早めの投稿となりました。そろそろMagic gameの更新に動きたいなぁ……。
わかっていると思う話だが、俺は現在左肩を怪我している。
その怪我が原因で左腕は動かせない。利き腕じゃないから全く問題ないとは言えない。問題大有りだ。
例えば衣服。片腕動かせないがために自分一人では服の脱ぎ着が困難、もしくはできない事態になる。
そのため、現在は他の人に服を着るのを手伝ってもらっているのだが……。
「着せ替え人形になるんだよなぁ……」
「んー? 何か言ったかしら、颯斗くん?」
「……いえ」
楽しそうに俺のクローゼットを物色している楯無さんを見て、すでに諦めている俺は溜め息を吐く。周囲には俺の私服が並べられている。並べられていると言ってもそんなに数がある訳ではなく、加えて半分くらいが夏休みにギリシャで写真撮影された時に貰った衣装だ。俺は衣服にはかなり無頓着だ。基本学園では制服だし。
「んー、衣服が少ないわねぇ。これなら雑誌に載ってた衣装をそのまま着せた方がいいかしら」
「楯無さん」
「なーに?」
「どうして楯無さんが俺の服のコーディネートをやってるんでしょうか」
「だって今日、簪ちゃんとお買い物に行くんでしょう?」
「なんで知ってるんですか」
「おねーさん頑張った!」
威張るところなのだろうかそれは。そして何を頑張ったんだ。
――そう、今日は簪と約束した土曜日である。これから簪が指定した場所へと行く予定だ。
俺は楯無さんにはこのことについては言ってない。だって、ついて来そうだもん。バレてたけど。
「楯無さん、ついて来るんですか」
「勿論!」
「アトラスさんか織斑先生にに言いますよ」
「やめてくださいしんでしまいます」
とても素早い返しだった。織斑先生はともかく、アトラスさんの名前出しとけば今後楯無さんの牽制できるんじゃね?
まあ、楯無さんは俺の護衛やってるんだし、仕事の内なんだろう。どっちかって言うと、簪が変な奴に声かけられないか心配ってのがメインっぽそうだけど。
「私、簪ちゃんのことが心配なのよ」
「ああ、やっぱり」
「身内贔屓だとしても簪ちゃんかわいいから、猛獣の颯斗くんに襲われて食べられちゃわないか心配で心配で!」
「あ、もしもしアトラスさん聞こえますか?」
「ストォォォップ!」
携帯をひったくられた。
結局貰い物の衣装を楯無さんに着せてもらい、約束の集合場所へ向かうことになった。あ、楯無さんは普通についてきてた。
◇
「「あっ」」
約束の三十分ほど前。指定場所に着く前に簪と出くわした。
相手より先に待っていようと思ってたのだが、どうやら相手も同じ思考だったらしい。
ちなみにだが楯無さんはもう近くにはいない。こうなることをすでに予測していたのかそうでないのか。
「あー、えと……き、奇遇だな。約束の時間にはまだ早いぞ?」
「は、颯斗くん、こそ……」
まさかこんな時間、こんな場所で会うとは思ってなかったので、若干気まずくなる。
「こうして早くも合流した訳だし、早いとこ買い物でも済ませるか?」
そう尋ねると、簪は首を横に振った。
「私が行くお店、開くのが十時だから……今行っても開いてない……」
「あー、そっか。……ところで、何買うのか教えてくんない?」
今更だが、俺は簪が何を買いに行くのか聞いていない。前回の約束を取り付けた日には日時の決定だけで、それ以降何買うのか訊けてなかった。
「……言わなきゃ、ダメ?」
「買い物に付き合う分、隠してもいずれは明らかになるぞ」
「……笑わない?」
「よほどのことじゃない限り笑わない」
「よほどのことだったら……笑うの?」
「さすがに人間、絶対とは言い切れないってこと。でもバカにはしない」
「……………」
簪はしばらく迷ったように無言で俺を見つめた後、口を開いた。
「そ、その、買う物はね……アニメの、ディスクなんだけど……」
「ふむ」
「今日、発売日……だから」
「ああ、わかるわかる。本とかゲームとかアニメとか、発売日に買いたくなるよね」
「うん……」
「うーん、俺も何かアニメ見てみよっかなー」
ギリシャ代表候補になって支給金が入り、結構懐が暖かくなっている。そろそろ何かしらの趣味を持つのもいいかなと思っている。ちなみに今までは学園に入ってからというもの、勉強だの訓練だのその他諸々で趣味に当てる暇なんてなかった。
