見た感じまたアドベンチャーのようですが、せっかくISあるんだから格闘アクションなんかもvitaで作れば楽しそうなんだけどなぁ、と思ったり。でもそうなると問題なのは白式と紅椿のワンオフのチート具合とバランスだよねとも思ったり。絢爛舞踏なんて回復しちゃうんだからそりゃバランス崩れるわ。零落白夜だって某神喰いみたいにワンパンゲーになる予感が。
怪我が治った。本当に一週間かからなかった。
自然に治るのを待ってたら何ヶ月とかかりそうな傷が一週間足らず。ナノマシンとか細胞活性剤やら万能細胞やらのおかげだが、こんなに早く治されるとなんだか怖くなる。本当に大丈夫なんだろうか。
……まあ、医療室での生活には退屈してたんだ。そこから早く解放されたことには感謝しなければならない。
それで現在は、朝早くから織斑先生の後をついて行っている。予定通り、今の俺がISを動かすことに問題がないかどうかを調べるためだ。そのためにアリーナへと向かっている。そこに俺の専用機もあるらしい。
スライドして開いた扉の先へと織斑先生が入っていく。入った瞬間、入るという表現が若干間違っていたことに気づく。アリーナの広い空間に出たからだ。周囲は観客席。しかしなぜか至る所に損壊の跡が残っている。
織斑先生が先を行く。その後を追うと、三人の人が見えた。
一人はわかる。更識さんだ。結局面会に一度も来なかった。こちらに気づいて笑みを向けてくれた。どこか違和感を感じたが、しかしその違和感を気にすることはなかった。知らん二人がいたら、そっちに意識が向くのは仕方ないよね?
一人は赤いリボン――赤は確か三年生だっけ――がついた制服を身に纏った赤髪の女子生徒。もう一人は制服ではなく白衣を纏った金髪の女性だった。白衣の人の方は見た感じ生徒ではなさそうだし、教師か何かだろうか。
「よ、颯斗」
赤髪の三年生(仮)が軽く手を上げて軽い感じで声をかけてきた。どうも俺とはそれなりの付き合いではあるようだ。
「えっと、どうも。……あの、失礼ですけど……誰ですか?」
「まあ、記憶喪失って話だから当然か。俺はアトラス・テイタン。ギリシャ代表候補の三年生だ。お前にとっては学年と国家の両方で先輩にあたる」
テイタンさんはそう自己紹介を行った。
「……国家?」
「おいおい、そこは流石に聞いてるんじゃねえのか?」
「現在の傘霧の所属はギリシャだ。以前話したことをもう忘れたのか」
織斑先生に言われてようやく思い出した。そうだ、そういや前にそんなこと言われてた。慌てて姿勢を正す。
「えっと、失礼しました。……テイタン、先輩?」
「名前で呼べ。以前はそうだった……ま、覚えてねえだろうがな」
「は、はい。えっと……アトラス先輩?」
「……まあ、今はそれでいいや。シエルさんも、サクッと済ませちゃってください」
バトンを受け取って、その『シエルさん』なる人が笑顔と共に自己紹介を始めた。
「今の颯斗さんにとっては初めましてになるよね。シエル・アランソンです。あなたの専用機の開発・整備をさせてもらってるわ」
「はあ、よろしくお願いします。えっと……」
「以前は名前で呼んでもらっていたんだけど、無理はしなくていいから。困った時には、相談にも乗るわ」
「は、はい」
「挨拶は済んだようだな。アランソン局長、傘霧にISを」
二人との挨拶が済んだところで織斑先生が、えっと……シエルさん、に声をかけた。ISという単語から、本来の目的の指示だと理解した。
シエルさんが頷いて取り出したのは、少々ゴツい腕輪のようなものだった。金色の腕輪の側面に黒い玉、赤い玉、青い玉がそれぞれ一つずつはめ込まれたようになっている。ぶっちゃけ、派手な装飾品に見えた。
「これが颯斗さんのIS、『オメガ』の待機形態。これを今から取り付けるから、右腕を出してくれる?」
「はい」
右腕を出すと、シエルさんが腕輪を、『オメガ』を取り付ける。と言っても腕輪を通して、手首の辺りで『オメガ』のサイズ調節機構が自動でぴったりとついてくれるだけなんだけど。
