ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 早く投稿することができました。アトラスさんによる無双が始まります。


第十三話 トリハピ先輩

 それぞれのカタパルトから第二アリーナ・フィールドに箒達五人が舞い降りる。

 フィールドの中央には、赤いISを纏ったアトラスがすでに待っていた。装備はまだ手にしていない。

 

「おー、色とりどりだなー」

 

 そう呑気に言うアトラス。呑気でいられるのはそれだけの自信の表れであった。五人はその周囲を囲むように陣取る。

 ややあって、シャルロットが口を開いた。

 

「テイタン先輩。先程は大変失礼しました」

 

「あん? なんだいきなり」

 

 出てきたのは謝罪の言葉。シャルロットの言葉に合わせて他の面々も謝罪したり頭を下げる。

 颯斗に色々と聞かされ、自分達の言動を思い直した結果の謝罪だったのだが、その経緯を知らない、加えて元から気にしてなかったアトラスは首を傾げたのだった。

 

「んなもん気にしてねーよ。あれだろ、恋は盲目とかって奴だろ? ま、だからと言って理由も聞かずに先輩に敵対心剥き出しってのは誉められたものじゃないわな」

 

 ぐうの音も出ない五人。全くの正論であった。

 

「まあ、俺も含めて若い奴はそうやって失敗から学んでくもんなんだよ。――それと、反省はするが結局専属コーチの権利を渡す気はねぇんだろ?」

 

「……はい」

 

 言って、五人はそれぞれの得物を構えた。

 アトラスはそれを見て楽しそうな笑みを浮かべた。

 

「いいね。やっぱそう来ねえと、なっ!!」

 

 言うと共に、アトラスは自身の得物を展開し、装備する。

 持っているのは、実弾ランチャー《ソドム&ゴモラ》。颯斗のエックスに後付装備として搭載されているそれと同様の物が左右一対、アトラスの手に握られていた。カラーリングはアトラスのISと同じ赤に染められている。

 それだけではない。

 左右の肩と肩アーマーに二つずつ、計四つもの実弾砲が取り付けられていた。重心バランスを安定させるためか、アトラスは脚を前後に開く。

 

「さぁ……来いやっ!!」

 

 直後、試合開始の合図が鳴った。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「アトラスさんの専用機、名称は『ファーブニル』と言ってね。エックスと同じく第二世代新型のISなの」

 

「新……型?」

 

「後期開発機の俗称だ。そんなことも知らないのかとディスりたいけど、今はシエルさんの解説を優先させるぞ」

 

「お前……なんか最近俺に厳しくね?」

 

 気のせい、もしくはお前が悪い。

 第二アリーナの観客席で、現在アトラスさんと一年女子専用機持ち五人がバトルロワイヤルやってるのを観戦しながら、俺と一夏は偶然居合わせたシエルさんにアトラスさんのISの解説をお願いし、聞いていた。

 ファーブニルと言えば闘将ファーブニル。ZXAのアトラスとも関係があるので予想通りだった。肩の四つの砲身は、第二形態となったファーブニルの武装が元で間違いないだろう。

 

「第二世代新型のISには特殊な機能を持った武装が装備されているものが多いから、二・五世代型と呼ばれることも偶にあるわ。ほら、Xカノンの多目的射撃機構が特殊機能の一例よ」

 

「へぇー」

 

「……アトラスさんのファーブニルにも、それがあるんですか?」

 

「ええ。ファーブニルに搭載されている四つの実弾砲《クアッドブラスター》。《クアッドファランクス》を元に取り回しのしやすさを向上させようとフランスと協力して作り上げたものなんだけど、これに自動装填機構を取り付けたの」

 

「……それ、自動的にリロードされるって奴ですか?」

 

「ええ」

 

 うわぁ。と言いそうなるのを何とか飲み込んだ。

 実弾武器は装填されている弾丸を撃ち切ったらリロードを行わなければならない。リロードを行っている間は間違いなく隙になる。加えて一回一回装填されている残り弾数を意識しなければならない。

 しかしそのリロードが自動化されればどうなるか。その隙がなくなり、IS内に弾丸がある限り撃ち続けることができる。実弾武器の弱点が丸ごと解消されるのである。その代わり、残弾数をより意識しなければならないだろうが。

