デジタルモンスター Missing warriors 作:タカトモン
ハックモンは唸っていた。タツヤと行動をともにして一週間経過、しかしそれでも彼の同胞の痕跡さえ見つからない状態なのだ。自分と同じく退化して隠れているとしてもここまで見つからないのは明らかにおかしい。だとすれば最悪の場合…そう考えてしまう。
「どう?ハックモン?」
「ダメだ…見つからない」
学校から帰ってきたタツヤがリビングへ入って来る。ここ数日は逸れデジモンの襲撃は無いため、時間がある時に他のロイヤルナイツを探しているのだが、それは学業と両立するには難しいことだ。期待は出来なかったがタツヤもダメだった、と答える。そしてハックモンと同じ考えが浮かぶが、それをハックモンは否定した。
「考えられるのはいくつかあるが、少なくとも死んではいないだろう。ロイヤルナイツはそこまで軟弱では無い」
「やっぱり、地道に手分けして探すしか無いのかな?」
「今は…それしか無いな」
ハックモンはそう言ってキッチンへと向かう。夕食を作っている源光の手伝いをするのだろう、今出来ることは少ないのだ。そしてそれを見たタツヤは、どこか思いつめた顔をしていた。
翌日、タツヤは今日も散策するハックモンを見送り自分も学校へ登校する。既に衣替えの季節となり白いワイシャツに袖を通した彼は夏の暑さを感じながらもいつもの道を進む。
そして、あと少しで到着という所で背後から声をかけられた。既に何度か同じ経験をした彼にとってそれが誰だかわかっている。振り返ると、そこにいたのは自分と同じく夏服を着る才羽 ミキだった。
「浪川 タツヤ」
「あ、才羽さん。おはよう」
「…彼は?」
彼、と言われてタツヤは少し考えると思い当たる人物が一人思い浮かぶ。彼女と接点がある者は限られている上、尚且つタツヤに尋ねるのならば一人しかいない。タツヤはポケットからデジヴァイスを取り出し画面を向ける。
「カケモンの事?」
『ボクここだよ!』
「怪我は?」
『うん、もう大丈夫!もしかして心配してくれたの?』
「心配…?」
ミキは少し狼狽えたがいつもの調子に戻る。本人は自覚していないが、約一週間前のモスドラモンとの戦闘以来カケモンと話していなかったのだ。怪我を負ってタツヤの自宅に行く程気に掛けていた彼女にとって心にどこか引っかかっていたのだろう。カケモンの様子を見て少し表情が綻んでいた。それを見てタツヤは微笑むと、タツヤはミキに尋ねる。
「そうだ、才羽さん。最近何か変わった事とかある?」
「変わった事…」
ミキはその場で考え出す。もし最近変わった事があるのなら、それはもしかするとハックモンが探しているロイヤルナイツの可能性があるのかもしれない。もしくはそれに繋がる事もあると思ったのだ。すると、考えていたミキはタツヤに背を向け指を指す。そこは目的地の学校…ではなく、その先だった。
「…あそこ」
「あそこって…旧校舎?何かあるの?」
そう、指した先にあったのはタツヤの学校のすぐ先にある旧校舎だった。この地域では歴史がある学校の以前の校舎、タツヤが入学する五年前に今の新校舎が建てられ今は使われていない。そこは現在では取り壊しが行われており、夏休みが終わる頃には完全に撤去される予定だ。そこに何があるのか…タツヤは聞こうと思ったのだがミキは早々に学校へと進んで行く。
タツヤはそれを見てミキを引き留めた。
「才羽さん、今度僕の家に来ない?暇な時でいいからさ。おじいちゃんも才羽さんと話したいって言ってるし、カケモン達と遊んで欲しいんだ」
「………」
「ダメ、かな?」
ミキは振り返らずに立ち止まる。そして数秒、考えたのか彼女はそのままでいると再び歩き出した。一言、その返事を返して。
「……考えておく」
「わかった、ありがとう」
タツヤは礼を言うとミキを追い越し旧校舎へと向かう。彼女はそれを見送ると教室へと向かった。
道中、先ほどの自分の返答を自問自答しながら。
(何故私は断らなかったのだろう…)
あの時、自分が取った行動が何だったのかは今でもわからない。だが、タツヤの祖父に会う事も、カケモンと話す事も、自分にとっては無意味な事だ。
(意味なんて、無いのに…)
そう、意味なんてない。ある訳がない、自分がここにいるのだってそうしろと言われたからだ。それがなければ、彼らと会う事だって無かった。なのに…
(この違和感は一体…何…?)
