ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

10 / 44
【置きバスター】
 バスター発射から着弾までタイムラグが存在するロックマンシリーズ(ロックマンエクゼと流星のロックマンを除くほぼ全て)で扱える高等技術。
 敵の弱点露出時にちょうどヒットするように前もってバスターを発射すること。
 敵の弱点が露出するタイミングと場所に合わせて撃つことがバスターを「置く」ようであることからついた名前で、「バスターは置くもの」という概念の要因である。主にいかに敵を早く倒せるかが重要であるタイムアタックにおいて使われる技術である。

 ……勝手に説明を作ってみました。
 置きバスターは、ニコ動で「ロックマンDASH TAS」で動画検索するとわかります。今回はその置きバスターがあります。


第九話 置きバスターってのをニ○動で見たことがある

 前にも言ったが、俺は飛行訓練しかやってきていない。

 戦闘を成り立たせるため、とも言ったが、自分が何者かに狙われ、戦闘になった場合に、最低限自分の身を守るため、という目的もある。他の誰よりも遅れを取っているということもあり、楯無さんにとっては何より自衛能力を獲得させるのが急ピッチだったのだろう。

 まあそんな楯無さんの事情はともかくとして、だ。飛行訓練しか受けていない俺の射撃技術は一切上がっていない。当然である。

 止まっている的を狙って撃つのはISの補助もあるため素人でも簡単だ。だが、今回の目標はIS。当然ながら当たらないように動く。動く相手に当てる技術なんてない。

 なら、どうするのか。答えは始めから決まっていた。

 ――近づいて、ぶち込む!

 

「行きます!」

 

 ドンッ!

 

 超加速。狙うはパンテオンの背後だ。すでに両レンズ共に散弾型に切り替えて発射準備も整っている。

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)に引けを取らない加速で、一瞬で周り込み、Xカノンの引き金を――。

 

「おっと」

 

「!?」

 

 引く直前にかわされた。

 緩やかな動きでいとも簡単にかわされ、いつの間にか展開されていたソドムとは別の大型ランチャーが突きつけられる。

 

(って、危ねっ!)

 

 とっさに回避。しかし回避されることがわかっていたのか、ランチャーから弾が発射されなかった。

 

「おー、つい最近手に入れたにしては飛行制御が上手いね」

 

「そりゃどうも。コーチの指導がよかったですから」

 

「そうなんだ。じゃあ、どこまで鍛えられてるか試してみようかな〜」

 

 そう言うなり青いボールのようなものを展開すると、それをこちらに投げつけてきた。

 ――グレネードか!

 

「うおっ!」

 

 すぐに回避。ボンッ! と後ろで爆発音が鳴り響く。

 さらに前方からは、ブースターを噴射させる大型ガントレット装備で相手がこっちに突貫してきた。殴りかかる時に飛び越えるように回避する。

 反撃のため、レンズを連射型に変えて連射。しかし物理シールドを呼び出され、防がれる。

 

(どうする? 接近してガードの内側から散弾を当てるか? でもさっきよけられたしな。でも移動しながら射撃する技術なんてないし……)

 

「ボーっとしてる余裕なんてないよー!」

 

「っ!!」

 

 対策を考えていると、いつの間にか目の前にパンテオンがいた。反応が遅れ、ランチャーの一撃が直撃する。

 

「ぐはっ!」

 

 一撃でシールドエネルギーが百以上削り取られた。相手の攻撃力もあるが、エックスは速度重視のため装甲が軽量化されており、結果として防御力が低い。つまり紙装甲なのだ。

 

「んー、さっきのは回避も簡単だと思ったんだけどなー。考えながらよけるってとこまでいってないのかな? というかひょっとして、飛行訓練しかやってない?」

 

 バレるだろうなとは思っていたが、ここまで早くしかも的確にバレるとは思わなかった。さすがは元代表候補生といったところか。

 だがバレたところで立ち回りを変えるなんてことはできようもないため、『近づいて高威力弾ぶち込もうぜ作戦』を続行するしかない。

 

「……っし」

 

 小さく気合いを入れ直し、レンズを再び散弾型に切り替え、スラスターを稼動させる。

 目標のパンテオンに意識を集中し、身をかがめる。

 できることは一つ……近づいて、撃つ。

 

(近づいて……ぶち込む!)

