ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 後日に一夏争奪戦の結果発表があったってことは、学園祭自体は問題なく終了できたんですよね?


第十八話 簪さんと行く学園祭後編

 IS学園の医療室。

 貫かれた左肩と脇腹の傷の手当てはどうにか終わり、他の傷と一緒に包帯で巻かれていた。左腕は三角巾で動かないようにされている。

 

「ふぅ……大事に至らなくて助かったよ。今日は運がいい」

 

「……大事に、至ってる。左肩、骨折って……」

 

「ん? 骨が折れたぐらいだろ? あの時の感触からして砕けてもおかしくなかったかなーって思ってたから、そこは不幸中の幸いだよ」

 

 俺はそう簪さんに答える。

 今言ったように、左肩は骨折していた。しかし粉砕骨折にはなってない分、まだマシな方だと言えるだろう。脇腹貫通も、奇跡的に内臓はよけてたので本当に今回は運が味方したと言える。

 

「で、でも……傘霧くんが大怪我をしたのは、私のせいだから……………ご、ごめんなさい……っ」

 

「うーん……どちらかって言うと、こっちがごめんなさいなんだけどな」

 

「え……」

 

「相手は元から俺が狙いだったみたいだからな。あの時俺が整備室にいなかったら、簪さんが巻き込まれることがなかったんだよ。だから、巻き込ませて、怖い思いさせて、ごめん」

 

「ち、違う……! 傘霧くんが悪いことなんて……!」

 

「ところで、簪さんには怪我はないか?」

 

 このままだと平行線で雰囲気を悪くしそうなので、話を切り替える。

 

「え? ……う、うん。私は、大丈夫」

 

「そっか。簪さんが無事で良かった」

 

 身を挺して守ろうとしたのに守れなかったとかだったらカッコ悪い上に自己嫌悪に陥るところだったが、そういうことはなかったようだ。

 そのことに安堵して笑っていると、なぜか簪さんがぼーっとこちらを見つめていた。心なしか少し顔が赤い気がする。なんかぶつぶつ呟いているし……いやいや、この笑顔で落ちるなんてことはないだろ? 原作で一夏に落ちた理由は……あれ、確かピンチを助けた後の笑顔だったような。

 

「あ、あー……それにしても学園祭どうすっかなぁ。上着着て包帯隠すにしても、三角巾は目立つよなぁ」

 

「う、うん……」

 

 気まずさをどうにかするため話題を変えるが、簪さんの反応にしまったと心の中で呟く。よりにもよって簪さんをネガティブな思考に誘導してしまった。もっとまともな話題用意できなかったのかよ俺。

 なお、学園祭自体は予定通り続いている。俺が襲撃された整備室周辺は人通りがほとんどなかったため当事者以外には気づかれておらず、俺と同時に襲撃されたらしい一夏の方についてもうまく丸め込まれたらしい。派手なドンパチやらかした割には一夏は大した怪我してないし。……と、こちらの様子を見にきた楯無さんの話。

 それはそうとして、こうなったらいい感じの解決策を無理やりにでも考えつくしかない。要は、三角巾があってそれが目立つのがいけないんだから……

 

「……三角巾外すか?」

 

「だ、ダメ!」

 

 予想外に早く食いついてきた。

 

「そ、そんなことしたら、ダメ……腕と一緒に、肩も動いちゃう」

 

「そ、そうだな」

 

「仮に、動かさないようにしても……人とすれ違う時に肩をぶつけるかもしれない……」

 

「混雑してるからなー一部」

 

 主に一年一組だが。……ん、混雑?

