ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 感想にて指摘があったため、タイトルを変更しました。タグも一つ追加。
 案外、このタイトルの方がしっくりくるかも。


第十六話 執事姿の学園祭前編

「……はぁー」

 

「どうしたの、颯斗くん。今日が学園祭なんだから、シャキッとしなさい」

 

 自室で朝から早速ため息が漏れる。それに対して楯無さんから咎められた。

 楯無さんの言う通り、今日は学園祭の当日だ。一般開放はないので花火は上がらないが、大抵の女子は昨日からテンションが鰻登りだったと記憶している。

 しかしため息を漏らす理由が俺にはあった。

 

「その……すいません、楯無さん。結局、説得ができないままこの日になっちゃって……」

 

「ああ……そのことだったの」

 

 ため息の理由を察した楯無さんは申し訳なさそうな顔をした。

 結局、簪さんを説得するはできなかった。何かと理由をつけて接触し、説得を試みたものの、これといった手応えは掴めなかった。確か簪さんからはたかれたたら脈ありみたいな話が原作であったと思うが、それすらなかった辺り、俺には無理だったのかなと思えてしまう。

 

「ううん、気にしないで。……それに、そこまで頑固でいられるのって、寧ろ褒めるべきことだと思うの」

 

「ですけど……」

 

 楯無さんはああは言ってるが、内心では簪さんに学園祭に参加して欲しかったと思っていることだろう。

 実は、楯無さんが簪さんを説得しようとしていたところを俺は見ている。その時は二人の邪魔にならないよう影から見守っていたが、関係が良くないことがよく見てとれた。だから、楯無さんは俺に望みをかけていたに違いないのだが……

 

「こーら、颯斗くん」

 

 ペチッと畳まれた扇子で叩かれ、我に返る。

 

「そんな顔じゃ学園祭を楽しめないし、お客さんも気になっちゃうわよ。笑顔笑顔」

 

「……そうですね」

 

 ふぅっ、と少し強めに息を吐き、努めて笑顔……というか、いつもの表情に戻る。

 

「じゃ、学園祭、楽しみましょ?」

 

「はい」

 

 

 

   ◇

 

 

 

 一年一組のご奉仕喫茶は、まあ執事二人が引っ張りだこな状態であった。

 特に一夏の方が人気のようで、割と俺は余裕だった。一夏の指名が入ったり一夏の順番待ちを訊かれる度にイライラする女子が四人ほどいるのが気になるが仕方がない。

 

「いらっしゃいませ、お嬢様。さあ、こちらへどうぞ」

 

「おー、お嬢様って言われるのも悪くはねーかもな」

 

「……って、アトラスさん? なぜここに……」

 

 お嬢様はアトラスさんだった。

 

「ん? なんでって、そりゃIS学園の男子が執事になってると聞いたら、行かない理由はないだろ?」

 

「そういうものですか」

 

「それよりほら、案内しろよ」

 

「……かしこまりました。こちらでございます」

 

 アトラスさんを空いてる席へと案内する。

 

「お嬢様、本日はどなたをご指名なさいますか?」

 

「んー、一夏は想像以上に引っ張りだこみてえだな。じゃあお前で」

 

「かしこまりました。ご指名ありがとうございます」

 

 指名が俺なので、そのままメニューを持ってお見せする。

 

「ご注文はいかがなさいますか? お嬢様」

 

「執事にご褒美セット一つな」

 

 ……このお嬢様、すでに誰かから聞いてらっしゃるのではなかろうか。メニュー見てなかったし、いたずら心なのかニヤニヤしてるし。

 だが嫌だと言う訳には当然いかないので、我慢しつつ営業スマイルを浮かべる。

 

「執事にご褒美セットがお一つですね。かしこまりました」

 

 復唱してブローチ型マイクからキッチンにオーダーを通し、一礼をしてアトラスさんの前から立ち去る。

 はいどうぞ、と渡されるアイスハーブティーと冷やしたポッキーのセットを受け取り、遅すぎず速すぎずの速さでアトラスさんの元へと戻る。

 

