なかなか面白いサブタイトルが思い付きません。
次話からどうしよう……。
「無駄話は終わりだ」
ヴァイエイトシャープのビームキャノンが、再びジェイドたちを襲う。
「モモ様!手はず通りに!」
「りょーかい!」
ここに来るまでケモミミ・ドックはその両手で岩を押していた。
なので今回モモカプルは、その背に乗って移動してきたのだ。
ジェイドにとっては苦渋の決断だったが、勝利のために涙を呑んだのは言うまでもない。
迫る火線にモモカプルは上へ跳び、ケモミミ・ドックは前へ出る。
当然ビームを受けに行く訳ではない。
当たるか当たらないか、その際どい範囲を見切って前に進む。
ジェイドの狙いは砲撃手たるヴァイエイトシャープ。
「そうはさせねーぜ!」
ケモミミ・ドックの前に、赤い機体、メリクリウスパワードが立ち塞がる。
その機体バランスをかなぐり捨てた二つの巨腕を前に伸ばし掴みかかる。
「お相手しましょう」
ケモミミ・ドックもまたクローアームを前へ向け、加速の勢いそのままに突き出された巨腕にぶつけていった。
機体の体格差は一目瞭然。
常識的に考えれば、純粋な力比べでMAたるケモミミ・ドックにMSのメリクリウスパワードが勝てる道理はなく、加速の勢いまで乗ったら結果など火を見るより明らかだろう。
ジェイドも当然そうやって考えた。
「!」
だがなんと、メリクリウスパワードはケモミミ・ドックの勢いを完全に殺し、受け止めていた。
「アンタ今、
ニヤリと笑う男には、これこそが当然の結果であると言いたげな余裕がある。
メリクリウスパワードのマニュピレーターがクローアームをがっちり掴んで離さない。
どれだけケモミミ・ドックがブースターを吹かせ、腕に力をいれてもびくともしない。
その理由をジェイドは考えるが、相手は時間を与えてはくれない。
「おらぁ!おととい来やがれ!」
そのままケモミミ・ドックを振り回し、大きなデブリに向かって投げつけた。
「くっ!」
切り揉み回転しながら、宇宙を舞うケモミミ・ドック。
このまま行けばデブリに衝突し大ダメージを受けてしまう。
「まだまだ!」
あわや衝突という瞬間、機体をMS形態にするジェイド。
衝撃を足のバネで受け流し、メリクリウスパワードを見据える。
「そうこなくっちゃなぁ!」
追撃を仕掛けようと、メリクリウスパワードが迫る。
その動きを見て、ジェイドは驚愕し、内心で呟く。
(推進機が……ない?)
宇宙空間である以上、地を蹴って進むことなどできない。
なのに推進力を生み出すものなどまるでなく、何もないところを滑るように向かって来たのである。
あり得ない。
GNドライブですらその粒子を散らしながら進むというのに、どんな法則でもって進んでいるというのだろうか。
だがどんな手品にもタネはある。
恐らくはこのタネが明らかになれば、あの機体の対処法も見えてくるはず。
そのためにも今は情報が必要だ。
ジェイドは即座に判断し行動に移す。
「では……お付き合い願いましょう!」
ジェイドもまた、相手に合わせるように機体を加速させる。
当然二機の間合いは即座に詰まる。
それもお互いが懐に入り合うゼロ距離。
そして始まるのは、"お付き合い"ならぬ"ど突き合い"であった。
「望むところだぁ!」
繰り出された両者の左腕がぶつかり、火花を散らす。
その衝撃がまるでゴングであるかのように、激しい戦いの火蓋が切って落とされたのである。
ジェイド達がガンダム不在のガンダムファイトに興じている一方で、モモはデブリの中を静かに進んでいた。
「ふっふっふっ、まさかわたしがデブリに紛れているなんて思いもしないよね~」
あれだけ派手に登場したのに、姿が見えない。
相手にとって、それは大いに警戒しなければいけない事柄だ。
それに機体が大きくよく目立つケモミミ・ドックが、正面から青い機体を狙うことで、赤い機体が相手をせざるを得ない。
高い索敵能力を有し、小回りの利く赤い機体を釘付けにすることで、モモカプルの発見はさらに難しくなる。
そうなれば、自然と青い機体の狙いはケモミミ・ドックへ向く訳だが、赤い機体と接近戦を行っているところにあの砲撃は撃ちづらい。
火力と射程に特化させたが故の弱点、それを突いた形だ。
そうして時間を稼いでいる間に、モモカプルが青い機体に近づき砲撃不可能な方向から奇襲攻撃を仕掛ける。
それがジェイドの立てた今回の作戦だ。
「……わたしって、何だかこういう役回りが多いような……」
フォース戦において、モモはよく水中からの奇襲行動を行う。
水陸両用の機体なのだから、その長所を活かしているにすぎない。
そう言われればそれまでだが、あからさま過ぎていつも対策されてしまう。
その失敗の経験が、モモの元気な表情に影を指してしまう。
そんなモモがモニターに映る
「……そうだね。せっかくジェイドさんが立てた作戦だもん。わたしがやるべきことをしなくちゃね。ありがとう、