 

「強いじゃないですか」

 

「ただ、手で持たないタイプの武器って決まって重心バランスの不安定化が起きやすいの。クアッドブラスターはそれを四つも肩につけるから、非常にフロントヘビーになる。その状態で走り回るのはかなり難しいのよ」

 

 なるほど、そう来たか。

 アルカディア製ISと来て真っ先に思ったのが扱いの難しさがどのくらいかということだったが、強さに比例した難しさだと言える。操作は非常に難しいが、武器の重さ、重心のぐらつきさえコントロールできれば高い火力を存分にバラまくことができる。

 フィールドの方を見る。

 フィールドでは、アトラスさんがクアッドブラスターとソドム&ゴモラを立て続けに連射しているのが見えた。重心が安定しないことをものともせずに動き回り、計六つの反動制御を同時にやってのけるのはさすが生徒会長をやっていただけのことがあると言うべきか。っていうか……

 

「……アトラスさん、容赦なさすぎね?」

 

「ほ、箒達、大丈夫なのか……?」

 

 フィールドでは爆発、爆発、爆発。試合開始の合図が鳴って以降、アトラスさんの榴弾による爆破が一度も収まっていない。一夏が心配するのも少しわかる。爆発の煙のせいか、五人の姿が見えない。それでも連射と爆破が続いている。

 はぁ、とため息が聞こえた。俺と一夏が振り返ると、シエルさんの困ったように頭を抱えている姿が目に入った。

 

「……元々、ファーブニルに搭載するのはドゥエブラスターっていって、肩の実弾砲は二つにする予定だったんだけど……アトラスさんの要望があってクアッドブラスターを製作、搭載することになったの。今はまだマシになってるけど、当時の彼女――」

 

 

 

 

 

 ――すごい、トリガーハッピーだったのよ。

 

 納得だった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 爆音。爆音。爆音。

 ただひたすら響き渡り、他の音を打ち消しながら降りかかってくる攻撃を、代表候補生『四人』は何とか捌き、凌いでいた。残る一人、箒はというと榴弾の爆発にあっという間に飲まれ、すでにリタイアとなっていた。

 

「オラオラァ! どうしたぁ!!」

 

 アトラスは四人がいる場所をソドム&ゴモラ、そしてクアッドブラスターでとにかく連射する。

 

「ラウラ! あんたならAICで弾止められるでしょ!?」

 

「馬鹿言え! AICを使えば、その隙に側面を狙われる!」

 

「シャルロットさん、あなた盾装備はありませんの!?」

 

「あるけど、あんなの防ぎきれないよ!」

 

 なお、四人は団結しているようで微妙に噛み合ってない状態であった。

 というのも、一夏の専属コーチとなり、一夏と相部屋になれるのは最終的に勝った一人だけ。ここで積極的に前に出てシールドエネルギーやら武器を消費し、後に不利になることは避けたいと四人全員が思っているからだ。理想としては他の誰かがアトラスと潰し合い、消耗したところを一気に叩いて一人勝ちといきたいのである。

 しかしこのままではアトラスに何もできずに敗北する可能性が高い。事実として誰も積極的にいかず攻撃を捌くことばかりしているのでシールドエネルギーが徐々に削れていた。新たに強力なライバルを作るか他のライバルにリードを許すか……彼女達は後者を選ぶことにした。

 

「……ええい、仕方ない! 鈴、すぐに落とせ!」

 

「援護しますわシャルロットさん! 一気にやってしまいなさい!」

 

「「了解!」」

 

 ラウラがAICで榴弾を止め、セシリアがブルー・ティアーズでアトラスへの牽制射撃を始める。そして、鈴音とシャルロットがアトラスへの突撃を開始した。

 

「お、やっと来るか?」

 

 ブルー・ティアーズの射撃を華麗に回避しながらアトラスは待ちくたびれたかのように言う。もちろんと言うべきか、その間にもクアッドブラスターによる砲撃は止めていない。

 しかし右手、左手の装備はソドムとゴモラではなく、一対のガントレットナックルに変更されていた。

 

「はああっ!」

 

 構わずシャルロットは切りかかる。

 が。

 

「ほい残念」

 

「ええ!?」

 

