ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 いきなりですが時間がかなり飛びます。まあ理由は文中にありますから。


第二話 クラスメイトはほとんど女……って、それ以前の問題があるだと?

 六月である。

 正確には、六月ももう終わりである。

 俺は、男性対象IS適性試験で見事ISを動かしてしまい、こうしてIS学園に来ることになった。

 ……今日が、IS学園登校初日(・・)だ。

 なんでここまで遅くなったかと言うと、まあ言ってしまえば試験を受ける日時が遅かった。ISの数は限られている。加えて、試験対象者は全国の男性十五歳(現高校一年生)から十八歳。ちなみに他各国でも試験は行われたそうだ。俺以外一人も出なかったみたいだけど。

 それはそうとして、とにかく対象の男性の数が膨大なのである。少子高齢化? 全国からかき集めりゃそれでも時間かかるわボケェ。

 それからもう他にもかかりにかかって(試験会場が超大混雑&大混乱とか、そもそも試験が始まったのが四月の後半と遅れに遅れていたとか、手続きとかその他etc)結果として、ここにこれたのが六月終わりとなったのだ。

 ちなみにだが、俺を先導しているのは一年一組副担任の山田真耶。隣にはブロンドヘアーの女子生徒、シャルロット・デュノア。これってつまり、あれじゃないか? 二巻の終わり辺りじゃね?

 

「じゃあ、ちょっとここで待っていてくださいね」

 

「あ、はい」

 

「わかりました」

 

 一年一組の教室の前に着き、そう言って山田先生が先に教室へと入っていく。

 扉越しに、山田先生のやや困ったような声が聞こえてきた。

 

「えー……皆さん、今日は、ですね……転校生を二名紹介します。と言っても、一名はすでに紹介は済んでいると言いますか、もう一人もすごい人だったりするのですが、えっと……」

 

 ざわざわと女子の声が聞こえてくる。

 まあ、俺もシャルロットもある意味問題児だよね。新しく来た男性とか、男性に扮していた女子とか。

 

「じゃあ、どうぞ」

 

「失礼します」

 

 シャルロットがそう言ってスタスタ入っていく。

 

「あ、えーと……失礼しまーす」

 

 俺も続く。

 中に入って様子を伺えば、ほぼ全員が目を点にしている。

 俺のことは何日か前にニュースで報道されたのだから、驚きの理由はほぼ全部シャルロットの方だろう。多分。

 

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします」

 

「えー、傘霧颯斗と言います。ISの起動に成功してしまったのでここに来ました。苗字が言いづらいと自覚しているので名前呼びでも構いません。よろしくお願いします」

 

 ポカーン、とした目の前の女子達。

 そして、

 

「えええええええっ!?」

 

「おぅふ」

 

 教室が揺れた。比喩のつもりだったが、本当にちょっと揺れた気がした。

 教室という密閉空間内での悲鳴とか絶叫は響く。ホント響く。

 

「男の子が来たのもびっくりだけど、デュノア君って女の子なの!?」

 

「って、確か昨日、男子が大浴場使って――」

 

 あ、ヤバい。ここに立ってるのはヤバい気がする。

 でも今動いちゃいけないっていう理不尽はどうしたものか――

 

 ドカンッ!!

 

 ゴッ!!

 

「痛ぁっ!!」

 

 先程の絶叫に負けず劣らずの轟音と共に頭に受けた衝撃に思わずうずくまる。

 受けた衝撃の正体は、壁ごと吹っ飛ばされた、元は扉だった瓦礫が頭にぶち当たったものだというのはすぐわかった。一応アニメも見てたし。

 で、その犯人、IS『甲龍(シェンロン)』を展開した凰鈴音はこちらに悪びれる様子もなく――というか、気づいてもなく――一夏に砲口を向ける。多分、向けてる。見えないけど。衝撃砲だから。

 

「一夏ぁっ!! 死ね!!!」

 

 迷うことなく衝撃砲発射。これって普通死ぬよね。恋人殺してそれでいいのか鈴音よ。

 しかしそれは原作通りラウラ・ボーデヴィッヒが止めに入ったので事なきを得たがのだが、しかし次の行動がまた教室を騒がせる。俺は一夏の近くにいて巻き込まれるようなことを未然に防ぐため、教室の隅に退避。

