ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 すげー遅くなりました。忙しい以前に文章書くて一旦止まってから全然進まなくなったのが原因ですね。そして調子に乗って書き進めたら長くなりました。
 ゴッドイーター2レイジバースト買ってすでにクリアしたのですが、エンディングにはマジで「ファッ!?」となりました。エンディングよりもロミオとリヴィの過去に泣いたのは自分だけじゃないはず。


第三十三話 渇望

「侵入したISは七機なのですね?」

 

「うん。僕が『視た』限りだとそうなるね。それぞれ専用機持ちのペアに一機ずつ向かってる」

 

 必要データの奪取をすでに終わらせたスマイルとトリガーは、タッグトーナメントが行われていた場所とは別のアリーナに立っていた。トリガーの手には二丁拳銃が、スマイルの右腕には巨大なパイルバンカーが装備されている。いずれもIS装備である。

 アリーナが別なので、普通なら襲撃してきたゴーレムⅢの様子などわかるはずがないのだが、トリガーは『ある方法』でそれを可能にしていた。

 

「専用機持ちのペアは六組。侵入したのは七機。で、余りの一機は――」

 

「こちらに向かってる、と」

 

「訂正。もう来た」

 

 同時に空を見上げる。上空から黒い影が高速で二人の目の前の地面に激突した。

 巨大なクレーターができるほどの衝撃だが、ISの装甲はその程度では傷つかない。ゴーレムⅢは立ち上がり、その頭部を覆うハイパーセンサーをギラつかせた。

 二人は慌てもせず、それぞれの武装を軽々と構える。直後、ゴーレムⅢの左腕からビームが連射された。

 

解体(バラ)せますかね。ぜひ本部に持ち帰りたいものですが」

 

「元よりそのつもりでしょ」

 

「もう視ましたね?どうです?」

 

「やっぱ無人機だね。あと、こちらの攻撃は通らなくもない」

 

「それだけの情報があれば充分です。監視カメラの目を誤魔化している内に片付けましょう」

 

 緊張感を持ってないような会話。しかしゴーレムⅢからはビーム攻撃が雨のように連射されているのを、二人はISも無しに完全に回避し続けている。回避するだけでなく、徐々に二人はゴーレムⅢとの距離を詰めて行く。

 

 ジャキンッ!

 

 そして正面からはパイルバンカーが、背後からは拳銃がゴーレムⅢの首に突きつけられた。

 

「最悪、コアさえ回収できれば側などどうでもいいので」

 

 スマイルは、いつものニコニコとした笑顔でそう言いながら、パイルバンカーの引き金を引く。

 轟音が地面を揺らした。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「チッ……!」

 

 舌打ちしながらもアトラスはガントレットナックルを装備した右腕でゴーレムⅢを殴り飛ばした。

 ゴーレムⅢへの警戒をしながら、親指で頬をなぞる。そうして親指を見てみると、つい先ほど斬られて裂けた皮膚から溢れた真っ赤な血がついていた。

 

「アトラスさん、大丈夫ですか!?」

 

「っ!」

 

 アトラスを心配して近づく一夏。しかしアトラスは一夏の頭を掴んで床に押し倒した。

 直後、超高出力熱線がアトラスの肩を貫いた。

 

「敵から目ぇ離すな!死にてぇのかボケ!」

 

 貫かれた肩から流れたアトラスの血が腕へ、そして一夏の顔へと流れる。生暖かい感触が伝わった。

 仲間が傷つけられたこと、そしてそれを招いた自分の未熟さ、非力さに一夏の怒りが沸騰した。

 

「う……くっ……………うおおおおおおっ!!」

 

 立ち上がり、《零落白夜》を起動してゴーレムⅢに飛びかかろうとする。

 アトラスはそんな一夏の肩を掴んで引き止めた。

 

「待て、零落白夜は使うな」

 

「でもっ!」

 

「使うなっつってんだ。いいから聞け」

 

「――っ」

 

 鋭い眼光が一夏を射抜いた。有無も言えず一夏は《零落白夜》を解除する。

 再び発射されたビームを二人は回避する。

 

