デジタルモンスター Missing warriors   作:タカトモン

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九話《ワレモン 家出する》

夏の暑さが肌に馴染み始めた頃、デジヴァイスを片手にタツヤは自室の椅子へ背中を預けていた。今日の学校は休み、と言うのも近頃のデジモン騒ぎが頻繁に起こっている事でタツヤの住む地域の学校は全て休みになったのだ。そんなタツヤは急に出来た休みを満喫する訳でもなく、デジヴァイスの画面を気にして覗いていた。

 

「お友達の様子はどうだい?」

「うん。10日ぐらいすれば治るって、ハックモンが」

 

祖父の源光が部屋の中に入ってくる。風通しを良くする為にドアを開けていたので直ぐに入ってこれたのだ。そしてタツヤの持つデジヴァイスを見る。そこにはつい先日出会ったアルフォースブイドラモンが眠りについていた。ハックモン曰く休眠状態に入っているらしく、不詳の具合と究極体のデータ量の多さから約10日の時間が必要らしい。

そうかい、と源光が頷く中、タツヤは顔を少し曇らせていた。

 

「…ごめん、おじいちゃん。最近危ない事やってばっかりで」

「そうじゃのぉ。普通ならやめろと言うところなんだろうが、私は止めないよ」

「なんで?」

「事情がどうであれ、タツヤがやりたい事をやっている事が嬉しいからじゃよ」

 

源光はそう言ってニカッ、と笑顔を見せる。まるで、昔のように…と言いかけるが源光はその言葉を呑み込む。まだそこまでには行っていないが、タツヤはカケモン達と出会ってから笑うようになった。それだけで満足だ。それに言ったとしてもタツヤは止めないのだろう。

 

「そう、なのかな?」

「怪我はいかんし、命のやり取りなんてもってのほかじゃが、タツヤなら大丈夫。なにせ、私の孫で……あの二人の子だからの」

 

そう言うとタツヤの顔に陰りができる。そこには不安と少しの怖れが表に出ていた。源光はそんなタツヤの頭を撫でる。そこには、孫の心配をするただの老人の姿だけがあった。

根拠は無い、むしろダメだったのかもしれない。だがタツヤにもしも欠けてしまったモノがあるとすれば、それを元に戻す方法があるとすれば、この言い方が最適なのかもしれなかった。例えそれが、タツヤを苦しめるとしても…

そうしていると、リビングの方から叫び声が聞こえてきた。

 

「うわぁぁぁぁん!?」

「テメェ待ちやがれぇぇえ!!」

 

声の主はカケモンとワレモンのいつもの二人だ。それに気付くとタツヤは早足で声の元へ移動した。タツヤの家ではこう言うことが多いので割と冷静に対処出来る。そして付くと、カケモンがタツヤの足にしがみ付いて隠れ出した。

 

「カケモン、ワレモンもどうしたの?」

「うぅ、あのね、ワレモンのね、おせんべいをね、おいしくしようと…」

「馬鹿野郎!だからってハチミツとチョコぶっかけるバカがどこにいるんだよ!」

「だっておせんべい甘くないもん…」

「そう言う食い物だろうがぁぁぁぁ!」

「ごめんなさぃぃぃぃい!?」

 

カケモンの善意がワレモンを怒らせる、そんな事は良くある事だった。またこう言う展開か、とタツヤは事態が収縮するまで様子を見ようとしたのだが、ワレモンは肩で息をする興奮状態から急に冷静になる。そしてそのまま玄関に歩き出す。

 

「あー…もう我慢ならねぇ。おい、タツヤ。オレはここを出てくぜ」

「え、ちょ、出て行くってなんで…」

「そこのバカの子守はウンザリなんだよ。そもそも仲間でもなんでも無いのに、面倒見切れるかっての」

「わ、ワレモ…」

「それに、お前にはもう…」

 

一瞬、ワレモンはカケモンを一瞥すると、再び前を向いた。そして扉を開く。なぜか彼の背中からは、寂しさが漂っているような、そんな気がした。

 

 

「オレがいる必要、ねぇだろ」

 

 

独り言のようにボソリと呟くとワレモンは扉を閉めた。数秒の静寂が続き…カケモンは正気に戻り玄関へ走る。先程と同じく扉を開けたが、既にそこにはワレモンは居ない。庭にある家庭菜園の場所にも、屋根の上にも、この家にはどこにも居なかった。

 

