ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 明けましておめでとうございます。
 この調子でやっていつ完結なのか。


第三十話 考えるな感じろとは言うが、やっぱ考えるのも大事

 放課後、俺と箒はタッグトーナメントに向けて訓練に励んでいた。

 

「行くぞ、颯斗!」

 

「よし来い!」

 

 紅椿を駆る箒が刀を手に上空からこちらに突っ込んでくる。対する俺は地上で仁王立ちとなって箒を待ち構える。

両腕の《デモン・アームズ》からエネルギー砲を発射する。大きな反動に裏付けられた破壊力を持つ砲弾は、しかし箒にはあっさりとかわされてしまう。箒の突進スピードは落ちることなく、それどころか加速していく。

 だが俺にとって幸いなことに、その速度は視えていた。

 砲撃を止め、他ISと比べても巨大な右拳を引く。

 

「――せぇあぁッッ!!」

 

 拳を突き出す瞬間、《デモン・アームズ》の肘部に備えられた発破装置が火を噴いた。砲撃時の反動相殺の他、パンチ力の強化にも使われるこの装置によって瞬時に加速した拳が、箒が振るう《空裂》を正面から殴る。タイミングはドンピシャだった。

 《空裂》が箒の手から離れて吹っ飛ぶ。さらにパンチの勢いを利用して身体を捻じり、回転させ、遠心力を乗せた左拳の裏拳で箒を狙う。

 その追撃は装甲を掠めた気がしたが、ダメージにはならなかった。箒が必要以上に離れていることから見て、スラスターを全力稼働させて回避したらしい。俺がエックスに乗っていたことを引きずっているのか、《絢爛舞踏》で回復できるとわかっていてもその機動に物申したくなる。というか、後で言っておこう。

 

「はあああああ!」

 

 《雨月》の突きによって多数のレーザーが飛んでくる。何もないところからどうやってレーザーがでるんだろうか。あと、レーザーによる射撃が本質なら、武器の形状を刀にする意味ってあるのだろうか。空間に弾作るなら形状はなんでもいいんだし、近接戦闘もできるからと言えば収まりがいいだろうが、そもそも武器として持たないようにした方がいいんじゃないかというのは禁句かな。

 

「リジェクト!」

 

 《リジェクト・アーマー》を起動し、高出力の電磁場でレーザーを防ぐ。防いだ後はすぐに切るのを忘れない。

 片腕の砲撃で牽制しつつ、新たな武装を呼び出す。粒子から復元されたそれは、紫に光る大型剣。武装名称は《ピアッシングソード》。中距離を薙ぎ払い、《デモン・アームズ》が苦手とする範囲攻撃をカバーするためのエネルギー剣である。出力を上げると刀身が伸びて攻撃範囲が広がる。

 

「であああああああああ!!」

 

 こちらの《ピアッシングソード》と、箒の持つ刀がぶつかり合い、激しく火花を散らせた。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「やはり、剣の握りがなってないな。もっと、ググッとした感じで持て」

 

「剣の握りね。ただその説明だけじゃあ具体的な持ち方がわからんし、重量武器と刀では扱いも違って当たり前じゃないか?」

 

「むぅ」

 

「あと、こっちとしてはスラスターを筆頭にしたエネルギー分配の雑さが気になった。いくらワンオフで回復できるつったって、相手がそれを許す訳がないんだからさ……」

 

 一戦を終えて、俺と箒はISに乗ったままそれぞれ互いに改善すべき課題の意見交換をしていた。

 下手にコンビネーションの特訓をやるよりも、それぞれの基礎戦力の向上を目指した方がいいという方針の元、互いにパートナーの戦術を知り、また自分だけでは見えない欠点や課題を見えるようにするために、俺と箒で模擬戦を行い、その後相手の悪かった部分を意見として交換するということをやっていた。箒はまだしも、俺は専用機を持ってまだ間もないということから採用したやり方だった。

