緋弾のアリア 〜Side Shuya √IF 相棒となった狂戦士〜   作:希望光

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はい、初めましての方は初めまして。ご存知の方はお久しぶりです。
希望光です。だいぶ前にあったリクエストにお答えして書きました。
注意書きにもあります様に本編の第10弾からの分岐ですのでそちらを読んでから閲覧することを推奨いたします。
では、本編どうぞ!


再始動(リスタート)01 結成(メイキング)

「……私のパートナーになってくれない?」

 

 その言葉は震えていて、赤紫(カメリア)の瞳には涙を浮かべていた……彼女はかなりの覚悟を持って頼んで来ているのだと思う。そんな顔されたらこう返すしか無いだろ。たとえ二つ返事であっても。

 

「ああ、良いぜ」

 

 やっぱり俺はお人好しなのかな? 本当はもう、約束した相手がいるのに。でも、そいつは話せば分かってくれると信じているからこう言えた。信頼しているからこそかもしれない。それに……誰かが悲しんでいるのを見過ごすことなんてできない。

 

「……あんた、今なんて」

 

 良く聞こえてなかったかな? 

 

「なっても良いって言った」

 

 彼女は目を見開く。そんなに予想外だったか? 

 

「それって——」

「なってやるよ。俺が——お前のパートナーに。だから教えてくれ。お前が対峙している相手の事を」

 

 パートナーをやる上では必要な事。何と対峙するかを知らなければ戦うことが出来ない。

 

「言えないわ。幾ら手伝ってもらうとは言え、相手の事を知るには危険すぎる……」

「……イ・ウー」

 

 俺の呟きに彼女はビクリと反応する。どうやら正解のようだ。

 

「あんた、なんでそれを……」

 

 こいつが言いたくない理由は何となくわかる。多分俺を危ない目にあわせないために。でも、俺は既にそちら側に立っているんだ。

 

「悪いけど昨日の話、聞かせてもらった。それに……俺も彼奴らを追いかけている」

 

 10年前のあの日から、俺はずっと彼奴らを追いかけて来た。

 

「だから、教えてくれ。彼奴ら——イ・ウーについて」

 

 少し悩んでから、アリアは口を開いた。

 

「良いわ教えてあげる。だから、これから宜しくね」

 

 アリアは笑顔でそう言った。

 

「ああ、宜しく」

 

 俺も微笑みながら返す。これで俺たちはパートナーか。一度動き出すとトントン拍子で話が進むな。

 

「でも、すぐには教えられないわよ?」

「良いよ。ちゃんと話してくれるならいつでも」

「約束するわ。それから——」

「……?」

 

 彼女は改まった様子で尋ねてきた。え、何? 

 

「明日って、空いてる?」

 

 突然言われた言葉に少し体を強張らせる。いや、だっていきなりだよ? ちょっと緊張するでしょ? 

 

「明日? 明日は外せない用事があるんだ。なんかあるのか?」

 

 明日は確か装備科(アムド)で頼まれてた武装の納品日だった筈。

 

「空いてないなら良いわ」

「悪いな。でも、武偵なら依頼人(クライアント)との契約(約束)は絶対だろ」

「……そうね。あんたの言う通り依頼人との契約は絶対ね」

 

 歯切れ悪く返答したアリアは、何かを納得するように頷く。ごめんな。本当は行ける事なら行きたかった。でも今回の依頼だけは外せないんだ。

 

「というわけだ。本当にごめん」

「良いわよ。別に大した用事でも無いし」

 

 俯きながら答えるアリア。コイツの反応からするに大した事あるみたいだな。でも、どうしようもないんだ……。

 

「そろそろ上がるよ。明日の件、仕上げないといけないから」

「分かったわ。ありがとう」

 

 アリアの声を背中で聞きながら、俺は病室の扉を閉める。ヤバい……立ってるのが辛い……。

 限界に達した俺は崩れ落ちるも、何とか膝立ちでとどまる。完全に徹夜での現場検証が響いてる……。

 

 あんだけ調べて何も出てこないとか……半端ないって! 犯人半端ないって! あんな風に隠滅出来へんやろ普通! 