 ラウラが一夏に接吻をかました。

 そっから一夏ラバーズ大憤怒。

 

「あ、あ、アンタねええええっ!!」

 

 鈴音が衝撃砲を構え。

 

「一夏さん? 突然ですが大事なお話がありまして。ええ、急を要しますの。おほほほほ……」

 

 セシリア・オルコットが『ブルー・ティアーズ』を展開しつつ立ち上がり。

 

「……一夏。どういうつもりか説明してもらおうか」

 

 篠ノ之箒が日本刀を構え。……てか、いつも持ち歩いてんの?

 

「一夏って、他の女の子の前でキスしちゃうんだね。僕、びっくりしたな」

 

 シャルロットは自身の最強武器《灰色の鱗殻(グレー・スケイル)》を取り出す。……もう、骨すら残らないだろ。

 しかし彼の主人公補正は凄まじい。こんな窮地の中で彼の元に救世主(メシア)がやってきた。

 

「何をしている馬鹿者共」

 

 スパーン×4。

 

「「「「いったあああっ!?」」」」

 

 その名も織斑千冬という。

 出席簿アタックが四人の頭に炸裂し、四人が一斉に悲鳴を上げた。ん? 三人はISつけてるだろって? そこはあれだよ。知らぬが仏ってやつ。

 ちなみにラウラは鈴音の衝撃砲を止めてからすぐにISを解除していた。来るって予感がしてたのか?

 

「指定区域以外でのIS起動は校則でも国際条約でも違反行為だ。お前達には後で罰則を与える。篠ノ之にもこのくだらん騒ぎに加担した罰は与える。とっとと席に着け。凰はさっさと自分の教室に戻れ」

 

 さすがに織斑先生には適わず、全員それぞれの場所に戻っていく。

 俺もそろそろ戻……って、まだ席わかんねーんだった。

 

「えっと……俺の席ってどこですか?」

 

「ん? ああ、傘霧の席は織斑の左隣だ」

 

 なる。じゃあささっと座らせてもらいます。

 

「一時間目は実習を行う。各人すぐに着替えて第三アリーナに集合しろ。それと傘霧」

 

「はい」

 

 呼ばれたので返事をする。大事なコミュニケーションです。しっかりしましょう。

 

「お前はクラスとは別となって特別講習を受けてもらう」

 

「はい?」

 

 いきなりだがよくわからん展開になってきた。特別講習? なんぞそれ?

 

「お前、必読と書かれた参考書は読んだか?」

 

「読んでません。届いたのが昨日の夜でした」

 

「だろうな。だからお前にはクラスとは別の特別時間割を受けてもらう。約一週間でクラスの授業に追いついてもらう予定だ」

 

 いや、確かにこのままじゃ授業に全くついていけないっていうのはわかるけど。

 けど、たった一週間で追いつけとは酷な話じゃありませんか。

 

「安心しろ。私が教鞭を取ってやる。確実に追いつかせるさ」

 

 あ、死んだ。俺死んだ。

 オメガどころか一度もISに乗ることなく死ねるわこれ。試験は触れて反応を見るだけだったし。

 

「教室は授業のため使えない場合があるからな。特別に懲罰部屋を使うこととする。荷物を持って移動しろ。以上だ、解散!」

 

「……ええと」

 

 一夏が気まずそうに、哀れみのこもった視線をこちらに向けてくる。

 俺はフッと息を吐き、少し余裕を持ったような表情を作り……サムズアップする。

 

「逝ってくる!」

 

「……帰ってこいよ!」

 

 まだ面と向き合って自己紹介しあってないのに絆が生まれた……ような気がした。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 ベチャリ。そんな効果音が出そうな感じでテーブルに突っ伏した。

 現在昼休み。場所は食堂。しかし食事は取っておらず、目の前に飯はなく、食欲もない。

 もう、あーとかうーとか言う気力もない。ダメだ、初日の午前中でもう気力がもってかれた。

 

