、とその盛り上がりはへこみ、何かが動く音が鳴り響く。
そしてそれを起こした張本人は、なぜかドヤ顔していた。
「ねぇ、何してるの城太郎?馬鹿なの?馬鹿だよね。この馬鹿」
「いだだだだ!?こんなの押す一択だろ!?誰だってそーする!俺だってそーするぅぅ!?」
彼の顔にイラついたのか、タツヤは城太郎の顔面を掴み力を入れる。正直何を言っているのかわからないが城太郎は言い訳している様だ。
そんな事をしていると壁の盛り上がりの直ぐ横がスライドする。明らかに誰かが手を加えた痕跡があったその場所はまるで扉の様だ。
「どうする?このまま進む?それとも…」
「進もう。この辺りにこんな施設があると聞いたことが無い。調べる必要がある」
「その前に離してくんねぇ!?」
「………」
ハックモンを先頭にタツヤ達は入っていく。通路と思われる場所の横の幅はそこまでなく、人一人分程しか無かったが、中学生である彼らにとっては苦ではない。
歩いて十数秒、通路から出たタツヤ達は少し広めの場所へと出た。そして驚くべき事に、目の前にあったのは機械的な扉だった。だがそんな扉は無残にも破壊されていた。辛うじて原形がわかる程度のそれは焼かれた跡がある。
「火事の跡…でしょうか?」
「いや、この形跡と破壊跡から推測するに戦闘があったのだろう」
アサヒの疑問に答える者がいた。一体誰が、とアサヒは振り返る。タツヤに城太郎、カケモンにワレモンも同じ気持ちなのか同じく振り返ると、そこにいたのはハックモンではなくギルモンだった。最初と雰囲気が違うギルモンにタツヤ達が唖然となる中、ギルモンは前へと進み扉を見る。
「扉が外側から破壊されている所から襲撃犯と扉の中に居た者の最低二名が居たことが推測できよう」
「ぎ、ギルモン?」
「そしてここを攻撃することに躊躇いがないとなると、襲撃犯の狙いはここに居た者を狙ったか、もしくはここにあった何かを手に入れた後に証拠隠滅のために燃やしたか…」
「「「………」」」
「…ってハックモンは言いたいんだよね?」
「あ、ああ、その通りだ」
一気に雰囲気が戻り、ハックモンへと顔を向けるギルモン。ハックモンは少し顔を引攣らせながらも頷いた。そうだったんだ、と城太郎とカケモンは何故か納得していたが、他の四人はギルモンに疑問の眼差しを向ける。
だがそうしている間にもハックモンは中を調べようと彼は中へと入って行った。それに続く様にギルモンに城太郎、カケモンも入って行く。タツヤ達も続いて行った。
中に入ったタツヤ達は息を飲んでいた。建物の中はほぼ全てが焦げており、何があったのかまるでわからない。原型があるのは何かを置いてあったテーブルや椅子など。それ以外は全て黒くなっていた。さらに照明などが見つからず、タツヤ達がデジタルワールドへと来るときに持ってきた懐中電灯を付け、中を見回す。
わかったことは奥の部屋へと続く道と横にある別の部屋が別れている事だ。この建物の中にデジモンの気配は無く、二手に分かれる事となった。いざという時に戦える者が居る様にタツヤと城太郎、カケモンにワレモンの組とアサヒとミキ、ギルモンにハックモンという組が出来上がった。
そしてタツヤの組は横の部屋に、アサヒの組は奥の部屋へと進んでいく。