「奴はシールドエネルギーを阻害するシステムをつけてやがる。下手に直撃すればあの世行きなとこだが、お前には雪羅があるんだ。うまく防げ」

 

「……はい」

 

(しかしどうすっかな。あのアホみてぇなシールドといい攻撃性に機動性、ダメージソースの一夏の零落白夜もいなされて当たんねーしな)

 

 アトラスは思考する。もちろんその間にもやってくる攻撃を回避し、《クアッドブラスター》による反撃もしているが、ゴーレムⅢのエネルギーシールドが硬く効果は薄い。かと言って一夏の《零落白夜》を使った《雪片弐型》は簡単にいなされたので迂闊には使えない。下手すれば反撃を受けて一夏が致命傷を受けることもあり得る。

 ならば――

 

「一夏、三十秒――いや、二十秒稼げ」

 

「え?」

 

「……頼むぞ」

 

「……はい!」

 

 その返事はなんとなく心強く感じた。アトラスはすぐに『ある作業』に入る。

 頼まれた一夏は、ゴーレムⅢへと肉薄、実体剣状態の《雪片弐型》を振るう。その一撃はゴーレムⅢの右腕に取り付けられたブレードによって防がれた。

 鍔迫り合いになる中、ゴーレムⅢ左腕の砲口が向けられる。後ろにはアトラスがいる、一夏は躊躇いもなく《零落白夜》を起動し《雪羅》でビームを防いだ。

 直後、ゴーレムⅢの蹴りを入れられ、一夏は吹っ飛んだ。シールドエネルギーさえあればエネルギー兵器に対して絶対の防御を誇る《雪羅》だが、物理攻撃は無力化できない。壁に叩きつけられ、シールドエネルギーの保護がない一夏はまともに衝撃を受けてしまう。

 

「ガハァッ!!」

 

 苦悶の声を上げる一夏。ゴーレムⅢは目標をアトラスに切り替え左腕を向け、ビームを発射する。

 

「させるかぁっ!」

 

 一夏が間に立ちはだかり、《雪羅》でビームを掻き消した。

 

「この人には指一本触れさせねえ!」

 

 ゴーレムⅢの斬撃を避け、相手の腹部を薙ぎ、弾き飛ばす。

 しかしゴーレムⅢはものともせずに立ち上がる。

 

「くそっ……!」

 

「――一夏、待たせたな。二十秒だ」

 

 後ろから声がかかった。そこには、準備を終えたアトラスが立っていた。

 ファーブニルの右腕が、別物になっていた。赤い装甲は外され、代わりに肘から先には白い粒子砲が取り付けられていた。丸い筒状の砲身の先に細長い砲口が付いていて、見た目としてはプラグにスコープが付いてるような感じである。

 

「《レーザーバンカー》。これ使うには装甲取っ払う必要があるからなぁ。一応拡張領域(バススロット)に放り込んじゃいるが」

 

 『釘打ち』の意味を持つパイルバンカー、それに対して《レーザーバンカー》とはそのままズバリ、レーザーを撃ち込む構造である。取り回しの難しさ故に最強の名から外れているが、単純威力は《盾殺し(シールド・ピアーズ)》をも上回る。

 キィィィ……と高い音を発しながら、《レーザーバンカー》がチャージを開始する。アトラスを危険と判断したのか、ゴーレムⅢはアトラス目掛けて一直線に飛ぶ。

 

「アトラスさん!」

 

「間違っても射線には出るなよ! 死にたくなかったらな!」

 

 斬撃をかわす。短くない時間のチャージを要する右腕を庇いながら、アトラスの得意とする制御技術で距離を取ることなくダンスのように斬撃を回避していく。

 

「―――――」

 

「うおっ」

 

 しかしゴーレムⅢの身体で死角となった左腕のビームが不意打ちとなった。辛うじてかわしたが、体勢が一瞬崩れる。ゴーレムⅢはその一瞬を逃さなかった。凶刃がアトラスの左肩に入り、真っ赤な鮮血が噴き出した。

 

「アトラスさん!!」

 

「……ハッ、自分から捕まりやがった」

 