「ワレモン!」

「行っちゃった…」

 

タツヤは遅れながらも外に出る。本当に出るとは思わなかったのだが、今となっては血の気が引き始めた。もしワレモンが他の誰かに見つかったら…それにまたデジモンが現れたらと思うとそう言う気にもなる。カケモンは少々狼狽えながらもワレモンを探しに行こうとした。

 

「追いかけなきゃ…!」

「待ってカケモン、これ被って行って」

「うん!」

 

そう言ってタツヤが渡したのはダンボールだった。気休めだがバレにくくする為だ。それに手分けして探した方がいい。カケモンはダンボールを被るとゴソゴソと前へ進み出した。一方のタツヤも考える。仮にワレモンが家に帰ってきた時に誰かが居ないと問題になるだろう。家には源光がいた方がいい、だとすると残るは…

 

 

ハックモンは風呂を洗っていた。最近腰の痛みを気にし出す源光の代わりにやっている事なので最近慣れてきている。風呂を洗うロイヤルナイツというシュールな光景だが、掃除している本人は別のことを考えていた。

それはつい先日、アルフォースブイドラモンと再会した時の事だ。

 

(あの時、アルフォースブイドラモンは確かに結界を張り、そして解除した。だが早すぎる…あのデビドラモンが我々を見つけたのが異様にも早い)

 

そう、アルフォースブイドラモンの張った結界には人払いの効果があった。結界を解除したとしても、完全体ならまだしも成熟期のデビドラモンがあんなに早く見つけられるだろうか?それと同時にあの場には力を奪われていたとはいえ究極体がいた。普通に考えれば二つ上の世代のデジモンがいる場所で暴れるなど無謀にも程がある。

 

(それにだ、ここ数ヶ月のデジモンの出現率が多すぎる。いくらなんでも異常だ。それと…あの時のムシャモンは誰かにオレの…いや、オレ達の情報を聞いていた節がある)

 

あの時確かにムシャモンは強者がいると言っていた。その情報の強者が今まで半年もの間痕跡を消しながら行動していたハックモンである可能性は低い。だが、もう一方はどうだ?カケモンとワレモン…より正確にいえばカケモンの事であるのなら…

 

(最近のデジモンの出現率はカケモンが現実世界に来た時期から異様に高まった。…それにムシャモンに情報を流した者とデビドラモンを意図的にオレ達を襲わせた者がいると仮定すれば…)

 

それは同一人物である可能性が高い。それも、デジモンを呼び出し意図的に操れるような…。その結論にたどり着くと、ハックモンは手にしたスポンジを握りしめる。そんな事が可能な者がいるとすれば、もしかしたらロイヤルナイツを壊滅させた存在に関係しているかもしれない。そう言う考えが頭を支配し始めた…そんな時、風呂の扉が開かれる。

現れたのは、少し冷静さを欠かしたタツヤだった。

 

「ハックモン!ごめん、ワレモンを探すの手伝って!」

「…一体何があった」

 

 

ワレモンは堂々と道の真ん中を歩いていた。いつもなら自分が他の人間に見つかると言う事が危険だとわかっているはずなのだが今は違う。頭の中を埋め尽くしているのは先程のカケモンとの出来事、そして…それとはまた別の感情だった。

 

「ったくよぉ…なんであんなヤツにイライラしなきゃいけねぇんだよ…!」

「グルル…バウバウッ!」

「うるせぇっっ!!!」

「キャイ〜ン…」

 

鉄格子の向こうにいる大型犬を黙らせるワレモン。尻尾を丸めている所から見ると、相当な威嚇に思えたのだろう。一歩、また一歩大股で歩くワレモン…その前に、見たことのある背中を目にした。

 

「あ?お前…」

「貴方は…」

 

そこにいたのは才羽 ミキ。大きな手提げ袋の中にはいくつもの厚い本が詰め込まれている所から見ると、彼女は本屋帰りのようだ。一方のミキも今のワレモンの状況を分析する。周りにタツヤとカケモンが居ない所を見ると何かトラブルがあったと推測した。互いに顔を合わせて数十秒、会話が無く硬直してしまう。困った事に…実を言うと両者ともまともに話した事が無かったのだ。そうしていると、ワレモンが声をかける。

 

「よ、よぉ。元気してたかよ」

「大丈夫」

「その本、また買ってきたのか?相変わらずだな」

「うん」

「………」

「………」

 

