ISだが、機体は岩男でも問題ないよな?   作:暁楓

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 六月十日、サブタイつけてないことに気がつきました(笑)。


第三十七話 ビシッと決めれる人ってかっこいい

 授業があまりにも理解できなくて考えることを放棄したら織斑先生に叱られました。

 そんなこんなでひとまず午前中の授業は終え、昼休み。食堂をごった返しにするのは避けようというデュノアさんの提案で、購買で買った弁当を教室で食うことになった。

 

「――で、まずは何を訊きたい?」

 

 そうクラスメイト+教室に押し掛けてきた他クラスの人達を代表して尋ねてきたのは、現在俺の中ではイケメン姉御か暴力女の間で評価をさまよっている篠ノ之さんである。

 

「えーっと、まずみんなの名前をまだ知らないんだけど……」

 

 とりあえずまずは名前の確認だ。未だに聞いてなかったので、とりあえず(仮)付けをやめにしたい。

 

「それもそうだったな。私は篠ノ之箒だ」

 

「……えーと、すまん。できれば記憶喪失になる前の俺との関わりとかも教えてくれ」

 

「ああ、そうだな。……クラスメイトだ」

 

 ……………。

 

「……それだけ?」

 

「あとは……タッグ戦のパートナーになったな。それぐらいだ」

 

 ……そうですか。

 

「えーと、よろしく。……篠ノ之、さん?」

 

「前は名前で呼んでいた。できればそうしろ」

 

「はあ……………箒、さん?」

 

 不機嫌そうに睨んできたが、特に何か言ってくることもなかった。

 箒さんは隣にいた織斑に小突いた。

 

「一夏、お前もさっさと自己紹介しろ」

 

「わかってるよ。……俺の名前は織斑一夏。颯斗とはIS学園からの付き合いで、クラスメイトであり、IS学園という範囲では唯一の男友達ってとこかな。あと、颯斗は以前俺のことは名前で呼んでたぞ」

 

「ふむ……じゃあ、一夏と呼べばいいのか?」

 

「ああ、それでいいぜ。えっと、次は……」

 

「流れ的に僕かな? シャルロット・デュノアです」

 

 次はデュノアさん。原作知識とは言え、知ってるというのは安心できる。

 

「颯斗とはクラスメイトだし、ISの専用機持ち同士として模擬戦もやったことがあるね。あとは……僕達の相談役もやってもらったり?」

 

「? 相談役って、シャル何か悩みがあるのか?」

 

「ある意味悩みではあるね。あと、シャルロットって君は呼んでたよ」

 

「……名前呼び多くね? みんなを名前で呼ぶような奴だったのか? 俺?」

 

「専用機持ち同士なら模擬戦とかで交流もあるから、それで名前呼びになるんだ。他の子達の場合は……苗字で呼んでたかな?」

 

「はい、はーい! 私、一年一組相川清香は、傘霧くんと二人きりの時にはキヨって呼んでもらってたよー!」

 

 なにそれ初耳。

 

「ちょっと、何でっち上げてんの!?」

 

「ずるい! 抜け駆け!」

 

「でっち上げじゃないもーん! 二人きりの時にはそう呼んでくれてたもーん!」

 

「私は〜、のほほんさんって呼ばれてたよ〜」

 

「じゃあ私の場合は……」

 

 女子達が自分がどう呼ばれていたのかにわかに騒ぎ始めた。

 出るわ出るわ、名前、苗字、渾名、その他諸々……人数が人数だから色んな声が重なってもはや誰が何を言ってるのかわからない。……やばい、なんだか気分悪くなってきた。

 

「いい加減にしないか、お前達!」

 

 収まる様子を見せないその喧騒に、箒さんが一喝した。

 

「颯斗が自分の周りもわからないことに付け込んで、颯斗を陥れるつもりか!」

 

「お、陥れるなんて、そんなつもりじゃないよ!」

 

「だったらありもしないことを一斉に口にするな! 今私達がするべきなのは、彼が自分自身を知るための手助けをすることだろう!」

 

「やだ、惚れそう」

 

「颯斗!?」

 

 なんだシャルロットさん、こんなにかっこよく相手を論破できる美少女な箒さんに惚れるなんて不思議じゃないだろ? つい手を出す性格が玉に瑕だが、地雷発言をしなきゃそう手を出されやしないって(慢心)。