 現時点で箒から言われた欠点は……「剣の握りが悪い」、「射撃の狙いが甘い」、「動きが遅い(特に空中機動時)」、「超出力瞬時加速(バースト・イグニッション・ブースト)の軌道のズレが酷い(これでは使い物にならない)」……高速機動は捨てているから後半二つはほとんどどうしようもないが、射撃の腕は俺もどうにかしたいと思っている。剣の握りは、これも改善した方がいいのかな。

 逆に俺から箒に言ったのは、先ほどの「エネルギーの無駄遣い」の他には、「射撃精度が甘い」、「攻撃や機動が直線的で読まれやすい」と、こんなところだったか。彼女の説明の仕方と言い、考える前に感覚とか直感でどうにかできてる・してる感じなんだろう。ただしその分微妙な調整とか理論的な部分とかは疎かにしているため、動きに無駄が生じているというところだろうか。俺の場合は、前に乗ってたISの性能的に、ちょっとしくじったら無駄が大きく出やすかったから、コーチの指導もあるし、嫌でもそういう無駄を抑えるようになっている。

 しかしこうして見ると、このコンビ揃って非常に未熟である。二人合わせて半人前にもいかないんじゃないかな。大丈夫なのかこれで。

 

「むむ……エネルギーの無駄かぁ。しかしそういう調整はあまり得意じゃないしな……」

 

「必要ならこっちで人を用意するさ。今はアリーナの使用が許されてる今のうちに解決できる課題を片していくぞ。……ほれ」

 

 言って、俺は《ピアッシングソード》を呼び出し(コール)して箒に差し出す。《ピアッシングソード》はアンロックされていて、箒にも使用が許された状態だ。

 

「握り方がなってないんだろ? 実演してくれ、見て覚える」

 

「なるほど、その方がやりやすそうだな。……うわ、重いな」

 

 ISの補助ありでもズッシリとした重さに率直な感想を漏らす箒だが、すぐに慣れたようで一振りしてから構えた。下半身が上半身を支え、上半身が剣との釣り合いを保ち、しっかりと剣を握り締めている。なんていうか、手で握るのではなく、全身で支えているという感じで、すごい様になっている。

 その態勢から剣を振り下ろし、薙ぎ払い、数回振るってから構えを解いた。

 

「ふぅ……こんな感じか?」

 

「上半身で釣り合いを取る。下半身で身体を支える。手は力む必要はない。振るうときは剣の重量に任せればいい。つまりそういうことだな」

 

「そうそう。それを言いたかったんだ。話が分かるじゃないか!」

 

 ここまでわかるのは多分これが最初で最後だろう。二度もうまくいくとは思えない。しかしそんな発言しても互いにためにならないので心に秘めておく。

 

「片手持ちってできるか? できるなら、空いた手で射撃したりなんかもできて便利だと思うんだけど」

 

「この重さだと難しいな……無理せず両手持ちでやってく方がいいと思うぞ」

 

「そうか……ま、とにかくやってくしかないか」

 

 箒から《ピアッシングソード》を返してもらい、さっそく練習を始める。まずは構えを真似るところからだ。

 

「違う違う。もっと、ドンッとした感じでだな」

 

「知ってた。やっぱ擬音わかんねぇ」

 

 そんなこんなで、特訓に明け暮れていく。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 特訓は日が落ちて暗くなるまで続いた。剣の構えはなんとか様になったようだ。他には技術的なスラスター稼働を箒に教えたり、二人して射撃訓練をしたりした。

 

「明日は放課後丸々使って機体整備かな。これまでのデータからオメガの調整したいし、箒の紅椿も、シエルさん達に頼んで調整してもらおうぜ」

 

「うむ……」

 

 明日の予定を伝えるが、箒の顔が若干浮かない感じだ。

 箒の表情が曇る理由と言ったら……

 

「あー……その、なんだ。一夏との時間を作ってやれなくて悪いな。ただ、勝つにはこんぐらいしないとしょうがないしさ」

 

「なっ!? ち、違うぞ! 一夏のことなど考えてないからな!? 本当だぞ!」

 

