目色が変わった日   作:カナーさん

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過去




 

 暗く歪んだ湿っぽいそんな監獄や牢獄に突っ込まれたた麻薬中毒者(ジャンキー)のような気分__とまではいかないがそれぐらい気分が悪い状態でいつものように私は壁を背に蹲っていた。

 

 「…はぁ〜」

 

 最近癖になっている溜め息で気分を濁そうとするが、これまたとくに変化はない。幸せが逃げると聞くが幸せを噛みしめるよりはいい気分のほうを噛みしめたい。

 ジャンキー達は私よりは楽だろう。なんせ白い粉さえあれば天国の扉を叩けるのだから。彼らは扉を開いた後引き戻され副作用にボコされているだけなんでそこは自業自得だろう。

 

 「ため息なんてしてどうしたの?」

 

 ダンジョン奥深くにあるお宝の様な煌めきをぶら下げているフランドールが読書を中断して心配そうに聞いてきた。

 この心配は誰に対しての心配だろうか。私か、それとも自身にか?

この少女とそれなりの付き合いなのでわかったのだが、結構自己中なのだ。

悩み事か心配事を抱えている私を心配しているのか、私の不調で自身によろしくないことが起こらないか心配しているのか。あまり彼女がいる時には控えていたのでおそらくは前者か。

 

 「いんや、どうしようもない現状に嘆いただけだよ。とくに何かがあるっという訳ではない」

 

 「そ。ならいいのだけど、何かあるなら言ってね?私暇だから」

 

 「そこは()ではなく助け(・・)って言ってほしかったよ」

 

 「フフ、それは失礼」

 

 そういって読書を再開する。

 

 いつも何かしらを持ってきては私の隣で読む彼女だが、毎回違う物を持参している。私も暇だったので何の気なしに彼女が手にしている本を覗いて見る。

 

 内容はよくわからないがおそらく魔導書の類いなのだろう。魔法陣が書いてあったし。

 

 少しばかり残念だ。読めるものなら彼女の隣で読書に洒落込もうと思ったのだが。しかし、そうなるとやることがない。読めるものなら読み解きたかったが無理ならしょうがないのだが暇潰しの宛が外れてしまった。

 

 彼女に読めそうなのを見繕ってもらえばいいのかもしれない。彼女は喜んで引き受けてくれるだろう。本人か言ってたように暇だし。でも、仮に目的の(もの)あったとして今度はこの視界が邪魔をして碌に文字など読めないだろう。せいぜい文字がバーコードのようにしか見えないだろう。

 

 そしてそうなってくるといよいよ宛がない。彼女に本を持って貰いながら読書は遠慮したい。彼女もいくら暇だからといっても道具のように扱われるのは嫌だろう。

 

 なので結局は普段通り彼女を観察する。構図的に犯罪臭がするがおそらく気のせいだろう。瞳の次は鼻が悪くなるとは悲しいことだ。耳よりはましだが。

 

 変わったところはこれといって見当たらない。シャンプーか香水かわからないがこれも普段通り。室内なのに香水?って当初は思ったが室内なのに帽子を着用するような彼女だ。香水の可能性もあるだろう。

 

 とくに代わり映えしない彼女をこんな感じで観るのが私の一日だ。自分でも思うのだがなかなか狂っていらっしゃる。でもこれがなかなか飽きない。なんたって観ていると時間を忘れさせてくれる場所があるからだ。

 

 それは彼女の背に着いている、かぐや姫とかが持っていそうな宝石の着いた枝のような羽根。これは、こればかりはいつ観ても飽きない。

犬は嬉しかったり安心だったり不安だったりの感情を尻尾の振り具合で表現している。

 

 彼女の羽根にもこれが当てはまるようでよく動く。

今はリラックスしているのかゆったりと羽根が揺れているが先程の会話の時は少しばかり力んでいたりする。そういうのを観るのが最近の楽しみだ。

 ちなみに毎回ここにいるときは大きく揺れている。犬なら遊んでいる時のような感じだろうか。顔の表情とのギャップがすごくて、少し嬉しくって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日はいつの間にか定着してしまった私の特等席で何回と読んだ本を読み返していたときだった。

 

 「ん?なんだこれは」

 

 最初に気付いたのは彼だった。

いちなりすっとキョンな声を疑問をひとりでにあげていた。

 

 「ん?どうし…」

 

 私は言葉を繋げなかった。

それは言葉にする必要性がなかったのもある。目で見るより明らかとはよくいったもの。肌で感じる空気の違い。

 

 「…これは…やっぱり転移術式」

 

 能力を使い確信した。これは何時かで盗み見たパチュリーノーレッジの蔵書にあったものに酷似していた。

 

