デジタルモンスター Missing warriors   作:タカトモン

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一週間ぶりです
タカトモンです!
今回から新しいカケモンが出てきます
これからもたくさん書いていきますのでよろしくお願いします


五話 《戦士の槍》

暗く、足元が見えにくくなる時間で、タツヤは息苦しくなっても走り続けていた。その後ろを追いかけるのはミキ。二人、正確にはタツヤの向かっている先は自宅だった。つい数十分前の戦闘で傷ついたカケモンの怪我を治すには普通の病院では駄目だ、ならば自宅にある救急箱で治療すればいい。

その考えに至ったタツヤは自宅の扉を開ける。その音に気付いてやってきた祖父の源光だったが、タツヤは源光の横を通り過ぎリビングのソファへと向かう。

 

「カケモン、カケモン!」

「落ち着けタツヤ、よく見ろ!」

カケモンをデジヴァイスの中から出そうとするが、その前にワレモンが先に出てきてタツヤの腕を掴む。何を、と一瞬大声をあげそうになるが、その前にデジヴァイスの画面を見た。そして目を見開く。そこに映っていたのは傷だらけのカケモン…だが違っていたのは先程よりも傷が少ない事だ。

 

「傷が…」

「ああ、治りかかってる。多分コレにはそう言う効果があるんだろうよ」

 

ワレモンは冷静に、いやそうあれと自分に言い聞かせるような態度を取る。内心タツヤと同く、もしくはそれ以上に焦っていたのかもしれない。その事に気がつく位には既にタツヤの頭は冷えていた。同時に緊張が解けたのかソファに力無く座り込む。そして、一連の出来事を見ていた源光はいつもは寄せない眉間に筋を作りながらも口を開いた。

 

「カケモン君の事はこのままそっとしておこう。…タツヤ、一体何があったんだい?」

「それが…」

 

タツヤは一連の事を話した。“A”と名乗る男のデジモンのとの戦闘の事を聞く源光。そして話し終えると、源光は一息ついた。

 

「なるほどのぉ…」

「なんでデジヴァイスを持ってたのか、デジモンといたのか、僕達と戦ったのか…わからない事が多すぎるんだ」

「むぅ……。ところで、そこのお嬢さんはどちらさんかな?」

 

源光は玄関先からリビングへといつのまにか移動していたミキに目を向けそう言う。そういえば一緒に来ていたんだ、と今更ながらに思い出し一言謝ると源光に彼女を紹介しだした。

 

「えっと、彼女は才羽 ミキさん。先週学校に転校してきたんだ」

「ほうほう。ああ、挨拶が遅れたの。私は浪川 源光、タツヤの祖父じゃよ」

「…よろしくお願いします」

 

こちらこそ、と返した源光はふと時計を見る。時間はすでに中学生が出歩くには厳しい時間だ。それにつられてタツヤも時計を見ると彼女に問いかける。

 

「そういえば遅い時間だけど帰らなくていいの?」

「そうじゃな。それとも夕飯を食べて行くかい?その後にお家に送ろう」

「大丈夫、一人で帰れる…」

 

そう言ったミキは玄関へと歩き出す。それを見かけてタツヤは途中まで見送るよと一緒に外へ出る。それから十分程経つと、ミキはここでいいとタツヤに言った。

 

「じゃあね、才羽さん」

「浪川 タツヤ」

「?どうしたの?」

「……やっぱりなんでもない」

 

そう言った彼女の顔はいつも通りで、でも少し感情が揺らいでるように見えた。それはタツヤにも、ましてや今の彼女にも分からない感情。タツヤはミキの遠くなる背中を暫く眺めて見えなくなると、振り向き家へと帰って行った。

 

目覚ましがいつもの時間に鳴り響く。いつもと違うのはタツヤが大きく欠伸をした事だ。カケモンの事が気になり、いつもより夜更かししたタツヤはデジヴァイスを覗く。ワレモンが気を使ってかベットで寝ているため中にいるのはカケモン一人。穏やかな寝息を立てるカケモンに少し安心していると、強制的にデジヴァイスからカケモンが出てきて、その目を開けた。