横の部屋へと進んだタツヤ達が目にしたのは、何かが大量に置いてある場所へと来た。幸いな事に先程の部屋とは違い、焼却された場所は殆ど無い。タツヤと城太郎は持っている懐中電灯で周りを照らすと、そこには小さなカプセルの様なものが無数に置いてある棚と、大きなカプセルが二つ部屋にある事がわかった。
カプセルの前にはパソコンと何枚かの資料が置いてある。城太郎は棚にあるカプセルに興味があるようで見向きもしなかったが、タツヤはそのパソコンと資料を回収した。
そしてそんな中、部屋の中を見回していたワレモンは扉の前に立つカケモンが棒立ちなのに気付く。
「?おい、どしたカケモン。ぼーっと突っ立てよ」
「…え?」
「え?じゃねぇよ。バカみたいに突っ立ってよ。熱でもあんのか?」
「熱は無いけどワレモンがボクに優しくてびっくりしてる」
「んだとこのヤロウ!」
「いひゃいよぉ〜!」
失言をしたカケモンの頬をワレモンは真横に引っ張る。痛い痛いと言いながらもカケモンはこの胸にある不思議な感覚に疑問を抱いていた。初めてくる場所、初めて見る物、なのに何故か、彼の心に心地よさがある。タツヤの部屋にあるベットの様な、でもそれとは違うようなそんな感覚が。
一方、アサヒの組は奥の部屋に入っていた。アサヒとミキの持つ懐中電灯で辺りを見回すと先程の部屋ほどでは無いが焼かれた跡が気になる。
ここにあったのはデスクと簡易的なベット、そして意図がよくわからない機械が複数あった。ハックモンとギルモンは迷わず奥へ進み、機械やあたりにある物を調べ始める。
そんな中で、アサヒは内心怖がっていた。それもそのはず、今いるこの場所はよくテレビや映画でよく出てくる廃墟に似ているのだ。昔から兄がよくそう言ったものを見せて来た事もあり、彼女はすっかり萎縮してしまっている。
「沢渡 アサヒ。腕」
「は、はい?…あっ、す、すみません、才羽さん」
「気を付ければいい」
ミキに指摘され、アサヒは無意識にミキの服の袖を掴んでいたことに気付く。それを謝るとミキはいつもと同じ無表情で答えた。
だがこの時に見たミキの顔にアサヒは疑問を覚えたのだ。何処と無く落ち着きがないような、そんな風に思えた。
「………ッ!?」
それを知らないミキはふとハックモンが調べている何かの機械を見る。
…同時に頭痛がし、思わず目を瞑り再び開くと、自分達四人以外居なかった筈の部屋にある一人の男が現れた。紫の髪をした人間の大人…白衣を着ているその彼にミキは見覚えがある。いや、それは眠るたびに何度も見てきた人物。
彼は今ハックモンがいる機械の前で楽しそうに話すとデスクに向かって歩き出す。目で追いかけると彼はデスクに座り何かを本に書き出した。ミキは彼の背後に周りその様子を伺おうとしたが、彼は書いてあったその本を閉じてデスクの下にしまってしまう。そして彼は立ち上がると、彼は自分達が入ってきた方へ歩き扉を開く。
その時ミキは見てしまった。扉の奥に燃え盛る炎、その先に居る悪魔…いや、魔王の影を。
そしてその先に歩き出す、彼の姿を。
息が乱れる、汗が吹き出す、鼓動が早くなる。
手が伸びる、あの時伸ばさなかった、伸ばせなかった手をひたすら彼の元へ。
無意識に足が前へと進む。
いやだ、行かないで、置いて行かないで…!