 確認のため久しぶり館を見渡してみると、図書館に館の主要的な者達が集まっており、彼女らの前方に大きな陣が描かれていた。

 

 唇を少し噛む。最近はただ視野を拡げることに力を入れていたので久しく館を見ていなかったせいでこの変化に気付かなかった。

最近よく姉が部屋に来ていたが全部無視(スルー)していたのだがこの事を伝えるためだったならば過去の自分に注意を促してやりたい。

 

 虫のように無視するのではなく虫のように潰して殺れっとそう教えてやりたい。

 

 そうすればこんな不安定な状況を作らずに済んだかもしれないのに。全く邪魔しかしないな、うちの姉は。わざわざ地下にいるというのにそこまでして私のヘイトを集めたいのか。

 

 …取り敢えずそこらへんは考えないことにしよう。過ぎてしまったことより現状のことを考えなければ。

今すぐパチュリーノーレッジまたはそれが発動している術式を破壊することはできる。ただ実行することはできない。してしまえばただでさえ揺らいでるこの場所が碌でもない事になる。

空間をジェンガ、ノーレッジを選手(プレイヤー)、術式を台に見立ててみよう。ジェンガは彼女によってグラグラに揺れている。そして進行形で彼女は引き抜き上に積んでいく。そこで彼女を後ろから破壊()してみよう。肘打ちでも構わない。するとどうだ。か弱い彼女は倒れるだろう前のめりに。ジェンガある方向へ。ここで運良くジェンガに直撃しなくても台への衝撃は免れず揺らいでいたジェンガはあっさり崩壊する。

彼女の術式が不純物を取り込んでも暴発はしないとは思うが少なくても私の力が認知されてしまう。私はそれでも一向に構わないが彼が認めないだろうし、彼のことも認知されてしまう可能性がある。それは大いに困る。

 

 私は少し考えて術式を逆算することにした。目的地を知ろうとしたのだが…どこかはわからなかった。情報を得ることはできなかったが、代わりに頭痛を貰った。凄く痛い。しばらくは逆算なんてしたくない。ついでに文字も見たくない。瞳に焼き付いたのかさっきから文字が視界にチラつくので目頭を押さえる。良くなるとは微塵も思わないが気持ちの問題だ。

 

 「なんか凄く疲れてないか」

 

 「なんでそんな事わかるのよ」

 

 視界がぼやけているって話のはずだけど

 

 「違うのか?涙目ぽいからそうだと思ったのだが」

 

 「いや確かに涙が出てくるくらい目諸々使い倒したからね。間違ってはいないわよ」

 

 だからなんで見えていないのにわかるのよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、私は上の動向を気にしつつ外の様子にも目を向けていた。

 さすがパチュリーノーレッジだ、予め着地点の安全を確保としている。

 

 「転移は無事成功のようね」

 

 「終わっていたのか、いつの間に終わったかわからなかったな」

 

 「あなたのは別問題でしょう」

 

 彼の発言に呆れながらも警戒は続ける。察知はできるくせに感知ができないのがよくわからない。ますます彼の謎が深まるばかりだ。

 

 「…見た感じすぐに強襲ってことはないようね。周りは森、近くに湖があるわ」

 

 「今思ったんだが射程距離はどれくらいあるんだ?」

 

 「さあ?気にしたことないからわからないけど、さっきまでは地図一枚分くらいはいけたわね」

 

 彼はそれを聞くと固まってしまった。まあ自分でも異常なのはわかる。でも出来てしまったものはしょうがない。

 

 私は立ち上がる。このままではまた姉が突撃してくるだろう。そして私が私の部屋に不在だと…やだ。もっと絡まれるイメージしかできない。まあ姉のそこの部分は信用できる。良い言い方をするなら愛は信用している。

あの姉なら私がいないと気付いたならば血眼になって探すだろう…紅魔館総出で。

 

脅威はパチェリーノーレッジ、次いで紅美鈴。この二名をどうかできればいいのだ。後はどうとでもなる。一番楽で安全なのが部屋で待機すること。なので私は上に戻ろうとしている。

 

 「…」

 

 吸血鬼の聴力でもギリギリ捉えることができた溜息を聴いて歩みを止めた。呆れているという感じが何故かありありと感じる。

 

 「私は留める資格なんてないし、そんな権利もない。だが言葉を紡ぐことはできる。

 

 

()り過ぎるなよ。それは私が最も嫌うことの一つだからな」

 

 私は彼に振り向くことなく歩みを進めた。

 

 彼がそういうなら自重しよう。少なくても姉以外には赤子を撫でるように優しく相手しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ようこそお姉様。こうして口を利くのは久しぶりね」