 ちょっと本気で彼女を振り向かせることを考えてみるか。おそらくだがこの世界での箒さんは原作通り一夏に片想いで合ってるはずだ。だって俺に対する対応に冷静さがある。それだけの理由だが、説得力はあるはずだ。一夏はどうせ朴念仁だろうし。つまり俺は箒さんの一夏へと向けている矢印をこちらに向けさせることが条件となる。これは極めて難解だ。なぜなら箒さんの一夏に対する想いは例え離れ離れになって何年経っても変わらない程に強いものなのだから。ちょっとやそっとのアプローチで変わるようなものじゃないだろう。ここまで来るとおそらく一夏から答えをくれるまでそのままの想いで待っているという気概があってもおかしくない。それはそれですごくかっこいい。ますます惚れる。とにかくそんな箒さんに振り向いてもらうためには、それを覆すほどのインパクトを、いや、誠実さか? それとも何か別の……とにかく、その数年分を覆すくらいの何かが必要になるという訳でだ。これは厳しい。これには俺の知識と精神では答えが見つけ出せない。だが、それさえできればぐっと勝利が近づいてくる訳で――

 

「颯斗? どうした?」

 

 箒さんが何やら怪訝そうな顔で尋ねてきた。

 言葉は思いついていない。何一つ関係が進んでいる訳でもない。しかし、一体何の根拠を持って、何を思ったか――今がチャンス!

 

「……箒さん」

 

「なんだ?」

 

「俺と……お付き合いしていただけませんか!」

 

「――は?」

 

 沈黙。

 

「ブゥ―――――ッ!!?」

 

 次の瞬間、教室内のかなりの人数の女子が、専用機持ちか否かも関係なく、噴いた。

 

 ガンッ!

 

「グハッ!?」

 

「颯斗!?」

 

 突然の強い衝撃。それに倒れ、にわかに薄まり始める意識で見上げると、木刀を持った箒さんがいた。

 

(ああ……地雷踏んだのか……)

 

 それを確認できた俺は、そこでガクッと意識を途絶えさせた。

 そういや……まだ名前三人しか聞けてねえ……。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 目を覚ますと知らない天井だった。

 

「どこだここ」

 

「保健室だ」

 

 箒さんがいた。

 なんで保健室で寝てんだ俺……ああ、そうか思い出した。昼休みの時に箒さんから一撃貰って気絶したんだ。きっとその後、ここに運ばれたんだな。

 空が赤い。夕方になるまで寝ていたのか。

 

「目を覚ましたんだね。それにしてもあの時はびっくりしたよ」

 

「記憶喪失だということを考えましても、さすがに予想外でしたわ」

 

 箒さん以外にも何人か来ていた。全員女子、それも昼休みの時にいた人達だった。

 

「頭部に衝撃が加えられた訳だが、記憶はどうなっている?」

 

 そう尋ねてきたのは銀髪で眼帯をした少女だった。あ、この人はラウラ・ボーデヴィッヒだよな。さすがにわかる。

 

「えっと……特に何も……」

 

「ふむ、脳に物理的衝撃を与えれば記憶が蘇ると聞いたのだが、やはり木刀では重量が足りなかったのではないか?」

 

「ラウラの言う十トンハンマーなんて使ったら、颯斗が死ぬわよ……」

 

 なにそれ怖い。なに恐ろしい手段考えてんのこの子。

 

「それにしても、アンタなんでいきなり箒に告った訳?」

 

「いやー、あはは……勢い?」

 

「なぜ疑問系……?」

 

 自分でもわからん。箒さんのかっこよさに惚れたとしてもあのタイミングはないわ。自分でやらかしたことだが。

 

「颯斗、理由はなんであれ私はそれに応えるつもりはない。第一、お前には簪がいるしな」

 

「かん、ざし……?」

 

「更識簪。一年四組のクラス代表で、楯無さんの妹だ」

 

 ……え、俺って、何? 更識家となんか繋がりでもあんの? 箒さんの言い方からして妹とは恋仲みたいだし、姉の方もなんだかんだ知り合い以上っぽいし。

 

「颯斗、自分のことをよく知りたいのなら簪と楯無さん、その二人をまずあたってみろ。正直な話、私達はお前との交流はそこまで深くない」

 

「はあ……あ、でも名前確認させてくれない? さっき……というか昼休みの時に途中で止まっちゃったし」

 

 セシリア、鈴音、ラウラの名前も教えてもらった。あと、彼女達の要望あってさん付けはやめることにした。

 更識簪……今日はやめとくとして、明日の昼休みに四組の教室にでも訪ねてみるか? でも、昼休みの時には見かけなかったんだよなぁ。箒さん……じゃなくて箒の言い方からするとそれなりに親密っぽいのに、なんでだろうか?

