定期更新は難しいかも知れませんが、出来る限り頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします!
「そーゆーこ・と・な・ら、ちょうどいいミッションがあるわよ♪」
そう言ってミッションを薦めている男性の名はマギー。
GBNでも屈指の上位ランカーでありながら、面倒見のいい性格と押しの強さでみんなから慕われるオネェダイバーだ。
あの衝撃的出会いから数週間が経ち、ビルドダイバーズともすっかり馴染んだケモミミ伝道師ジェイド。
あれから多くのミッションを共に切り抜け、十分に信頼関係を結べているはず。
その思いから、ジェイドは真剣な顔でみんなに提案したのだ。
「モモ様と二人でミッションをクリアして見たいのです」
出会った当初であればにべもなく断られたであろう。
このような提案ができるのは、ひとえにこの数週間に培ってきた信頼関係があるからこそだ。
毎日毎日、おはようからおやすみまでフォースネストに通いつめたかいがあった。
そんな努力の賜物だろう。
だから例え、目の前にいるモモの顔が少し引き吊ってるように見えることも、何かの間違いだとジェイドは信じている。
そしてジェイドが言い出したら聞かない頑固者であることも、この数週間でいやというほどわかってしまったビルドダイバーズなのである。
最早諦めの境地に立つ面々ではあるが、この提案に何か問題があるわけではない。
このジェイド、どういうわけか場の空気は読めないが、操縦技術は確かなものだし、状況判断も的確だ。
このままミッションエリアから出てくることなく、GBNのNPCにでもなって欲しいほどである。
こんな現実逃避では、目の前の問題は解決しない。
どうしたものかと頭を捻っていたがふと気づく。
自分たちビルドダイバーズには頼れる大人たちがいるじゃないかと。
相談すればきっと何か解決の糸口を見つけられるだろう。
それでマギーに相談したところ返ってきたのが、冒頭の言葉だ。
「最近出来た二人一組で参加するタイプのミッションよ。どちらかが撃墜された時点でミッション失敗だから気を付けて行動してね」
まさに今、己が望んだようなミッション。
これをクリア出来ずして何がケモミミ伝道師か。
ジェイドは提示された素晴らしきミッション心踊らせる。
その様子にビルドダイバーズ、特にモモは不安を募らせていたが、そんな彼女らにマギーは囁く。
「大丈夫よ。そんなに長いミッションじゃないし、最悪棄権もできるから。何よりこのミッション、実はまだテスト段階なの。ポイント変動は無いから気楽に、ね」
マギーにそういわれて頷かないわけにもいかない。
「……わかった。わたし、やってみる!このミッション、必ず乗り越えて見せるよ!」
モモの覚悟はビルドダイバーズ全員に伝わった。
何としてもこの試練を乗り越えて今度こそジェイドに言うんだ。
『そろそろフォースネストに入り浸るのやめて欲しい』と。
そんな思惑があるとは知らず、モモと一緒にミッションを受けられる喜びに、ジェイドは顔をほころばせ、それでも表現できない感情を奇妙な体の動きで体現している。
正直キモいと、その一言が言い出せない。
ビルドダイバーズは心優しいフォースなのだ。
そうこうしているうちに、ハンガーへとたどり着いた面々。
ここでは自身のガンプラを作品中の原寸大で鑑賞することができ、さらにメンテナンスもできるのだ。
そして、いつものごとく注目されるのはジェイドの機体だ。
「……やっぱりすごいとしか言いようがないよな」
「何度見ても、このガンプラ完成度は高いよね。ダイバーはあれだけど……」
「こんなにかわいいのに……乗っているのが……わたしどうすれば……」
リク、ユッキー、モモの反応はいつもと変わらない。これをどう受け止めたら悩み続けている。
それに対してコーイチとアヤメはというと……。
「この胴体下部の装甲板はどうやって……」
「それは一枚一枚を……にしていて……」
「え!そんなことができるの!」
「ケモミミ愛の前に不可能はありません」
「それ、ケモミミ関係ないと思うけど。それよりこのモノアイ部分の塗装についてだけど……」
やはり大人というべきか、これはこれ、それはそれと完全に割りきっている。
ガンプラを見ていれば、ジェイドの顔を見なくて済むといった打算がないわけでもないのだが。
「このガンプラかわいい~」
結局なにも変わらないのはサラだけなのであった。
準備が整い、出撃シークエンスへと移行する。
自らの愛機に搭乗し、カタパルトから飛び出す瞬間は、ロボット好きにはたまらないシチュエーションだろう。
ジェイドは特にロボット好きではないのは、知っての通りだ。
だが、己の使命を果たす戦場へ飛び出すこの瞬間は
彼が夢にまで見た光景といえる。