 

 六つのスラスターからエネルギーを噴射。掴みかかるつもりで接近する。

 

「おっと」

 

 当然、直線的な動きはかわされる。わかりきっているから、すぐ方向を切り替えて飛びかかる。

 

「余裕余裕♪」

 

「まだまだぁ!」

 

 砲口を向けてもかわされるなら、直接掴んでゼロ距離でぶっ放す。今俺が考え得る中では一番の方法だ。そのため全力でつかみかかる。

 

「お熱いねぇ。だけど――」

 

 逆に掴まれ、投げられる。

 

「ぐっ……!」

 

 空中で態勢を立て直し、静止。すぐに来たランチャーの弾丸をかわす。

 が。

 

「弾丸やグレネードは置くもの!」

 

「げ」

 

 まさか回避したちょうど先にグレネードが置かれてるとか、ありかよ。

 

 ドカァァアアン!!

 

 

 

   ◇

 

 

 

「うーん、やはり経験がまだ浅いね。いや、むしろこの少ない期間に飛行技術をよくここまで伸ばしたと誉めるべきかな。まだまだ完璧とは程遠いけど」

 

「まあ、エックスが機動力特化なんてピーキー仕様ですからねぇ。壁に衝突してないだけでも十分だと思いますよ?」

 

 戦闘映像と機体データを並行して見ながら、セルヴォは研究員と共に颯斗の現在の実力を見極めていた。

 とは言っても、セルヴォが言った通り颯斗はまだ経験値が圧倒的に不足している。エックスの使い勝手の悪さも災いして十分なデータとは程遠いものだ。

 

「ところでセルヴォさん、どうしてエックスをオメガの代用としてハヤトさんに渡すことになったんですか? エックスとオメガは性能的に真逆ですし、それならパンテオンの方がよかったように思えますけど……」

 

 研究員はセルヴォにそう尋ねた。

 彼が言う通り、エックスはいずれ颯斗が手にする本当の専用機、オメガと性能が対極に位置する。オメガは機動力を捨てる代わりに絶大な防御力と、その防御力によって取り回しが可能となる高反動武器の火力を手にするという設計。対してエックスは逆に機動力に完全特化し、そのために防御力も割いてしまっている。これでは、エックスで得た経験がオメガで生かされにくい。

 さらにはアルカディアが製作するISにはパンテオンという、オメガに似てやや重い機動の汎用型ISがある。パンテオンの装備には高火力武器も多いため、颯斗にとってはこちらの方がよかったのではないかという考えが研究員にはあった。

 

「うん、まあハヤトくんにはエックスよりはパンテオンの方がよかったというのは確かだね」

 

「え」

 

 返ってきたのは研究員の意見に賛成するものだった。てっきり何か戦略的な考えがあるのではないかと思っていた研究員は思わず声を漏らす。

 セルヴォは困った顔をして続けた。

 

「だけど、政府からの意向があってね。代用を使う場合、それも専用機相当のISを使うことを命じられたんだ」

 

「あー、そういうことでしたか……」

 

「できる限り新しい専用機の方が見栄えがいいし、こうして研究、改良もできるからねぇ」

 

 専用機と量産機を比較した場合、性能面ではほぼ確実に専用機が上となる。IS委員会での各国の勧誘は、いかに他国よりも上の条件を出せるかが颯斗を手に入れられる鍵と言っていい状況であったため、オメガに合わせるために量産機、ということができない状態だったのである。加えて専用機を使えば、それの研究、改良ができることなど、颯斗に量産機ではなく専用機を使わせることの方が有益になるのである。

 

「まあ、できる限り操縦者のために動きたいけど、私達のやってることが仕事である以上、自分達のことも考えなきゃいけないからね」

 

「意外と難しいんですねぇ」

 

「今回のは少しばかり例外的でもあるけどね。それにオメガを持てば空を飛べはするけど速く自由には飛べない。だから今、それを体験させてやるということでもいいんじゃないかな?」

 

「撃墜されてますけどねー」

 

 研究員が言った。

 モニターの映像では爆発の煙から、青い天使が墜ちていく様子が映されていた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「飛行操作は結構いいとこいけてるんじゃないかな。思考と並列して動くのができないのは、まあこれからの君の頑張り次第ということで」

 

「はぁ、そうですか……」

 

 結局、負けた。しかも相手に一ダメージも与えることができなかったという完封負けである。

 これが圧倒的経験の差ってやつか。こっちの動きがもう読まれる読まれる。というか途中からピタゴラスなスイッチみたいになってた。なにあれ、グレネードで吹っ飛ばされた先ピンポイントにグレネードを置くとか。手加減してないだろこの人。

 

「ま、これから頑張ってね」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「颯斗さ〜ん!」

 

 呼ばれて振り向くと、ピットからシエルさんが手を振っていた。

 

「オメガのテストプレイ、お願ーい!」

 

「あ、はーい!」

 