 

 

 

   ◇

 

 

 

 何も見えない暗い闇の中に、楯無はいた。

 身体がだるい。というより、全身に力が入らない。底知れぬ脱力感に襲われているが、意識だけははっきりとした感じだ。

 夢だと、楯無はすぐ理解した。最近、眠るたびに時々この夢見る。

 楯無はこの夢が嫌いだった。ここに来るたび、ゾクゾクと全身に酷い悪寒が走る。今回も例外ではなかった。

 下を向いていた顔を上げる。いや、勝手に上がる。上げたくない。上げたら、またあの光景を目にしてしまう。いやなのに、否応なしに目の前の光景が目に映る。

 前方、少し離れた位置に颯斗がいた。オメガを纏うその姿はボロボロで、背中の装甲に至っては砕けてなくなっている。横たわった彼は身動き一つ取ろうとしない。

 そんな彼に、暗闇から一つの影が現れた。

 左右非対称の腕を持ったそのヒトガタは、動かない颯斗に攻撃を始めた。殴りつけ、蹴り飛ばし、すでに虫の息である颯斗を痛めつけていく。

 当然、楯無は止めに入ろうと未だに力の入らない身体を動かした。しかしその身体は後ろから現れたもう一つの無人ISに捕らえられ、動かなくなる。必死にふりほどこうとしても、拘束は緩まない。

 やめてッ!! そう叫ぶも、ヒトガタは聞く耳を持たず、颯斗への私刑は終わらない。殴られ続け、暗闇の所々に颯斗が吐いた血が広がっていた。

 

 やめて! やめてぇっ!!

 

 決して解けない拘束の中もがきながら、楯無は夢の中であることも忘れて叫んだ。

 すると無人機は殴るのを止めた。しかし楯無は安心しなかった。この先を知っているのだから、できるはずがない。

 無人機がゆっくりと右手を上げた。暗闇のはずなのに、手首に取り付けられたら物理ブレードがその存在を誇示するかのように鈍く輝く。

 そのブレードが……断頭台の刃のように、真っ直ぐ颯斗の首へと振り下ろされた。

 首の肉に食い込み、引き裂き、その断面から一気に血が噴き出して――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ッッ!!!」

 

 そこで、楯無は跳ね起きた。

 すぐに周囲を見回す。楯無の視界に映っているここは、生徒会室だった。すぐ目の前の机には、数々の書類が積み重なっていた。もうすぐ日が沈むのか、夕暮れの濃いオレンジの光が辺りを染めていた。

 思い出した。生徒会室で書類を片付けた後、疲れと、部屋に戻る気になれなかったことからここで仮眠を取ることにしたことを。そして、まどろみの中で颯斗が殺される夢を見たことも。

 

「……ッ!」

 

 悪夢が蘇り、楯無は声を殺さんとするかのように口に手を押し付けた。

 あれは悪夢たが、夢ではない。瀕死の颯斗が無人機に蹂躙されていたのは、紛れもない現実だった。そしてあの時、オメガに異変が起きなかったら、ほぼ間違いなく、あの夢の通りに颯斗は死んでいただろう。

 自分が弱かったせいで。ちゃんと颯斗を守ることができなかったせいで。

 

「ぅ……く……っ」

 

 身体が震える。

 塞いだ口から声が漏れる。

 それはダメだと、楯無はさらに抑え込む。

 自分はロシア代表で。

 自分は生徒会長で。

 自分は楯無で。

 だから泣いてはいけない。だから弱音を吐いてはいけない。そう自分に言い聞かせる。

 それにも関わらず流れた涙が、夕日に照らされて輝いた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 夕方になって、俺は自分の部屋に訪れた。

 片方の机には誰かが勉強をしたと思われる跡が残っている。多分自分のだけど、試しにノートを開いてみてもさっぱりわからず、身に覚えがない。そしてもう片方の机には何もない(・・・・)。机だけでなく、クローゼットとか調べても片方には何もない辺り、どうやらここには俺一人が暮らしていたようだ。ちなみに俺のと思われるクローゼットには、ファッションに詳しくない俺でもなんとなくわかるくらい高そうな衣服が何着もしまわれていた。以前の俺はファッションに詳しかったのか?

 

(……んん?)

 

 ふと疑問に思った。なんで一夏と一緒じゃないんだ? 同じ男子同士で一緒にされるはずだと思うんだけど。

 

「……まあいいか」

 

 きっと何か学校側で事情があったのかもしれないし。そう適当に結論づけた俺は夕食のため部屋を出て行った。




 記憶喪失になって颯斗がいくらかアホになってる様子。うーん、この。
 それから更識姉妹は二人揃って面倒になってます。颯斗がなんとかしなきゃ(使命感)。
 こっからどういう具合にあれに繋げていくかな~。
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