ミキの胸は、いつもと違う感覚を覚えていた。
「旧校舎ァ?あのボロ屋敷になんかあるのか?」
「わからない。けど才羽さんが何かあるって言ってたんだ」
昼休み、城太郎に強制的に屋上に連れて来られたタツヤとアサヒは一緒に昼食を取っていた。そしてその会話の中でタツヤは今朝あった事を話す。彼はミキとの会話の後、旧校舎に向かったのだが取り壊しの作業中で中に入れなかったのだ。その中でアサヒは、ミキからそう言う話があったと言う部分に不安げに尋ねる。
「あの、それだけですか?」
「?何が?」
「察せよお前…」
ワレモンは頭を押さえながらも頭を振る。まるでこいつダメだとでも言いそうな表情とともにウィンナーを齧った。すると突然、城太郎は大声を上げて立ち上がる。
「あー!そうだ!!」
「うわぁ!?」
「…急に何?びっくりしたんだけど」
「思い出したんだよ!今朝作業員のおっちゃん達が言ってた話!」
驚いたカケモンとタツヤに向かって城太郎は話し出した。それは、タツヤが行った旧校舎とは別の場所、そこで話していた作業員達の会話だ。
「昨日の取り壊しの工事中、旧校舎から呻き声が聞こえたらしいんだよ。それで中を見て回ったんだけど、誰も居なくってさ。…それでも校舎中でずっと声が聞こえてたんだってよ〜」
最初はそうでも無かったが、後半に連れて城太郎は怪しい雰囲気を出しながら会話する。そして言い終わった後にタツヤから頭に手刀を落とされた。するとどうだろうか、アサヒとカケモンは本気にしたのか互いに抱き合って震えている。
「お、オバケ…」
「こ、こわいよぅ…!」
「バケモンでもいんのか?でもアイツらなら脅かすしもっと別の…」
「ロイヤルナイツ…」
ワレモンの考察の中で不意にタツヤが呟いた。そのような現象が起こるのは今のところデジモンが関係している時だけだろう。だとすればもしかすると、と希望を持った。
「もしかしたらハックモンが言ってたロイヤルナイツかもしれないよ」
「でもよ、それをなんであのネーちゃんが知ってたんだ?」
「わからないよ。でも可能性は0じゃ無い、早く探さないと」
ミキがそれを意図して言ったのかわからない。しかしタツヤはミキを信じたかった。彼女が何を考えているのか今でも分からない。でも彼女とあった中で見せたあの表情は信じるべきだ。そう思ったのだ。
「よし、行こうぜ!」
「これ見つかったら怒られるよね…」
星々が空に散らばっている時刻、昼休みにいたメンバーとハックモンは旧校舎前に来ていた。日中では作業員がいるので中には入れない、ならば夜にしか入る隙はない。そう言いだしたのは城太郎だったが、一理あるのでそれに賛同した。したのだが…これがバレればどうなるか少し心配だったのだ。
「ボロいなー、年季入ってるってこういう事言うのか?」
校舎の中に入った城太郎の第一声に少なからず同意するタツヤ。周りは取り壊しが進んでいるのか、所々壊れている場所が多い。元々老朽化も進んでおりあちらこちらに頭上注意と看板が置かれていた。そんな中、震えながら進む者が一人。
「オバケなんていない、いないんです…!」
「沢渡さん、大丈夫?手繋ぐ?」
「うぅ、はい…!」
アサヒはタツヤの差し出した手を両手で掴む。余程怖いのだろう、いつもなら赤面するアサヒだったが、今は逆に青くさせている。
旧校舎を探索する事数分、今のところ何かがいる、潜んでいると言う雰囲気が無かった。残る所は体育館…だが不思議な事に、そこに行こうと言う感じにはなれなかった。すると、ハックモンは急に止まる。
「!止まってくれ」
「どうしたの?何かあった?」
「ああ、これは結界だ。ロイヤルナイツの緊急用に使われる」
主に、重症を負った時の為に使われるもの、身動きができない時に外敵から身を守る為に使われる結界。その効果は主に人払いだ。故に先程の感覚はその効果とも言える。ハックモンは同じロイヤルナイツとしてその結界に侵入するコードを持っていた為、正面から結界を解除した。
そして体育館に進むタツヤ達、古びた扉の前に立つとタツヤと城太郎は力を込め扉を開ける。そこにいたのは…
「––––誰だ」
扉を開けた先、体育館の中の色は絵の具を零したように変色していた。恐らくこれは結界の影響なのだろう、タツヤはそう考え前を見る。