 ……まあ、犯人にとってはあれが普通なんだろうけど。重い体を何とか持ち上げた俺は装備科棟の作業室へと向かうのであった——

 

 

 

 

 

 翌日、依頼されていた物の納品が終わった俺は寮の自室に戻りリビングのソファーで横になっていた。

 結局終わらなくて徹夜して仕上げた。めちゃくちゃ頭痛ぇ……。

 

「最悪だ……」

 

 ついでに言うとこの体勢でかれこれ1時間くらい経つけど眠れない……。流石に二徹は辛いです……はい……。なのに眠れないとか拷問ですかね? 

 寝ることを断念した俺はソファーに座り直すと携帯を取り出し電話をかける。かかるかな……? 

 5コールの後に電話が繋がった。

 

『もしもし?』

 

 電話に出たのは少女と思しき……いや、少女の声だ、

 

「もしもし、俺だけど」

 

 先に言っておこう。俺は決して詐欺をやっているわけでは無い。時たまそう勘違いされることがあるんだけど、俺なんか悪いことしてるのかな? 

 

『……シュウ君?』

「そうだよ。久しぶりだな、マキ」

 

 彼女は大岡マキ。武偵高の生徒でありながらロンドン武偵局に所属している凄腕の武偵。そして、俺の幼馴染でもある。

 

『久し振りだね。何かあったの?』

 

 相変わらずマキは鋭いな。俺が電話しただけで重大な要件だということを汲むまでが早い。

 

「まあ、ね」

『やっぱりね。で、結局のところどうしたの?』

「ああ、実は——パートナーの件なんだけど」

 

 そう言った途端、電話の向こう側が静かになる。そして暫しの静寂の後にマキの声が聞こえて来た。

 

『……パートナーが出来たの?』

「……ああ」

 

 震える声で問い掛けるマキに対して歯切れ悪く答える。

 

『……そう……なの』

 

 マキの悲しげな声が静寂を断ち切った。ごめん……マキとはそう約束していた。でも、俺は……アイツをあのままにしておくこともできなかった。

 

「ああ。だから——」

 

 この先を言ってしまったら、マキとの全てが崩れる。そう思えて来た。故に、俺は言葉が出てこなかった。

 

『……パートナーの件を降りて欲しいんだね』

 

 涙ぐんだ声で、俺の内心を言い当てるマキ。そこまで……分かるのか。

 

「ごめん……。でも——」

『やらなきゃいけない事が出来た、でしょ?』

 

 マキの口から飛び出した言葉に俺は驚きを隠さないでいた。一言一句、違っていなかったが故に。

 

『シュウ君がどう言う人なのかは知ってる。だから、こう言う時は何かある時なんだよね』

 

 やっぱりコイツは俺の知る中で1番俺を知ってるかもな。それも俺以上に。

 

『だから約束して。その目的を、必ずやり遂げるって』

 

 これは——俺を送り出してくれてるんだ。こんな、自分勝手な奴のために。だったら俺は誠意を持ってこう返す。

 

「ああ、約束する。必ず、達成すると」

『約束だよ。あと——』

 

 俺の言葉を聞いたマキはとても優しげな声で続ける。

 

『これだけは忘れないで。何があっても私はシュウ君の味方だよ』

 

 マキ、ほんとお前ってやつは——。

 

「ありがとな」

 

 本当はこの言葉だけでは足りなかった。だが、それしか言えなかった。

 

『じゃあ、頑張ってね』

「ああ、また」

 

