新キャラ、新装備、そして新ISです。
研究所につくと、一人の男性職員が出迎えていた。
シエルさんは車から降り、すぐにその職員へと駆け寄る。
「セルヴォ!」
「おお、シエル! お帰りなさい」
……ええと、シエルさん、今セルヴォと言いましたか? それって、ロクゼロのセルヴォさんですか?
バイザーがないからそれっぽく見えない。優しそうな若いおじさんといった印象にしか見えない。いや、十分か?
そんな感じでぼんやりと眺めていると、セルヴォさんがこちらに気づいて近づいてきた。
「やあ、君がハヤトくんだね? 私はセルヴォ。シエルと共にここアルカディアでIS武器の開発、研究をしているんだ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
セルヴォさんと握手を交わす。
「じゃあ、中に入ろうか。君にも手伝ってもらいたいことがあるけど、いいね?」
「颯斗さん、行きましょう」
二人に連れられ、研究所へと足を踏み入れた。
◇
「「「ハヤトさん、ようこそアルカディアへ!!」」」
「えっ、と……?」
研究所に入るなり、いきなり職員達に歓迎された。クラッカーも一斉に鳴らされる。
いきなりのことで、ついていけないんですが……。
「ああ、すまない。こういうサプライズは苦手だったかな?」
あまりにも唖然としている時間が長かったらしく、セルヴォさんがそう尋ねてきた。俺は慌てて否定する。
「あ、いえ、今までこういう経験はなくて、びっくりしてまして」
「ああ、そうだったか。君が初めてここに来る時には、盛大に歓迎しようってことになってね」
「それで、君がギリシャ所属に決まってから準備してたんですよ!」
職員の一人が割り込んできたのをきっかけに、職員全員がワイワイと集まってくる。
「色々話したいことも多いと思うけど、もう少しだけ我慢してね」
シエルさんはそう言って職員達をなだめ、俺を案内していく。セルヴォさんを含め一部の職員がついていく。
着いた先は、様々な機材や工具が散らばっている部屋だった。多分整備室だろう。
「颯斗さん、エックスを展開して、それから降りてくれる? メンテナンスや装備の改造も行うから」
「あ、はい」
言われた通り、エックスを展開。ISや装備の展開についてはもう難なくできるレベルになったところだ。そしてエックスから降りる。
「ありがとう。ISの試運転までは少し時間があるから、その間にみんなと交流を深めたらどうかしら」
「了解です」
頷く。が、先ほどの場所へと戻る前に気になったものの前まで近づく。
気になったものとは、ISだ。一目見てそこまではわかる。さらにそれは、エックスによく似た機体だった。ただ、エックスのような翼状大型スラスターはないし、腕はXカノンでもない。細部のデザインとも合わせて、何というか、エックスを地味にしたような外見だった。
「……このISが気になるかな?」
俺の様子に気づいたセルヴォさんがそう訊いてきた。
「……ええ、まあ」
「この機体は『パンテオン』と言ってね。ギリシャの第二世代量産機なんだ。ついでに言うと、このパンテオンの稼働データを使ってエックスやエックスの装備を作った、いわばエックスの原型といったところだね」
「パンテオン……」
その名前は知ってる。ロックマンゼロにおいてはエックスを元に劣化コピーした汎用メカニロイド、それが俺の知ってるパンテオンだ。しかしこちらでは生まれた順番は逆のようだ。
「パンテオンは多少重量がある代わり、多彩な装備による汎用性の高い機体として世に出してたんだけどね……後により軽く、さらに無改造でより多くの武装を積めるラファールに株を持ってかれていってしまったんだ。まあそれでもギリシャではこれが主流だし、パンテオンが出た当時ISは第二世代の中期だったから、今でもこちらの方が使いやすいって言ってくれてる顧客もいるんだけどね」
へぇ、重量がある代わりに汎用性を、ね……。
「……エックスとは逆じゃありませんか?」
「まあ、確かに。エックスは高速機動と、多様性のある一つの武器を操る作りだね」
だけどね、とセルヴォさんはため息混じりに言った。
「ここだけの話、IS作りも楽じゃないんだよ。他国との差別化は常に考えなきゃいけないし、予算も無制限にある訳ではないし、他にもデザインもよく考えなきゃ操縦者の受けも悪いし。数えたら意外と多いんだよ問題が」
なんか愚痴が始まった。
しかし、考えてみると納得できそうな気もする。さっきの汎用機の株がラファールに取られた話とかもそうだし、言われてみればISって何かとデザインもいい。元々ISの搭乗者は女性。男性以上にデザインにもこだわっていそうだ。