「すーはー」
操縦桿を握りながら、意識を集中させていく。
「我が魂はケモミミと共にあり」
厳かに発せられた言霊は体を巡り、機体へと浸透していく。
こうしてはじめて、ただのガンプラは己の体と昇華されていくのだ。
それを結ぶのは、今ある己の存在顕示。
「ジェイド・メッサー、ケモミミ・ドック、馳せ参じます!」
ずんぐりした体に、つぶらなモノアイ。
特に目を引くのは、ピクピク、ピョコピョコ、頭部で躍動するケモミミだ。
これは猫の耳を模したケモミミであるが、そんじょそこらのケモミミとは訳が違う。
その動きの滑らかさと来たら、本物の猫すら見紛うほどの完成度を有している。
それは黄色と濃紺を基調とした、バウンド・ドックの改修機。
名をケモミミ・ドック。
猫の耳を付けておいて何故ドックなのかと問うものは誰も居ないし、言わせない。
そして、その最大の特徴であるケモミミを最大限に動かし今、カタパルトデッキから大空へと飛び出していったのである。
「……いつも思うんだけど……」
「なんでしょうか?」
「出撃前の精神統一いる?」
モモの意見はもっともだ。
はっきり言って時間の無駄といえる。
「私も不必要かと思ってはいるのですが、何故かあれを行わないと操縦系のサイコミュが反応しないのです」
「え?どういうこと?」
「端的に言えば、あれがないと動きが悪いのです」
せっかくのミッションなのに、十全な機体で戦えないのはかなり悔しい。
だから、多少面倒でも行う必要があるのだ。
「さらに言えば機体自体の出力も、通常の1.2倍ほど上がるように思えます」
ガンプラの強さは完成度の高さで決まる。
GBNの常識であるが、精神統一した程度で楽々強化できたら苦労はないだろう。
「う~ん……ま、わからないんじゃ考えても仕方がないかな!じゃ、早速行きますか!」
モモの言葉に合わせて、愛機であるモモカプルがポーズをとる。
その愛らしさ全開の機体は正しくモモが乗るにふさわしい。
この機体にケモミミが付いたらどれ程の破壊力を有するのだろうか。
ジェイドはそのイメージに戦慄する。
これが現実のものとなったとき、果たして自分は正気を保っていられるのだろうか?
少なくとも落ち着いていられる自信はない。
いや、今はミッションに集中せねば。
ジェイドは頭を振り、夢想の空間を払いのける。
せっかくモモ様と一緒にミッションを行っているのだ。
集中せねばもったいない。
「では、行きますよ!」
そう言ってケモミミ・ドックは空へと舞い上がる。
「あ~この移動にも慣れたな~」
遠い空を見ながらモモは呟く。
ジェイドはミッションの度にモモの運搬役を買ってでるのだ。
モモカプルに飛行能力はない。
したがって、移動は歩行か、他者に運搬してもらうしかない。
だから今モモカプルはだらりと力を抜き、なされるがまま運ばれている。
ケモミミ・ドックの両腕から生えたクローアームがモモカプルの両脇に差し入れられ、まるで抱っこでもされているような状態だ。
「……モモ様。今私は言い様のない達成感で胸がいっぱいです!」
「まだミッション始まってもいないんだけどね……」
始まる前から大満足状態のジェイドを見て、行く先の不安を感じずにはいられないモモなのであった。
出撃準備用のフィールドから出た途端、アナウンスと共にディスプレイに文字が浮かぶ。
『Dual Mission Start』
デュアルミッション……二人組用のミッションにふさわしいネーミングといえる。
ジェイドとモモは納得しながら先へと進む。
景色は変わり、鬱蒼と繁った森林地帯を眼下に望み、空中での遮蔽物が一切ないシンプルなフィールドとなった。
見た目そのままの森林ステージだ。
そしてステージ1と書かれたディスプレイを見て気を引き締める。
ここからは戦闘エリア。
戦いはすでに始まっている。
周囲を警戒しながら進んでいた二人だが、前方から接近する二つの機影が迫ってくる。
「ガズアルとガズエルですね」
ジェイドは近付いてくる機体を即座に看破し、次の行動を考える。
ガズアルとガズエルは左右反転したような赤と青の機体である。
武装は持ち手が違うが、種類は同じであるし、おそらく性能も変わらないだろう。
まだ第一ステージであることを考えれば、消耗は可能な限り避けたいところ。
「モモ様、このまま森林内へと降りて、あの機体の真下ほどにて待機していてください。そして隙有らば攻撃を……」
モモはジェイドの言葉にうなずくと、高度を落としたケモミミドックからモモカプルか勢いよく飛び出す。
「では!」
背部ブースターを全開に吹かし、ケモミミ・ドックは加速する。
敵機もまたその姿を見定めて迎撃体制をとる。
手に持ったビームライフルから放たれた火線が、急速に距離を詰めるケモミミ・ドックを襲う。
