ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 昨日IS第九巻買いました。楯無さんと簪ちゃんの出番が結構あったのはよかった。
 第五巻のラスト辺りのお話です。


第十九話 学園祭後日談

 簪さんが気絶し、そのまま学園祭が終了。

 目が覚める様子もなく、怪我の都合上俺では運ぶことは無理なため、携帯で楯無さんを呼んで簪さんを部屋まで運んでもらった。

 で、現在は自室。さっさと寝たいが楯無さんから話があるということで、互いに各自のベッドに腰掛け、今回の襲撃者について話をしていた。

 

「……で、亡国機業(ファントム・タスク)って組織について、楯無さんはどのくらい知ってるんですか?」

 

「あら、『何なのか』じゃなくて『どのくらい知ってるか』で訊くのね?」

 

「ええ、まあ。ぶっちゃけ何なのかを聞いても犯罪組織ってこと以上のことは理解できないでしょうし」

 

「ぶっちゃけるわね。素直なのは感心するけど。……ま、答えやすい質問でこっちも助かるわ」

 

 バッと楯無さんの持っていた扇子が開かれる。そこに書かれていたのは『謎』の一文字。

 

「正直言って、私も亡国機業については詳しく把握できてないのよ。各国のISを強奪して使用してるというのは前から知ってたんだけど、どれほどのISが奪われているのか、組織の規模や目的とかも多くがわからないままだわ」

 

「てぇことは、今回現れたアフールって奴とかギリシャの試作第三世代が奪われていたこととかも情報としては初なんですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

 わお、即答。

 ちなみにだが、アフールが乗り捨てたあの機体、名称は元ネタの通りに『エルピス』というのだが、今日中にもうシエルさんに引き渡され、搭乗者データは消去されたらしい。搭乗者データが消去されると改めてフィッティングをしなければならず、アフールが再びエルピスを奪い取ることの予防にはこれで十分機能するそうだ。

 なお、エルピスが取り戻されたことに開発者であるシエルさんが感謝していたと楯無さん談。俺にも礼を言いたいそうだが、俺、大したことしてないんだよなぁ。楯無さんが来るまでやられてばっかだったし、いいとこ取りをしただけだし。

 

「まあそれでも、そのISを奪って使ってくる組織が颯斗くんと一夏くんを狙ってるって情報を最近掴んだから、こうして予防線を張ってたの」

 

「アトラスさんに一夏のコーチをやらせた経緯って、そういうことだったんですね」

 

 最初にその話を聞いた時は驚いたが、今になってみれば納得だった。楯無さんの身体は一つだけなのだから、別々にいる二人を守るにはどちらかは誰かに代行をやってもらうしかない。弱い男二人を一緒にさせる訳にもいかないし。

 

「そういうこと。これで当面は大丈夫そうだし、私も少しは気が休まるわ」

 

「ということは、俺は一夏と同室になるんですかね。それは――」

 

 助かります、とは言わない。言ったら弄ってくる。すでに学習した。

 

「寂しくなりますね」

 

「ちゃんと一緒にいてあげるわよ? 私には、あなたのコーチという使命がまだあるんだから」

 

 ああ、そうだった。俺ってまだまだザコいままだし。

 早くどうにかしないとな。連勝とかいかなくてもいいから、最低限こういう時に勝てるようにしないと。でなければ近くにいる人も守れない。今回はなんとか簪さんを守れたが、あんな身体張って守るのを何回もやってたら身体がもたないし、まず間に合わない可能性だってある。だからそういう事態を起こさないように、勝てるようにしないと。

 

「じゃあ、これからも特訓お願いしますね」

 

「ええ、勿論。……それと、話したいことがもう一つ」

 

「?」

 

「簪ちゃんのこと……守ってくれて、ありがと」

 

「いや、あれはですね。まず俺が整備室に行かなければ、簪さんが襲われることもなかったと言いますか……」

 

「襲撃に誰かが巻き込まれるなんて、言ってしまえば当然よ。あなたが整備室にいなくても、別の場所で他の誰かが巻き込まれていたでしょう。私が言いたいのはそこじゃなくて、戦えない簪ちゃんを、そんな大怪我してまで守ってくれたってこと」

 

「俺は弱いんで、盾になって余計な怪我するぐらいしかできませんよ」

 

 ひねくれた俺の回答に、楯無さんは困った表情を浮かべた。

 

「もう、こっちはお礼言って褒めてるのになぁ。怪我を覚悟で誰かを庇うって、なかなかできないことよ?」

 

「楯無さんなら庇った上で、無傷でいられますもんね」

 

「だから、そういうことじゃなくって」

 

「わかってますよ。ただとにかく、簪さんを守らなきゃって、それで一生懸命だったんだと思いますよ、あの時は」

 

 ひねくれた回答もほどほどに、素直に答える。ひねくれは楯無さんに対するちょっとした対抗心だ。

 

「もう……でも、本当にありがとう。君のおかげで簪ちゃんも学園祭楽しんでもらえたみたいだし、その礼も言うわ」

 

「ええ。まあ、簪さんは事件のせいで楽しみはそこそこ止まりになってしまったそうですが。……ああ、そうそう」

 

 簪さん絡みで思い出したことがあるので、その提案を楯無さんに持ちかける。

 

「簪さんのことで、もう一つ俺に任されてもいいですかね?」

 

「え?」

 