 

 扉をノックしていつもどうり無視する私に態々「入るわね」と一声掛ける姿を一瞥してから声を掛ける。

 

 何やら感動でもしているのか震えているがさっさと要件を済まそう。

 

 「さて、いきなりで悪いけどお姉様に質問があるわ。真剣に応えてね」

 

 姉は「え、えぇ!お姉さんになんでも聞いて頂戴」とかそんな感じで、喜びを噛み締めながらもなにを聞かれるか予想できないからか緊張した面持ちだ。

 

 「お姉様は私のこと愛してる?」

 

 「もちろんよ!私はあなたを一番愛してる」

 

 即答か。まあそこは信用している。

 

 「そう…なら愛してる私のお願いを聞いてくれる?」

 

 姉はさっきと同じ反応だった。

 

 「私を愛していて、私のためを思って行動したいなら、私に金輪際関わらないでほしい。会うのもやめて」

 

 私は姉に背を向けた。

 

 「え?それはどういう…」

 

 「そのまんまよ。言う事は何もないわ、出て行って」

 

 近くにあったクマのぬいぐるみをいじりながら言った。お前には興味ないといっているように見えるだろうが実際そうだ。

 

 私の思いが通じたのか踵を返して出ていこうとする。とはいえ最後にいい想いはしてもらおうか。最後だしね。

 

 扉に手を掛けようとしている背後から姉に抱き着く。

 

 「フラン…?」

 

 「もう我慢できそうにないから…バイバイお姉様」

 

 嫌悪感が我慢できそうにないからね。これで最後にしてほしい。この嫌悪感は今も理解できない。俗に言う反抗期だろうか…。

 

 

 

 

 

 

 後日、予定通りにこの部屋に訪れた姉。抱き着い時に紙を仕込んでおいた。明日 来たら わかる、とね。

 

 さて、では問答無用に。

 姉に向かって殺す気で弾幕を放つ。流石吸血鬼と言うべきかちゃんと避ける姉。姉が何か言っているようだ。だが悲しいかな。今の私にはその声は届かない。

 

 故に何も気にしなくていい。姉を見るのは慣れた。そして今この時この空間ではなにも私を縛るものはない。

だからだろうか。高揚しているのか、自然と頬が上がる気がする…久しぶりに本気で力を振るえることが嬉しいのかな。

 

 「この時間は刹那にするつもりはないよ。だからサックと壊れないでねお姉様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上では今まさに暴力の嵐が巻き起こっていた。その被害は甚大で留まることを知らず、上へと横へとその破壊の傷を抉っていった。それは上の階にある図書館も例外ではなく本や本棚を保護する防壁をもろともせず、まるで紙のように引き裂いて花吹雪を作っていた。

 

この戦いは本来であるならば即座に終わる出来レース。フランドールがフランダースとなり12体で活動するまでもなく、幕引きが起こる筈だった。のにも関わらず戦線は拡大するばかり。千、万と撃ち合いを続けている。レミリアスカーレットと対峙しているのはオリジナル一体だけ。

他は牽制のためパチュリーノーレッジ、十六夜咲夜、紅美鈴の相手をしている。三者の周りの被害は無いに等しい。正確には地形、建造物の被害はない。

紅美鈴は片脚が爆ぜてしまっている。

パチュリーノーレッジは戦場になると考え図書館の一番端まで避難していた。おかげで囲まれてしまって物理的な逃げ場がない状況だった。

十六夜咲夜は手持ちのナイフを全て壊され抗えない。

 

そんな一方的な戦いが成されているのにも関わらず、この部屋まで破壊音は一切聞こえない…がそれでも彼女が興奮しているのを彼は感じていた。

 

 「さては私が忠告しなければ全力を出す気だったな?お転婆な娘だ。まあ、気持ちはわかるがね。今まで抑えてきたの負荷がどれほどのものか。ここまで感じとれる威烈さがそれを物語っているからな」

 

 彼は、そう。薄ら笑っていた。口から出す言葉は馬鹿にしたようなものだったがその表情を見れば違うとわかる。

 

彼は呆れている。わがままを言う子供をなだめる母親の様な雰囲気で小さく笑っていた。

 

 「普段から大人ぶった娘だったがやはりというべきか中身は全く成長しておらんな。だがそれもこの機会は良い転換になるだろう」

 

 「次に会うのが楽しみだ。その時は別人になっていないとよいのだが、それも含め楽しみだ」

 

拘束具は緩まず、視界は悪く、部屋は暗い。

狂気を孕んだ吸血鬼はおらず、目色は変わらない。

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