手首の一回りか二回りぐらい大きい金属の塊が腕に装着された訳だが、思ったより重く感じない。それどころかむしろ元々こうだったようなな気もするのは、やっぱり体は覚えているってことなのだろうか。
取り付けが終わると、シエルさんは観察室で見てるからと言って走っていった。
シエルさんの姿が見えなくなってから、織斑先生が一言。
「では傘霧、起動しろ」
「え、いきなりですか」
「ああ」
ああって。無茶言わんでください。
「記憶ないんですけど」
「実演くらい見せてやる。更識」
「わかりました。……颯斗くん、よーく見てね?」
更識さんは俺達から少し距離をとってから、パッと光に包まれた。
次の瞬間には更識楯無は水色の装甲のISを纏っていた。
「いやわかんねえよ!?」
つい敬語じゃなくなった。
「何の前触れもなく一瞬光ったらもうIS纏ってるって、実演として何一つわからないですよ!? 何を参考にすればいいんですか!?」
「んー、理想の展開速度?」
「何で最初の一歩って人にゴールの話!?」
「つべこべ言うな。さっさとやれ」
「実演終わりですか!?」
「まーまー、颯斗」
アトラス先輩が宥める。
「難しく考えなくていいんだよこういうのは。ISの名前を呼んで、ISを纏うそれっぽいイメージができりゃあ後はISが勝手にやってくれる」
「は、はあ……」
「ま、とりあえずやってみれ」
一応のアドバイスは貰えたので、もうそれでやってみることにする。
ああそうだ、一夏のやり方(原作知識)を真似てみよう。
右腕を突き出して、その右腕を左手で掴む。そして集中する。一体どんなISかは想像つかない。が、とにかく集中する。
意識を研ぎ澄まして、唱える。
「――来い、オメガ!」
次の瞬間、腕輪から眩い光が放たれた。
「うおおおっ!?」
「――っ!」
ものすごい光量に素っ頓狂な声をあげてしまう。ふとした拍子に見えた視界の中では、いつの間にかISを展開したアトラス先輩がこちらに身構えていた。って、待って。待って。どういうことなの。なんでアトラス先輩武器をこっちに向けてんの? これまさか起動したら危ない物なの?
そう思ってる間にも粒子から展開された、
それが、途中で止まった。
「――へ?」
「あ?」
まるで時が止まったかのように、パーツが完全に静止している。
訳もわからずにいると、今度は逆再生のようにパーツが次々と別れ、離れて、粒子となって消えていく。そして最終的には金色の腕輪に戻っていた。
「……………」
「こっちを見るな」
ベシッ。叩かれた。織斑先生はさらに一言。
「もう一度やれ」
「は、はあ」
「今度は戻すなよ」
戻し方もよくわからないのですが。
しかし無意識下で戻るようイメージしちゃったかもしれないので、ここは従うことにする。反発なんてできっこないし。という訳で右腕を掴んでもう一度トライ。
「来い、オメガ!」
腕輪から眩い光。さっきは驚いたけど、もう驚かないぞ。
金色のパーツが集まって、右腕として俺の腕に纏って……停止。
「……あるぇー?」
また逆再生みたいに離れて消えていった。
「……………」
「こっちを見るな」
ゴスッ。また叩かれた。
◇
真顔で視線を送ってくる颯斗を二度に渡って叩いた千冬は、ため息をつきながら観察室へと通信を繋げた。
「アランソン局長、何かわかりましたか?」
ISの展開失敗自体は、専用機を持ったばかりの人間には比較的よくあることだ。イメージの構築がうまくいかず、途中でISの解除を行ってしまうということもなくはない。しかし、颯斗の場合はそれとは何か違うような違和感があった。
そこで観察室で見ているであろうシエルに声をかけたのだが、返事がない。
「アランソン局長?」
『あっ、ご、ごめんなさい。……何でしょうか?』
ようやくこちらの声に気がついたらしい。千冬はもう一度尋ねる。
「何かわかりましたか?」
『颯斗さんがISに呼びかけた瞬間から、すごい量のエラーが検出されました。多分オメガと、オメガに取り込まれたエックス、エルピスがそれぞれ干渉しあっているのだと思われます』
やはりか、と千冬は胸の中で呟いた。