「なあ……大丈夫か?」

 

「……おぉ?」

 

 声をかけられたので顔を上げると、そこには一夏がいた。その後ろにはシャルロットとか箒とかセシリアとか鈴音とかラウラもいる。

 

「……人って、本気出せば四時間でノイローゼになれるんだなって思った」

 

「それはヤバいな……」

 

 一夏が隣に座った。それから箒達も座り始めるが、一つのテーブルでは間に合わないため一部は隣のテーブルに着く。

 

「こっちの自己紹介がまだだったよな。俺は織斑一夏って言うんだ。同じ男同士、仲良くしようぜ」

 

 自己紹介が始まったので、俺は身体を起こす。さすがにだらしないまま聞くのはいけない。

 

「おう、よろしく。できれば一緒に来た奴らも紹介してくれると助かる」

 

「おう、わかった」

 

 まず一夏は箒を指差した。

 

「こいつは篠ノ之箒。俺の幼なじみだ」

 

「よろしく頼む」

 

「ああ、こっちもよろしく」

 

「で、こっちも幼なじみの凰鈴音」

 

「ああ……今朝壁ぶち抜いて入ってきた殺人未遂者か」

 

 ちなみに瓦礫が直撃した後頭部、結構腫れたぞ。

 

「ちょっと、人を人殺しみたいに言わないでよ。ま、よろしくね」

 

「次に、セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生。狙撃がすげえうまい」

 

「代表候補生……まあそのままの意味だろうな」

 

「ええ! 国家代表操縦者の候補、すなわちエリートなのですわ!」

 

 わざわざ立ち上がって腰に手を当てるセシリア。しかし様になってるな。

 

「ちなみに鈴は中国の代表候補生だ。次はシャルロット……は、名前はもう聞いたよな。フランスの代表候補生で、気配りがうまい」

 

「よろしくね。あと、今朝はありがと」

 

「? シャルロットさん、今朝とは何の話ですの?」

 

「さっき話に出てた、鈴が壁を吹き飛ばした時にね、瓦礫が飛んできたんだけど、傘霧君の影になっていたから助かったんだ」

 

「鈴、お前……」

 

「しょ、しょうがないでしょ! というか、元はと言えば一夏が悪いんじゃないの!」

 

「なんでだよ!」

 

「あー、それはいいから。あと一人紹介残ってるだろ?」

 

 話が脱線しそうになったので軌道修正をさせる。

 俺の言葉に落ち着きを取り戻した二人は居住まいを正し、一夏は最後の紹介をする。

 

「そして、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「おい一夏。自分の夫であることが抜けているぞ」

 

「いや、違うってか、まず嫁とか夫の呼び方が間違ってるって」

 

「……というかアンタ! よくあんなことしたわねぇ! わ、私ですら、ま、まだしていないってのにぃぃぃっ!!」

 

「そうだ。それもあんな公衆の前で堂々と……は、破廉恥極まりない!」

 

 あぁ、なんか勝手に騒ぎ始めた。

 ……もう、戻るか。懲罰部屋(特別教室)へ。確か今度入ったら、夕食の時まで拘束状態だっけぇ……?

 憂鬱な気分になりながら、のそりと立ち上がり、フラフラと食堂を後にした。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 光を差す窓のない空間。

 机上に積み込まれた教科書や参考書。

 黒板の代わりにディスプレイを使って説明をする織斑先生。

 死んだ魚のような目になっている俺。

 懲罰部屋で特別授業を再開して、何時間経ったのだろう。ここには時計はないし、腕時計なんてつけてないし、こっそり携帯で確認しようとしたら制裁くらいそうだからできないし。

 授業はまあ、基礎の基礎部分からやってるから理解はできる。しかし、急ぐ分詳しい説明というものをかなり端折ってしまっているのでその理解もかなりギリギリの状態だ。というか、理解が追いつかないものが出始めている。

 なお、色々と急ぐために午後一時に授業を開始してから今まで休みが一切ない。俺が休みなく授業を受けれてるのは、織斑先生が俺が気力切れにならないギリギリのラインを見極めているからだろう。そう考えるとこの人、並みの怪物よりも質が悪いと思う。