–––––––ごめんね
「博士…!」
思わず口から零れ落ちる言葉。意識は暗転し、近くにいたアサヒの自分を呼ぶ声が聞こえる。それを最後に、才羽 ミキは意識を手放した。
「…ん。さ…ばさん。才羽さん!」
「ぁ…?」
重い瞼を開けると、目の前にアサヒがいた。どうやら自分は気を失っていたらしい。部屋にあるとベットに横になっているのがわかる。そして彼女の背後にはハックモンやギルモン、別の部屋にいたタツヤ達も心配そうにミキを見ていた。どうやら気を失ってそれなりに時間が過ぎたらしい。ぼやける頭でそう考え、上半身を起こすと突然アサヒが自分に抱きついてきた。
「よかったです…!急に倒れちゃって、心配したんですよ!」
「ボクもタツヤもみんなも心配してたんだよ!」
「あ、その…ごめんなさい」
小刻みに震えるアサヒ、声は涙声でよほど心配させたのだろう。カケモンもアサヒにつられたのか目の端に涙が溜まっていた。それに罪悪感を覚え謝罪するが、そこにタツヤが近づく。
「そういう時は、ありがとうでいいんだよ」
「あ、ありがとう…?」
「そう。それで大丈夫。…所でミキはどうして気を失ったの?まさか、デジモン?」
優しい顔をしていたタツヤは気を引き締めてミキに問う。もしそうなら今もこの中に潜んでいるのだろう、そう思ってのことだ。だがミキは首を左右に振る。そしてそのまま黙り込んでしまった。
それを見かねたハックモンはタツヤ達に別の部屋で何があったのか尋ねた。今の気不味い雰囲気を変えようと空気を読んだのだ。
「僕達が見つけたのはこのパソコンと何枚かの資料に…」
「この埃被ったカプセルだな。何個かあるぜ」
デスクの上に別の部屋から持ってきた物を置くタツヤと城太郎。ハックモンはその内、カプセルの一つを取ると埃を払う。するとカプセルの真ん中に輝くバーコードのような物が浮かんでいる事に気付いた。
「これはデジコードだな」
「デジコード?なんだそりゃ?」
「デジモンの体内にある情報を視覚化したものだ。世代、タイプ、属性等と言ったものがこれに詰まっている」
「へぇ、遺伝子みたいなものなんだ」
「ごく稀に転生前の情報もあると言われているが…これだけの大きさのデジコードで出来る事があるのか?いや、それ以前に誰がこんな物を…?」
「それに加え、デジコードを視覚化するには生半可な技術力では不可能だ。これが出来る者は相当の頭脳の持ち主なのだろう……ってハックモンが前に教えてくれたんだ〜」
またもや雰囲気の変わったギルモンは最後に元の雰囲気に戻るとそう付け加える。ハックモンは引きつった顔をすると、咳払いをした。そしてそのまま振り返り奥にある装置に向かう。そしてその装置の上にあったあるものを手に取った。
「パソコンと資料は後で調べよう。次はこの部屋で見つかったものを見せよう。…これだ」
「…本?この本がどうかしたのか?」
そう、本だった。それもタイトルからコンピューター関連の本だと言うのが分かる。それが一体どうしたのか?ワレモンは首を捻った。
「…これはニホンゴで書かれている」
「ああ、俺だって分かるけどよ。だからなんなんだよ?」
「デジタルワールドにはニホンゴで書かれた本は存在しない。デジモンが扱う文字はデジ文字と言う文字のみだ。つまり、ここにいたのは…」
「…!人間、それも日本人!?」
城太郎の疑問に答えたハックモンの言葉からタツヤは思わず驚いた。それに釣られてカケモンやワレモン達も驚く中、ハックモンはゆっくりと頷く。
「これだけではない。確認したところ、この本があった装置のすぐ横に本棚が収納されていた。そこにあった本もニホンゴ、もしくは現実世界の他の国の言語で書かれていた。その中で主に多かったのはニホンゴだ。…それに、向こうの部屋にあった資料もニホンゴじゃないのか?」
「言われてみれば…」
今まで違和感が無かったが、確かにそうだ。この世界はタツヤ達からすれば異世界、だというのにカケモン達デジモンは自分達と同じ言葉を喋っていた事から無意識に文字も同じなのだと思い込んでいたのだろう。ハックモンに言われるまで気付かなかった。
ハックモンは腕を組みしかし、と唸る。まだ何かあるのだろうか?