「あ……それなら、私が持ってるの……貸してあげる……」
「お、そうか。その時は簪のオススメ頼むわ」
「う、うん」
「じゃあ、店までゆっくり向かってくか。道中で寄り道しながら」
「……わかった」
ああ、そういえば。
「簪」
「……? 何?」
「かわいい」
「――ッ!?」
数秒のラグの後、簪は顔を真っ赤にして近くの物陰に身を隠した。
おい、なぜ隠れる。照れるとかならまだしも、隠れるほどのものなのか。俺は素直にかわいいと言っただけだぞ。それが原因か。そうか。
「か、か……からかわないで……」
「からかいではないが。ついでに、服がとかそういう余計な言葉は付けてないことも言っておくぞ」
「……………」
あ、簪の頭がちょっと容量オーバーしかけてる。
まあ事実なんだ。私服姿の簪がかわいいことは。服の知識はさっぱりだが、薄い色合いの服がよく似合ってる。勿論簪自体がかわいいとも思っている。そう思うのが原作知識故か楯無さんに刷り込まれたか、それとも簪を意識してるのか、そのどれなのかはわからないが。
「じゃ、そろそろ行こうぜ簪」
「う、うん……あ、あの、颯斗くん……!」
俺に声をかけてきた簪は、手をこちらに伸ばしてきた。
「……………」
「……………」
「……?」
「……! …………っ!」
なんか手を小さく降り始めた。
というかなんか言ってくれ。テレパシーなんぞ俺にはねえぞ。
とは言っても、伸ばした手が何を求めているのか、まあそれは一応わかるんだが。
「……手、繋いでほしいのか?」
「……ん」
コクリと簪が頷く。
それぐらい口で言え……と思いはするが言わない。きっと、俺も恥ずかしくて言えないだろうから。
差し出されている左手を右手で取る。華奢な手を優しく握ると、向こうからも優しく握り返された。
「……じゃあ、行くか」
少し照れくさくなった俺は、そう言って返事も聞かずに歩き出した。
◇
多少の寄り道を経て、目的の店へ。
この店ではアニメのディスクの他にもミュージックディスク、あとはネットからのダウンロードに必要なプリペイドカードも売っているようである。
「そういや、ダウンロードじゃなくてディスクで買うのな。その辺なんかこだわりがあるのか?」
なんとなく気になったことを簪に訊いてみる。
今時、アニメや音楽はディスクなんかよりもダウンロードの方が売れているという。ダウンロードの方がかさばらず、ネットワーク設備さえ整っていればわざわざ店に行く必要もないなど利便性が高いからだ。
「えっと……ディスクなら、揃える楽しみがある、というか……」
「ああ、なるほど」
一方、ディスクの需要が完全に失われているかというとそういう訳ではなく、簪の言うようにコレクションとか、あとは単純にディスクの方が好きだという人もいる。そういう支持層があるため、こういうショップも生き残っていると言える。
「で、その今日発売というアニメのディスクは?」
「大丈夫。予約してあるから、レジで受け取ればいいだけ……」
「うん、予想ついてた。それ予約得点あるだろ」
「正解」
また、ディスクの需要がある理由の一つとして、ダウンロードにはない予約や初回などの限定得点なんかもある。
わかってくれたのが嬉しいのか、簪の簪から笑みがこぼれていた。
「それじゃあ、受け取ってくるから……」
「おう、待ってるぜ。今度よかったらそのDVD見せてくれよ」
「う、うん……!」
簪が店内へ。レジにて商品の受け取るのを店の前で俺は眺める。
受け取るだけで時間を大して使うこともなく、すぐに簪は戻ってきた。
「お待たせ……」
「そんな待ってないけどな。で、どうする? さすがにこれだけで帰るというのは時間的に早すぎる気がするが」
店の開店に合わせて来たため現在十時ちょっと過ぎたあたり。昼食にもまだ早い。
「ここから少し歩いたところに……ゲームセンターがある……」
「……ああ、そういやこの辺あれか。なんか見たことあると思ったら前に一夏と歩いたとこだ」
「……織斑くんと?」
「この辺の地理に詳しくないからな。同じ学園内の男子として観光案内頼んでた。ゲーセンでも遊んだな。ひょっとしたら同じ場所かな」
「な、なら……!」
がしっと、簪が俺の手を握って迫ってきた。な、なんだ?
