ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 最近こっちばかり更新できてしまう……うーん、なぜだ。


第十話 一部しか話聞いてないって、結構怖いことになる

 目の前の扉をノックする。ノックの回数にもマナーってあるらしいぜ? 俺は知らんけど。

 はーい、と声が聞こえてきた。それから更に少し待つ。

 ガチャリ。

 

「おお、颯斗」

 

「よ、一夏」

 

「最近IS学園からいなくなってたみたいだけど、どこ言ってたんだ?」

 

「ギリシャにな。代表候補生だからってことで理解してくれ」

 

「大変なんだなー」

 

「まあな」

 

 ギリシャで色々やってIS学園に戻って、今朝から俺は一夏の部屋を訪れていた。

 理由は勿論、一夏に話したいことがあるため。それも、割と大事な。

 

「まあ、ここで立ち話も何だし、はいれよ」

 

「おう、邪魔するぜ」

 

 一夏の言葉を受け、俺は部屋へと入っていった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 ……颯斗が一夏の部屋へと入っていく様子を、陰から見ていた人達がいた。

 箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ……まあいつものメンバーである。

 

「颯斗、一夏の部屋に入っていったけど、何の用なんだろ」

 

 曲がり角から一夏の部屋がある場所を覗き込みながら、シャルロットが言う。

 廊下には自分達以外いないのでもう隠れている必要がないのだが、それでもこそこそするのはお約束か。

 

「あいつ……まさか我々を出し抜くつもりか」

 

「いけませんわ一夏さん。殿方同士なんて非生産的な……!」

 

「落ち着けお前ら」

 

 ラウラ、さらにはラウラから伝搬されて妄想するセシリアに箒がツッコミを入れる。

 いくら女性の恋愛感情に関して鈍感な一夏といえどもそれはないだろう。入学して間もない頃、一夏のホモ疑惑が噂されたがそれは幻想だ。……と思いたい。

 そんな時、鈴音が動いた。

 

「ちょっと鈴さん? 何してますの?」

 

 鈴音は人差し指を口に当てて笑みを浮かべるだけで、そのまま一夏の部屋へと直行。その扉へと耳を当てた。

 鈴音の行動の意図に気づき、他の者達も一夏の部屋の前まで移動したのは言うまでもない。

 

「鈴、さすがにダメだよ。盗み聞きなんて」

 

「いいのよ。私は気になるから聞くんだから。気にならないなら聞かなきゃいいわ」

 

 良心から注意したシャルロットは、鈴音の反論に良心と好奇心との葛藤が起こる。

 で、ふと見ると、シャルロット以外の全員が扉に耳をつけていた。お前らには良心がないのか。

 しかしシャルロットも結局、扉に耳をくっつけてしまうのだった。

 

 ――だが、その直後。

 

「――付き合ってくれよ」

 

「おう、いいぞ」

 

「ッ!?!?」

 

 その会話に全員に衝撃が走った。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「ほう、地下街は全域繋がってるとな」

 

「ああ。食べ物、衣類、レジャー、etc。ここでなければ市内には無いって言われてるぐらいだぜここは」

 

「へー」

 

 一夏の承諾を受け、早速俺達は駅前のショッピングモール『レゾナンス』へと駆り出していた。一夏の解説を受けながら当ショッピングモール内をぶらりと歩く。

 

「今のところどこか行ってみたいとこってあるか?」

 

「んー、今はこのまま適当に歩いてみるってのがいいかな。どこに何があるかっていうのを感覚的に覚えたいし。後でゲーセンぐらいには立ち寄るか?」

 

「お、そりゃいいな。言っとくが俺は強いぜ?」

 

「お手柔らかに頼むよ」

 

 ハハハと笑いながら、一夏と共に練り歩く。

 ……後ろに追跡者が六人(・・)いることには互いに一切気づかないまま。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……ねえ」

 

「……何ですの?」

 

「……楽しそうね、あの二人」

 

「……楽しそうですわね」

 

「……一夏、かなり自然な笑顔だね」

 

「……ああ、そうだな」

 

 物陰から一夏と颯斗の後をつけながら、鈴音、セシリア、シャルロット、箒が口々に状況を確認する。目のハイライトが消えかけていると言えば今の彼女達の危険性がわかるだろうか。