 

「ふぁ…おはよ〜」

「カケモ」

「おはよ、じゃねぇぞボケが!!」

「いったぁ!?」

 

実はタツヤが起きる少し前から狸寝入りしていたワレモンがカケモンの兜を叩く。心なしか手加減しているのだろうが、やはりいつも通り痛そうだった。タツヤはワレモンを羽交い締めにしながらも声をかける。

 

「カケモン怪我は?痛まない?あ、ワレモンにやられた所は別で」

「う、うん…。大丈夫。痛いのはいつもだし」

「もっかいやってやろうか、ああん?」

「ごめんなさぃいいいいい!?」

 

ガルルルと威嚇するワレモンに怯えるカケモン。ああ、もう大丈夫だとタツヤはワレモンを下ろす。

 

「今日は家でゆっくりしよう?また昨日の人達に会ったら大変だし」

「…!」

「だな。また喧嘩吹っ掛けられたら面倒だぜ」

 

タツヤの一言で肩をビクリと揺らすカケモン。それは恐怖か、それとも別の何かか。ワレモンは部屋を出てリビングへ向かう。今日の朝食を確認しに行ったのだろう。

すると、カケモンが話しかけた。

 

「タツヤ…」

「どうしたの、カケモン?」

「ボク、負けちゃった…。アイツらミキを虐めようとしたのに…」

「…それを言うなら僕達だよ。僕だって、君の足を引っ張るだけだった。モスドラモンの言う通りだったよ」

「そんな事ないよ!あれは…」

「だからカケモン」

 

肩に手をかけるタツヤ、それはいつの日かと同じ光景だった。目尻に涙を溜めたカケモンに言い聞かせるように喋り出す。

 

「少しずつでいい。僕達で強くなろう。少しずつでいいから、前に進もう」

「…うん」

 

ゴシゴシと目を擦り返事をするカケモン。そうだ、これで終わりじゃない。今は弱くても、一人じゃ無理でも二人なら。いつかきっと乗り越えて見せる。そう思った二人は互いに笑い合った。

 

「おーい、いい話はいいけどジイさんが飯だとよー」

「今行くよ。行こう、カケモン」

「うん!」

 

ワレモンに呼ばれ部屋を出るタツヤとカケモン。先程までの暗い雰囲気はすでに無く、いつもの光景に戻っていた。

そして、そんな彼らを見る赤い影が一つ…。

 

 

日曜日は源光の趣味のオセロや家庭菜園をしながら過ごし、あっという間に翌日。タツヤは教室へ入ると自分の席へと座る。

その際、変わらず座っているミキにも挨拶をした。

 

「おはよう、才羽さん」

「…おはよう」

 

心なしかいつもより声が小さい気がしたが、何も言わないタツヤ。土曜日の出来事を気にかけてるのではないか、そう思ったのだ。

そして自分もカバンの中身を広げようとした時、パタパタと教室の戸からアサヒがタツヤの所へ早足でやってきた。

 

「な、浪川君!」

「さ、沢渡さん、おはよう…。どうしたの?」

「昨日のショッピングモール近くの運動場で騒ぎがあったって…もしかして」

「…うん、そうだよ。詳しい事は後でね」

 

その事で大体の事を察したのか、アサヒはコクコクと頷くとタツヤの後ろの席へ座る。隠す必要も無いし逆に気をつけるように言わないとアサヒが危険だ。そう行った趣でタツヤは再びカバンを広げた。

時間は飛び放課後。昼は互いに用事があって忙しかったのか昼食も別々に済ませて結局は話せなかったのだ。だが今の時間なら問題はない。タツヤは教室から下駄箱までの道で土曜日の一件を伝えていた。

 

「そうだったんですか、カケちゃんが…」

「うん、一体何者だったんだろう」

「…私、提案があるんですっ!」

 