「これが置いてあった装置が何の為に作られたのかわからない。小型のカメラとアーム、それにスピーカー…ロボットでも作っていたのか?」
「………違う」
「何?」
ハックモンの思考に入ってくる者がいた。それは目が覚めてからこの会話に参加していなかった、ミキだ。ミキはベットから起き上がるとハックモンのすぐそばにある装置の元へ歩き出した。そして目の前に立つと、タツヤ達の見た事の無い表情を浮かべる。
それは、懐かしさだった。
「ミキ…?」
「才羽さん?」
「…これが何かわかるのか?」
「これは…ただ本を読んで博士と会話する為の体(モノ)。そう、それだけの為に作られた…私の前の体。生まれた時からあの日まで博士と一緒に過ごしていた私自身、私の過去」
「君自身、だと?」
ハックモンの問いにミキは黙って頷いた。そしてタツヤ達の方を振り返ると、ミキの体…正確には衣服が光り出した。衣服は0と1で分解され形を変えると光は収まっていく。するとどうだろうか…目の前のミキの服装に変化が起きていた。今まで動きやすそうにしていた彼女の格好が、タツヤ達の通う学校の制服に変わっていたのだ。
そのことにタツヤ達は目を丸くする。そんな中、タツヤはある出来事がふと頭をよぎった。それはショッピングモールでミキと会った時の事だ。彼女は制服からわずか数秒で私服に着替えた。先ほどまで着ていた、制服も持たずに。
「これ、もしかしてあの時の…」
「…これは私の力の一つ。物質のデータ化と再構築。これは一定の質量までしか出来ないけど、衣服くらいなら問題はない」
そう言ってミキの服装は光るとすぐに変わる。デジタルワールドでいつも着ている格好に戻ると彼女は目を伏せた。
心なしか、彼女の唇は震えているように見えた。
「思い出した。私が何者、いいえ、なんなのか。その全てをここは思い出させてくれた」
「私は、デジモンの構成物質を人間と同じように作り変えた肉体に人工知能を移植した存在。それが私の正体」
「そしてここは才羽研究所。私を作った才羽 ユキオ博士の研究所であり、私が生まれた場所。そして、博士が死んだ場所でもある」
「これがこの研究所と私の真実。私は人間じゃない。人間の姿をした…人間とデジモンのハイブリット…そういうべき存在」
言葉を失った。彼女の言う内容、この研究所の事でもあり、才羽 ミキと言う少女の真実にだ。そんな中でタツヤ、それにアサヒに城太郎は思い出していた。デジタルワールドにくる前の休日に彼女が言っていた“伝えなくてはならない事”。それがこの事なのだろう。
だが彼女の言動から、全てを思い出したのはここに来てからだと言う。ハックモンとギルモンは目を合わせると、ハックモンが口を開く。
「それは事実か?」
「間違いない。私は才羽博士に作られた人工知能」
「体も、才羽 ユキオと言う人間が作ったのか?」
「そう、博士が研究の副産物で作り上げたと言っていた。デジコードを調べる内に、人間の遺伝子…ヒトゲノムと共通点を見つけて、私の為に作ってくれた。私が、この研究所の外を…世界を見れるように。でも…」
「それは叶わなかった」
そう言う彼女は顔をほんの少し歪ませる。悲しさか、それとも悔しさか…普段よりも彼女は感情的になっていた。
するとミキは壁の方に寄り手を翳す。するとそれに反応して壁に仕掛けられた仕掛けが動き出した。壁が変形し、その奥にあったものがミキの目の前に出てくる。
出てきたものは全部で4つ。全て同じ形状をしているそれは驚くべき事にタツヤ達の見慣れたものだった。
「スマートフォン…ですか?」
「いや、これは…デジヴァイス!?」
「これは博士が作りかけていたもの。タツヤと“A”が持つものとは違って未完成品。プロトデジヴァイスとも言うべきもの」
「博士はデジヴァイスの研究をしていたと言うことか?」
「それは違う。博士は向こうの研究室で何かの研究をしていたけど…これは違う。これは、二つの世界を繋ぐ物だと言っていた」
その事にハックモンとギルモンは眉間に皺を寄せた。
どう言う事だ、これが博士の研究でないなら何をしていたのだ…?デジヴァイスはカケモンとモスドラモンだけとは言え、デジモンを進化とは違う変化、強化させるアイテムだ。それだけでも十分規格外なものと言える。しかしそれとは別の研究をしていたのなら、それは一体…?