 上記に出ていなかったラウラだが、彼女が一番危なかったりする。顔が凄いことになっている。IS第八巻最初のモノクロ挿し絵といって理解してほしい。

 今朝の二人の「付き合ってくれ」「おう、いいぞ」発言を聞いて、事の真意を探るべく追跡に乗り出した五人であったが、二人の様子を見て順調と言えるほどに怒りのパラメーターが上昇していた。ちなみにこれが振り切れると暴走する。

 パラメーター上昇の原因は大体一夏にある。一夏があそこまで自然体で、心から楽しそうな笑顔でいることが先の発言と相まってイライラを刺激している。箒達の場合は色仕掛けやら暴力沙汰やらがそれを阻害している訳なのだが、その辺は棚の上となっていた。

 

「……二人、付き合ってんの?」

 

「……どうでしょう」

 

「付き合ってるなら――二人とも、殺そう」

 

 言って、いつぞやのように部分展開したISの腕を握り締める鈴音。

 が、そこに声がかかった。

 

「んー、二人が殺されるとおねーさん困っちゃうなー」

 

「!?」

 

 聞き覚えのない声に全員が驚いて声がした場所――後ろを向く。

 

「あと、ISを勝手に展開するのはイケないゾ☆」

 

 パチッとウインクするのは、IS学園最強の称号を持つ生徒会長、更識楯無。

 手にしている扇子には、「追跡中」と書かれていた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……なるほどねぇ。つまり織斑くんと颯斗くんの関係が気になってるのね?」

 

「そうだ。それが貴様に邪魔され、一夏も見失った。どうしてくれる」

 

 箒達を近くの喫茶店に連れ込み、状況を聞いて納得している楯無に対し、修羅顔のラウラが言った。先輩である上生徒会長である彼女相手にこの態度はある意味凄い。

 対して楯無は「心配御無用」と書かれた扇子を見せると、ディスプレイを取り出してそこに映っているものを彼女達に見せた。

 

「颯斗くんに取り付けさせて貰ったビーコンよ。織斑くんが颯斗くんと行動してるならこれで問題ないでしょ」

 

「ビーコン、ですか。どうしてそんなものを?」

 

「まあ、こっちの事情よ。話すと脱線しちゃうから置いときましょ」

 

 ビーコンの理由は、早い話が颯斗の護衛のためである。

 所属がギリシャで決定されたとは言え、颯斗は依然狙われやすい立場。そんな颯斗を守るためにビーコンをつけており、かつこうして颯斗の後をつけている。ちなみに颯斗も了承している。尾行までは知らないが。

 

「で、二人の関係だけど、ネタばらししちゃおっか?」

 

「知ってるんですか!?」

 

「ええ。颯斗くんと同じ部屋だから話聞いてるし」

 

 他の女子がいたとしたら仰天する内容をさらっと言う楯無だが、アイラブ一夏な五人はこれをさらっと受け流していた。

 

「是非!!」

 

 全員が本気で詰め寄る。

 五人に一斉に詰め寄られても臆することなく、楯無は答えた。

 

「観光と案内よ」

 

「……………え?」

 

「あなた達が聞いたのも、案内として付き合ってくれってことじゃないの?」

 

「……………」

 

 全員が暫し黙る。

 ややあって、箒達は慌てて取り繕った。

 

「そ、そうか、そうか。わ、私はそうだろうと思っていたぞ」

 

「そ、そうですわ。大体、殿方同士なんてありえませんし」

 

「わ、私はあの時ちゃんとそう聞いていたわよ? 最初からわかっていたわよ?」

 

「そ、そうだよね。一夏、前にも似たようなことがあったし。僕も経験したし」

 

「ふ、不確定な情報になど、私は振り回されていないぞ」

 

 ピッ。

 

『是非!!』

 

 ピッ。……ピッ。

 

『是非!!』

 

 ピッ。

 

「是非!(笑)」

 

「やめて!!」

 

 

 

   ◇

 

 

 

 ショッピングモールを散策中、なんか犠牲者が出たような気がしたが……まあ気のせいだろ。

 昼時になって、昼飯ついでに友達を紹介するという一夏と共にやってきた場所は五反田食堂。

 ただの定食屋で間違いないはずなのになぜだか緊張してきた。なんでだろう。これが原作スポットの力なのか。

 まあとりあえず入る。

 

「お、一夏。……と、誰だ?」

 

「え!? い、一夏さん!?」

 