意を決したように急に大声を上げるアサヒ。一瞬驚くタツヤにアサヒはズイズイと顔を近づける。その時前髪から透き通るような緑色の目が印象に残った。

 

「浪川君、今度の土曜日暇ですか?」

「え、あ、うん。大体暇だけど…」

「わかりました、じゃあその日の十時に○○駅に来てくださいっ!」

「う、うん………あの、沢渡さん、近い…」

「ふぇ…?」

 

言われてアサヒは気付く。今の彼女は一歩前に出ればタツヤに触れられる程近かった。キョトン、とタツヤを見上げるアサヒはみるみるうちに自分の髪よりも顔を赤くさせ後ろに大きく下がった。

 

「あわわわわわわわわわ…!!!」

「さ、沢渡さん!?」

 

バタバタウロウロと忙しなく動くアサヒの行動にタツヤは困っていた。先程近づいた時もそうだったのだが、周りから他の生徒がヒソヒソと話し合っているからだ。中にはいつぞやの同級生が下唇を噛み締めていたがあえて放っておく。タツヤはなんとかアサヒを落ち着かせると目的地である下駄箱に到着する。ちなみにだが、まだアサヒの顔はほんのり赤かった。

 

「じゃ、じゃあ土曜日に…」

「うん。………あれ?」

 

下駄箱を開くと封筒が一通、外履きの上に置いてあった。差出人は書いていないが、おそらく自分の宛名のだろう。タツヤはともかく、側に立つアサヒはその封筒を見るとついさっきのように顔を赤く、逆に青くと点滅を繰り返していた。

 

「も、もしかしてそれ、ら、ラブレ…ラブレター…!」

「…ううん、違うよ」

 

彼女の言葉を否定したタツヤはいつに間にか封を切って中身を見ていた。その表情は真剣そのもの、その事に気付くとアサヒはタツヤの持つ手紙を覗き込む。そこには…。

 

 

“今日の放課後、お前の連れているデジモンと共に地図にある場所に来て欲しい”

 

 

 

学校から十五分程歩いた場所。ここは数年前に営業されていた自動車工場、現在は廃工場となっている場所だ。あちらこちらに錆びついたタイヤや金属が転がっている中で、タツヤ達は指定された場所に来ていた。

 

「ここ、だよね」

「はい…間違い無いと思います」

 

手紙に同封されていた地図を見て頷く。途中、アサヒに帰るように言ったタツヤだったが彼女は拒否。タツヤは断れきれない性格を恨みながらも彼女と同行しているのだ。タツヤは指定された工場の扉を開く。開けにくいと一瞬思ったのだが意外と直ぐに開いた所を見ると、誰かが今もここを利用している事がわかった。

 

 

「––––待っていたぞ」

 

 

暗闇の奥で誰かが口を開いた。そして足音を立てこちらへと歩いてくる。一歩、また一歩近付く度に日の光を浴びてその正体が露わになった。

…一言で表せば白い体をした小さなドラゴン、いや、デジモンだ。フードにゴーグルのついた赤い外套を身に纏い、タツヤ達の前に現れたそのドラゴンは今までのどのデジモンとも雰囲気が違っていた

 

 

「君は…?」

「オレはハックモン。見ての通りのただのデジモンだ」

 

ハックモンと名乗ったデジモンは手頃なドラム缶の上に座り、座るといい、とタツヤ達に話しかける。だがタツヤは戸惑っていた。今までのデジモンは野生的で話の通じる者が居ない場合と明確な敵意を持つ者と別れていたからだ。

 

「安心してほしい、オレはお前達の敵では無い」

「…君がこの手紙を?」

「そうだ。お前の連れているデジモンとお前の持つあるものについて聞きたい」

 

そう言われてタツヤはデジヴァイスからカケモンとワレモンを呼び出す。出てきた二人は土曜の一件のせいで疑心暗鬼と言った顔と態度を取っている。

それを見かねてか、タツヤは二人の前に立ち話しかけた。

「その前に、君はいつ僕達の事を知ったの?」

「二日前の運動場でだ」

 