 動揺しとる動揺しとる。

 

「じゃあ何さ」

 

「……紅椿を整備すると思うと、少しな」

 

「うん?」

 

「そういえば、颯斗は臨海学校にはいなかったのだな。この機体は姉さん……篠ノ之束から貰ったのだ」

 

「ああ……そういえば」

 

「知っていたのか?」

 

 あ、やべ。つい素で言っちゃった。ごまかさないと。

 

「篠ノ之なんて苗字、そんなに聞かないしな。それに、機体については噂とかで耳にはしたよ」

 

「そうか……」

 

「姉さんからのプレゼントを弄くる、もしくは他人に弄られるのは気が引けるのか?」

 

「いや、それはない」

 

 ないのかよ。つーか即答って。

 

「ただ……」

 

「うん?」

 

「姉さんとはあまり関わりたくないというか……」

 

「嫌いなのか?」

 

「……嫌いでは、ない。でもどう接すればいいのかが、わからないんだ……」

 

「……………」

 

 互いに沈黙する。どう答えたものかと思考を働かせてみるが、大した回答が出てこない。

 しばらくして、俺はその思考をやめた。

 

「……悪い、俺は一人っ子だからな。兄弟姉妹のことはわからん」

 

「……そうか」

 

「ただ、篠ノ之束というお前の家族は一人だけなんだし、大事にするのがいいんじゃないか? 月並みな答えだけど」

 

「……そう、だな」

 

「んじゃ、今日はこれで解散。後は好きな一夏に労ってもらえ」

 

「なっ! お前なあ……!」

 

 言うだけ言ってさっさと解散した。カウンセラーは俺には無理だ。これで少しでも気を楽にできれば儲けもんだと思おう。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 結構それなりに疲労が溜まった身体で、部屋に戻る。

 

「ただいまーっと」

 

「っ! は、颯斗くん、お、お、お帰りなさい」

 

「うん、颯斗くん、お帰り」

 

 部屋には簪と楯無さんがいた。先日の誤解も解けて、姉妹でコミュニケーションをしていたようだ。ちょっとお邪魔だったか。

 ただ、簪の様子がおかしいのが気になる。というか、俺が入ってきた時に簪が何か後ろに隠したみたいなんだが。ついでに楯無さんがニヤニヤしてるし。

 

「簪、今何を隠したんだ?」

 

「なな、何でもない。何でもない、よ……?」

 

 ブンブンと首を横に振る簪。

 ……怪しい。

 

「……ん? なんだこれ、写真?」

 

「あっ!」

 

 足元に白い何かが落ちているのを見つける。大きさと形から、裏向きになった写真とすぐにわかった。

 簪が慌てて、隠していたものを手放してまで回収しようとするが、距離的に俺の方が早かった。拾って、裏返す。

 写真には、黒いスーツを着た少年がダークヒーローのようなポーズを決めた姿が写されていた。その少年の腕には馬鹿でかい装甲が装着されている。具体的にはオメガの腕だった。

 

「って、俺の写真じゃねえか!」

 

「か、返して……それ、わ、私の……!」

 

「私のって……って、そっちの写真も全部俺が写ってるのだし、その雑誌も俺と一夏の特集じゃん!」

 

 写真は以前の撮影のみならず、その前のギリシャでのものも含まれていた。多分、楯無さんが持っていたものだろう。

 すると楯無さんは雑誌を手に取り、ペラペラとページをめくった。あるページで止め、何かを見た後こちらに顔を向ける。

 

「誰も傷つけさせはしない!」

 

「うわああああああ! は、恥ずかしい!!」

 

 それからギャーギャーと雑誌や写真で騒ぎになった。終いにはうるさいと織斑先生にめちゃ怒られた。




 チャキチャキ進めていきたいけど、今月はタッグフォーススペシャル配信、来月はゴッドイーター2レイジバースト発売とやりたいものが多い……。加えてこれから普通に忙しくなるからなぁ……ちょっと心配です。
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