 気になるワードから思考をして十秒後、ピコンと電球が光を灯した。

 

「そうだ、こうすれば三角巾あっても堂々と歩けるじゃないか」

 

「……?」

 

 首を傾げる簪さんに、ちょっと電話してくると断りを入れて立ち上がり、その場から少し離れる。そして携帯を取り出し、楯無さんに電話をかける。

 

『はいはーい、どうしたの颯斗くん。怪我は大丈夫?』

 

「ええ、大丈夫です。楯無さん、一つお願いしたいことが――」

 

 一分程度の電話を終えて俺は簪さんの元へと戻る。

 

「簪さん!」

 

「な、何?」

 

「学園祭見に行こうぜ!」

 

「へ?」

 

 簪さんのしばらくポカンとした表情が印象的だった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「お、颯斗じゃん。……って、どうしたんだその怪我?」

 

 簪さんを(半ば強引にだが)引き連れて一緒に校内を歩き始めると、一夏の親友である五反田弾に出くわした。そして彼の隣にいる人物も俺の知人だった。

 

「よ、弾。蘭も」

 

「どうも、颯斗さん。この度は学園祭に招待してくださってありがとうございます」

 

 その人物、五反田蘭はぺこりとお辞儀した。

 そうそう、生徒がそれぞれ一名だけ送れる招待券、俺は蘭に送ったんだった。だって、実家は割と地方で遠いし。ぶっちゃけここに親を呼んでどうしろと。というか執事姿で奉仕してるところを親に見られるとかどんな羞恥プレイだ。一応電話したけど前述の遠いという理由で断られたし。

 

「あー、いいって。こっちも渡す相手がいなかったからさ」

 

「で、もう一度訊くけどどうしたんだその怪我?」

 

「ああ、これはだな――」

 

 ピンポンパンポーン。ちょうどいいタイミングで校内放送が流れてきた。

 

『学園生徒及びご来校の皆様にご連絡致します。本日の学園祭では一部混雑しており、怪我人が出たとの報告が入っています。皆様も足元などに十分お気をつけの上、何かありましたら近くの教職員に声をかけてください。繰り返します――』

 

 放送局員による校内放送。俺はそれが流れるスピーカーから弾の方へと向き直り、右手の親指を立てて自身に向ける。

 

「実例」

 

「って、お前がその怪我人かよ!」

 

「怪我人を叩かない」

 

 弾のツッコミの手を当たる前に叩き落とす。蘭も、え〜……と呆れた顔をしている。

 実はこれが、楯無さんに頼んでやってもらったことであり、俺の名案である。つまり、怪我が目立つといけない理由であるなら、目立ってもいい理由にすり替えればいいじゃない。ってことである。

 

「颯斗さんのその怪我……具体的に何があってそうなったんですか」

 

「混雑で足元の確認が疎かになってな。階段踏み外して盛大に転げ落ちた」

 

「うわ、大丈夫なのかそれ」

 

「大丈夫じゃねーよ。骨折したんだから」

 

「それはご愁傷様で。で、隣にいる子は?」

 

「ああ、俺がその怪我をした時に助けてもらってな。お礼にこうして一緒に催し物見て回ってんだ」

 

「へ!?」

 

 俺のそのアドリブの説明を聞いて簪さんは肩を跳ね上げた。

 勝手に簪さんの説明をでっち上げたのは悪いかもしれないが、もう言ってしまった手前、これで押し通す。

 

「ま、そういう訳で、二人も怪我には気をつけろよ」

 

「おう。お前も気をつけろよ」

 

「では颯斗さん、お大事に」

 

 二人とは別れて、また簪さんと歩き出す。

 

「か、傘霧くん、待って……!」

 

 が、簪さんに呼び止められる。

 

「どうした?」

 

「その……いいの? 私なんかと、一緒で……」

 

「いいも何も、俺は元からそのつもりだったけど。……俺とじゃ嫌だったか?」

 

「そ、そんなこと……ない、けど……」

 

 首を横に振る簪さんの様子に、安心して笑顔を向ける。

 

「じゃあ一緒に見ていこうぜ。あんなことがあって俺は腕がこんなだし、簪さんも今日はもう整備室には立ち入れないだろうし。一人で回ってくより一緒に行った方が楽しいだろうしさ」