その事にタツヤ達は反応する。ハックモン曰く、自分が駆けつけた頃には全て終わっており、“A”と名乗る男とモスドラモンを追いかけたが追跡は失敗したと言う。

そして昨日の時点でタツヤ達の居所を調べ尾行、学校の下駄箱に手紙を置いたらしい。その事を説明すると、ハックモンは一言すまない、と頭を下げ謝罪した。

 

「あの場に関しては謝罪する。オレがもっと早く来れていれば加勢できたのだが…」

「おいおい、その言い方だとまるで自分が強いみたいな言い方じゃねぇか」

「腕には自信がある。が、今は全力は出せないがな」

 

ここへ来て初めて口を開いたワレモンの問いに答える。その顔は複雑そうに歪められていたが直ぐに元へ戻った。

 

「話を戻そう。はじめに言った通りオレは彼らとお前の持つそれについて知りたい」

「カケモン達と、デジヴァイスの事?」

「デジヴァイス、か。なるほど…。それをどこで手に入れた?それに彼らとはどこで出会った?それに…」

「あ゛ー!!お前ウルセェんだよ、もっと簡潔にしろ!それにオレらもお前に聞きてぇ事があんだよ!」

 

ハックモンの質問責めにワレモンが怒り出す。確かにハックモンの問い詰め方に少し鬼気迫る所があったようで余裕の無い雰囲気があるように思えた。ハックモンは少し息を吐くと頭に手を置く。まるで反省しているようにも思えた。

 

「…すまない、少し焦り過ぎたようだ。なにせこうやって誰かとまともに会話するのは半年ぶりだからな」

「半年…って待ってください!そんなに前から現実世界にいたんですか!?」

「それにだ。お前ホントは何もんだ?雰囲気でわかるぜ、お前ただのデジモンじゃねぇだろ」

「それは…」

 

 

 

「たのもぉー!!」

 

 

 

答えようとした矢先、外から野太い声が響き渡る。今までの雰囲気を壊すような出来事に中に居たタツヤ達は外へ出た。そこに居たのは赤い鎧を身に纏い、腰に刀を下げた男の姿。いや、正確にはデジモンだろう。背丈は人間を優に超えているのがその証拠だ。一見人間に見えた事でアサヒが声を漏らす。

 

「お侍さん…?」

「セッシャの名はムシャモン!風の噂でこの場に強者がいると聞いた!願わくばセッシャと勝負して頂きたい!」

 

ムシャモンと名乗ったデジモンはそう言うと仁王立ちでタツヤ達を見据える。おそらく彼の言う強者を見極めているのだろう。その間にタツヤは《ANALYZER》を起動させムシャモンを調べ、その詳細を確認した。

 

「ムシャモン、成熟期。魔人型のウィルス種。世代は今までの敵と同じだね」

「なっ、そのような機能もあるのか!?」

「わっ、ちょっと!」

 

デジヴァイスの機能に驚いたハックモンは反射的にデジヴァイスに触ろうとする。当然タツヤは驚き、ハックモンはその隙にデジヴァイスに触れた。

…その瞬間、ハックモンはほんの少しの痺れを感じる。まるで、体の一部が欠けたように。

 

「なんだ…?」

「ム、待たれい!そこの白き竜!貴殿はもしや…」

「誰かと勘違いしているようだがオレはただのデジモンだ。どこにでもいる、な」

 

そう言うとハックモンはバツが悪そうにフードを被る。何かまずい事があったのか、ポーカーフェイスで感情が読み取れない様にするハックモンだが、ムシャモンは確信した様に続けた。

 

「いや、聞いた事がある。成長期の頃から師より鍛えられ、かの有名なロイヤルナイツとなったデジモンがいると。その名は…ハックモン!そしてその進化した究極体の姿の名を…ジエスモン!!」

「ロイヤルナイツ?」

「ロイヤルナイツ!?」

「「???」」

 