ゴーレムⅢ襲撃事件に謎の変異を遂げた颯斗のISは、待機状態の腕輪を外してすぐ調べられた。強固なプロテクトがかけられISの展開ができず、アクセスもほとんど制限されていたが、オメガの中にエックスとエルピスが取り込まれていることが判明した。
本来一人の人間がISを複数扱うことはできない。仮にISコアを複数使ったISを作ったとしても、今度はそれぞれのISコアから送られる膨大な情報量に脳がついていけなくなり、最悪廃人になることが懸念される。
しかし颯斗はそんなISを使ったことになる。記憶喪失にこそなったが、それ以外に彼に異変は見当たらないし、ISと記憶喪失に関係があるかも不明だ。今回の起動検査についても何か症状を訴える様子も見当たらない。ISには触れた瞬間から操縦者に情報が伝わる以上、その時点で異常がないということがこの場では異常と言える。
「……わかりました。ではオメガを回収し、また検査を行います」
『了解です』
千冬は通信を切り、颯斗に向き直る。
ISの起動は失敗となった。謎については解決するどころか逆に増えてしまった。
しかし、失敗したとは言え颯斗の呼びかけにISは反応し、起動しかかった。それは颯斗のIS適性が無事生きている紛れもない証拠であり、IS学園による保護と、彼にIS学園での学業に従事する義務が生きていることも意味していた。
「さて、傘霧。ISを動かすことはできたのだから、IS学園に復学してもらうぞ」
その言葉に対して颯斗は何とも言えない表情をしたため、千冬はもう一度颯斗を叩いた。
「拒否は認めんぞ」
◇
ISを無事(?)動かせたので予定通りIS学園への復学が決定された。教室へ向かうべく、再び織斑先生の後をついていく。あ、途中で俺の勉強道具を運んでくれた山田先生と合流した。
「さて、傘霧。自分が誰で、どういう所属なのか、最低限言えるな?」
「あ、はい。俺の名前は傘霧颯斗。世界で二人しかいないISを動かせる男性としてIS学園に入学。現在は一年一組のギリシャ代表候補生。……こんなとこですか?」
「十分だ。交友関係とかその他諸々はこれから会う奴らに訊け」
「えっと、了解です」
「緊張しなくて大丈夫ですよ。きっと皆さん傘霧くんに協力してくれますから」
そうこう言ってる内に扉の前についた。やや上を見ると、一年一組の札がある。
織斑先生が扉を開け、中へ入る。俺も続いて中へ。
「あ〜、かっきーだ〜」
(……かっきー?)
かっきーってなんだと思いながらゆるい声の主を探すと、いかにもほんわかした感じの女子がいた。確かのほほんさんって言うんだっけ。独特の渾名をつけるんだったっけ? 傘霧からかっきーか。
「颯斗! 怪我はもう治ったのか?」
「うおっ」
「? どうした、颯斗?」
「あ、いや……」
俺にとってはやや不意打ちに近い形で声をかけてきた男子生徒にちょっと驚く。
見た感じからして、彼が織斑一夏だな。男性IS操縦者は二人しかいないとのことだからほぼ間違いない。
「傘霧くんが戻ったー! 目を覚ましたのは、私のお見舞いのおかげね!」
「面会禁止になってから今日までに怪我が治ったのは私のお祈りが効いたのよ!」
「じゃあ今日、傘霧くんの復学祝いにパーティーやろうよ!」
「わーい! お菓子食べるぞ〜」
女子達が嬉々として騒ぎ出した。あ、最後のはのほほんさんだな。
どうやら俺は慕われていたみたいなのでそこにはほっとした。しかし、ここで俺が記憶喪失であることが明らかになったらどんな反応になるんだろうな。あと、声大きくないか。
「……颯斗、どうかしたのか?」
ボーっと女子の騒ぎを見ていると、一夏がそう尋ねてきた。
「え? いや、えーとだな……」
もう記憶喪失であることを言っちゃっていいんだろうかと考えていると、隣から注意の声がかかった。
「静かにしろ。重要な連絡事項がある」
女子が騒いでいる中でもよく通る織斑先生の声。それによって女子達の声はひとまず収まり、静かになった。
「怪我から回復した傘霧くんですが、一つ大きな問題を抱えています」
「大きな問題……?」