「わ、私が案内、してあげる……色んなこと!」
「うおっ」
ズズイっと迫ってくる簪に若干引く。
なんか簪にスイッチ入った。無意識とはいえ一夏のワードで地雷踏んだか? 案内してくれるのはありがたいが。
「ダメ?」
「わ、わかった。案内頼む」
「うん。任せて」
積極的な簪である。簪が積極的って珍しいんじゃないだろうか。
さて、簪はどこへ案内するのやら。
……。
…………。
………………。
「ここは……ゲーセンか?」
「うん。この辺りでは、一番ゲームの種類と数が多いの」
徒歩でそれなりに歩いて、ついたのはゲーセンだった。一夏と来たところより大きいのが外から見てもわかる。
ちなみに道の途中で漫画喫茶やアニメグッズ専門店とかも紹介されたが、入りまではしなかった。漫画喫茶はともかく、アニメグッズ店とか男女のカップルが入るようなとこじゃないだろうし。
簪の後について店内に入る。
「ふむ、それで簪としてはどういうゲームがお勧めだったりするんだ?」
「IS対戦格闘ゲームが人気だけど、シューティングゲームも種類が揃ってる……」
「ふむ、シューティングか。360度3Dガンシューティングなんてのもあんの? あれすごいって聞くけど」
「あるよ。……これ」
簪が指差したのは黒くてデカい箱のような筐体だった。描かれているのを見る限り、シューティングゲームとしてはお馴染みのゾンビもののようだ。
「やる? 二人プレイできるけど」
「ん、じゃあそれでやるか」
二人分の料金を払い、筐体の中へ。
中は結構暗い。足元を線を描くように小さいライトが並んでいるのと、正面側にゲーム開始前の画面が光っているぐらいだった。
「はい、銃」
「おう。右と左、どっちにいた方がいい?」
「右、かな? 立つポイントは決まってるから、撃ちやすい方に立って」
「了解。立つポイントってこれだな?」
「うん」
コードレスの銃型コントローラーを簪から受け取り、簪からの勧めもあったので右側の立ちポイントへ。簪がその左隣に立った。
「引き金引いて発射は当然として、他の操作方法は?」
「銃口を下に向けるとリロード、足元のチェンジボタンを押すと銃を変更できる」
チェンジボタンは前後左右の四カ所。押す場所によってどの銃に変わるのか決まるのか。地味に高度な要求してね?
「じゃあ、始めるよ?」
「まあいいや。オーケー」
簪が画面内のスタートボタンに銃口を向け、引き金を引いたことでゲームが開始された。
最初にあらすじが流れ、それから周囲の画面が廃墟の景色へと変化する。
すげえな。前後左右、どこから見ても3D画面だ。
「颯斗くん、来るよ」
「あ、おう」
360度どこからでも来るゾンビをひたすら撃つ。序盤はナビゲーションがあるから後ろからのゾンビに気づけるんだが、後になってくるとナビがなくなるから気づきづらい。これ、二人プレイ前提じゃねーか? 途中から俺と簪、背中合わせでやってるし、さらに途中で簪が、
「颯斗くん、背中は預けた」
なんて言うんだもの。この簪ノリノリである。
簪の助けもあり、初プレイでどうにかこうにかラスボスも撃破。最終的に俺はかなりギリギリ、簪は結構ライフを余裕に残してのクリアとなった。
「これ、一人プレイじゃ厳しくね? 簪は誰かとやったことあんの?」
「一応、本音とやったことあるけど……ほとんどソロプレイ」
「マジでか」
どうやら、こちらの予想をかなり凌いで彼女は上級プレイヤーらしい。廃人と言わないのは俺の願望だろうか。
「疲れた?」
「あー、全面3Dってのが初めてだし、確かに少しは疲れたかもな」
「じゃあ、飲み物買ってくるね」
「飲み物ぐらいだったら、俺もついていけるぞ」
「颯斗くん、怪我人」
「む……」
ここでそれを言うか。
それを言われると反論が厳しい。結果として飲み物を買いに行く簪を眺めることになった。
……。
…………。
………………。
「簪、遅くね?」
五分ほど待っているがまだ簪が帰ってこない。何買うのか迷っているのか? 簪がここで迷うとかあるわけないだろうし。
「……いやいや、まさかな」
一つ思い当たった妄想にかぶりを振るが、考えたせいで不安になってきた。
様子を見に行こう。確か簪が行った方角はこっちで合っているはず。