 店に入るなり一夏に反応を示したなは、言うまでもないだろうが五反田の兄妹、弾と蘭。

 弾の方はとりあえずは俺にも反応を示したが、蘭は一夏が来たということで頭がいっぱいらしくこちらに気づきもせずに慌てて店から飛び出していった。

 

「よ、弾。学園唯一の男友達を連れてきた」

 

「学園の男友達……!?」

 

 その言葉の意味を理解した弾は驚きの表情を俺に向けた。

 

「ま、まさかこの人が、世界で二番目の男性操縦者、傘霧颯斗さんかぁ!?」

 

「えーと、まあその通り、傘霧颯斗だ。呼び方はどっちでもいい。あと、さん付けじゃなくていいぞ。同い年なんだし」

 

「あ、ああ。五反田弾だ、よろしく」

 

 自己紹介をしあう俺達。しかし俺達はさっきから店の出入り口のところで立っている状態であり、

 

「くらぁっ、弾! お客さんいつまでも立たせてんじゃねえぞ!」

 

「は、はいぃっ!」

 

 ビビった。今の厨房からの怒声はホントビビった。

 怒声で我に帰った弾はテキパキと俺達をテーブルに案内する。

 椅子に座ると、苦笑しつつも一夏が解説した。

 

「えっと、今の怒声は店主であり弾の祖父でもある厳さん。怒ると怖いけど、いい人だから」

 

「お、おう」

 

「あと、さっき出て行った子は弾の妹で蘭って言うんだ。どうも俺に心を開いてくれないんだよなぁ」

 

「そりゃお前が唐変木だからだ」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「……なんでもねえ」

 

 治そうとするだけ無駄だし。

 一夏の唐変木ぶりについては放っておき、メニューを見る。さて何にするか……。

 

「オススメってなんだ?」

 

「やっぱ業火野菜炒め定食かな。鉄板メニューだ」

 

「じゃ、それにすっか」

 

「俺は、そうだな……トンカツ定食にしておくか」

 

 メニューを決め、弾に頼む。

 料理を待っている間に、いつの間にか戻ってきていた蘭が水入りのコップを持ってやってきた。服装が変わってるのは言うまでもない。

 

「い、一夏さん。お水持ってきました」

 

「おう、サンキュ」

 

 で、もう一人の客――つまり俺にもコップを置いて、そしてようやくこっちの顔に気がついた。

 

「あれ? ……あの、ひょっとして傘霧颯斗さんですか? 二人目のIS男性操縦者の」

 

「ん……ああ、そうだけど」

 

「ちょ……すごい! 二人も有名人が来てるなんて!」

 

「てか、今気づいたってのは、いくら一夏しか見えてなかったからってかなり失礼に――」

 

 ギンッ!!

 

「あ、はい、すいません……」

 

 ほんの一瞬で弾が制圧された。蘭すげぇ。

 友達に自慢しちゃおっかなーとかウキウキした様子で言ってる蘭。まあ普通に有名人に対する反応だな。一夏は特別として。

 

「今日こちらに来たのは、一夏さんの案内ですか?」

 

「ああ。俺この町に詳しくないから、一夏に案内頼んでいてな。昼飯ついでに友達紹介するってここに」

 

「へー、そうだったんですかー」

 

「おーい、弾、蘭! 料理運んでくれ!」

 

「あ、はーい!」

 

 呼ばれた兄妹が厨房の方へと向かっていく。

 その間に、一夏が話しかけてきた。

 

「颯斗、早速蘭と仲良くなってるけど、何かトリックとかでもあんの?」

 

「は?」

 

 あの程度で仲良くなってると言うのか。

 

「何言ってんだお前。有名人やカメラを前にすると興奮するだろ? それと同じだろ」

 

「そうなのか? 俺に対してはよそよそしいけど」

 

「大体お前のせいだ」

 

「何でだよ」

 

「……はぁー。これだから一夏なんだ」

 

「いや、意味わかんねぇよ」

 

 もはや何も言うまい。

 一夏のことはほっといて厨房の方から戻ってきた二人を見ると、俺達の注文した料理を運んできた。

 しかしなぜだ。注文してない定食まで置いてきたのだが。

 

「これは?」

 

「こっちの昼飯。……颯斗、昼飯ついでにIS学園の話聞かせてくれよ。一夏はアテにならねえからさ」

 

 後半を俺だけ聞こえるようにしたのは、一夏が食いついて話がこじれないようにするためか?