 

「う、うん」

 

「じゃ、何か気になるものがあれば遠慮なく言ってくれよ」

 

 簪さんの了承も得て、ゆっくり校内を見て回ることになった。

 

 

 

 料理部・お惣菜販売。

 

「おお、この肉じゃがうまいな」

 

「……傘霧くんは、料理するの?」

 

「いや、作れるものっつったらインスタント麺か適当にフライパンで焼くようなものばっかだな」

 

「そうなんだ。……あれ作ったら、食べてくれるかな……?」

 

「ん? なんか言った?」

 

「な、何でも、ない」

 

 

 

 アート部・作品展示。

 

「二次創作物もあるのか」

 

「あ……この絵のアニメ、知ってる」

 

「そうなんだ? 簪さん的にそのアニメは好きなのか?」

 

「うん、好き……」

 

「なるほどなー。……お、これは俺見たことあるな」

 

「あ、私も、それ見たことある……」

 

「そうなのか。共通で知ってるものがあるって嬉しいな」

 

「え? あ、う、うん。嬉しい……」

 

 

 

 書道部・書道体験コーナー。

 

「筆握るの、学校の授業以来だなぁ」

 

「……………」

 

「簪さんはどうなんだ……って、ぅわ、すげえ達筆」

 

「そんなことは、ないと思うけど……」

 

「その出来でそんなことないって言われたら、こっちのただでさえ少ない自信が蒸発する」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「いや、謝る必要はないぞ?」

 

「そ、そう?」

 

(まあ、更識家は暗部であることを隠して普段は良家だって楯無さん言ってたからなあ。当然教育はしっかりしてるか)

 

 

 

 ファッションデザイン研究会・試着コーナー。

 

「こんな部があるとはな……さすが女子校、なのか?」

 

「か、傘霧くん……」

 

「……………お、おぉ」

 

「に、似合わない、かな……」

 

「いや、その逆で、その……す、素直に見とれてた」

 

「――ッ!?」

 

(あ、顔真っ赤になった。てか、俺も顔赤くなってはいないよな……?)

 

 

 

   ◇

 

 

 

 催し物を見て回っている内に時間も過ぎ、ついに学園祭も残すはキャンプファイヤーのみとなった。

 燃え盛る焚き火を少し離れた芝生から簪さんと座って眺めている。俺は胡座で、簪さんは右隣で体育座り。近くに他の人はいないので結構静かだった。

 

「大変なこともあったけど、なんとか学園祭は無事に終わりそうだな」

 

「うん……」

 

 んーっ……、と座ったまま右腕だけ上げて背中を伸ばす。……傷に障って痛くなった。

 

「いてて……」

 

「か、傘霧くん、大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫大丈夫……ところで、簪さん」

 

「何……?」

 

「学園祭、楽しかったか?」

 

「……そこそこ、かな」

 

「ははっ、そこそこか。……そうだな、事件に巻き込まれて、楽しむ気分じゃなくなったのも仕方ないよな」

 

 申し訳ないことをしたと思う。学園祭を楽しんでもらおうと思ってたのに、俺を狙った襲撃に巻き込んでしまった。流血も見せてしまい、トラウマにもなったかもしれない。

 しかし簪さんは俺の言葉に首を横に振った。

 

「そういうのじゃない……傘霧くんは悪くない。そ、それに……」

 

「それに?」

 

「最後の最後で、学園祭に参加できたのは……傘霧くんのおかげで、その……あ、あり……ありがとう」

 

「……そっか。お役に立てたのなら良かったよ」

 

 礼を言われて、思わず顔がほころぶ。そりゃそうだ。美少女の「ありがとう」で嬉しくなるのは、俺が転生者だとか相手が原作キャラだとかを抜きにしても当然だ。

 礼を言うのが慣れてないのか、簪さんは恥ずかしそうに俯いた。俺は無理に話しかけたりはせずにキャンプファイヤーを眺めることを再開する。ちょうど、一夏といつもの五人、プラス、アトラスさんも加わってなにやらやってるようで騒がしかった。なんかISが見えたような気がしたが、暗くて見間違えただけだろう、うん。閃光が見えたりしたが、花火でもやってんのカナー。