 手を振って返し、相手にもう一度礼をしてからピットに戻る。

 戻ってピット内で見たのは、己の完成と主を待つオメガの姿だった。

 まだカラーリングが施されていないオメガを見てまず思ったことは“デカい”だった。

 デカいと言っても、IS自体の全長は一般のISと大して変わりはない。デカいと言えるのは装甲、中でも腕の部位がとりわけ大きいのである。装甲が取り付けられている肘から先だけでも一般成人の背丈に達するのではないかと言えばわかるだろうか。オメガ全体のデザインを見ると、オメガの形状はロクゼロのオメガ第一形態のそれだが、エックスの事例もあり、神様も言ってた通りIS寄りに変わっている。具体的には胴体部位の装甲が他IS同様に少ないこと、あと頭部てっぺんの紫の髪がないところか。メットはある。当然だが腕は繋がっている。

 

「えっと、エックスから降りて、それから乗ればいいんですよね?」

 

「ええ。ちなみにテストプレイだから最適化機能は切ってあるわ。重い上に最低限の機能しか出ないから、気をつけてね」

 

「わかりました」

 

 頷き、エックスを降り、オメガへと向かう。未完成とは言え実物のオメガを見た時から、なんかこう、ワクワクした感じが止まらない。いよいよ本当の俺の専用機に乗れるからだろうか。未完成だけど。

 オメガに乗り込む。いつぞやのエックスの時のように一体となり、自分の手を動かしているかのようにオメガの腕が動くのを実感する。

 

「颯斗さん、準備はいい? カタパルト発進させるよ?」

 

「いつでも」

 

 力強く頷く。

 そして間もなくカタパルトが動き出し、俺はオメガと共にハッチから飛び出す!

 

 ガックンッ。

 

「おぅ、ふっ!!」

 

 ズド―――ン。

 

 カタパルトから離れて即刻、落ちた。

 ある意味当たり前だった。感覚が違いすぎる。重量は勿論、スラスターの出力や使用感覚もまるっきり別物。エックスと似た感覚で飛ぼうとすれば当然、出力が全然足りず結果こうなる。

 初のオメガ搭乗に浮かれていてそんなことにも気づかなかったのだが、恐らくは気づいていたとしてもこの差の大きさには対処しきれてなかっただろう。避けようがない運命だったと言える。

 俺の落ちる様が滑稽だったのか、研究員達のクスクス笑いが聞こえてくる。ハイパーセンサーの感度は良好だ。できればこんなことで確かめたくなかった。

 

『颯斗さん、大丈夫!?』

 

「……身体は大丈夫でーす」

 

 心は瀕死です。

 しかし余計な心配はかけさせまい。そういう訳でとりあえず起き上がる。エックスより圧倒的に重いが、PICがあるため動けないことはない。逆にPICや何らかの補助がなければ一切動けないだろう。

 立ち上がった俺は、何をすればいいのかシエルさんに指示を仰ぐ。

 

「えー……シエルさん、これから何をしますか?」

 

『歩行や飛行をしてみてくれる? 今回のテストプレイはそれだけだから』

 

「わかりました。……え、それだけ?」

 

『ええ。まだ武装が完成してないの。だからできるだけオメガの機動に慣れることを頑張ってみて』

 

 はぁ、と生返事もそこそこに、早速歩行から始めてみる。

 やはり、重い。動けない訳ではないが遅い。まああれだ、防御力と攻撃力を両方上げた代償だと思えばいい。しぶとくて速いなんてのは黒光りするGで十分だろう。いや、某カードゲームのやつとは違わないけど別物ね。あいつ何気にバリエーションが豊富だけど。

 飛行もしてみたが、重いために遅い。オメガの標準速度は歩行速度の数割増しだと言えばその遅さがわかるだろうか。なお普通ISの飛行速度は歩行速度を参照しない。

 これらの遅さはまぁ、ロクゼロのオメガが動かない奴だったことが理由だろう。あいつ一度だけ前進したことあるけど、その時も遅かったし。よく忠実に再現したものだ。

 ただ、固定砲台なオメガは腕を遠隔操作できるからこそ動かないのであって、それができない状態での固定砲台って……どうよ。

 

(今更だし、手遅れなんだが……こんなISで大丈夫か?)

 

 大丈夫だ、問題ない……と言ったら、死亡フラグかなやっぱり。

 一抹の不安を抱えながらも、テストプレイを行っていく俺であった。




 ギリシャでの話はひとまずここまで。次回は日本に戻ります。
 夏休み編も次回で終わりにしようと思います。さっさと進めたい気持ちなので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。