会話が続かない。ワレモンは言い出したのは自分だが気まずさを感じてこの場を去ろうとする。じゃあな、と手を挙げて早足でミキの前を通り過ぎようとした時、無言だった彼女から声を掛けられた。

 

「待って」

「あん?どうしたんだよ?オレは今忙しいんだよ」

「貴方に…聞きたい事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

カケモンはひたすら走っていた。ダンボールの底を持ち上げ広げた穴で周りを見渡しながら、ずっと。夏の暑さに加えダンボールの中というサウナ状態に体力を奪われてもなお、カケモンはワレモンを探していた。だがとうとう体力が尽きようという時に、カケモンは小石につまづいてしまう。

 

「ハァ…!ハァ…!あうっ!」

 

ダンボールの中にいながら探していた為見えなかったのだろう。カケモンは盛大に転びダンボールを手から離してしまう。膝を擦りむきその場で数秒停止、そしてうつ伏せになりながらもワレモンの名前を呼んだ。

 

「うぅ…ワレモォン…どこぉ…?」

「何を、しているの?」

 

目の前から声を掛けられた。一瞬知らない人間に見つかったと思い恐る恐る頭を上げる。だがそこには見知った顔、ミキの顔があった。カケモンは彼女の存在に気づくと、顔に付いた砂と涙を振り払い、ミキに詰め寄る。

 

「あ、ミキ!えっとね、ワレモン探してるの!見なかった!?」

「…彼ならさっき会った」

「ホント!?どっち!?」

「向こう」

「わかった、ありがと!」

 

カケモンは早口で礼を言うとダンボールを再び被り走っていく。体力が尽きかけた彼はどこに行ったのか、もうカケモンの背中は遠くへと消えていった。ミキはそれを見送ると再び歩き出す。

彼女は数分前のワレモンとの会話を何度も繰り返し思い出していた。

 

 

 

「貴方は何故カケモンと行動しているの?」

「あ?なんでって…」

「カケモンはデジモンの中でも弱い部類に入る。それなのに貴方は彼と行動を共にしていた。そこにメリットがあるとは思えない」

「…何が言いてぇんだ」

 

ミキの言葉にワレモンは眉間に皺を寄せる。彼女の言っている事はもっともだった。本来群れると言う事をしないワレモンにとってカケモンと言う存在は必要ないのだろう。むしろ邪魔だと言える。しかし、ワレモンは彼女に指摘されイラついていた。理由は分からない、ただ怒りが沸々と湧いてくる感覚はあったのだ。それを知ってか知らずか、ミキは口を開く。

 

「彼は強い。強くなれる。貴方に守られなくても浪川 タツヤがいれば戦える」

「…!」

「分かっている筈。貴方は彼と行動する意味は…」

「うるせぇ!そんな事ぁ分かってんだよ!」

「じゃあ、何故?」

 

思わず声を荒げた事にワレモンは内心驚いたものの、その答えは出せなかった。何度も口を開いては閉じる動作を繰り返し、とうとうワレモンはそっぽを向く。そしてボソボソと、なんとか聞ける声で呟いた。

 

「…んな事、こっちが聞きてぇよ」

 

 

ワレモンは現在町の中にある噴水がある広場に来ていた。そこにある木の枝に腰掛け、広場にいる親子や夫婦、サラリーマンなどをボー、と眺める。

 

(なんで…答えられなかったんだ…)

 

ミキとの会話で、ワレモンは訳の分からないモヤモヤに頭を支配されていた。何故答えが見つからなかったのか、言えなかったのか、今でもわからない。自問自答を繰り返す、それでもまだワレモンは見つけられ無さそうだ。

すると、広場から次々と悲鳴が聞こえてきた。それに気付くとワレモンはその悲鳴の聞こえた場所に目を凝らす。

…そこには巨大な蜘蛛がいた。背には髑髏のマーク、頭部から生えている髪を振り回しながら口から糸を吐き周囲に撒き散らすその蜘蛛を見てワレモンは目を見開く。

 

「まさか、ありゃドクグモンか!?」

 

ドクグモン…ワレモンの知識と経験からして凶暴なデジモンだ。糸で標的を捉え毒で仕留める…見つけたら直ぐに逃げだすと言うのが利口だった。ワレモンはドクグモンから距離があるため直ぐに立ち去ろうとする。しかし、その前に見てしまった。一人のサラリーマンが糸に絡まり、ドクグモンの餌食になり掛けているのを。

 