MAにも分類されるバウンド・ドックの体は大きい。
当然ケモミミ・ドックも大柄で、回避は至難の技といえるだろう。
だがそれは常識の枠に囚われたものの考えだろう。
「想定内です」
迫る火線に驚異は感じない。
所詮直線に過ぎない軌道など、避けてくれとでも言いたげな攻撃だ。
だから、そのまま実行に移す。
「!」
敵機から驚きの気配が伝わってくる。
さもありなん。
迫り来る巨体は速度を落とすことも、大きく逸れることもしない。
ただ必要最低限の機動で集中砲火を避けてくるのだ。
この事実にガズアル、ガズエルは動揺する。
その動揺は判断力を鈍らせ、行動の選択肢を狭める。
当たれ、当たれと苛立ちを募らせながら、愚かな選択をし続ける。
己の愚かさに気が付いたとき、ケモミミ・ドックは目の前まで肉薄していたのだ。
ここから取れる行動は少なく、前から迫るものの対処など横に避ける程度しかできない。
ジェイドはその隙を突く。
「KM3クローアーム!」
左右に避けた二機に対し、突入したケモミミ・ドックはそのアームを突きつける。
次の瞬間、クロー部分がアンカーのように飛び出し、ライフルを持った片腕を捉える。
振り払おうにも力で勝てる道理はなく、捕まれた腕は無惨にもひしゃげる結果となってしまった。
気持ちを切り替えたガズアル、ガズエルは一転攻勢。
もう片腕に持つ大型ランスを突きだし、ケモミミ・ドックへ襲いかかる。
左右からの同時攻撃。
避けられるはずがない。
そう確信した思い切りのいい攻撃だ。
だが、忘れていないだろうか。
この戦いが2対2であることを。
ドォン!
突然響く爆発音に、ガズアルは驚く。
その目に写るのはスラスターをやられ、地上へと落ちていくガズエルの姿。
そして、両の手をこちらに向け佇むモモカプルの姿だ。
相棒の被弾と自分たちの失策に動きを止めたガズアル。
しまった!
そう思って上を見上げた時にはすでに遅い。
ケモミミ・ドックはすでに攻撃体制を整え、高らかに雄叫びをあげる。
「必殺!KM3キィィック!」
重力を味方につけたその巨体の偉容はすさまじかった。
クローアームを足に見立て迫ってくるその姿は流星を思わせる。
腹を括ったガズアルは大型ランスを構える。
勝てるかどうかはわからない。
だが諦めるといった選択肢あるはずもない。
ここまで来たら真っ向勝負。
どちらが上かはっきりさせる最高のシチュエーションだとでも言いたげにケモミミ・ドックを迎え撃つ。
衝突したクローアームと大型ランスは盛大に火花を散らして競り合う。
このまま時が止まってしまったかに思える一瞬は長く続くことはなかった。
ここが空中であり、両機の位置関係が勝敗を分けた。
その圧倒的質量と重力にガズアルのスラスターは及ばず、体勢を崩したところへ強烈な蹴りを受けてしまう。
必殺を謳う蹴りに偽りはなく、地上への衝突とケモミミ・ドックの質量は容赦なくガズアルを粉砕する。
それと同時に表示される『ステージクリア』文字。
どうやらモモのほうも無事らしい。
ジェイドは元気一杯に手を振るモモカプルと合流すべく、ケモミミ・ドックで移動するのであった。
「いや~楽勝だったね!」
最初のステージを快勝し、ご機嫌のモモ。
そんなモモの姿を見て、感動の涙が止まらないジェイド。
たいした損耗もないまま、二人は次のステージへ進んでいく。
「それにしてもこのミッションって、バトルミッションだったんだね」
「そうですね。マギーさんはなにも言われていなかったので通常のミッションかと思っておりました」
先程の戦いから、相手がダイバーであることがわかった。
NPCであれば決められた動きしか行わず、状況の不利から動揺をすると動きなどあるはずがないのだ。
「つまり、このミッションに参加するとその場で自動的にマッチングが行われ、それが連続で行われるシステムが実装されているということ、ですか。なるほど、確かに新しい試みですね」
今までは、登録されたダイバーがマッチングされ対戦相手が決まることはあっても事前に告知され、期日に対戦するミッションはあった。
しかし、ミッションをスタートした時点でマッチングが開始され、ミッション内の勝敗に応じて再度マッチングが行われるのがこのデュアルミッションなのだろう。
まあ、だからといって彼らの行動は変わらない。
モモは全力でミッションを楽しむし、ジェイドは全力でケモミミを愛でるだけだ。
二人ともやるべきことははっきりしている。
だからなんの不安などなく先へと進んでいくのであった。
「予定通り、ミッションへの参加を確認。これより最終準備に取りかかる」
撃墜されたガズアルから発せられる、怪しい者の声。
このデュアルミッションになにやら不穏な影が、静かに忍び寄って来ている。
果たしてジェイドたちは無事このミッションをクリアできるのだろうか。