 その時の楯無さんは少し驚いたような顔をしていた。

 それから俺の提案を楯無さんに了承してもらって、いい加減眠いのでそれで寝た。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 学園祭の結果発表はまあ、予想通りに一夏の生徒会行き、加えて一夏の各部への貸し出しが決定となって(一夏の所属を決める勝負なので、俺は無関係)、放課後の生徒会室。

 

「織斑一夏くん、生徒会副会長着任おめでとう!」

 

「おめでと〜」

 

「おめでとう。これからよろしく」

 

「おめでとさん」

 

 楯無さん、のほほんさん、虚さん、俺の順でそれぞれの祝福の言葉。そして腕が怪我してる俺を除いた三人がクラッカーを鳴らす。

 歓迎されている一夏はげんなりとした表情だった。

 

「どうしてこんなことに……」

 

「楯無さんに目をつけられた時点で、諦めも大事だと気づいておくべきだったのさ」

 

「諦めたら試合終了だろ」

 

「試合が始まる前に決着はついていた。出来レースとも言う」

 

「なんてこった……!」

 

 膝と手をつく一夏。そんな一夏を特に気にすることなく、これからの一夏の仕事説明とか、あとは虚さんが一夏に弾について訊いてたりしていた。

 で、生徒会メンバーが揃った記念&一夏の副会長就任記念ということでケーキが用意された。

 

「それでは……乾杯!」

 

「かんぱーい〜」

 

「乾杯」

 

「は、はは……乾杯。はぁ……」

 

「諦めろ。そして慣れろ。そんでもって乾杯」

 

 こうして、IS学園の男子は二人揃って生徒会所属となったのであった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「恋人とは楽しめましたか? スコール」

 

「ええ。といっても、髪を洗ってあげた程度なのだけど」

 

 高層マンションの最上階。そこでスマイルは、いつものにこやかな笑みで目の前の女性――スコールと話をしていた。一本のワインボトルを両手で丁寧に持っている。

 

オータム(恋人)にとっては、一緒にいるだけでも至福なのでしょう。いいワインがありますが、いかがですか?」

 

「いただくわ」

 

 かしこまりました。と一礼して、スマイルは用意したグラスにワインを注ぐ。

 スコールとオータムは恋人同士。それに対してスコールとスマイルの関係は、言うなればお嬢様と執事を思わせるものだった。

 

「悪くないわね。――で、こうして私の元に来てるのは、何もワインを勧めるためだけじゃないのでしょう?」

 

「勿論。今回の報告をいくつかさせていただきます。まずはアフールの戦果なのですが……」

 

「リムーバーによるISの強奪は失敗、でしょう。それくらいわかるわ」

 

「おわかりでしたか。遠隔召還で奪還された上に日本の暗部――更識楯無が入って来られれば、アフールとエルピスのスペックで強奪は酷かと」

 

「わかってるわ。他は?」

 

「エルピスのISコアがIS学園に置き去りにされました。アフールの例の天然です」

 

「やらかしたわねあの子……」

 

 スコールが空いている手で顔を押さえた。

 

「彼女にISを渡した時点で、こうなることは予測してあるべきかと」

 

「予測はしていたわ。だからあんな低スペックのISを渡したんだもの。でも現実になってほしくはなかったわね」

 

「ISの適性は我々の中でも高い値なんですがねぇ」

 

「あの天然、どうにかならない?」

 

「どうにかなるなら、すでにやってますよ?」

 

 遠回しに「諦めろ」の一言。スコールはため息をつく。そう返ってくるのは見えていたため、これは諦めのため息だった。

 

「他には?」

 

「迷彩装置――確か『ハイダー』という名称でしたね。それの試運転を行いました」

 

「結果は?」

 

「元がISの特殊兵装、ハイパーセンサーを欺く程の迷彩能力はさすがですが、持続時間が短すぎます」

 

「仕方ないわ。ISの特殊兵器をIS以外で使おうとすればそんなものよ」

 

「わかってはいますが、どうにかなりませんかねぇ。……EOS(イオス)のバッテリーでも持ってきますか?」

 

「やめなさい。ハイダーは誰にでも使えることを前提にして開発させてるのよ? そんなことしたら、マトモに扱えるのがあなただけになるじゃない」

 

「おや、そうでしたね。これは失礼しました」

 

 そもそもEOSのバッテリーなど亡国機業にはない。持ってくるとしたらどこかの国から奪ってくるということだが、それについてわざわざ口に出す者はここにはいない。

 

「まあ、意見はあった方がよろしいかと。という訳でこちらの試運転レポートを渡しておきます」

 

 言って、懐から取り出した紙束をスコールに手渡す。

 

「報告は以上です」

 

「そう。なら、もういいわよ」

 

「かしこまりました。失礼します」

 

 スマイルは一礼をしてから部屋を出て行く。

 通路に出て、扉を閉めたところでスマイルは動きを止めた。時を止めたかのように、微動だにしない。いつものニコニコとした笑みが、何を考えているのかを想像させない。

 やがて、彼の口が動いた。

 

「さて、忙しくなりそうですね」

 

 それだけ言うと、人気のない通路を一人歩き始めるのであった。




 スマイルはこれからも色々暗躍します。颯斗や学園側の新キャラが出た分の調整といったところですかね。
 ……ちなみに、EOSのバッテリーは三十キロ(IS第八巻より)。スマイルはそんなのを積んでもまともに扱えるそうです。パネェ。
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