そこにいたのは蒼い竜人のようなデジモン。立ち上がれば三、四メートルほどの体の彼は今は腰掛けている。色褪せた蒼い鎧、光を失った胸のVの装飾、ボロボロの翼は弱々しくも今の彼を主張しているようだった。
「どうやって結界の中に入ったか知らないが、すぐに立ち去るがいい。ここは…」
「アルフォースブイドラモン、オレだ」
口を開き台詞を言い切る前にハックモンが前に出て語りかける。どこか興奮している様子から今まで見つからなかった同胞を目にし、高揚しているようだ。そして語り掛けられた本人はしばらくハックモンを見ると、その鋭い目を丸く変化させ口を開く。
「…え、ハックモン?てことは、君ジエスモン!?うっそなんで退化してるの!?」
先程の口調とはまるで違う、どこか親しみやすいような喋り方に変わった彼は前のめりに姿勢を変えながらハックモンを見つめた。同時にイタタと背中を抑える所を見ると随分と無理をしているようにも思える。そんな彼を見て興奮していたハックモンは落ち着きを取り戻した。
「はぁ…変わりないようで安心したぞ、二重の意味でだが」
「え?そう?あ…ん゛ん゛!そこの人間達は何者だ?貴殿の協力者なのか?」
「そんなところだ」
再び威厳のある口調に変えた彼はタツヤ達を見る。やはり人間が共に行動しているのが気になったのだろう。気がつくと周りの色が自分達の見慣れた色に戻っていた。恐らく結界を解いたのだろう。タツヤ達は自分達を見る視線に自然と背筋を伸ばした。
「自己紹介をしよう。我が名はありゅ、アルフォースブイドラモン。誉れ高きロイヤルナイツの一体にして最速の騎士だ」
「浪川 タツヤです(噛んだ…)」
「あ、沢渡 アサヒと申します(噛みました…)」
「俺、立向居 城太郎(噛んだな…)」
が、彼…アルフォースブイドラモンの間の抜けた台詞に緊張が解れる。台詞を噛んだ途端に若干早口になったところから本人も照れているのだろう、彼の顔は若干赤い。四人の中で微妙な空気が漂うが、ハックモンは空気を読み咳払いしアルフォースブイドラモンに話し掛けた。
「アルフォースブイドラモン、ここは公の場では無い。素でいい」
「…よかったぁ〜〜。ボク堅苦しいの苦手なんだよね…」
「威厳無ぇ」
自己紹介の辺りからデジヴァイスから出ていたワレモンが声を洩らす。その事にタツヤ達は狼狽えたが、当の本人はいいよいいよ、と軽く笑っていた。
「威厳って言われてもねー。世の為デジモンの為に修行して進化して結果的にロイヤルナイツになったのは良いけど、イメージってものがあるんだって他の同胞に言われちゃってね。プライベートな場所以外は口調変えるようにしてるんだよ」
そう言ってどこか遠い目をするアルフォースブイドラモン。彼としては自然体で居たいのだろうが、所属する組織がそれをよく思わなかったのだろう。最終防衛ラインが舐められては困ると言う意見と立場もありそうしているのだ。肩凝るんだよね、と笑いながら語った彼にタツヤ達は同情していた。
そんな中、ワレモンと同じタイミングで出ていたカケモンは目を輝かせていた。視線の先にいるのはアルフォースブイドラモン。彼に向ける感情は、憧れにも似たものだった。
「うわぁ…!」
「あ?どうしたカケモン」
「ワレモンワレモン!アルフォースブイドラモンさん、カッコいいねぇ!おジイちゃんが前に見せてくれたヒーローみたい!」
「ちょっと待て。何故彼にはさんをつけるんだ」
不満げにハックモンは口を開く。ロイヤルナイツである事を鼻にかけるつもりではないが、カケモンに出会ってからハックモンは呼び捨てで呼ばれていた。しかし目の前の同胞は憧れと尊敬を込めた目線を向けているのに少し納得がいかないようだ。そんな様子を見たアルフォースブイドラモンは苦笑いすると、再度ハックモンへ問い掛ける。
「それにしても、ジエスモン…今はハックモンか。よくこんな短時間でボクを見つけられたね。まだ一日しか経ってないのに」
「一日?何を言っている、オレは半年こちらの世界に居たんだぞ」
「え?…なるほど時差かな。あの時開いたゲートはボク達を別々の時間に飛ばしたんだと思う」
「なるほど、だから傷が癒えていないのか。ならば…」