そう言ってモモはモニターに微笑みかける。
その顔を見て
今回、ジェイドはモモにある兵装を貸していた。
無線式多目的サイコミュ兵装『KM3ビット』
普段はケモミミ・ドックの下部装甲板の役割を果たしているが、必要に応じて分離し、様々な状況に対応すべく作られた兵装だ。
その総数20機、全てがモモに付き従っている。
だが、驚くべきはその性能ではない。
なんと、一つ一つがデフォルメされたネコの顔のようなシルエットをしており、目を表しているかと思われる縦線二本がその表面に描かれているのだ。
それだけに止まらず、目は丸やバツをはじめとした多様な記号へ形を変えて感情を表し、それ以上に豊かな表情を細やかに動くケモミミが表現している。
ぶっちゃけ、何!このかわいい生き物!と叫びたくなるほどの完璧な代物だ。
唯一の欠点は、これを作ったのがケモミミのオッサンであることなのだが……。
そんな愛くるしいビット達が今何をしているかというと、モモカプルの周りに展開し、特殊なエネルギーフィールドを張っている。
『KM3ビット、ハイディング・フォーメーション』
ハイパージャマーやミラージュコロイドを参考に作られたこのフィールドは、ジャミング効果と、光学映像の偽装効果を有している。
つまり端から見ると、モモカプルは辺りに漂うデブリそのものとなっているわけだ。
エネルギーの関係で長時間運用は出来ないが、モモカプルが青い機体に近づくまでには十分に持つ。
「よ~し!一緒に頑張ろう、ビットちゃんたち!」
モモのその言葉に、ビット達は気合いの入った表情で片耳を折り曲げた。
きっと、ビシッと敬礼をしているつもりなのだろう。
その可愛さから元気と力を貰って、モモはゆっくり、こそこそと元気いっぱいに進んでいくのであった。
「う~ん、やっぱりおっきいなぁ」
モモが遂に目的の地点に到着し、目印としていた青い機体をまじまじと見て発した言葉である。
その形はやはり異様で、MSというよりはもはや大型MAだ。
ケモミミ・ドックよりさらに一回り大きいその機体が、デブリに固定されて佇んでいる。
動きがないところを見るに、まだ気づかれてはいないようだ。
「よし、今だ!」
モモはビットのフィールドを解いて前へ出る。
「これでもくらえ~!」
モモカプルの両手の指に内蔵されたビーム砲が火を吹き、青い機体、ヴァイエイトシャープへ迫る。
放たれたビームの弾幕は、吸い込まれるようにヴァイエイトシャープへ着弾していく。
「てりゃ~!まだまだ!」
モモはさらに続けてビーム砲を乱射する。
攻撃を受けたヴァイエイトシャープやデブリが爆発し土煙があがるほどにだ。
機体がデブリに固定されているのだから避けようがない。
まさに格好の的というわけだ。
だがモモは、順調すぎる流れに違和感を覚える。
攻撃が成功することはわかっていた。
そのつもりで奇襲をかけたのだから。
でも何故反撃や抵抗が来ないのか?
そう考えた時、ジェイドから事前に聞いた注意点をモモは思い出した。
「ヤバッ!」
即座にモモカプルがその場から飛び退く。
次の瞬間、モモカプルの攻撃によってできた土煙を切り裂くように、一条の光が突然現れたのだ。
直前に回避行動をとったお陰で事なきを得たが、もう少し遅れていたら落とされていたかもしれない。
ジェイドには作戦の前にこう言われていたのだ。
『攻撃しても何ら反応がない場合は罠の可能性が高いです。なので敵の機体が常に見えるように、注意して攻撃をしてください』
先程まで失念していたが、なんとか間一髪間に合った。
「……今ので仕留めたと思ったが、やはり見かけによらず、やるようだな」
「見かけによらずは余計でしょ。それにそっちも見た目は人のこと言えないじゃん」
そうして姿を表した機体もまた異様。
恐らくはこのように接近されることを想定し、あの巨大なガンプラの中で一体化されていた機体なのだろう。
センサー類のある頭部、コックピットのある胸部、武装であるビームキャノンと、ビームキャノンを運用するためのビームジェネレーターがある背部。
これがヴァイエイトシャープの全てである。
しかもビームキャノンとビームジェネレーターが大きすぎるため、それらに頭と体がへばり付いたような見た目になってしまっている。
「これは一切の無駄を排し、計算され尽くした理想の姿だ。俺のヴァイエイトシャープには勝利に必要なものだけあればいい」
「わたしのモモカプルだって、かわいいをたっくさん詰め込んだ最高の機体なんだから!かわいいは正義だってこと教えてあげるよ!」
「……いいだろう。全ては結果が示してくれる。俺とお前のガンプラ、どちらが正しいのかを!」
言うやいなやビームジェネレーターを展開し、射撃体制にはいるヴァイエイトシャープ。
そうはさせないと距離を詰めるモモカプル。
十分近づき射程内に入ったモモカプルが先程と同様にビーム砲を放つが、その全てを避けられてしまった。