 アトラスはただ回避するのではなく、砲撃をしながら、その反動で後ろに飛んでみせた。

 近接武器を展開しながらも距離を開けることまでは驚くことではない。しかし、射撃武器の反動で移動するのはシャルロットでも予想外だった。そもそも縦横無尽に動けるISでそのような動きは必要ないし、やってもその移動を制御できなければ無様に転がるか、壁に激突、すなわち余計に大きな隙を作りかねない。それをやってのけるアトラスはある意味制御技術が優れているとも言える。

 その行動はそういった格の違いを見せるものの一つでもあるが、同時に、後ろに跳ぶために撃った榴弾でシャルロットを怯ませるためでもあった。

 

「くっ!?」

 

「二人目ぇ!!」

 

「きゃあ!」

 

 後ろに跳んですぐ、両手ナックルのブースターを点火、その推進力を含めて瞬時加速。重い一撃でシャルロットを叩き伏せる。

 

「くーらえーっ!!」

 

「!」

 

 鈴音の双天牙月連結形態の投擲。が、

 

「まだまだだなぁ」

 

「ウソ!?」

 

 アトラスに命中する直前に双天牙月が横から殴り落とされた。アトラスの口調からして余裕だ。

 

「で、でもまだ衝撃砲が……!」

 

「その前に近づけば無問題!」

 

「って、ちょっ――」

 

 先ほどと同様の瞬時加速。すでに鈴音はアトラスの拳の圏内だった。そのまま叩き伏せられる。

 

「これで三人っと。――お?」

 

 鈴音をノックアウトさせ、残る二人の位置を確認しようとした矢先、アトラスがワイヤーブレードに絡め取られた。ラウラだ。

 

「捕まえた……セシリア、合わせろ!」

 

「それはこちらの台詞ですわ!」

 

 レールカノンとブルー・ティアーズがアトラスを狙う。しかしアトラスはこの状況でも慌てない。

 アトラスはやや小型の球体を展開した。しかし手に取ることはなく、そのまま地面に落ち――爆ぜる。

 

 ――キィィィィィンッ!!

 

「――ッ!?」

 

「ッ! スタングレネード!?」

 

「ISの保護によって気絶はないが、怯みはするだろ?」

 

 強烈な光と音に二人が怯む中、事前にスタングレネードに対する用意をしていたアトラスは悠然とそう言い、肩の四砲でセシリアを落とす。

 これで、残るはラウラのみとなった。

 

「さて、後はお前だなぁ」

 

「……ふ、ここまで来て私を残したこと、後悔するといい」

 

「ほう? 勝算があるみてーだな?」

 

「ああ、ある。貴様は今のでそいつの砲弾を撃ちきった、もしくはそれに近い状態だろうからな」

 

 ラウラの言う『そいつ』とは、クアッドブラスターのことである。

 確かに開始から今まで、アトラスはクアッドブラスターを連射し続けた。装填が省かれたからこその連射力だが、逆に残弾数の減りが急激に早くなる。いい加減、もう撃てないであろう状態と見ていたのだ。

 しかもその予測は、次のアトラスの言葉で確信へと変わった。

 

「そうだな……あと三発か」

 

「勝てる……これなら、私は勝って嫁を守り通すことができる!」

 

「しかし撃つ!」

 

 言って、アトラスはその榴弾三発を発射した。

 ラウラはその三発をAICで止め、半ば勝利を確信した。一番の脅威であった四つの砲門が止まり、ソドムとゴモラ程度ならラウラ一人でも捌ける。近接戦も、AICで止めるなりワイヤーブレードで縛るなりすれば簡単だ。

 しかし――、

 

 ドドドドドドッ!!!