聞き慣れない単語に首を傾げるタツヤ。その一方でワレモンは有り得ないと言いたげな表情を隠さず晒していた。アサヒとカケモンに関しては互いに顔を見合わせている。そしてロイヤルナイツと呼ばれたハックモンは諦めた様に答えた。

 

「最早隠す事は出来ないようだな。確かにオレはジエスモンだ。…今はハックモンだがな。だがそれでどうだと言うんだ?お前が戦いたいのは強者の筈だ。今のオレはお前の求める強者ではない」

「何を言うか!退化したとはいえ貴殿はロイヤルナイツ!であれば死合うのみ!さあ、いざ尋常に勝負!」

 

腰の刀に手をかけるムシャモン。このままムシャモンとハックモンの戦闘が始まる、そう思っていたのだが…

 

「ならばここにいるカケモンを倒せば相手をしてやろう」

「………えっ!?またボク!?」

「ちょ、ちょっと!」

「オレとしてもちょうどいい。お前達の実力を見てみたい」

 

名前を呼ばれたカケモンは目を白黒させる。まさか呼ばれるとは思わなかったのだろう、いつも以上に慌てていた。そんなカケモンを見るや否やタツヤはハックモンに待ったをかける。

 

「待って!僕達に戦う理由なんて無いし、カケモンもやる気じゃ無いよ!」

「確かにそうだが、奴はやる気のようだぞ」

 

そう言ってハックモンは再び正面を見る。すると直ぐ目の前にはムシャモンがいるでは無いか。抜かれた刀は一直線にカケモンに振り落とされるが、その前にワレモンはカケモンを突き飛ばし当たる事は叶わなかった。その後もカケモンはドラム缶、錆びれた車、工場の扉の影と逃げ惑うが全て両断。段々と隠れる場所が無くなっていく。

 

「うわぁぁぁぁぁああん!?や、やめてよぅ!!」

「情けない、デジモンとしての本能はどうしたのだ!?」

「本、能…?」

「そうだ、闘争本能こそデジモンの真髄!!生きるために戦い、感情のままに戦い、強さを求めるために戦う!デジモンとはそう言うものだろう!!」

 

「本能ッ…」

 

そう言うムシャモンの言葉にナニかを感じたのか、一瞬カケモンの動きが止まる。

そして自分自信に問い掛けた。自分は戦う事が苦手だ、だけどなぜ戦っていたのか?それは大事な友達を守る為だと返ってくる。だがムシャモンはどうだ?戦う事に意味を持っていた。本能に従って心のままに戦っているその姿に、自分に無い何かを見つける。

 

その事に気付き、心の底にあった感情が前に出てきた。それは悔しさ、モスドラモンに敗れた時の悔しさ。そして湧き上がる衝動。強くなりたいと言う、戦いを求めるデジモンとして欠けていた…本能。

その答えはカケモンに新たな切っ掛けを与えた。

 

ドクン、と鼓動がカケモンの体に響き渡る。

 

「戦う…望むままに、本能のままに…。“戦士”として!」

 

その刹那、カケモンの心に呼応してタツヤの持つデジヴァイスが輝き《X EVOL.》に新たなアイコンが表示され、自動的にカードが具現化する。そこに描かれていたのは、白い鋭利な体と赤いマント、両手と尾に剣を持つデジモン。

 

「これは…」

「なんだと!?それはオレの…!?」

 

ハックモンは驚愕する。それもそうだろう。カードに描かれていたデジモンこそ自分のロイヤルナイツとしての姿。師より鍛えられた先に進化した姿。

…その名はジエスモン。

タツヤは徐にカードを掴み取った。

 

 

「セットアップ、ジエスモン!」

 

 

カードのUGコードを読み取りデジヴァイスから出る光をカケモンへ向ける。それを受けたカケモンは新たな変化を始めた。

 

0と1で構成された空間でカケモンは兜を上へ投げる、ここまでは同じだった。しかしここから新たなカケモンへと変わっていく。以前より細身の体に成長し投げた兜を手にすると、兜は角を収納した鋭利な形に変形し被る。