「お待たせしました、お嬢様」

 

「おう。まあ座れよ」

 

「では、失礼します。このセットのご説明を――」

 

「ああ、別にいいぞ。もう聞いてあるから」

 

「さ、左様でございますか」

 

 やっぱり聞いていたよこの人。確信犯だよ。

 アトラスさんはポッキーを一本手に取り、こちらへと先端を向ける。その表情は、実に楽しそうなものだった。

 

「ほれ、あーん」

 

「では……あーん」

 

 ポッキーをくわえ、パキリと咀嚼する。冷えたポッキーは本当にうまいのだが、何回も食べるとさすがに飽きがくる。ポッキー以外も用意してもらえばよかったかな……でもそれだと費用がかさむか。

 

「とても美味でございます」

 

「おお。確かにな」

 

 言いながらパキパキとポッキーを食っていくアトラスさん。別にいいどころかこちらが恥ずかしい思いしないからありがたいんだが、これ相手に食べさせるというメニューだってわかってるんだよね?

 結局残るポッキーを全て自分で食べ、アイスティーも飲み終えたアトラスさんはもう十分といった感じで立ち上がった。

 

「後輩の催し物を軽く見て回るつもりで来たんだし、ここはさっさと次の客に渡すわ」

 

 そう言ってアトラスさんは勘定を払って行った。

 

「はーい。楯無さん参上!」

 

「どっから湧いてきたんですか」

 

 いつの間にかメイド姿の楯無さんが現れていた。

 

「人を虫みたいに言わないの。ほら、颯斗くん第四テーブルに指名入っているわよ?」

 

「……了解です」

 

 それから新聞部エースの黛薫子さんが来て写真撮影会があったのだが、一夏と箒の後に俺も写真に写ることになった。

 まず、楯無さん。

 

「いえい♪ ほら颯斗くんも!」

 

「はあ」

 

「うーん、ノリが悪いなぁ。じゃあラウラちゃんみたいにお姫様抱っこしてもらおっかな?」

 

「なんでそうなるんですか……」

 

「ほらほら、おねーさんを抱っこしなさい」

 

「はいはい。……よっと」

 

「おっと。……颯斗くん、結構力持ちね」

 

「女の子ぐらいならなんとかいけますよっ……とと」

 

「あの……傘霧くん、大丈夫?」

 

「そう思うなら、早く撮ってくださいっ……!」

 

 次に、一夏。

 

「男同士で写真映えってするのか?」

 

「さあ……?」

 

「何言ってるの。ここは執事が売りなんだから撮っておかないと。……織斑くんが攻めの構図ができるかそれとも逆か」

 

「ん? なんだって?」

 

「あ、そういうことならやっぱ結構です」

 

「や、ごめん。冗談だから。だから一枚は撮らせて!」

 

 それから一夏は楯無さんの計らいで一時休憩を取ることになった。……あれ、俺は?

 

「さすがに男子二人も休みにはできないわ。この喫茶は執事が売りなんだし」

 

「ですよねー」

 

 しばらくは休めなさそうだ。

 それから一夏が来るまでは一夏の分まで引っ張りだこになった。目が回るかと思った。

 

 一夏が戻ってきてからさらに一時間後(楯無さんは一夏が戻る前にいなくなってた)、やっと忙しさから一時解放された。

 

「あー、疲れた」

 

「お疲れ様、かっきー」

 

 そう労うのはのほほんさんである。

 

「そういや、生徒会の催し物……観客参加型シンデレラだっけ? 俺達生徒会がその準備に行かなくていいのか?」

 

 一夏と他四人には聞こえないように尋ねる。

 一夏を王子様役(一夏の了承なし)として、景品付きの王冠を女子が奪い合うという感じのシンデレラ。景品は『指定した一日だけ一夏のことを好きにできる権利』。一夏と同室同居の権利ではないのは、今一夏と相部屋なのが楯無さんではなくアトラスさんだからだろうか。

 