「…チッ!」

 

進行方向を変え走り出す。何故そうしたのかわからない、だがワレモンはドクグモン目掛けて走り出していた。ワレモンと言う種族の性質上こんな事はありえないが、気付いたら行動していたのだ。アイツらのが移っちまったか、と思いながらもワレモンは腕に紫のオーラを纏う。

 

「スプリットオーラァ!」

「ギギ!?」

「オラ、早く逃げろオッサン!」

「う、うわぁあああああ!?」

 

サラリーマンに絡んでいた糸の量を半減させ自力で抜け出せるようにするとワレモンは叫ぶ。一方のサラリーマンはワレモンが助けた事など気付かず一目散に逃げていった。それを確認し自分も逃げ出そうとするがドクグモンはワレモンに標的を変え近づいてくる。

 

「ギシャアアア…」

「まじかチクショウ!」

 

おそらく先程のサラリーマン…獲物を逃がされて怒っているのだろう。ワレモンは後ろを気にしながらも逃げ出した。後ろからいくつもの蜘蛛の糸がやってくるが全て避ける。ここまで来れば、そう思った途端片足がガクッと拘束された。横目で見ると、ドクグモンの糸が絡まっている。

 

「やっべっ…!」

 

最後になって油断してしまった。タツヤの家にいて鈍っちまったか、とワレモンは焦りながらスプリットオーラで糸を半減する。だがその一瞬前にドクグモンが走り出してきた。このままではやられる…そう思った瞬間、

 

「––––ワレモォォォォォォン!!」

「ぐっへ!?」

 

真横から唐突にタックルされた。いや、抱きつかれたといってもいいだろう。その衝撃でワレモンの足に絡まった糸は千切れゴロゴロと転がりドクグモンから遠ざかる。頭が揺れたため額を押さえながら起き上がると、そこにいたのはカケモンだった。

 

「や、やっと見つけた…」

「カケモン…?お前なんで…」

 

ここにいるんだ、と続けようとしたがその前にドクグモンの糸が再び襲う。カケモンはワレモンの手を引き、走り出した。

 

「に、逃げようワレモン!」

「おい!タツヤはどうした!?」

「今はボクしかいないよ!」

 

その言葉を聞き、ワレモンは焦る。この状況をどうにかするには逃げるか、タツヤとカケモンがアイツを倒すかの二択だった。しかし今の状況は逃げられず、しかもタツヤがいない事で戦えない。カケモンは今は無力なデジモンなのだ。それと同時にカケモンの手を振り払おうとする。

 

「おい、バカ…やめろ!オレを気にしてどうすんださっさと逃げろ!」

「い、嫌だ!」

「オレの言う事聞け!」

「嫌だ!」

 

ミキの言葉を借りればカケモンはただのお荷物、いるだけで自分に不利だ。なのにワレモンは逃げろと言った、囮にでも使えばいいのにそう言った。何故そう言ったのかわからない、その事にイラついたがそれ以上にカケモンはワレモンの手を絶対に離さない事にイラついたのだ。

 

「ボクはワレモンの子分じゃないよ!だからそんな事言われたって、ボクは聞かない!」

「この…!じゃあオレはなんだってんだ!オレはお前のなんなんだよ!」

 

戦えないくせに、知らない事ばかりのくせに、何故。頭に浮かぶのは謎、謎、謎、ワレモンは正直パンク寸前だった。

 

 

「友達だよ!ボクの最初の友達!だから助けたいんだ!」

 

 

真っ白になった。さっき考えた事も、ミキとの会話のモヤモヤも全部吹き飛んでしまった。カケモンは降りかかる糸を手に持ったダンボールを投げつける事で防ぐ。

そこには、いつも弱気な彼は居なかった。

 

「お前…」

「フィフスラッシュ!」

「ギシャア!?」

 

後ろから聞き慣れた声とドクグモンの叫びが聞こえる。二人は振り返り状況を確認しようとする…そこに居たのは、爪でドクグモンの胴体を切り裂くハックモンだった。

 

「お前達、無事か!?」

「「ハックモン!」」

「カケモン!それにワレモンもいた!」

「タツヤ!」

 

遅れてタツヤも広場へとやってきた。少し息切れしてるところから相当探したのだろう。それと同時に状況を確認、カケモンの方を見ると行くよ、と声を出す。それに答えるように、カケモンも頷いた。

 

 

「セットアップ、アルフォースブイドラモン!」

 