山田先生のその言葉によってこちらへの注目がより集まる。
うわぁ、見てる見てる。俺大勢の前で話すとか、注目されるのどちらかと言うと苦手なんだけど。
「問題は一つだけではないのだがな。傘霧は現在、記憶喪失にある」
「えっ……」
誰かの声が漏れて一瞬、完全に静かになった。
そして、
「ええ〜〜〜〜〜っ!?」
大音量が響いた。来ると覚悟していたけどそれでもビビった。
「ええっ!? 傘霧くん、記憶喪失なの!?」
「ってことは、私達のことも忘れちゃったの〜!?」
「そ、そんなことないよね傘霧くん! それでも私のことは覚えてるよねっ!?」
無理言うな。
「静かにしろ! 傘霧は記憶喪失となったが、IS動かせる適性はある。よって今日よりIS学園に復学させることにした」
「あの……織斑先生、記憶喪失の颯斗に授業を受けさせるのは、無理があるんじゃ……?」
そう意見を述べたのはブロンドの女子生徒、たぶんシャルロット・デュノアだ。決めつけて外すと恥ずかしいし色々まずいと思うんで決めつけない。
「本人も納得した上での復学だ。それに記憶喪失の者には、普段の行動が記憶を呼び起こすことがあると言うだろう?」
「は、はあ……」
「皆さんには傘霧くんとお話したりして、傘霧くんの記憶が戻るようお手伝いをしてほしいんです」
「くれぐれも混乱はさせるなよ。傘霧、そろそろ席につけ。そこの男子生徒の左隣が空いてるだろう。そこがお前の席だ」
「は、はい」
「ホームルームは以上。続けて授業に入る」
こうして俺のIS学園での生活が幕を開けた訳だ。いや、再開したの方が正しいのかな。実感ないけど。
◇
どうにか一時間目を乗り越えた後の休み時間。
予想通りなんだが、詰め寄ってきた。女子が。一斉に。
「傘霧くん傘霧くん! 記憶喪失って本当なの!?」
「記憶を無くしたって、どんな感じ? 自分の名前もわからなくなるの?」
「か、傘霧くん! 私のことはわかるよねっ? ほら、私!」
だから無理言うなって。
矢継ぎ早の質問に困っていたら、後ろから女子達に声がかかった。
「やめないかお前達。颯斗を混乱させぬよう、織斑先生からも注意があっただろう」
その台詞で一気に女子達の注意を引いたのは、ポニーテールの女子だった。多分篠ノ之箒。
「記憶喪失と聞いて色々尋ねたいのはわかるが、こういうのは本人が知りたいことを優先するべきじゃないか?」
腕を組んで仁王立ちしながら女子達に説く篠ノ之さん。やだ、かっこいい……。
正論を受けて静かになる教室。しかしなんか変だ。女子がポカンとしている。
「……箒、熱出したのか? 箒がそんな正論でみんなを諭すなんて」
織斑(弟)が女子の気持ちを代弁した。
おいおい失礼じゃないか? 篠ノ之さんも言う時は言うんだろ。多分、きっと。
「……どういう意味だ? 一夏」
「いや、箒は理論派じゃないイメージっつーか、実際そうだしさ。それに箒は何かとすぐに手が出るタイプ……おわっ!?」
「ひぃっ!?」
耳元を木刀がかすった。織斑を狙った一撃のようだが、あと数センチずれてたら冗談抜きで危なかった。木刀でも人を殺せるんだぜ?
「誰がどういうタイプだって?」
「い、いや、だからだな……」
「ほ、箒やめなよ! 颯斗怯えちゃってるよ!?」
デュノアさんが慌てて止めに入る。すると篠ノ之さんもすぐに木刀を引っ込めた。そういやそれ、どこから出したの?
キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴った。
散々すぎる休み時間だった。休み時間なのに休めないってどういうことだ。
「えっと、みんな。颯斗とお話するのは昼休みや放課後にしよう? その方が時間も取れるし」
「は〜い」
デュノアさんの提案に渋々納得した様子の女子は散り散りとなり、それぞれの席へ、別のクラスの子は自分の教室へと戻っていく。
少なく見積もっても今日はこんな感じなのかな……先行き不安だ……。
ヒロインは簪と楯無さん。そして友情枠が一夏を抑えて箒になりそうな感じです。頭の中では。