簪が行ったであろう方角に向けてゲーセン内を歩くと、自販機のある休憩コーナーを見つけた。それから、壁を背にチャラ男に絡まれている簪も。
「つれないこと言わないでさぁ〜、俺達と遊びに行こうぜ? な?」
「だから、待たせてる人がいるから……」
「とは言っても、その一本の缶ジュースはどうせ自分用なんだろ? つまり今暇なんだろ? だから行こうぜ?」
三人のチャラ男は簪を取り囲むようにしてナンパしている。元々内気な簪はチャラ男の包囲網から脱せずに追い詰められているといったところか。チャラ男達に口々に口説かれ続け、弱っているみたいだ。
(よし、あいつらぶっ飛ばそう)
とは言っても男性IS操縦者であると共にギリシャ代表候補生の身。先手でぶっ飛ばして問題起こしたとなったら色々迷惑をかけることがあり得る。怪我があるからガチの喧嘩は危ないし、そもそも授業で護身術習ってるとはいえ生身での喧嘩自体強くないし。なので、うまくあいつらを退かせることにする。
とりあえず近づき、簪の腕を掴もうとするチャラ男A(暫定名称)の腕を掴んで止める。
「俺の連れに何か用で?」
「あ? なんだお前、お前には関係ねーじゃん」
「あ……」
簪が王子様――いや、簪的にはヒーローか? どっちでもいいけど――を見る目で声を漏らしたがひとまずチャラ男の対処に集中する。フラグをより強固なものにしてるんじゃないかとか考えるのはやめておこう。
「連れだと言った。関係ない訳がないだろう? ああそれとも、ナリの悪いお前らはそれが理解できないくらい頭も悪いのか?」
「ああ!?」
煽り文句にいい具合に反応してくれたチャラ男Aがこちらの手を振り払う。
続いて三人の中で比較的がたいの大きいチャラ男Bが俺の前に立った。左右交互に拳を手で包んでパキパキ音を鳴らしている。あれって、関節の中にある空気が破裂してる音なんだってさ。豆知識。
「謝るなら今のうちだぜ? 怪我が増えちまうぞ」
チャラ男Cが煽ってくる。だが俺は平然とそれにカウンターをする。
「ああ大丈夫。こいつよりは強いから」
「だったらやってみろぉ!!」
チャラ男Bの右ストレート。
喧嘩に強くない俺だが、
右手で添えるように流す。そうしてがら空きとなった相手のボディ、その鳩尾に、精密に右拳を突き刺した。
「ごぶぇっ!?」
特に腹筋が硬いという訳でもなく、あっさりと急所に入った一撃にチャラ男Bは撃沈、悶絶。
「な、な!?」
「て、てめえ!」
「あー、色々言いたいことはあるだろうが、こちらから先に言わせてもらうぞ」
一発KOで意外にすっきりしたし、これ以上こいつらに時間取られるのも癪なので、身構えているチャラ男AとCには親指をゲーセンの出入り口方面へと向ける。
「ゲーセン内で警察見た。呼ばれる前にとっとと帰れ」
「――ッ!?」
「や、やべえ! 早く逃げるぞ!」
「ちょっ……待っ……」
警察という単語に顔を青くしたチャラ男達はそそくさと逃げていった。
女性への強引な勧誘は犯罪扱いされるこの現代。それをこうやって活用する日が来るとは。あ、ちなみに警察がいるというのはハッタリだ。警備員ぐらいならいるだろうが、少なくともこの場で呼んですぐ駆けつけては来ない。
さて、
「簪、大丈夫か?」
「あ……う、うん。ありが、とう……」
缶ジュースを両手で弄びつつ顔を俯けて簪が礼を言う。こういう仕草がかわいいんだと思う。
「颯斗くん、その……格好良かった。綺麗にかわして、一発で倒しちゃって……」
「あー、あれな。ネタばらしをするとハイパーセンサーの力ってすげー。になるんだけど」
「うん……うん?」
「ISの部分展開利用してハイパーセンサー起動してた。あ、これ他んところでは内緒な」
人間の視覚など比べ物にならないほどの解像度をもつハイパーセンサー、それを使えば生身の人間の挙動を見切るのも訳がない。ISの無許可使用? バレなきゃよかろうなのだ。
「とまぁ、ネタばらしするとチート使ったようなもんなんだが……がっかりしたか?」
「……ううん。それでも、颯斗くんが助けてくれたから、いいの。そして……ごめんなさい。私が、ここを案内したから、迷惑、かけちゃって……」
「簪のせいじゃないだろ。今回は時と運が悪かっただけだ」
「でも……」
「それに迷惑なんて、簪を守れたからもうどうでもいいんだ」
「……………」