ハックモンは振り返りタツヤへと視線を送る。より正確に言えばタツヤの手にあるデジヴァイスにだ。タツヤから聞いたデジヴァイスの機能の一つに可能性を見つける。
「彼の、タツヤの持つデジヴァイスの中に入るといい。デジヴァイスの中は自然治癒効果を促進する作用がある」
「あっ、そうか。そうすれば…」
「ボクとしてはありがたいけど…いいの?」
「もちろん。さ、入って」
タツヤは遠慮なくアルフォースブイドラモンに向けてデジヴァイスを向ける。それを見て一瞬戸惑うも彼は身を乗り出した。
…しかし、それと同時に体育館の天井の一部が崩れ始めた。急な出来事にアサヒと城太郎は混乱する。
「きゃあああ!?」
「なんだなんだ!?」
「あれは、デビドラモンか!」
ハックモンが穴が空いた天井を見上げる。そこには、闇夜に同化するような黒い体を持った竜がこちらを覗いていた。赤い四つの目、黒い翼、異様に長い手足を持つデジモン、デビドラモンだ。タツヤはデジヴァイスでそれを調べると落ちて来る木片を避けながらもアサヒと城太郎を安全な場所に連れ出そうとした。一方のアルフォースブイドラモンは無闇に結界を解除した事に歯噛みする。
「迂闊だったか…!」
「みんな下がって、僕達が戦う!」
「こ、怖いけど…頑張る!」
体育館の外に出てデジヴァイスを構えるタツヤ。カケモンもデビドラモンの風貌に震えながらも己の中の本能を刺激させた。
《X EVOL.》を起動させタツヤはジエスモンのカードを具現化させる。
「セットアップ、ジエスモン!」
コードを読み取りデジヴァイスから出た光がカケモンを覆う。カケモンは0と1で構築された空間で兜を上に投げ細身の体に成長。胴体と手足に鎧を頭部に変形した兜を見て腰に赤いマントを身につけ後頭部に刃付きのコードを装着すると飛び上がる。途中二本の短剣を手にし口元のバイザーを閉じると着地し短剣を交差するように切り裂いた。
「アップグレード! カケモン ver.ジエス!!」
カケモンは旧校舎の上を飛び上がり、天井へ着地すると体育館の上にいるデビドラモンに向かって走り出した。デビドラモンは既にこちらの存在は気づいており既に警戒態勢に入っている。カケモンは短剣を標的目掛けて振り下ろした。
「せりゃあ!…何!?ぐあああ!」
「ギシャアアアア!」
だが振り下ろした先にデビドラモンは居らず背後から赤い爪で背中を切り裂かれる。あの一瞬、デビドラモンは己の翼を使い飛翔し攻撃を避けていたのだ。カケモンは攻撃を受けた衝撃で体育館に開いた穴から下に落ちる。未だに動けずにいたアルフォースブイドラモンの目の前に落ち、土煙がカケモンを中心に舞った。タツヤは思わず再び体育館の中に入り叫ぶ。
「カケモン、大丈夫!?」
「なんとかな。ちくしょう、空飛ぶとか卑怯だろ…!」
肩を押さえながらも立ち上がり、短剣とコードを合体させたランサーJを手にすると落ちた穴に向かい飛び上がり再び外へ出る。相手が飛べる事もありリーチの差を埋めようとランサーJを使って攻撃するが躱され、逆に両手で掴まれてしまった。そのままカケモンは屋根に押し倒されてしまう。
「ぐっ!?くそ…!」
「ギギ…!」
拘束から逃れようとするがデビドラモンは鉤爪のついた尻尾をカケモン目掛けて突き刺し隙を作らせない。一回、また一回とカケモンの頭部に突き刺そうとするデビドラモンを見てタツヤ達は焦り出す。そんな中、ハックモンは一か八かの賭けに乗り出した。彼は足を引き摺って外に出てきたアルフォースブイドラモンの方を向く。
「アルフォースブイドラモン!何も言わずにこれを触ってくれ!」
「ちょ、どうしたのいきなり何…」
「いいから触れっ!」
「いっったい!?」
ハックモンはタツヤの持つデジヴァイスを強引に奪いアルフォースブイドラモンに投げつける。それは彼の頭部にガンッ、と鈍い音を立て当たり器用にもタツヤの手の中に戻った。その際、アルフォースブイドラモンは以前のハックモン同様何かが欠けたような感覚に陥る。そしてタツヤは戻ってきたデジヴァイスの画面を見て目を見開いた。
画面の中、《X EVOL.》の一覧に新しいアイコンが追加されていたのだ。
「これ、もしかして前のと同じ…」