 激痛が流れているはずなのに、アトラスは強がって笑っていた。ブレードを持つ左腕を捕まえ、ようやくチャージの終えた《レーザーバンカー》をゴーレムⅢの頭に突きつける。

 

「消し飛べオラァアアッッ!!!」

 

 次に放たれたレーザーは、ゴーレムⅢと、さらにその後ろにある壁を全て突き抜けていった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……!?」

 

 何かを検知した。

 超高出力エネルギーであることはわかる。だがそれだけだ。あとは、エネルギーの大きさからゴーレムⅢの攻撃のものではないことがわかるぐらいだった。

 

「颯斗、来るぞ!」

 

「っ、ああ!」

 

 箒の一喝で意識が目の前に引き戻される。目の前ではゴーレムⅢがビームを連射する直前だった。

 《リジェクト・アーマー》を起動し、電磁力でビームに干渉し、反発する。ビームが止んだら《リジェクト・アーマー》を切り、《絢爛舞踏》で回復させてもらう。

 俺が前に出て攻撃を防ぎ、箒は俺を盾にしてサポートする。それが俺達のコンビネーションの基本だ。《絢爛舞踏》のおかげで、《リジェクト・アーマー》のエネルギー切れの心配はない。

 このように防御に徹した場合、敵は分断を仕掛けて来る。射撃は無効化されるため、近接によって引き剥がそうとする。ちょうど、こちらに突っ込んでくるゴーレムⅢのように。

 そこを、カウンターで捕らえる。

 

「オラァッ!」

 

 放った拳はゴーレムⅢの装甲を掠めた。が、それだけだった。箒が《雨月》のレーザーを放つが、すでに回避行動に移っていたゴーレムⅢには当たらない。

 

「くそっ、またか……!」

 

「こりゃ相当なチキンレースだな。顔が見えねえ分、おちょくってんのかマジで来てんのかわからん」

 

 もう六度目になるこのやり取りに箒は苛立っている様子だ。かく言う俺もウンザリしている。

 過去五回もこんな感じでほとんどダメージを入れられていない。多分最初のカウンターが一番のダメージじゃないかな。それも結局そんなに効いたようには見えないけど。

 そろそろマズいとは思ってる。相手は機械だから全く同じ作業と延々と繰り返すことが可能だ。だがこちらは人間、疲労や苛立ちが溜まっていって、ある時判断ミスが起きたり、焦れてマズい方向に行ってしまうことがあり得る。というか、俺も箒もぶっちゃけそうなりそうだ。

 状況を打開する必要がある。だが箒を前に出させることは出来ない。速度の遅い俺がついていけず、事実上の一対一に持ち込まれる。相手の思う壺だ。

 ……仕方ない。

 

「……箒、さっき見たか?」

 

「何をだ?」

 

「ここから少し離れた場所……多分、別の交戦地点で、高出力のエネルギー反応を検知した」

 

「ああ……それがなんだと言うんだ」

 

「行ってこい」

 

「は!?」

 

「行って、状況を確かめてこい。片がついてるなら、仲間を連れて戻ってこい。交戦中なら、加勢して敵をとっとと倒して、それから味方を連れてこい」

 

 あの反応がゴーレムⅢのものではないのなら、必然的に味方の、恐らくは何かしらの攻撃によるもののはず。そして反応の大きさから切り札かそれに等しいものの可能性が高く、すなわち『それを使わなければならない状況だった』か『それを使えば倒せる見込みかあった』もしくはその両方であったということだ。

 つまり、今そこでは戦闘が終わってるか、切り札をかわされて救援が必要になっているかが考えられる。前者なら、こちらに増援を呼んでゴーレムⅢ(こいつ)を一気に叩ける。後者なら、救援に行くべきだし箒が行けばワンオフの性能からして状況が好転しやすい。

 

「確かめてこいって……目の前の奴はどうする気だ! お前も、こいつが一人ではどうにもならない相手だとわかっているだろう!」

 

「ああ。だから俺は、お前が戻ってくるまで耐える。他のところに行かないように押さえて、お前を待つ」

 

「待つって、颯斗、お前な……」

 