 

「そ、それとね――」

 

 俺がそう思っていると、簪さんはそう俺に話しかけてきた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……? それと、なんだ?」

 

 続く言葉が一向に聞こえてこず、颯斗は尋ねる。

 しかし簪はそれからさらに少し間を置いた後、ふるふると首を横に振った。

 

「……ううん。やっぱり、なんでもない」

 

「そうなのか?」

 

 こくりと頷く。颯斗はそれ以上追及することはなかった。

 

(やっぱり……今はまだ、言えない)

 

 自分にとってのヒーローが見つかった、なんて。

 身を挺して自分を庇ってくれた、まさにヒーローそのもの。

 そのヒーロー……傘霧颯斗は、笑顔が優しい人だった。

 

(傘霧……颯斗……)

 

 再びキャンプファイヤーを眺めている颯斗の横顔を見る。

 ただの横顔のはずなのに、どこかカッコいいと感じる。

 それはきっと、ヒーローだからというだけじゃない。

 

「……ん、どうした? やっぱり、何か伝えたいことでもあるのか?」

 

 ぼーっと眺めていると、視線に気づいたらしい颯斗に尋ねられた。

 簪は慌てて視線を逸らす。

 

「う、ううん。なんでも、ない」

 

「そうか? ならいいけど」

 

 颯斗はそう言って顔を戻す。

 簪はドキドキと高鳴る心臓をどうにか抑えようと必死になっていた。

 同時に、意識し始める。

 横顔がカッコよく見える。こんなにもドキドキする。どちらも『ヒーローだから』ではなく『颯斗だから』なのかもしれない……と。

 つまり――

 

(……〜〜〜ッ!?)

 

 簪は首を全力で横に振った。

 顔が熱い。間違いなく今の想像をしたせいだ。心臓の高鳴りもさらに激しくなっている。

 

(だ、ダメ……考えちゃダメ……)

 

 胸を必死で押さえる。深呼吸もする。とにかく今の自分を颯斗に見られないように心を落ち着かせようとする。どうして颯斗に見られたくないのかなど考えてられない。むしろ、考えたら余計に落ち着かなくなるだろう。

 しかしドキドキが止まらない。簪はそれを振り払おうとまたブンブンと首を振る。

 ……何度も全力で首を振っていれば、その様子に隣人が気づくのは当然な訳で。

 

「簪さーん。どうしたんだそんなに首振って」

 

「ッ――!?」

 

 簪が気づかない内に颯斗が顔を近づけてきていた。間近になった顔を見て簪の心臓が跳ねる。

 

「髪が思いっきり乱れてるぞ。ちょっとじっとしてろ」

 

 言って、颯斗は右手で簪の乱れた髪を整え始めた。

 優しく撫でられているような心地よさ。しかしそれも含めて颯斗に触られていることに心臓が破裂しそうになる。

 

「……………キュゥ」

 

「……あれ、ちょっ、簪さん? 簪さーん!?」

 

 しまいには、恥ずかしさから簪はオーバーヒートを起こし、気を失ってしまうのであった。




 ピンチの中身を挺して簪を守る。
     ↓
 医療室で二人きりの時に自分の怪我も気にせず簪が無事で良かったとヒーロースマイル(簪視点)
     ↓
 鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに学園祭デート。

 ……颯斗もなかなかの旗の建築スキルがあると思いませんか。これが主人公力というものか。むしろ今まで主人公力発揮することが全然なかったね。これからが期待です。
 次回は学園祭後の話をちょろっと。亡国機業の方も少し出します。第五巻はそれで終わりになりますね。
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