「ごちそうさまー,お母さん,おいしかったよ!」
「あら,ありがとう,お母さん,嬉しいわ−」
そうやってほほえみあう2人.
「ごちそうさま.」
「ゆいちゃんも食べ終わったのね,どう?美味しかった?」
「うん,おいしかったよ.」
「そう.あ,ひなたちゃん,お母さんとゆいちゃんはお話するから,お部屋で遊んどいてくれる?」
「はい!」
「えらいわ〜,いい子いい子.」
「へへへ〜」
そういって,2人になった.
「どんなお友達なの?」
「・・・」
「その子,成績はいいの?」
「・・・」
「いじめとかなってない?」
「・・・」
「本当に・・・」
「そんなことより!」
「あら,どうしたの?」
自分のペースを崩されて戸惑う母.
「浮気,してるよね.」
「・・・」
「やっぱり,」
「・・・,どうして,わかったの?」
「リビングから,あなたが男の人と,手をつないでるのを見た.」
「それは,いつ?」
「・・・,5年前」
「なに,男の人と手をつないでる,ってだけで疑ったの?」
「その夜,お母さんに聞こうとしたら,電話してたよね,その男の人と・・・」
「へえ,内容は?」
まただ,目元が熱くなってくる.
「出会って5年目だからどこか,レストランでも行こうかって・・・」
「ふうん,」
頭に血が登ってくる,8歳の少女が,母は別の男の人が好き,なんてことがわかったらどんなに絶望すると思う.
それをわびるつもりもなく,たった一言ですませるなんて・・・.
「出会って5年目ってことは,ひなたちゃんは・・・」
「あの人の子よ」
「!!!・・・」
「まず,あなたの父親は嫌いだったわ,結婚してから仕事ばっかりだもの.」
「・・・」
「どうしてかわかる?あなたを生むための,お金が必要だったのよ.」
「わ,私が・・・」
「そうよ,あなたのせいよ.けど,あの人は幸せにしてくれた.ひなたちゃんには言った?」
「・・・,言ってない.」
「どっちでもいいわよ,言っても,言わなくても.」
「ど,どうして?」
「早く離婚したいの,それで,あの人とひなたちゃんと私で,仲良く暮らすの!素敵でしょう!」
「わ,私はどうなるの・・・?」
「あー,あなたがだ〜いすきなお父さんのところに行くか,施設に入るとか?」
「ま,まず,ひなたちゃんが,どうしてあなたのところに,行くって決めつけるのよ!」
「・・・.だって,血もつながらない父と,まぬけな姉がいるところに,賢いひなたちゃんが行くと思う?」
「ひ・・・」
「お母さん,あなた,嫌いなの.もし,今ここで殺人者が来てー,あなたを殺しても,なんにも思わないわ.むしろ邪魔者がいなくなったから,はしゃいじゃうかも.」
「ひっ・・・」
母の言葉だけが頭の中を,グルグル回ってる.
全身に寒気が走り,足場がなくなったかのような,不安に襲われる.
「プ,うふふふふ,あははははは,ゆ,ゆいちゃん,そんな怖い顔しちゃって.」
怖い,今なら本当に襲ってきそう.
「お母さんがそんなこと,するわけないでしょ.ゆいちゃん」
「・・・」
「もう,この話を終わりにしましょう,もう寝なさい.」
「・・・はい」
「ゆいちゃん,あなたはいつでも答えを選べられるからね・・・」
「・・・」
今のは,誰かに話したら,離婚するわよ・・・,ってことだ.
だめだ,ここで,下手に動くと,全部失ってしまう.
怖い,ホントは怖くて仕方がない.
明日からは,みんなのように,普通にすごさがなければ・・・.
「あ,おはよう!ゆいちゃん!!!今日は早いんだね−」
「うん,おはよう,あやのちゃん」
「あ,あやのちゃん!?ねえ,いつものあやのっちは?それを聞かないと元気でないよお〜」
「あやのちゃん,かわいいよ」
「へ!?ねえ,どうしたの?中二病は?頭でもぶつけた?」
「そんなわけないじゃん,おもしろい.」
「えー,いつも怒ってくるのに・・・」
「はーい,ホームルームやるぞ~,今日も白柿は遅刻と・・・」
「先生,私いますよ.」
「うわっ,今日は早いんだな,それにおこらないし・・・」
「そうなんですよっ,先生,ゆいちゃんが変なんですっ!!」
「大げさだよ,私ってそんなに変?」
「そ,そんなことないけど・・・」
「・・・」
「先生,目をそらさないで−」
お母さん,怖い・・・