 

「――ッ!?」

 

 勝利確定の最たる理由であった四つの砲門は止まっていなかった。AICの範囲外であった自分の両脇の地面を爆破され、その爆風に巻き込まれる。

 理解できないことに思考が一瞬停止し、その隙に誰かが――というか、アトラスがラウラを地面に押さえつけ、いつの間にか切り替えていたソドムとゴモラを向ける。

 

「な、なぜだ……確かに、お前は残り三発だと……」

 

「ああ、言った。正確には、一つの砲門につき三発(・・・・・・・・・・)だ。言葉遊びって、楽しいと思わないか?」

 

「」

 

 ドゴ―――――ン。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……うわーぉ」

 

 この言葉はアトラスさんの強さに対するものであるが、最後のラウラに対する決め手のえげつなさからくるものでもあった。

 見事な上げて落とす戦法だったよ。ラウラの絶望した表情がモニターからはっきりと見えたよ。そしてその絶望した相手に満面の笑みで引き金を引くアトラスさんも大概だよ。というか箒、お前いつの間に脱落してたんだよ。

 シエルさんを見てみる。これもアトラスさんの性格なのか、頭を抱えているがこれが初めてという様子ではなかった。

 ……しかし、強い。乱暴な言動や戦法とは裏腹に、制御技術が極めて精密で正確だ。ファーブニルが機体制御がうまい人でなければ扱いに難しいISだと考えても、これはすごい。

 

「てか、楯無さんもよくこんな人に勝てたなぁ……」

 

「ええ。私でもそう思うわねぇ」

 

「うおっ」

 

 いつの間にか楯無さんがいた。いつからいたんだ。

 

「途中から一緒に観てたわよ?」

 

 頭の中を当然のように読まないでください。

 

「前にも聞いたかもしれないけど、私の場合は機体の相性が良かったのよ。私のISは水を操れるから、それで榴弾の威力を殺してなんとか勝ったの」

 

「はぁ、なるほど」

 

「まあ水をそれに回していったせいでどっちも火力不足に陥って、かなりの泥試合になったんだけどねぇ」

 

 楯無さんのIS、『ミステリアス・レイディ』はナノマシンの水を扱い、それで武器の火力強化も行っている。となれば、その水が足りなくなれば火力が落ちるのも必然か。

 

「ま、それはともかくとして、うまくいったみたいで何よりだわ」

 

 そう言って楯無さんはこの場を立ち去る。――が、途中で何か思い出したようでこちらに振り返った。

 

「あ、そうだ颯斗くん、明日はアトラスさんの希望で合同で特訓を行うことになったから。ちなみに、君の訓練は予定通りあるわよ」

 

「あ、はい」

 

 ということは俺もそろそろ移動した方がいいか。

 立ち去る前にもう一度アリーナ・フィールドを見ると、アトラスさんがこちら側――というか、一夏に向かって手を振ってるのが見えた。

 まだ戦闘の凄さに衝撃を受けたままなのか、ぼーっとしている一夏に声をかけてやる。

 

「おい一夏、アトラスさんが手を振ってるぞ。手を振って返したらどうだ?」

 

「……え? お、おう」

 

 一夏は言われた通りにアトラスさんに手を振る。その行動が起こす未来をこいつ絶対に理解していないな。呆れつつ、ちょっと笑いをこらえつつ、この場を後にする。

 直後、聞こえてきたのは黄色い歓声と五人の怒声。

 

「一夏、貴様ぁぁぁぁっ!!」

 

「一夏さん、何手を振ってますの!?」

 

「一夏は私達が勝つよりテイタン先輩が勝って良かったって思ってたの!?」

 

「お前は私の嫁でありながら……!!」

 

「一夏のバカぁぁぁぁっ!!」

 

「うえええっ!? お、おい颯斗、これどうすれば――って、いねぇ!?」

 

 予想通りの未来がそこにあった。




 笑顔で上げて落として榴弾ブチ込むトリハピ先輩。……あれ、本当にこの人にフラグ立つのかなあ。作者自身も不安に思えてきた。
 さて、原作沿いで行くと前回言っておいてなんですが、その……原作ブレイク的なものをやっちゃおうかなぁと思ってる作者です。
 一応理屈は立てて、原作→アニメのものににたまに見られる「どうしてこうなった」にはならないようにはします。○○なんてなかった。ということも視点的問題を除いてありません。ただ、前述の理屈がある上で原作から早まったことをするだけです。それによってほかの部分も変わったりすると思いますが、そこは当然の結果として。
 なぜかって言うと、原作の話をただ書き直すってつまらないじゃないですか。……メインヒロインも早く出したいですし。(ボソッ
 皆さんはどう思いますか? 原作通りがいい! という場合はまだ間に合う段階なのでご意見を頂けると助かります。
 なんか他にも書くべきことがあったような気がしますが、忘れたのでこれで。
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