ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 第十七話は二本立てです。こちらは一夏視点。
 楯無さんが颯斗と簪の救援に向かったので書くことになりました。


第十七・五話 もう一方の襲撃の学園祭中編

 更衣室にて、少し前まで王子様役として何人ものシンデレラに追い回されていた一夏は、現在今までで最大のピンチに陥っていた。

 

「さっきのはなぁ! リムーバーっつうんだよ! ISを強制解除できるっつー秘密兵器だぜ? 生きてるうちに見れてよかったなあ!」

 

 蜘蛛のような装甲脚を持つIS『アラクネ』を操る襲撃者、オータムが使った装置によって一夏の白式が奪われたのである。

 ISを奪われた今、一夏には反撃どころか戦うことすらできない。

 

「じゃあな、ガキ。お前にはもう用はないから、ついでに殺してやるよ」

 

 オータムはそう言ってISの装甲脚を一夏に向ける。

 直後、ドカンッ! という大きな音が響いた。しかし音源はオータムではない。更衣室の出入り口だった。

 

「おーっす。一夏、無事か? ちゃんと生きてるならご褒美として美術部で貰ったあめ玉くれてやるぜ」

 

「アトラスさん!」

 

 この場にそぐわない呑気な言葉。破壊されたドアの前に立っているのはアトラスであった。

 

「てめぇ、どこから入りやがった?」

 

「見りゃわかるだろ? ドア蹴破ってきた」

 

「ハッ! ……まあいい。見られたからにはてめえも殺す!」

 

「! アトラスさん、逃げてください!」

 

「お、なかなかのヒロイン発言だな。こいつが敵として……俺がヒーローか?」

 

「何ごちゃごちゃ言ってやがる!」

 

 オータムの装甲脚がアトラスを刺殺せんと襲いかかる。しかしアトラスは余裕の笑みを崩さず、瞬時に自身のIS、ファーブニルの脚だけを部分展開して跳躍、空中でオータムを壁に蹴り飛ばし、さらにその反動で跳んで一夏の目の前に着地した。

 

「ほらよ一夏」

 

「んぐ!?」

 

「ちゃんと生きてたご褒美だ」

 

 しゃがんだアトラスがあめ玉を取り出すとそれを一夏の口の中に押し込む。いきなりのことに一夏が驚くが、アトラスはその様子が面白いようで笑っていた。

 

「とりあえず、さらっと状況教えてくれ」

 

「……あいつはオータムと言って、亡国機業って組織の構成員だと名乗ってました。それと、リムーバーって装置で、俺のISが奪われて……!」

 

「ああ、あいつの手の中にあるISコアがそれだな? じゃあここは俺に任せて、一夏は願うなりなんなりしてな」

 

 よっと、とアトラスは立ち上がる。それと同時に、蹴り飛ばされていたオータムも立ち上がっていた。

 

「てめぇ……殺す!」

 

「殺すしか言えねえのか? ちったあ言葉を考えねえと、三下になっちまうぞ」

 

「なめんな! 死ね!」

 

 八つの装甲脚と二本の腕で襲いかかるオータム。それに対してアトラスは脚部の部分展開とハイパーセンサーだけで、オータムの攻撃を全てかわしていた。

 

「攻撃が荒いぞ? そんなんじゃあ簡単に避けられるぜ」

 

「くそっ! 何なんだよてめぇはよぉ!!」

 

「元学園最強」

 

 言って、アトラスの素早いローキック。装甲脚八本全てが一気に刈り取られ、オータムの身体が宙に浮くと同時に傾く。

 

「なあ!?」

 

「遅いぜ」

 

「がっ!!」

 

 いつの間にか展開していたガントレットナックルで頭を掴まれ、オータムは床に叩きつけられる。

 ヒュウ♪ と軽く口笛を吹いてアトラスは少し距離を取る。その口笛の音が挑発しているようで、オータムの神経を逆撫でした。

 

「ガキが……調子づくなあ!!」

 

 オータムは背中の装甲脚を射撃モードに切り替え、アトラスを狙い連射する。

 

「おっとと」

 

 部分展開でしかないアトラスはロッカーを飛び越え、弾幕を回避する。

 

「逃がすかぁ!」

 

 オータムはロッカーを蹴り倒して突き進み、アトラスを追いかける。

 しかし装甲脚の射撃や格闘攻撃、途中から抜いたカタールによる攻撃も、全てやり過ごされ、それどころか反撃を受ける。オータムが攻撃を苛烈にしていくたびにアトラスはISの展開部分を増やしているが、それも馬鹿にしているようでオータムの苛立ちを加速させていった。

 

「何なんだよ、てめぇは!?」

 

「何度も言わせんな、めんどくせえ」

 