 

《X EVOL.》からアルフォースブイドラモンのカードを取り出しスキャン、光をカケモンへと放った。

カケモンは0と1の空間で兜を放り投げ強靭な体に成長、Vの形に変形した兜を被る。そしてバックラーUと体全体にVを模した鎧を装着するとマフラーを身にまとい口元のバイザーを閉じ手刀で正面を交差させながら切り裂いた。

 

 

「アップグレード! カケモン ver.アルフォース!!」

 

 

アップグレードしたカケモンはとうっ、と飛び上がると噴水の上に着地。そしてドクグモンに指差し怒りを含めながらも叫ぶ。

 

「罪の無い人々とワレモンを襲った罪、このボクが許さないぞ!」

 

そのままカケモンは瞬時にドクグモンの腹部に移動し拳を連打する。しかし一発一発の威力が低い…少し怯んだドクグモンは複数ある脚を使いカケモンを遠ざけた。回避するカケモン、再び攻撃しようとするが、その前に蜘蛛の糸を撒き散らし牽制してくる。カケモンなら全て避けられるがこのままではジリ貧だ。カケモンはバックラーUからオーラを引き出すと右腕に纏わせる。

 

「今こそ、新しい力を使う時っ!…アルフォース・アロー!」

 

オーラは形を変えV字に近い弓へと変形する。それはまるでアルフォースブイドラモンのアルフォースセイバーのように光輝いていた。そしてそれを見てハックモンは驚愕する。

 

「オーラが、形を持っただと!?」

「遠距離攻撃だってできる…だってボクはヒーローだからね!」

 

カケモンはそう言うとアルフォース・アローから光の矢を連射しドクグモンの糸を全て撃ち落とした。威力は低いが連射する事でその効果を発揮するのだ。矢はドクグモンの全身を満遍なく攻撃し疲弊させて行く。それを見たカケモンはアローを解除し、目の前に巨大なVのエネルギーを出現させる。

 

「ラストスパートだ!フラッシュインパルス…V!!!」

 

エネルギーを拳で撃ち出すとドクグモンを拘束する。カケモンはそれを見届けると、そのまま振り返った。それと同時にドクグモンは跡形もなく爆発し、粒子が空へと上っていく。それを見届けていたワレモン、その目の前にカケモンが近づき膝をついた。そして顔をワレモンに近付ける。

 

「ワレモン…」

「言っとくけどよ、礼は言わねぇぞ。お前が勝手に戦って、オレが勝手に助かっただけだからな」

「うん、そうだね」

「…それに、もうオレがいる必要ねぇだろ。お前は強くなったし、飯も寝床も話し相手もオレじゃなくてもいるんだしよ」

「うん、確かにボクはタツヤが居れば戦えるよ。ご飯だっておジイちゃんが作ってくれるし、友達だって増えたし」

「なら」

「でも、それでもボクはね」

 

カケモンは口元のバイザーを開く。そこにはヒーローとしての彼でも、戦士としての彼でもない。ワレモンの知る、出会った頃と何も変わらない…いつものカケモンがいた。

 

 

「ワレモンがいないとダメダメだから」

 

 

恥ずかしそうに笑うカケモン。それを見てワレモンは少し口を開けたまま固まり、そしてバンダナを深く被り俯くと、口の端を少し釣り上げる。

 

「…たく、しょうがねぇな」

 

そう言ってワレモンは大きく飛び上がり、カケモンの額に向かってスプリットオーラを纏ったデコピンをする。光がカケモンを包み、元の姿へと戻った。

そしてワレモンに近づき…

 

「ありがと、ワレモ…」

「調子乗ってんじゃねぇぞバカケモンが!お前がオレの煎餅にやった事忘れてねぇんだぞ!」

「いひゃい、いひゃいよぉ〜」

 

両頬を引っ張られる。いつもの如く暴行を加えるワレモン。だが今日の顔はいつもの怒り顔では無く、どこか意地悪な笑みを浮かべていた。

 

タツヤはその光景を見て、二人に近づく。同じくハックモンも足を進めるが、その前に視界の端に、あるものが映った。それは人、それもタツヤと同じ年頃の少女だ。風に揺れる髪は紫…その少女はじっとこちらを見ていた。

 

「まさか、彼女が…」

 

 

その少女の名は、才羽 ミキ。




タカトモンです
最近は投稿が遅くなり申し訳ございません
これからもよろしくお願いします
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