「問題ないよ〜。たっちゃんさんがね〜、ちゃんとやってくれてるから〜」

 

 まあ、あの人なら大丈夫だって思えるわな。

 しかし生徒会の役割は他にもある。例えば校内パトロール。学園祭当日である今日、虚さんがゲート前で監視しているとは言え、招待客に紛れてよからぬ者が入っていたり、ひょっとしたら校内でトラブルが起きてるかもしれない。虚さんがゲート前の管理、楯無さんが催し物の準備となると、校内を見回っている生徒会はいないことになる。ちょうどこれから一時間ほど喫茶は立て直しのため休憩取れるみたいだし。

 

「のほほんさんや、校内パトロールに行くか」

 

「わーい! かっきーと学園祭デートだ〜!」

 

「ええ!? それホント!?」

 

 のほほんさんの言葉に女子が反応する。が、俺はにっこりとした笑みで一言。

 

「一時間で校内を見回る分、催し物には参加しないぞ?」

 

「オワタ」

 

 きりさく(論理)は急所に当たったようだ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 一時間という制限時間のため、教室内も本当にサッと見て次に進む。

 

「かっきー待ってよ〜。これじゃあ学園祭デートにならないよ〜」

 

「元からそのつもりないからな。のほほんさんも特にそういうつもりではないんだろ?」

 

「バレちゃった。でも〜、それは敢えて言わないべきだと思うな〜」

 

「知らん」

 

 危険物、不審物、不審者、トラブルなどがないか見ていきながら校内を歩く。できればもっと早足にしたいところだが、のほほんさんの速度がゆっくりなため、それに合わせなければならない。

 

「まあ虚さんがゲートで見張ってるんだから、まず不審者が入ることがそうそうないか」

 

「その通りだよ〜。だからあのたこ焼きを……」

 

「だがトラブルが起きないとは限らないからな。パトロールは続けるぞ」

 

「がーん!」

 

 なんか、楯無さんへの対応の仕方が影響してきてるかな。女子に対しては適当に言って終わらせてることが多くなってきた。

 

「ったく、ほら」

 

「へ?」

 

 いつまでもショックを受けたように固まっているのほほんさんにドーナツを差し出した。先ほど入ったドーナツ研究会の催し物であるドーナツ試食会にあったものだ。

 

「こぼすなよ?」

 

「ありがと〜かっきー!」

 

 満面の笑みになったのほほんさんはドーナツを受け取って一心不乱に食べ始めた。

 その様子を見て呆れながら、再び歩き始める。……前方不注意で誰かとぶつかってしまう。

 

「あっと、すいません」

 

「……………」

 

 謝ってから相手を確認すると、ぶつかったのは小柄な女の子だった。幼さがある顔と背丈から見た目年齢は小学校高学年から中学一年といったぐらいか。黒い服に加えて瞳や髪の色も黒い。

 そんな少女はジッとこちらを見つめていた。怒ってる様子ではないみたいだが……。

 

「あ、あの……?」

 

「……………」

 

 声をかけてみるが、少女は無言のまま立ち去っていった。……なんだったんだ?

 

「どうしたの、かっきー?」

 

「……いや、何でもない。パトロール続けるぞ」

 

「うい!」

 

 気を取り直して校内の見回りを再開する。

 そういやあの子……迷子だったりしてたのかな? ここ案内も少ないから慣れてないと迷いやすいし。

 

 この時ちゃんと原作知識を意識していれば、あの子の正体を感づくこともできたのかもしれなかったが……学園祭の雰囲気に浮かれていた上に原作でこれから起きることを忘れていた俺にはそれができなかった。




 原作を忘れちゃってる主人公。簪の説得ミッションに失敗し、パトロールしていながらも敵を見逃していると、ダメダメな颯斗です。大丈夫なのかこんな主人公で。
 学園祭はあと二話、それにもう一話加えて第五巻は終わりにする予定です。この小説が本気を出し始めるのは六巻、七巻ぐらいからかなー? と思いながらサクサクと(しすぎてるかも? な)話を書いていきます。次回は中編です。
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