 

「む、もうこんな時間か」

 

 おもむろに腕時計を見た織斑先生がそう呟いた。そしてこっちを向いた。

 

「ここで授業を一時中断、休憩時間に入る。夕食を取ってこい。七時より授業を再開する」

 

 マ・ジ・か。

 

「マジだ。寝る間も惜しんで勉強してもらう」

 

 地の文に答えないでください。エスパーですかあなたは。

 しかしキツすぎる。こんな日々を一週間続けたら冗談抜きで俺の身が持たないんじゃなかろうか。

 いやだがしかし、これはクラスのみんなに追いつくためなんだ。この一週間頑張れば一組と合流して学園生活を送れるようになる。ひょっとしたら三巻の臨海学校に行けるかも――

 

「ああ、そういえば言い忘れていたが」

 

「はい?」

 

「一週間の授業の後、お前はIS委員会に出てもらうことになる」

 

「は!?」

 

 思わず立ち上がった。疲労とか空腹とか色んなものが吹き飛んだ。

 

「え? IS委員会って、どういうこと!? ……ですか?」

 

「今から説明する。まず、お前がどういう立場にあるかからだ」

 

 え、俺の立場? 二人目の男性操縦者ってだけじゃないの?

 

「わかっていると思うが、お前は二人目の男性操縦者として名が知れている。それだけなら別に問題ないのだが、お前の国籍が問題なんだ」

 

「え? 国籍?」

 

「お前は日本人だろう? そして『一人目』である織斑一夏も日本人、すなわち現在、男性操縦者は二人とも日本が所有しているということになる。男性操縦者という特異例のデータは誰もが欲しがるものでな。各国が日本の特異データ独占に抗議しているそうだ」

 

「それで、俺の身柄を寄越せ……と?」

 

「そういうことだ。お前にはIS委員会に出席して、そこで新たな所属国家を決めてもらう」

 

「えーと……一夏はどうなんですか?」

 

「織斑は日本国籍のままだ。あいつは現在所属に関する会議が続いてはいるが、白式が日本ISである以上実質的に日本所属なのでな」

 

 そうなのか。

 一夏は日本で俺は海外へ……これって、見方と解釈変えたら、俺って一夏を日本に残すためのスケープゴートにされたようなもんじゃね?

 

「今、身代わりにされたのではないかと考えているだろう」

 

 なぜわかる。

 

「いえ、そんな訳じゃ……」

 

「別に咎めるつもりはないから安心しろ。そしてその解釈は間違いではない。政府は織斑と自国のISが他国へ流れることを防ぐため来たばかりのお前を差し出した。そこは誤魔化しようのない事実だ」

 

 マジか。

 いや、でもこういう大人の事情もあるのが普通だよな。前世で呼んでた転生系二次小説って大人の裏側の話っていうのが欠片もなく思い通りに進むことがあるけど、そんな風には進まないんだよなぁ……。

 

「だが代わりと言っては何だが、お前には破格の待遇を受けることができる」

 

「破格の待遇、ですか?」

 

「さっきも言ったが、男性操縦者のデータというものはどの国家も欲しがるものだ。お前を引き入れるために、見返りをいくらでも吊り上げることが予想できる。それ以外にも、自分が乗る専用ISを多大な選択肢の中から選ぶことができるというのも極めて大きな利点と言えるだろう」

 

 ISを選べる?

 え、ひょっとしてこれがオメガ入手イベントだったりするの?

 確かにどうやって入手できるのかなーと思ったことはあるけど……随分遠回りだな神様。

 

「今話すべきなのはこのくらいか。早く食事に行ってこい」

 

 そう送り出され、懲罰部屋から出る。

 ……まあ、とりあえずは食事か。考えるのは一週間後にしよう。




 織斑先生が直接教鞭とれば、一週間でどうにかなると思うんだ。だってあの人、絶対前世が鬼でしょ?
 ねえ、そう思わないか颯斗くん……ってあれ、どうして逃げんの? 君からもコメント欲しいんだけど。

千冬「誰の前世が鬼だって?」

「」

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