「防御型だし、箒のおかげでほとんど全快のままだ。十分はもつさ。延々と同じこと繰り返させられるよりも、こっちの方がおそらく勝算が高い」

 

「……………」

 

 箒は黙って背を向けた。そして、こちらの肩に手を置いた。

 その瞬間、《紅椿》から発せられる光が俺を包む。『ほぼ』全快だった全てのエネルギーが、『完全』に全快となった。

 

「……ISなら、往復に一分もかからん。仮に颯斗の言うように交戦中であったとしても、三十秒もかけずに斬って捨てる。だから、一分と三十秒待っていろ」

 

「箒の説明で相手が理解する時間も含めたら、三分かかっちまいそうだな」

 

「うるさい。その時はそいつを無理矢理引きずってでも連れてくる。……だから、死ぬなよ!」

 

 箒が飛んでいくのを、ハイパーセンサーで見送ってから、律儀に突っ立っているゴーレムⅢに視線を送る。

 

「……会話が終わって箒が飛んで行くのを待つなんて、随分と余裕だな? あれか、そんなに俺が弱く見えるか? 箒に攻撃する気がなかったのか? それとも……俺をそこまで消したいのか?」

 

 装甲に隠れた腕が震えている。正直、恐怖でいっぱいだ。

 だがそれでも、強がってみせる。箒には強がって一人で耐えると言ってみせた。今度は目の前の敵に、そして自分自身に、強がってやる。

 

「なめんなよ。……来やがれ、箒には待つなんて言ったが、その前に俺がてめえをスクラップに変えてやる」

 

 ゴーレムⅢの左腕が向けられ、ビームが迫る。

 盛大な爆発音が辺り一面に響いた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 ところ変わって簪と楯無が戦うアリーナでは、楯無がアトラスと同じように、ゴーレムⅢ撃破のために切り札を切っていた。

 

「《ミストルティンの槍》、発動!!」

 

 ランスに纏わせたアクア・ナノマシンが大爆発を起こす。

 ゴーレムⅢはその爆発を受けて大出力エネルギーシールドが大破し、ゴーレムⅢ本体も吹き飛んだ。対する楯無も、《ミストルティンの槍》を形成するために無防備となり、敵から幾度と攻撃を受け、この爆発で力無く落下していく。

 

「お姉ちゃん!」

 

 しかしそこは簪が受け止め、事なきを得た。簪を庇った分楯無の身体は多く傷ついているが、意識は辛うじて残っている。命に別状がないことを確認して、簪は一安心した。

 だがその安心も束の間、ガシャンという音が簪の耳に響く。

 

「……っ!」

 

 振り返ると、シールドを破壊され、装甲にも亀裂が入ったゴーレムⅢがいまだに立っていた。シールドを破壊できたものの、ゴーレムⅢ本体を機能停止に追いやるまでは適わなかったようだ。武装もまだ生きている。

 簪は楯無を庇うように抱えながら、駄目押しを仕掛ける。ウィング・スラスターに取り付けられた板がスライドして、ミサイルの弾頭が顔を出した。

 

「マルチ・ロックオン、完了……《山嵐》、発射!!」

 

 四十八発のミサイルが一斉に発射される。

 ゴーレムⅢはビームでミサイルを撃ち落とそうとするも多勢に無勢、四十八発のミサイル全てを撃ち落とすことはできず、防ぐシールドもなくなったゴーレムⅢは爆破に巻き込まれていった。あれほどの攻撃を受ければ、もう立ち上がれまい。

 今度こそゴーレムⅢの撃破した簪は、溜め息をついた。しかしそれはほんの少しの間で、すぐにもう一度姉の無事を確認する。

 

「お姉ちゃん、大丈夫……?」

 

「えへへ、へーきへーき……イタタ……」

 

 明らかに平気なはずがないのだが、その弱々しくもいつもの雰囲気を纏わせた楯無の笑顔に、簪は呆れながらも笑みを零す。

 

 ドガァアアッ!!