「使え、タツヤ!この状況を逆転できるかもしれない!」
ハックモンの言葉に無言で頷くタツヤ。そして新しいアイコンに触れ新たなカードを具現化させる。描かれていたのは色褪せていない蒼い体を持った、本来の姿で剣を構えるアルフォースブイドラモンだった。タツヤはカードを手にし裏返し、デジヴァイスにUGコードを読み取らせる。
「セットアップ、アルフォースブイドラモン!」
デジヴァイスを苦戦しているカケモンに向け光を放つ。光はカケモンに当たりその衝撃でデビドラモンはカケモンから弾かれた。
元の姿に戻ったカケモンは0と1の空間で兜を上へ投げる。するとカケモンは体をver.オメガより一回り大きく成長させるとツノ部分がVのように変形した兜をかぶる。そして後ろのアルフォースブイドラモンの幻影から鎧とあるものが飛び出す。それはVを象ったベルト…バックラーUが腰に装着されるとそれに呼応し鎧が装着される。四肢と胴体に蒼を主体とした鎧は全身を覆い、首に二つに分かれた白いマフラーを身に纏った。口のバイザーを閉じ腕を交差するように振り降ろすと新たなる名を名乗る。
「アップグレード! カケモン ver.アルフォース!!」
新しい姿へと変化したカケモンにタツヤとアサヒ、城太郎は驚く。しかし、それと同時に背後の校舎がタツヤ達に向かって崩れ落ちてきた。今までの戦闘に耐えられなかったのだろう。タツヤ達は突然の事に体を硬直させるが、その前にカケモンが今までの中で一番のスピードでタツヤ達を抱え救い出した。
「やぁ、みんな。大丈夫かい?」
「か、カケモン…やっぱり…」
口調が変わった事にタツヤは納得した。今までの戦闘の中でカケモンは変化する度にその性格が変わっているのだ。カケモンはタツヤ達を下ろすとデビドラモンのいる方向へ振り返る。そして、自身を込めて自らを指差した。
「タツヤ、それにみんなも離れてて!ここはボクに任せて。大丈夫…だってボクは、ヒーローだからさ!」
と言ってカケモンは再び高速で移動するとデビドラモンに目掛けてアッパーを食らわせた。浮き上がった体に追い打ちをかけるようにカケモンは連続で拳を叩きつける。最後の一発を胴体にぶつけるとデビドラモンは旧校舎の壁に叩きつけられた。デビドラモンはすぐさま上へと飛翔し形勢を整えようとしたが、先程までの場所にカケモンは既に居ない。一体どこへ、そう思ったデビドラモンに黒い影が指す。
「飛べるのが君だけだと思ってない?」
「ギッ!?」
急いで振り向くとそこにはカケモンがいた。反射的に攻撃しようとするが、その前にカケモンに蹴りを入れられる。反撃に乗り出そうとするデビドラモンではあったが、カケモンはマフラーによって空中を滑空し攻撃を全て避けきった。完全に冷静さを失ったデビドラモンにカケモンはかかと落としを頭部に落としデビドラモンを地面へと落下させる。
カケモンはデビドラモンを追うように地面へと足を付けると、最後の一撃を放とうとした。
「さぁ、とどめだよ。フラッシュインパルス…V!!!」
バックラーUから出てきたVの形をしたエネルギーが正面に現れ、カケモンは腰を落とし右拳を突き出す。エネルギーはデビドラモンに向かって行き、そのまま体を拘束。それを見届けるとカケモンは後ろを向き腕を組んだ。
そして…拘束したエネルギーは爆発し、跡形もなくデビドラモンを消しとばした。
「正義は勝つっ!あいたぁ!?」
「気持ち悪りぃんだよ!」
ヒーローのやるようなポーズを取ったカケモン…そんな彼の足にワレモンが蹴りを入れる。元の姿に戻ったカケモンにワレモンは最近覚えた関節技を掛けた。やめていたい、という叫びをあげるカケモンを見て、アサヒと城太郎は地面にへたり込んだ。
「す、すごかったですぅ…」
「めっちゃ早かったな…」
「…それよりさ。これ、どうしよう」
タツヤの言葉に上を向く二人。そしてタツヤの視線の先を同じく追う。そこは、全壊した旧校舎。明らかに何かありましたというこの光景に顔を青くすると全員で学校を逃げ出すように出て行った。
翌日、この光景を見た作業員達は、呆気に取られる者と祟りだと騒ぎ出す者とで別れる結果に。それを見た登校中のタツヤ達はなるべく見ないように教室へ歩き出した。