簪の顔が赤いことについては触れないでおこう。だからのほほんさんにヘタレ言われるんだろうけど。
さてどうするか。とりあえず別の話題に切り替えたい。
「あー……そういや、その缶ジュースは?」
「……あ、うん。勝手に選んじゃったけど、これ」
「まあ指定してなかったからな。ありがとう」
差し出された缶ジュースを受け取る。近くの椅子に押さえつけてタブを起こし、フタを開ける。そして中に入っているスポーツ飲料水を飲む。少し甘めの味を感じながら喉を通していく。
「……そういや、簪は自分の分は買ってないのか?」
「あ、う、うん。の、喉……渇いてないから……」
「そうか? ならいいけど」
缶ジュースだと持ち運びは向かないのでこの場で飲み干す。そしてちゃんとゴミ箱へ。
「さてと、これからだが……って、簪、どうした?」
「……なんでもない」
ぷくぅ、と簪が頬を膨らませていた。
なぜだ。ジュースを一人で飲み干してしまったからか? 関節キッスでも狙ってたってのか? 恥ずかしいんで勘弁願いたい。
「で、どうする? さすがにさっきのような奴が何度も出てくることはないだろうし、せっかくだからもうちょい遊ぶか?」
「……いいの?」
「一応俺としては、簪のイチオシとか知りたいところだな」
「……わかった。じゃあ、こっち……」
「おう」
気を取り直して、俺達はゲーセン内を巡った。
◇
ゲーセンで遊んだりその近くのレストランで食事したり、その他色々やってる内に時は夕方。
俺と簪はIS学園に戻り、互いに自分の部屋に向けて寮内の廊下を歩いているところだった。
「颯斗くん、今日は……ありがとう」
「ああ、こっちも楽しめた。明日は頑張れそうか?」
「うん……」
明日、簪はアルカディア職員との打鉄弐式共同開発だ。俺はオメガ開発の方を手伝うことになってる。アルカディア職員が来ればもう俺が手伝えることもないし。一応、同じ整備室で作業するため、様子を見るぐらいならできるだろう。
「じゃ、俺の部屋はこっちだから」
「うん……それじゃあ」
「おう」
簪と別れ、自室へと戻る。
鍵は……開いてた。もう戻ってたのか。
簪がいないのを確認してから、扉を開けて中へと入る。
「ただいま戻りましたー」
「お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それともわ・た・し?」
「チェンジで」
「いやん」
即答して、裸エプロンの同居人をシャワールームに押し込む。もう扱いもぞんざいになってきたな。
「簪ちゃんとのデートはどう? 楽しかった?」
「デートではないんですけど。まあ楽しかったですよ」
「簪ちゃんに変なこと、しなかったわよね?」
「尾行してきてよく言いますね」
あ、尾行で一つ思い出した。
「そう言えば、簪がナンパされてた時に助けに行かなかったんですね。俺より先に把握してなかったんですか?」
「把握してたわよ? でも助けに向かったら尾行がバレて気まずくなるから出る訳にはいかなかったのよ。颯斗くんがあと五秒くらい遅れてたら私が動いてたけど」
あ、そうだったんだ。危ねえ。
シャワールームの方に制服を置いていたらしく、楯無さんが制服姿となって出てきた。手にしてある扇子には『感謝』の文字。
「だから簪ちゃんを助けてくれたことには礼を言うわ。ありがとう」
「いえいえ」
「お礼に、私とイイことができるゲームを……」
「王様ゲームはいやですよ。俺からしたら罰ゲームです」
前に一度やらされたことがあったが、楯無さんが王様になってキスさせられた。ちなみに手の甲にキスすることになった。
この王様ゲーム、勝っても負けても特別俺にメリットないんだよなぁ。負けたら文字通り罰ゲームになるし、勝ったとしても楯無さんに何命令すればいいんだか。
しかし俺が拒否するのが見えていたようで、楯無さんはふふんと不敵な笑みをとった。あ、これ避けられないパターンだ。
「そーお? なら時間が余っちゃうから、颯斗くんのIS無断使用について報告に行こうかしら?」
「……王様ゲーム、やりますか」
結果としてまた楯無さんに命令されるハメになった。不正はなかった。運命力が足りない。
ちなみに命令は、今日俺が簪にかわいいと思ったことを全部言うこと。途中から楯無さんによる妹自慢になってた。