 

「ゲフッ!!」

 

 直後、何かが落ちてきた。落ちたというには、角度が足りなかったようにも見えたが、とにかく二人の目の前に落ちてきた。

 

「ああ、クソッタレ。こっちが一人になった途端にガンガンガンガン……!」

 

 悪態をついて起き上がったのは、颯斗であった。オメガの装甲は全身ボロボロとなっている。

 

「は、颯斗くん?」

 

「い゛っ、簪!? 楯無さんも……やべえ、合流されたか!?」

 

 ズダンッと音を立てて、今し方二人が撃破したものとは別のゴーレムⅢが着地した。颯斗の様子から見ても、颯斗がこのゴーレムと交戦していたようである。しかしそれだけではなかった。

 ゴーレムⅢの隣に、さらにもう一機の別のゴーレムⅢが降ってきた。

 

「ここにきて新手かよ……!」

 

 顔を険しくしながらも二人を守るべく颯斗は前に出る。

 新たにやってきたゴーレムⅢはなぜか首周りの装甲だけ損傷が激しいが、シールドも両腕の武装も無事の状態。脅威としては充分である。対してこちらは楯無が負傷状態。明らかに劣勢だった。

 

「簪、楯無さんを安全な場所へ運べ。こいつらは俺が引きつける」

 

「ダメよ、颯斗くん……私は……大丈夫だから……」

 

 一人でゴーレム二機を相手にするという颯斗に、弱々しい声で楯無が反対する。

 

「どこが大丈夫なんですか、どこが。こっちはもうすぐ箒が救援連れてくる手筈なんですから、それまで耐えれますよ」

 

「だったら、颯斗くん……」

 

 そう声をかけた簪は、先ほどの颯斗の言葉に反して肩を並べた。

 

「私も、一緒に戦う」

 

「人の話聞いてた? 楯無さんを連れて逃げろ。簪も結構ボロボロじゃねーか」

 

「颯斗くんこそ……その様子だときっと、《リジェクト・アーマー》を使い切ってるでしょ?」

 

「む……」

 

 反論はできなかった。事実だからだ。《リジェクト・アーマー》は箒と離れてから急に激しくなったゴーレムⅢの猛攻ですでに底をついていた。

 

「私も、颯斗くんと一緒に戦いたい……一緒に戦って、颯斗くんもお姉ちゃんも、守りたい!」

 

 簪の意志は固かった。

 その意志に颯斗は早々に折れた。押し問答している暇などなかったというのもある。

 

「ああもう、わかったよ。簪は後方支援と楯無さんの護衛を頼む。俺が前に出て奴らを押さえる。いいな!」

 

「うん!」

 

 そう決まるとすぐに颯斗は両腕の粒子砲を連写しながら前進し始める。

 ゴーレムⅢは粒子砲をかいくぐり、一機が颯斗達へと斬りかかった。颯斗がそれを掴んで止め、組み合いになる。だがその組み合いはもう一機のゴーレムⅢの射撃によって引きはがされた。

 援護射撃によって颯斗を振り切ったゴーレムⅢの一機が簪の元へ到達し、ブレードで斬りかかる。簪は薙刀《夢現》で応戦する。

 

「ちっ……!」

 

 すぐに簪を助けに向かいたい颯斗だが、まだ射撃を繰り返すゴーレムⅢがいる。颯斗は両腕を上空のゴーレムⅢへと向け、銃撃戦を始めた。

 敵に勝つのは不可能、でも箒が戻ってくるまでまだ堪えられる。それまで負けないようにすれば――その希望が颯斗にあった。

 

 ――敵ISの再起動を確認! 警告! ロックオンされています!