「え!どうやって動いてるの!」
なんと、メリクリウスパワードに続き、ヴァイエイトシャープまでもが謎の移動方法で攻撃をかわしてきたのだ。
モモはその事実を知らない。
ジェイドと違って、どんな理屈で動いているか考える余裕すらないが、自分ができることはわかっている。
「当たらないなら、当たる所まで行って撃つ!」
そう言ってモモカプルを前に出す。
デブリの間を時には縫い、時には蹴って前へ進む。
射線を遮ることで、相手の狙いを定まらせず、細かく変則的に動くことで、移動予測を狂わせる作戦だ。
「無駄なことを!」
多少変則的に動いたところで、ヴァイエイトシャープの攻撃をかわしきることなどできはしない。
ヴァイエイトシャープを操る彼は、自分にはそれができる確信があった。
「そこだ!」
放たれたビーム砲は不規則な動きに翻弄されることなく、正確にモモカプルを捉えていた。
「っ!ビットちゃん、お願い!」
その声に素早く反応し、ビット達はフォーメーションを組んでいく。
「何!」
その驚きはビットを目にして出た言葉ではない。
ここに来るまでレーダーや映像情報に写らなかったことを考えれば、隠し玉の1つや2つ有ってもおかしくない。
この言葉は自分の見た光景が信じられないがため発せられた言葉だ。
「俺の攻撃を……曲げた……?」
あらゆる無駄を排し、威力をあげることに注力した攻撃が、この距離から防がれるなどあってはならない。
だが事実、ヴァイエイトシャープから放たれたビームは、円形に展開されたビット達に阻まれた。
しかも、真正面から受け止めるのではなく、少し角度をつけることで、受け流すようにビームを曲げたのである。
『KM3ビット、リフレクター・フォーメーション』
このフォーメーションは、リフレクタービットやゲシュマイディッヒ・パンツァーのシステムを参考に、ビームを屈折、偏向させるフィールドを生み出す。
そしてこのフォーメーションができるのはそれだけではない。
「当ったれ~!」
十分な距離まで近づいたモモの掛け声に合わせ、ビット達は散らばっていく。
「くっ!」
モモカプルから放たれたビームをヴァイエイトシャープが避ける。
だが、次の瞬間、後ろから、横から、上から、下から、全方位からビームが襲いかかる。
このオールレンジ攻撃は、先程のリフレクター・フォーメーションを応用した攻撃だ。
ビット一つ一つが微弱なフィールドを作り出し、モモカプルの攻撃を跳ね返している。
微弱なフィールドであるがゆえに、強力な攻撃は反射できない。
だが、モモカプルは攻撃力より可愛らしさを突き詰めた機体だ。
威力を度外視した分、弱いフィールドでも十全にビームを反射し続けられるのだ。
故にその指から繰り出されるビーム攻撃は、ビットからビットへ、まるで敵を捕らえる籠のように、ヴァイエイトシャープの周囲を駆け巡る。
これではヴァイエイトシャープも砲撃体勢をとることができない。
「……すまなかった。どうやら俺は君を見くびっていたようだ。これ程の射角計算と空間把握を戦闘をしながら行うとは……」
「え?わたし何もしてないけど?」
「はぁ!?」
その反応は当然のことで、モモの言葉を信じるなら、これ程の動きをビット自身が判断し、モモの攻撃に合わせていることになる。
何を隠そう全てはジェイドのコンセプト通り。
全ては理想のケモミミのために。
ビット自体の攻撃力を排し、索敵、隠蔽、防御、それら全てを網羅したサポート兵装なのだ。
当然、操作するモモに負担などかけはしない。
ビット達は、ケモミミから発せられるKM3粒子を受け取り、その意図を理解する人工知能すら搭載されている。
いったいどうやって、と問われればジェイドはすかさず答えるだろう。
『ケモミミは不可能を可能にするのです』
それが全て、それが真理とでも言いたげにジェイドはのたまうのだ。
その言葉を理解できる者はごくわずかしか存在しない。
「……少し取り乱したが、まだ決着はついていない。結果が……全てを教えてくれる!」
たとえ意味不明な兵装を使っていても、勝利できなければ意味はない。
ヴァイエイトシャープは今までと攻撃スタイルを変え、砲撃の威力を絞り、隙を少なくした。
回避と攻撃を一連の流れで行う作戦だ。
その動きに無駄などなく、高い操縦技術を持っていることがうかがえる。
「だったらこっちも全力でいくよ!」
モモはさらに手数を増やす。
たとえ避けられても、攻撃されても、ビット達がサポートしてくれる。
だから自分はビット達を信じて、攻撃に専念するのだ。
お互いの信じるものに全てをかけて、激しい射撃戦は続く。
どちらが先に有効打を与えるのか、どちらが先にエネルギーを切らすのか。
方や泥臭い殴り合い、方や高度な射撃戦。
混迷を深める第二ステージは最終局面へと突入する。
第二ステージ終われませんでしたorz
次話!第二ステージ決着です!
……たぶん。