そう思っていたのだが、ハックモンは途中で思考を切り替える。後ろに控えるタツヤ達と、そしてミキ自身に問いたい事を言い出す。
「君に聞きたい事はまだあるが、これだけは聞かせて欲しい。君は…これから先、どうしたい?」
自分の事を思い出し、生まれた場所を思い出し、生みの親の思いも思い出した彼女は一体どうするつもりなのか。再びバルバモンの元へと戻る可能性はないとは言え、彼女の意思を確認しておきたい。
ミキはハックモンに問われ、色々と考えていた。今の自分はどうすればいいのか、才羽博士の研究を継げばいいのか、彼の仇を討てばいいのか…。
いや、そうじゃない。その二つは二の次だろう。才羽博士なら、彼の残した願いならば。
「……私は、タツヤ達の友達でありたい。それが博士の願いの一つでもあり、私の願い」
自分の未来が、美しく希望で満ち溢れたものであるように…その込められた願いと自分の心に従えば、この回答が一番なのだろう。
ミキは正直不安だったのだ。この事が、自分が人間でもデジモンでもない存在だと知られてしまう事が。自分に友達になって欲しいと言ってくれた彼らを騙していたようで、胸が苦しくなる…これが感情なのだろう。胸が苦しくなるのも、透き通ったように清々しくなるのも、感情であると今のミキなら理解できる。
だからこそ、怖かったのだろう。
彼らに、彼に拒絶される事が。
「…うん、じゃあこれからもよろしくね」
答えたのはタツヤだった。驚きはしたものの、ミキの話を聞いていたタツヤはそう答えた。その事に目を丸くするミキ。自分の想像とは違う、考えていたものとは全く別の反応に唖然としていた。さらに驚くべき事に、アサヒと城太郎も考えていた表情と違っている。カケモンとワレモンに関しては頭をひねっていた。
「…それだけ?私は、人間でもデジモンでもない、半端な存在なのに」
「そう言われてもよ、少なくとも見た目は人間じゃねぇか。それで人間じゃ無いって言われても実感湧かねぇし」
「才羽さんは深く考えすぎだと思うんです。もっと自由に考えて良いんですよっ」
「?ミキはミキなんだよね?」
「難しい事は知らん」
城太郎は単純に、アサヒは拳に力を込めて力説。カケモンに関しては先ほどの説明ではわからなかったらしい。そしてワレモンは腕を組んで踏ん反り返っていた。そう、誰もミキに対して態度が変わっていなかったのだ。動揺は確かにしていた、だがそれがどうしたと言うのだろう。既にタツヤ達はデジモンと言う存在を、カケモン達は人間と言う存在を認知し、共存している。今更そう言われても、そう言うものだと納得せざるを得ないのだ。事実を知ったとして、ミキがどうするわけでもなく、今までのようでありたいと言うならばそれで良いのではないだろうか。
城太郎達の反応に困っていると、タツヤはミキにそっと語りかける。それはまるで、自分に接していた時の才羽博士の様に見えた。
「こうやって僕達と友達になってくれたミキがいる。それでいいんじゃ無いかな?君は君だから、ミキだからいいんだと思う。そこに人間もデジモンも関係ないよ」
言われるのと同時に肩の力が抜ける。安堵の息が溢れるとミキはその場に力なく座り込んだ。タツヤ達は急な彼女の行動に驚くが、ミキは大丈夫と手で制す。
安心し、同時に嬉しかったのだ。彼に、タツヤに拒絶されたらどうしようかと、もう前の様に接してくれなかったらどうしようかと、そればかり考えていた。だからこそ彼女は力が抜けてしまったのだ。その代わりに、胸に暖かなものを灯しながら。
タツヤとアサヒはミキに近づき彼女を立たせる。後はここを出て博士がなんの研究をしていたか資料を調べよう。
そう思った矢先だった。
壁から出て来たデジヴァイスの内の一つから淡い光が出る。画面から出た光…それはタツヤの持つデジヴァイスと同じ、いやそれよりも“A”の持つものから放たれるものに似ていた。底知れない何かを感じタツヤ達はデジヴァイスに目を向ける。
そして、光が部屋に放たれた。
いやぁミキの真実と言ってもバレバレでしたかね笑笑
とりあえずミキの記憶はあやふやで自分が何かしら違うということは理解していてそれをタツヤ達に言おうとしたけど離れていくかもしれないと思ってあえて言わなかったという感じです
今伝えたのは全てを思い出しここの話が何かにつながっていくと思ったからです
今までもこれからもみんなの関係は変わっていかないと思います
皆様に楽しんでいただからだけで幸いです
それではタカトモンでした!