 

「――っ!?」

 

 敵はその希望を砕きにかかってきた。

 前方より最大出力で放たれた無数のビームが、颯斗だけでなく簪と楯無にも襲いかかった。

 

「ぐおぉっ!!」

 

「きゃああ!?」

 

 何発ものビームを受け、颯斗と簪の態勢が大きく崩される。

 

「そんな……まだ、動けるの……!?」

 

 簪が驚愕の表情を見せる。

 そのビームを放ったのは、楯無と簪によって破壊されたはずのゴーレムⅢだったのである。ミストルティンと山嵐を受け、下半身を失い、右腕とスラスターも砕かれ、ISコアが露出していながらも頭部のハイパーセンサーと左腕の砲口が三人を捉えていた。

 こちらの態勢が崩れたのを好機に簪と戦っていたゴーレムⅢが楯無に接近。ブレードを振りかざす。

 

「お姉ちゃん!!」

 

 簪が割って入り薙刀で防ぐ。が、ゴーレムⅢは構わずブレードを押し込もうと圧力をかける。

 

「く、ぅ……!」

 

「簪!」

 

 ――警告! 敵IS二機が超出力射撃の態勢に移行!

 

 オメガからの警告。颯斗と交戦していたゴーレムⅢも最大出力形態となっていた。二機の狙いは――簪と楯無。どちらかを止めたとしても、もう一方が二人を葬るつもりだ。楯無は負傷して逃げられない。簪も、目の前のゴーレムⅢの圧力に屈しかけていた。

 

「く……そおおおおおおっっ!!!」

 

 颯斗は前屈みの態勢をとり、背中の大型スラスターを展開した。

 調整したとはいえ、未だに安定しない超出力瞬時加速(バースト・イグニッション・ブースト)だが、颯斗の中では他に方法がなかった。意地でも成功させるつもりだった。

 スラスターに溜められた膨大なエネルギー。それを弾け(バースト)させる。

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

 爆発的加速を得て、オメガが超速度で飛び出す。ほぼ同時に、ゴーレムⅢの最大出力ビームが発射された。

 全てが交わった瞬間、大爆発が巻き起こった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……ざし…………かんざし……簪!」

 

 少々強く揺さぶられて、簪は目を覚ました。すぐ目の前に颯斗の顔があった。

 

「颯斗、くん……」

 

「気がついたか? よかった……簪が無事で……」

 

 簪は今の状況がわからないでいた。

 

(えっと、倒したはずの無人機が再起動して……襲ってきて……それで他の無人機に押されて、もうダメになりそうになって……そしたら、ええと……)

 

 その後はよくわからない。強い光と音、その直前に聞こえた颯斗の叫び声。しばらくしてようやく、颯斗に助けられたということが理解できた。

 

(ああ……やっぱり、颯斗くんは私のヒーローなんだ)

 

 そう思うと、つい先ほどの緊張感が嘘のように消え、安心感に満たされる。

 颯斗はそんな簪を立たせて、それから簪と共に救出した楯無にも声をかける。

 

「楯無さんも、大丈夫ですか?」

 

「まったく、もう……あんなタイミングで突っ込むなんて……とんでもない無茶するんだから……」

 

「なんていうか、思い出したら俺無茶してばっかな気がしてきましたよ」

 

 苦笑いしながら、颯斗は楯無を簪に預ける。

 

「さて、今度こそ簪は楯無さんを連れて安全な場所へ避難してくれ。箒達の反応も近いから、もうここは俺に任せて――」

 

 ガンッ、と。

 急に、颯斗が一段低くなった。

 何の前触れもなくへたり込んだ颯斗は、それからちっとも動かない。

 

「……颯斗くん?」

 

「……あれ? おかしいな。オメガが動かねえぞ」

 

 颯斗はどうにかオメガを動かそうとしているようだが、オメガは微動だにしない。

 颯斗とオメガの装甲を伝って、何かが滴り落ちていく。

 真っ赤なそれは地面まで降りると、今度は地面を這って広がっていく。

 それが何なのか、わからなかった(わかりたくなかった)

 

「大丈夫だ、簪……オメガのシステムが少し落ちただけだ。こんなのすぐに――」

 

 強がってみせようとする颯斗の体が吹き飛んだ。

 ゴーレムⅢの巨腕に殴り飛ばされた颯斗が地面を転がる。その時に見えた背中は装甲を砕かれ、背中全体が血で真っ赤になっていた。

 

「颯斗くん!!」

 

 簪が駆けつけようとするも、ゴーレムⅢの一機が目の前に立ちふさがった。もう一機は動かなくなった颯斗へと近づいていく。

 

「どきな……さい!!」

 