 アトラスはしれっとそう言い、サマーソルトキックで装甲脚を弾く。

 しかしアトラスが後ろに下がろうとしたところで、後ろが壁であることに気がついた。

 

「およ」

 

「もらった!」

 

 アトラスが見せた隙に、オータムは練り込んでおいた蜘蛛の糸を放出、アトラスを捕らえる。

 

「へへ……さあ、追い詰めたぜ……!」

 

 上がった息を整えながら、装甲脚をアトラスに向けてゆっくりと、正面から近づく。

 二人の戦闘に追いついた一夏が横から叫ぶ。

 

「アトラスさん!」

 

「心配すんなって。俺はまだ、主力武器を出してねえんだぜ?」

 

「余裕ぶってんじゃねえ! 動けねえ腕で何ができる!」

 

 オータムが吼える。だがアトラスは余裕でいた。

 なぜなら、勝利を確信しているから。少なくとも、相手が真正面にいる限り(・・・・・・・・・・・)

 

「ところでお前、そんな立ち位置で大丈夫なのか?」

 

「あ? 何言ってやがる?」

 

「だってよ、お前の立ってる場所――」

 

 

 

 

 

 ――ガッツリ射線のど真ん中だぜ?

 

 その言葉と共に展開される、ファーブニルの主力である肩装備、四つの実弾砲、クアッドブラスター。

 

「!?」

 

 ギクリとするオータム。だがもう遅い。四つの砲門は標準がすでに定まり、弾丸はそもそも自動装填。後は気の済むまで撃つだけだ。

 次の瞬間、オータムは爆破の嵐に飲み込まれた。

 飲まれたら最後、何もかも破壊しつくす榴弾の一斉射撃。装甲脚も腰部装甲も武装も何もかも、オータムのISの全てを砕いていく。

 しかしアトラスは途中でその一斉射撃を止めた。弾切れではない。アラクネは大ダメージを負ったがまだ再起不能という訳でもない。

 ならなぜか? トドメは彼に譲るためだ。

 

「じゃ、一夏。最後はビシッと決めてくれよ?」

 

「――来い、白式!」

 

 右腕を掴み、意識を集中する一夏。彼は光に包まれた次の瞬間には、一夏は奪われたはずの白式を纏っていた。

 

「なぁっ!? て、てめぇ、一体どうやって――」

 

「知るか! 食らえ!!」

 

 雪片弐型の斬撃で残った装甲脚を切り裂き、さらに加速を乗せた蹴りでオータムを壁へと吹き飛ばす。

 

「ぐぇっ!!」

 

 その衝撃で壁が崩れ、壁の向こう側が見えた。

 

「! 一夏、確保急げ!」

 

「は、はい!」

 

「くそ、ここまでか……!」

 

 オータムがISの装甲をパージした。パージされたISは光を放ち始める。

 

「ちっ!」

 

 アトラスはすぐに一夏に追いついて彼の首根っこを掴んで引き寄せ、クアッドブラスターの榴弾をISの手前に発射。榴弾の爆風と発射の反動で一夏と共に素早く後方へと退避することでISの自爆の直撃から逃れ、事なきを得た。

 

「……ふぅ。危機一髪ってところか」

 

「は、はい。……あの、ア、アトラスさん?」

 

「あん?」

 

「そ、そろそろ、離してもらえると、嬉しいのですが……」

 

 アトラスが一夏を引き寄せる際、一夏を抱きしめるような状態になり、現在もその態勢から変わっていない。

 つまるところ一夏は現在、アトラスの豊満な胸に埋められている状態であった。

 「ほう?」とアトラスは、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「一夏はやっぱ、こういう胸が好きなのか?」

 

「い、いや! そういうことじゃなくて!」

 

「そうなのか? ってぇことは、貧乳派か?」

 

「だから、そういう問題じゃありません!」

 

「ああそうか、つまり脚フェチか」

 

「話聞いてます!?」

 

「はははっ、やっぱお前面白いな」

 

 アトラスはカラカラと笑いながら一夏を解放してやる。一方一夏は今し方までの戦闘の後にからかわれて、がっくりとうなだれていた。

 

「ところで一夏、これなーんだ?」

 

 アトラスはそう言って、オータムとの戦闘中に拾った『それ』を回して弄ぶ。

 

「……? 王冠、ですか?」

 

「そ。手に入れた人は指定した一日だけお前を好きにできるというナイスなアイテムだ」

 

「はあ!? なんですかそのルール……というか、それで女子があんな必死に!?」

 

「おう。俺が拾ったんで、権利も俺のもんな。いやー、この戦闘頑張った甲斐があったなー♪」

 

 嬉しそうに笑うアトラスに対して、一夏はもうどうにでもなれと言わんばかりに背中から倒れた。




 アトラスさんTUEEEEEEEEEEEE!!
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