 それだけ返し即座に通話を終了させた。そして携帯を置いた瞬間、俺の中に無数の想いが込み上げてきた。悲しみや後悔、苦しみや自己嫌悪、そして僅かな嬉しさ。

 それらはとどまることを知らずに俺の中を埋め尽くすかのようだ。その感情1つ1つを丁寧に紐解きながら、ソファーに横たわり右腕を顔の前に持っていく。それとほぼ同時に俺の瞳からは涙が溢れる。

 

(マキ……本当に、本当にごめん……こんな不甲斐ない奴で……それなのに止めるではなく、寧ろ送り出してくれるなんて……)

 

 本当は言いたい事は沢山あった。だが、俺は言えなかった。自分の本当の思いを押し殺してしまった。自身の目的の為だけに人を裏切った。そう思えてしまった。それがまた、俺に強い後悔と自責の念を感じさせた。

 

「約束破って……ごめん……」

 

 溢れる涙と共に自責の念を吐き出していると——不意に卓上に放り投げた自身の携帯が着信を知らせる。

 不思議に思いながらも涙を拭いつつ左手で携帯を探る。あったあった……というか誰だよこんな時に。

 

「……はい?」

『遅い! あたしが電話したらもっと早く出なさい!』

 

 電話の向こうから聞き覚えのあるアニメ声で怒られた。めちゃめちゃ耳に響くんですがあの。

 

「アリア?」

 

 番号を見ないで出てしまった俺は思わず聞き返した。え、あれ? 何で番号知って……あ、あの日渡したんだっけか。

 

『あたしよ』

 

 うん、確定だわ。というかいきなりすぎて怖いんだけど。さっきまでの感情どっかいっちゃったじゃん。

 

「どうした、突然電話なんかかけてきて?」

『明日ロンドンに発つから荷造りしなさい』

 

 突然の事に俺の思考は停止(フリーズ)した。

 

「え、は、ええ?!」

 

 我に帰った俺は素っ頓狂な声を上げていた。

 

『だから、明日の午後7時の便でロンドンへ行くわよ』

「ま、待ってくれ」

『何よ?』

 

 アリアの不満そうな声が電話越しに聞こてくる。色々と説明不足なんですけどちょっと。

 

「何しに行くんだよ?」

『手続きしに戻るのよ』

 

 ええ……俺も行くの? 

 

「で、フライトが?」

『明日の午後7時よ』

 

 勘弁してくれよ……。でも、パートナーになっちまったわけだし仕方ないか。

 

「……分かったよ。荷造りしとくよ」

 

 諦めた俺はそう返す。行くしか無いよね……これが運命だろうから。

 

『じゃあ明日、羽田で落ち合いましょ』

「了解」

 

 通話を終了した俺は、起き上がると荷造りに取り掛かるのだった——

 

 

 

 

 

 翌日、羽田空港国際線ターミナルへとやって来た俺。ここに来たのも何ヶ月ぶりだろうか。

 そんなことを考えながらアリアを探す。何処にいるかなぁ、あいつ。

 というか出国後エリアに来て暫くウロウロしてるけど——なんでいないの? 

 

「迷子……な訳ないよな」

 

 困り果てた俺は携帯を開いてみると……なんかメール来てるんだが。差出人アリアじゃねぇか。

 なになに……ラウンジで待ってる? そういうのはもっと早く連絡してください! 

 内心で文句を言いつつラウンジへ行ってみると……そこにいましたよ。アリアさんが。しかも、応接室で。

 

「遅い! 私と待ち合わせるなら30分前には来なさい!」

 

 開口1番怒られたよ。なんで? 俺は定刻通り来ただけ……まあ、途中であな貴女のこと探してたから少し遅れましたけど。でも理不尽。というか早すぎだろお前。

 

「お前、そんな前からここに居たのか?」

「そうよ」

 

 うん、早過ぎる。恐ろしく早い集合、基本的には間に合わないね。そんな早く来ても暇でしょ。

 

「飛行機乗るのにそんな早く来るって……」

 

 アリアは、俺の呟きが聞こえたらしく怪訝な顔でこちらを見てきた。

 

「何よ?」

「ナンデモアリマセン」

 

 うわ、怖すぎるよ……というか突然過ぎてカタコトになっちゃったよ。

 

「まあ、良いわ」

 

 ヤベェ……死ぬかと思った。久々死を感じたな、うん。

 

「出発時刻が近くなってきたわ。そろそろ行きましょう」

 

 そう言ってアリアはスカートを翻しながら立ち上がると歩き始めた。俺もそのあとに続いて歩いていく。ていうか俺は、ラウンジに何しにきたんだよ! マジでなんもしてねぇ! 