 楯無が最後の力を振り絞ってアクア・ナノマシンを動かそうとするが、ゴーレムⅢがアクア・ナノマシンを製造・制御するための《クリスタル・コア》を撃ち砕く。さらには満身創痍の二人を容易く吹き飛ばし、颯斗から遠ざける。

 

「やめて!! やめて!!」

 

 満身創痍な身体のどこから出るのかわからないほどの声で泣き叫ぶ簪。しかし身体が動かない。無人のヒトガタ達はその叫びを聞き入れずに颯斗に近づいていく。

 やめて。

 やめて。

 やめてやめてやめてやめてやめて死んじゃうやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめていやだやめてやめてやめて殺さないでやめてやめてやめてやめてやめて。

 嫌なのに、今すぐ助け出したいのに、身体が動かない。想像したくないのに、彼の頭と胴体が別れるイメージが鮮明になっていく。

 ゴーレムⅢのブレードが、断頭台の刃物のように颯斗の首に狙いを定める。

 そして――。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺される。

 闇のように暗い意識の中、妙にはっきりした思考がその現実を受け入れようとしていた。

 殺されるというのに、俺の思考はなぜか冷静だった。冷静に、これから死ぬということを理解していた。

 

 ――なんで、こんなことになった?

 

 理解した上で沸々と浮かび上がったのは、いくつもの疑問だった。

 なぜ殺されるんだ? どうして二人を守れない? 備えてきたはずなのに、なんで駄目だった? 何が駄目だったんだ? なんで? なんで?

 次々と疑問が浮かんでは、答えもなく消えていく。

 

「――力がないからだ」

 

 否、答える者がいた。

 真紅の装甲、金色の長髪。どこかで見たような姿をしたその男は、しかし禍々しい雰囲気を醸していた。そいつの赤い瞳、そして表情は、まるで人間を品定めする吸血鬼のようだった。

 

 誰だ? あんた。

 

「力が欲しいか」

 

 まず質問に答えろよ。

 

「力が欲しいか」

 

 決められた言葉しか発せられないのか、何を訊いても力が欲しいかしか言わない。

 そのことにイラついたが、同時にその質問に惹かれていった。

 

 ……ああ、欲しいよ。力が欲しい。

 

 ついにはそう答えてしまった。

 すると、男の質問の内容が変わった。

 

「なぜ力が欲しい?」

 

 なんでって……。

 

 言葉に詰まった瞬間脳裏に浮かんだのは、守れなかった簪、楯無さんと彼女達に襲いかかるゴーレムの姿。彼女達を傷つけていくヒトガタ共に、憎しみが湧いてくる。

 次に浮かんだのが、さっきから頭に染み付いたように離れない、「力がないからだ」という言葉。二人を守れない俺の力の無さ、不甲斐なさに、怒りが込み上げてくる。

 どす黒い感情が、俺の中で渦巻いていく。

 

 守れないからだ。こんな力じゃ、二人を守れない。

 

 そう答えると、男の口元がニヤリと笑みを見せた。

 また質問が変わる。

 

「なら、どんな力が欲しい」

 

 黒い渦は、すでに自分では抑えられないほどに肥大していた。男の焦れったい質問に苛立ち、その感情のままに吼える。

 

 奴らをぶっ潰す力だ! あの無人機共を完膚無きまでに潰す力が欲しい!!

 

 奴の口元がさらにつり上がり、目も大きく見開かれる。

 最高の笑みを浮かべた彼は、最後の質問を俺に投げかけた。

 

「ならば――我に何を望む!」

 

 男の姿が闇に消えていく……違う。俺が、闇に包まれているんだ。

 自分の闇に呑み込まれる瞬間、それに抗うように、叫ぶ。

 

 奴らを……ぶっ壊してやる。

 

 そのために、

 

 

 

 もっと、

 

 

 

 

 

 もっともっと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっともっともっと力を寄越せえぇ―――――ッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機体ダメージ、レベルF……活動不能域への到達を確認しました。

 操縦者ダメージ、レベルF……操縦者意識不明。生命活動危険状態です。直ちに操縦者の生命確保を実行してください。

 操縦者の安全確保のため、本機の強制起動を行います...