「セルヴォー。颯斗さんに愚痴言わないで、ちょっとこっち手伝ってー」
シエルさんがこっちに手を振りながらセルヴォさんを呼ぶ。声からしてセルヴォさんの愚痴には慣れているようだ。
「ああ、今行くよ。すまないね、愚痴になってしまって。さあ、ここでの道草もこのくらいにして、君が主役の歓迎会に行ってきなさい」
「はい。愚痴であっても、話をしていただいてありがとうございます」
セルヴォさんに礼をして、歓迎会の会場へと足を運んだ。
◇
歓迎会を終えてシエルさん達の研究の手伝いへ……歓迎会はどうだったかって? みんな歓迎してくれたよ。後は自己紹介した後みんなでワイワイしたよ。ロクゼロ関係の名前もいくつか聞いたな。
で、現在場所はIS訓練場。俺は改造されたエックスに乗っている。改造されたって言っても、見た目に変化はない。しかし現在エックスにはデータを採取するための機器のコードがいくつも繋がっている。そして前方百メートル先には円盤状のターゲット。
『それじゃあ颯斗くん、新しく追加したレンズの試射、始めてくれるかな?』
「はい!」
通信越しのセルヴォさんの声を頷き、Xカノンを構える。レンズはもうすでに、変換されている。
キュゥゥゥウウウン……。
構えたXカノンにエネルギーが集束し始める。エネルギーは次第に大きくなっていき、集束する音も大きくなる。
(――今だ!)
巨大になったエネルギー弾を発射。ドゥンッ!! と鈍い音と共にXカノンから離れ、直進。見事ターゲットに命中し、パーンッ。
「おぉ……」
『うん、大丈夫みたいだね。もう何発か試射してみてくれるかな?』
「あ、了解です」
言われた通り、また集束、発射を何度か繰り返す。
まず最初に試したこのレンズはいわゆる『集束型』。言ってしまえば高威力のチャージショットを撃ち込むものだ。
同じくチャージから出す高威力レンズにはすでに照射型もある。しかしこの集束型は単発ゆえに総合火力では劣るが、燃費が格段によくなっているそうだ。元々照射型は極めて燃費が悪いため、改良もしくはそれに取って代わるレンズの開発をするつもりだったらしい。
『うん、集束型は安定しているね。じゃあもう一つのレンズに移ろうか』
「はい」
Xカノンのレンズを切り替え、ターゲットに標準を合わせる。
一呼吸置いて、一発撃つ。反動が若干他のレンズと比べて大きい。
発射された弾はターゲットに着弾。その直後、大きな音と共に炸裂した。
「おぉ……」
炸裂の大きさにまた声を漏らす。
今度のレンズは炸裂型。文字通り着弾すると炸裂する弾になる。消費エネルギーは多めだが効果範囲が大きく、集束型と違ってチャージの必要がないという利点もある。この炸裂型とさっきの集束型が今回追加されたレンズだ。
「これも何発か試射するんですよね?」
『ああ、だけど気をつけて――』
話の途中からすでに射撃態勢に入り、ターゲットに向けて発射。
だけど発射と同時に、Xカノンが炸裂した。
「うごわっ!!?」
炸裂に巻き込まれ、後ろに吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか!?」
少し離れたところでデータ取りをしていたスタッフが駆けつけてくれる。
吹っ飛びはしたが俺自身はISに守られているため怪我はなく、エックスも間近で炸裂を受けはしたが無事だった。
「てて……、一体何が……」
『あー、やっぱりこうなったか……』
「やっぱり? セルヴォさん、やっぱりってことは前にもあったんですか!?」
『ああ、うん。そうなんだ。レンズ化させる前の原型の時から、炸裂型はどうも安定しなくてね』
「……一応訊きますけど、なんで?」
『プログラムの仕様ってところかなぁ。せっかくだからここで、Xカノンのレンズについて詳しく説明するよ』
いつの間にかスタッフがディスプレイを展開していた。図説付きらしい。
『Xカノンのレンズにはプログラムが入っていてね。レンズを通すことでエネルギーはそのレンズの中のプログラムの命令に沿った効果を持つ弾になり、それから発射されるという仕組みになっている』
「例えば跳弾型の場合、“何かに当たった時に反射する”という命令が組まれています」
そう説明するスタッフが持つディスプレイの図面ではエネルギーを表す矢印がレンズを通っている図が表示されている。図のレンズを通して命令プログラムが入れられた矢印が壁に当たって跳ね返るところまで表されていた。
『炸裂型の場合は、“衝撃を与えられた時に炸裂する”ように命令がされている。だけど発射時の反動が弾丸と接触して、結果として誤爆を起こしてしまうことがあるんだ』
そうなのか。……ん?