そして背後からジエスモンの幻影が現れると白い鎧のパーツが複数飛び出しカケモンに装着。関節部分の露出が多くなった姿で飛び上がると、腰に赤いマントが巻きつき後頭部に刃のついた一本の太いコードのようなパーツが装着され口元のバイザーが閉じる。

最後に飛翔した二つの短剣を手に取り着地、正面をXに切り裂くと誇り高き名を叫んだ。

 

 

「アップグレード!カケモン ver.ジエス!!」

 

 

ver.ジエスとなったカケモンは自らの手足を確認していた。一方のタツヤ達は新たなカケモンに驚き、ハックモンはそれのさらに上回るかのように驚愕した。

 

「新しい、カケモン…!」

「進化…?いや、違う!なんだこの変化は!?」

「どうやらやる気になったようだな。では尋常に、勝負ッ!!!」

 

前へと飛び出すムシャモン、それに気付いたカケモンは同じく飛び出す。そして二人の持つ二本の短剣と刀は火花を散らした。途端にカケモンはムシャモンから一歩下がるとその場で回転。後頭部のコードの先にある剣で斬りかかる。咄嗟に受け流し対処したムシャモンだったが、冷や汗をかいていた。

そして二撃、三撃…と撃ち合う内にカケモンは震える。否、震えではない。笑っていたのだ。

 

「は、はは!ハハハハハッ!!」

「か、カケちゃん?」

「おいおい、アイツ頭ぶつけたか?」

「そうか、これが闘う愉しさ!喜びか!いいねっ、気に入ったぁ!!」

 

通常時ともver.オメガとも違う口調でカケモンはムシャモンの股下を潜り背後に立つ。それを追おうとしたムシャモンであったがその前に蹴りを喰らい、廃工場へと叩き込まれた。すぐさま立ち上がるムシャモン。被った土埃を頭を振る事で落としカケモンを称賛した。

 

「ぐっ、なかなかやりおる…!」

「アンタもなオッサン!」

 

だが、次で終わりそうだなとカケモンが言うと後頭部のパーツが分離。コードが飛び上がり真っ直ぐ棒状になると手に持つ二本の短剣も放り投げ、コードと合体。三叉槍のような形状の武器…ランサーJを空中でキャッチするとカケモンの体から三つのオーラが具現化する。オーラ…アト、ルネ、ポルと共に地に着くとカケモンは走り出した。

 

 

「ぐおおおおおお!斬り捨て御免!!!」

「–––––武槍乱舞(むそうらんぶ)ッ!!!」

 

 

ムシャモンの鋭い剣戟が繰り出される。だがそれと同時にアトが刀を弾きルネが腹部に一線、ポルが追い打ちをかけるようにまた斬りかかるとランサーJの怒涛の攻撃が始まる。時に払い、時に突き、時に切り掛かる…瞬きの合間に十数回の攻撃が終わるとカケモンは槍を下ろしていた。

 

「み、見事…」

 

そう一言言った瞬間、ムシャモンは光の粒子となり消滅する。消える間際のムシャモンの顔は満ち足りたように晴れやかだった。自らの願望が、強者と戦うと言う欲求が満たされたのだ。カケモンはムシャモンのいた場所を見つめた後、胸に手を当て敬意を込めて黙祷する。

 

「…アンタの生き様、オレがしっかり見届けたぜ」

 

 

 

「かっこつけてんじゃねぇ!」

「ぶっ!?」

 

いつもと同じようにワレモンはオーラを纏った腕で後頭部を殴りつける。そしてカケモンが元に戻るといつもの暴行が始まると思いきや、ワレモンは冷静に、そして慎重にハックモンへと視線を向けた。

まるで、亡霊でも見るかのように…。

 

「おいテメェ、マジでロイヤルナイツなのか…?」

「ああ、今はこの姿だがな」

「…嘘じゃねぇみてぇだな。じゃあ一つ聞かせろ」

 

 

 

「全滅した筈のロイヤルナイツがなんでここにいる?」

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