 

 本機の起動中にエラーが発生しました。本機を正常に起動できません。この問題の解決方法を検索します...

 

 本機を直ちに起動するためにはシステムをアップデートする必要があります。

 本機のアップデートを許可しますか?<Y/N>...[Y]

 

 警告。本機及び操縦者に重度のダメージが確認されています。今の状態でアップデートを行うと、本機または操縦者に重大な問題が発生する恐れがあります。

 本機のアップデートを許可しますか?<Y/N>...[Y]

 

 権利者の許可を確認。システムアップデートを開始します...

 

 システムアップデートが完了しました。

 本機、機体名称『オメガ』第二形態『ミダス』、移行を確認。機体名称を『オメガ・ミダス』に更新します。

 『オメガ・ミダス』の武装を更新しました。

 ワンオフ・アビリティー『α』、開発完了しました。

 『α』の発動を実行しますか?<Y/N>...[Y]

 

 『α』発動。対象を検索しています...

 

 打鉄弐式...[N]

 ミステリアス・レイディ...[N]

 unknown...[N]

 unknown...[N]

 unknown...[N]

 紅椿...[N]

 白式・雪羅...[N]

 ファーブニル...[N]

 甲龍...[N]

 ブルー・ティアーズ...[N]

 unknown...[N]

 シュヴァルツェア・レーゲン...[N]

 unknown...[N]

 ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ...[N]

 ヘル・ハウンド・ver2.5...[N]

 コールド・ブラッド...[N]

 エックス...[Y]

 エルピス...[Y]

 ...

 

 対象として選択可能であるISが二機見つかりました。

 

 エックス

 エルピス

 

 上記二機に対して権限掌握と相互改造を実行しますか?<Y/N>...[Y]

 

 『エックス』の権限を掌握しています...

 『エルピス』の権限を掌握しています...

 

 『エックス』と『オメガ・ミダス』の相互改造を実行しています...

 『エルピス』と『オメガ・ミダス』の相互改造を実行しています...

 

 完了しました。

 機体名称『エックス』第二形態『アテナ』、移行を確認。機体名称を『アテナ・エックス』に更新します。

 『アテナ・エックス』の武装を更新しました。

 ワンオフ・アビリティー『γ』、開発完了しました。

 機体名称『エルピス』第二形態『キマイラ』、移行を確認。機体名称を『エルピス・キマイラ』に更新します。

 『エルピス・キマイラ』の武装を更新しました。

 ワンオフ・アビリティー『δ』、開発完了しました。

 『オメガ・ミダス』の武装を更新しました。

 『δ』の発動を実行しますか?<Y/N>...[Y]

 

 『δ』を『オメガ・ミダス』、『アテナ・エックス』、『エルピス・キマイラ』を対象に発動します...

 

 『δ』実行中に『アテナ・エックス』が『γ』を割り込み実行しようとしています。

 『γ』の実行を許可しますか?<Y/N>...[Y]

 

 『γ』を実行。ISの統制を開始します。

 『δ』を実行。ISの再構築を開始します。




 おや、オメガの様子が……?
 最後のシステムメッセージが長すぎて、途中からバッサリ切ろうと思いましたが、なんかもったいないし、結構重要なこと書いてあるし、こういうメッセージを出すのは多分これが最初で最後だと思うので、そのまま載せることにしました。ちょっとこれ何言ってんのかわかんないと思う方もいると思いますが、今後わかりますよ、きっと。
 次回はとんでもないことになりますよ。すでに颯斗が闇堕ちしたりISがすごいこと言ったりしてるので、ショボくはできませんね。次回はいつになるかなぁ……。

 あ、ちなみにですが、今回アトラスさんが使った《レーザーバンカー》の元ネタはロックマンDASHシリーズの最強武器シャイニングレーザー(DASH2デザイン)です。そのままでは強すぎるので、単発式に変えました。盾殺し第二世代武器最強設定をそのままにするため、“総合的に最強”は盾殺し、威力だけを見たら他にもあるという形式でやっていくつもりです。
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