 そう内心で嘆きながら飛行機へと乗り込むのだった——

 

 

 

 

 

 乗り込んだ飛行機の中は想像以上に凄かった。本当『空飛ぶリゾート』だよ。

 

「お前、これチャーターしたのか?」

「そうよ」

 

 マジかよ……。何気なく問いかけてみたけど、マジだったのか。聞くんじゃなかった……お値段とかは絶対に、聞いたら倒れそうだからやめとこう。

 

「流石貴族様、だな」

 

 倒れそうになった体を支えながらそう返す。にしても、さっきから妙な胸騒ぎがする。なんだろう……何もなければそれが1番なんだが、この感じだとそうは行かない気がする。

 まあ、その時はその時だな。こう言う時は武偵憲章7条『悲観論で備え、楽観論で行動せよ』に則った動きをするのが1番効率がいいからな。

 

「どうかしたの?」

 

 アリアの声で現実に戻る。おっと、考えることに没頭しすぎていたかな? 

 

「いや何も。なんでだ?」

「険しい顔してたから」

 

 顔に出てたか。それに関してはただの寝不足だと思う。寧ろそう思いたい。

 

「それはそれとして、帰国はいつの予定だ?」

「今のところは分からないわ」

 

 今回の1番の疑問をぶつけてみたら……え、嘘? 分かんない? 璃野になんも言わないで出てきちゃったなぁ……。

 

「なんで?」

「いや、戦妹(アミカ)に何も言わないで出てきちゃったなと思って」

「あんた、戦妹がいるの?」

 

 アリアが驚いた様に問いかけてくる。あー、出来たばっかりだから情報とかも載ってないもんね。

 

「ああ。出来たって言っても戦徒契約結んで1週間も経ってないけどな」

 

 璃野の事を思い返しつつも、無事に帰ってこれることを祈っていた。まあ、何とかなるでしょ。ここまで下手な戦場とかは歩いてきてないし。

 とりあえず悩んでも仕方ないので1回休もう。そろそろ限界……。

 

「眠いし寝てても良いか?」

「良いわよ」

「ありがとう」

 

 俺はソファーの上で横になり目を閉じる。そして暫しの後、薄っすらと目を開いてみる。

 視界には窓の外をただ呆然と見つめるアリアの姿が映った。何かに未練を感じている。そう言った状態の彼女がそこにはいた。

 

(アリアも……色々あったんだよな……)

 

 内心で呟きながら、俺は再び目を閉じる。しかし寝付けない。睡眠薬でも飲まなきゃダメかな? 

 漸くウトウトし始めた頃、部屋の扉の前で足音がするのが聞こえた。両方とも聞き覚えのある足音だ。扉が開く音共に俺は目を開く。

 

「……キンジ!?」

 

 アリアが声を漏らした。え、キンジって言った? 

 

「シュウヤ?」

「……キンジ?」

 

 意識がはっきりしないまま答えた。それからある事に気付いた俺の意識は急速的に覚醒し始める。ヤバい。役者が揃ってしまっている……! 

 キンジには悪いが、キンジがここへ来たことにより俺の胸騒ぎは予想から確信へと変わったのだった。




はい、今回はここまで。
次回はいつできるのやら……。
まあ、気長にお待ちください。
最後に、宜しければ感想や評価等お教え頂けると幸いです。
次回もどうぞ、お楽しみに!
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