「……なら、跳弾型みたいに衝撃ではなく、何かに当たったらにしたらいいんじゃないですか?」
『……ああ、説明が悪かったね。跳弾も炸裂弾も条件は同じく“衝撃を与えられた時”なんだ。実は跳弾型でも反射の誤発は以前起きていたんだよ』
そうなの?
『だけど跳弾の場合、衝撃がXカノン側から受けて前方に反射していくため、結果的に誤発はないようなものなんだ。ただ、反射の影響で多少ぶれやすいから、改良して今では誤反射は起きていないよ』
そうだったのか。初めて知った。
というか今まで、初模擬戦以来は飛行訓練ばっかだったからなぁ……。
『でも炸裂弾の場合はそれでもダメみたいだね。取り外してまた改良するよ。ひとまず今回は集束型だけ追加ね』
「あ、はい」
『レンズの取り出しはちょっと後にして……』
セルヴォさんがそこで言葉を切ったことに一瞬疑問を持ったが、前を見て理解した。
向かい側のゲートからISが出てきた。さっき説明を受けた、パンテオンだ。人も乗っている。
『オメガの試運転ももう少し準備がかかるみたいだし、模擬戦でもしないかい? みんな、それに私も、君の戦い方を見てみたいんだ』
答えはすぐに決まった。
エックス初搭乗以来の模擬戦。ここまでの訓練でどこまで伸びたのかも確かめてみたい。
「はい! やります!」
『うん。じゃあ、接続されている機器を外すまで少し待ってくれよ』
スタッフの手によってエックスに接続されていたデータ搾取用の機器が取り外される。
余計な機器が外れ、エックスの翼を広げて前へと出る。
「よろしくお願いします」
「こっちもよろしくね〜。元代表候補生だから、遠慮しなくていいからね!」
「そうですか。じゃあ――」
開始までのカウントダウンがゼロとなる。
「行きますっ!」
六つの翼を稼働させ、超速で攻撃を仕掛けた。
量産機パンテオンのアイディアをくださったKZFMさん、本当にありがとうございます。
さて、このままでは感想にて「エックスよりパンテオン持たせた方がいいだろ」というツッコミが来る気がする(というか既にエックスのスペックに対するツッコミが来た)ので、そこは次回明らかにするとメタらせていただきます。
次に、追加されたレンズ、集束型についてのスペック説明を。一応炸裂型の説明も上げます。
集束型
一定量までチャージして高威力の弾丸を放つ。
チャージする分威力が高めである上、弾丸も大きくなるため攻撃範囲も若干広めである。照射型と比べて消費エネルギーも抑えられているため、チャージさえできれば扱いやすいレンズ。ただしチャージする性質上連射性が皆無であり、照射型と比べて爆発力に欠ける。
炸裂型
着弾時に広範囲に炸裂する弾丸を放つ。
範囲攻撃は勿論、相手の弾幕に撃ち込むことで弾幕を無効化できることを目的に開発されているレンズ。消費エネルギーは多めだが、範囲攻撃とあって扱いやすい。
しかし、反動の衝撃で誤爆が起きる事があるという致命的な欠陥があるため、まだ採用段階までは進んでいない。