 しかし、IS学園の話、ねぇ……。

 

「……俺、現状マトモな学園生活送れてないけど、その体験談でいいなら聞くか?」

 

 少々悩んでから、俺の隣に座る弾にそう問いかける。ちなみに蘭は一夏の隣である。

 

「え? 何、まさかお前も一夏みたいな唐変木――」

 

「それは違う。……まず、俺一人だけ入学時期が六月末にずれ込む」

 

「お、おう」

 

「そして入学から一週間、織斑先生にしごかれる」

 

「おぅふ……そ、それはいきなりハードだな……」

 

「ハードなんて生易しいもんじゃねえよ……一日の実に半分以上の時間が日の光すらない部屋で織斑先生と缶詰め状態だったんだぞ……」

 

「「……ご愁傷様です」」

 

 弾と一夏両方から合掌された。いや死んでねえから俺。

 

「で、地獄の一週間を耐えた次にはすぐIS委員会に出席」

 

「確か、ギリシャ所属になったんでしたよね? ニュースでやってましたよ」

 

「時間制限をほとんどガン無視したお偉いさん達の話を寝る時間を割いてまで聞き続ける壊れた作業だった」

 

 ギリシャは別だったがな。

 

「で、次はどうなった?」

 

「IS学園に戻って数日後、現専用機が届いて特訓の日々。ピーキー仕様に振り回される日々」

 

「ん? 颯斗、現専用機ってどういうことだよ?」

 

 一夏が訊いてきた。……ああ、まだ一夏に言ってなかったっけ。

 

「俺の専用機は現在製作中なんだよ。だから完成するまでの間、別の言わば代用機でデータを取ってるって訳だ。で、そのまま現在に至る」

 

「へぇー」

 

「なるほど、お前の波乱万丈な生活はよくわかった。……で、だ。颯斗、女の園としてのIS学園はどうだ?」

 

「……現在、それ考えてる余裕がねえよ……」

 

「えぇー? そりゃないだろ。いい思いしてんだろ?」

 

 ぶー垂れる弾。しかし現実はそうだし、理由もあった。

 

「さっきも言ったが、まずマトモな学園生活を送れてない。六月末から夏休みまで約一ヶ月、その半分が学友と顔を合わせることもなく、残り半分も空いた時間は全てISの特訓に費やされ、それが夏休みにも食い込み……余裕の欠片もない状況なんだよこっちは……」

 

「お、おい、颯斗……?」

 

「……ところでお前、部屋はどこなんだ? 俺とは別の部屋で、誰かと一緒なのか?」

 

 俺から何か出てるのかたじろぐ弾。しかし一夏から質問が来たので少しだけ気を取り直して答える。

 

「……ああ、一つ上の先輩と相部屋。その先輩がIS特訓のコーチをやってもらってる」

 

 ガタッ!

 

「いい思いしてんじゃねえか――あべしっ!」

 

 弾が勢いよく立ち上がった直後、厨房から一直線に飛んできたおたまが弾を直撃。

 的に当たって高速回転するおたまを俺は難なく空中でキャッチし、静かに立ち上がる。

 

「……その先輩コーチなんだが、織斑先生と同じく人の限界を理解していて、限界ギリギリまで弄くり倒した上で上手にやる気を起こさせてくるから、いい思いとはある意味懸け離れた状態だぞ。――店主さん、飛んできたおたまここに置けばいいですかね?」

 

「おう、悪いな!」

 

「いえいえ。業火野菜炒め、おいしいです」

 

「当たり前だ。ウチの鉄板メニューだからな!」

 

 おたまをカウンターに置いて、ついでに厳さんと多少言葉を交わして戻ってくる。

 ……なぜか弾と一夏に物凄く驚かれた。

 

「じ、じーちゃんといい感じの会話ができてるだと……!?」

 

「いや、あれぐらい普通だろ?」

 

 こいつらの基準は一体何なんだ。

 あと、一夏からは、

 

「というか、空中で回転してるおたまをよく取れたな……」

 

 ピーキーISに乗って弾幕回避ばかりをやってた俺に隙はなかった。

 それからも飯を食いながら、彼女談義とかを繰り広げていった。




 次回から第五巻の話に入っていきます。
 ところで、この小説も章で区切りを入れた方がいいですかね? 気が乗ったら章管理もしようかな?
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